✍ 古家あきら | 2026-09-26 更新
外国人の起業が2026年上期は4,731社、前年の半分以下に — 「経営・管理」の基準厳格化で何が変わったか。1つの住所に100社以上が登記された236か所を国税庁データで数えた(DB実測)
先に結論です。外国人による会社の立ち上げは、2026年上期(1〜6月)に4,731社と、前年同期(9,851社)から52%減りました。 帝国データバンクは、2025年10月に在留資格「経営・管理」の基準が厳しくなったことを、減少の大きな理由として挙げています。新しい基準では、事業に使う資金3,000万円以上、常勤職員1人以上の雇用、原則として自宅と別の事務所などが求められるようになりました。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「できたばかりの会社」「住所がシェアオフィスの会社」から求人や取引の話が来たときに、その会社を調べに来る方がいます。今回のニュースは外国人の起業の話ですが、根っこにあるのは「その会社に、実際の事業の中身があるか」をどう確かめるかという、国籍に関係のない問題です。この記事では、報道と制度の一次情報を整理したうえで、国税庁の法人データから「1つの住所に会社が集まっている」実態を数えました。
出典:外国人起業、2026年上期は4,731社 前年比52%減、過去5年で最低 制度厳格化で急減(帝国データバンク/Yahoo!ニュース・2026年9月26日)
出典:在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について(出入国在留管理庁)
報道で確認できる数字
帝国データバンクの記事で確認できる数字は次のとおりです。
- 2026年上期(1〜6月)の外国人による新設法人:4,731社
- 前年同期(2025年上期):9,851社 → 52%減
- 上期ベースの推移:2022年 5,449社、2023年 7,486社、2024年 8,737社、2025年 9,851社
- 2025年9月は1か月で3,530社と、前年同月の2.6倍。月3,000社を初めて超えた(基準改正の直前に駆け込みがあった形)
- 2026年は上期のすべての月で前年を下回り、1月は43.9%減、6月は55.0%減。5月は約6割減
2025年まで4年続けて増えていた数字が、改正をきっかけに2022年の水準を下回ったことになります。
注意点もあります。帝国データバンクは、代表者の氏名の表記などから「外国人による起業」を推計しており、帰化した方や判別しにくい名前も含むため、数字には一定の誤差があります。また、減った分のうち「実体の乏しい会社が減った分」と「本来は起業できたはずの事業が止まった分」を分けることは難しい、とも書いています。
2025年10月に何が変わったのか
出入国在留管理庁の案内によると、2025年10月16日から「経営・管理」の許可基準が次のように変わりました。
- 資金:事業に使う資産として3,000万円以上。会社なら払込済みの資本金や出資の総額で見る
- 常勤職員:1人以上の常勤職員の雇用が必要。対象は日本人、特別永住者、永住者・日本人の配偶者等・定住者などに限られる
- 日本語:申請する本人か常勤職員のどちらかが、日本語能力試験N2相当以上
- 経歴:経営・管理に関する修士以上の学位、または3年以上の経営・管理の経験
- 事業計画:中小企業診断士・公認会計士・税理士が、計画の具体性・合理性・実現可能性を確認
- 事務所:原則として事業用の事務所が必要で、自宅を事務所にすることは認められない
すでにこの資格で住んでいる方には、2028年10月16日までの経過措置があります。それまでの更新では、経営の状況や、今後新しい基準に合わせられる見込みなどを見て判断するとされています。
制度の狙いは、書類の上だけの会社を減らし、事業の中身・雇用・事務所という「実体」を確かめることにあります。これは、取引先や働く人が会社を見るときの視点とほぼ同じです。
1つの住所に100社以上。国税庁データで数えた
新しい基準が「事務所」を重く見ているのは、登記上の住所だけでは実体が分からないからです。しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データ)で、今も閉鎖されていない株式会社と合同会社を、登記上の本店住所(番地・建物名・階まで同じもの)ごとに数えました。
- 対象の会社:2,926,236社(うち合同会社412,440社=14.1%)
- 同じ住所に10社以上:7,738か所、合計217,986社(全体の7.45%)
- 同じ住所に100社以上:236か所、合計73,918社(全体の2.53%)
- 同じ住所に300社以上:53か所、合計45,196社
- いちばん多い住所:東京都渋谷区の1住所に4,009社
100社以上が集まる236か所のうち、198か所(83.9%)は東京都でした。次いで大阪府12か所、神奈川県8か所です。
目立つのは会社の形です。100社以上が集まる住所では、合同会社が33.2%を占めていました。全体の14.1%と比べると、2倍以上です。合同会社は設立の費用と手間が小さく、登記だけの住所(バーチャルオフィスや登記サービス)と組み合わせやすいためだと考えられます。
ここで大事なことを書いておきます。このデータから国籍は分かりません。 登記住所が集まっているのは、国内の個人事業主の法人化、副業の会社、資産管理会社など、ほとんどが日本の普通の事業です。バーチャルオフィスを使うこと自体も違法ではありません。言えるのは、「住所を見ただけでは、そこで事業をしているかは分からない会社が、全国で数万社ある」ということまでです。
同じ住所に会社が集まる例は、渋谷の道玄坂の1住所に5,000社超が登記されていた記事でも取り上げました(こちらは株式会社・合同会社以外の法人も含めた数です)。
取引先・働く人が外から確かめられること
外国人が経営する会社かどうかに関係なく、「新しい会社」「住所だけでは実体が見えない会社」と付き合う前に、外から確かめられることは次のとおりです。
1. 法人番号で登記の有無と履歴を見る:商号や本店の変更が短期間に何度もないか。調べ方は法人番号の調べ方にまとめています 2. 登記住所で実際に働くのかを確認する:求人票の勤務地と本店が違うなら、勤務地の住所を具体的に聞く。住所の見方は会社の住所の調べ方で書きました 3. 設立からの年数を見る:設立直後の会社がすべて危ないわけではありません。見るポイントは設立したばかりの会社に転職しても大丈夫かの記事にあります 4. 実在と事業の中身を確かめる:電話・ホームページ・取引実績がつながるか。幽霊会社の見分け方と会社の実在・倒産の確認方法を参考にしてください 5. 合同会社であることを理由に避けない:合同会社は大手外資の日本法人にも多い形です。形より中身を見ることは合同会社への就職の記事で書いています
よくある質問
外国人の起業はなぜ半分に減ったのですか?
帝国データバンクは、2025年10月16日に在留資格「経営・管理」の基準が厳しくなったことを主な理由に挙げています。資金3,000万円以上、常勤職員1人以上、日本語能力、事務所などの条件が加わり、小規模・個人単位での起業が大きく減ったとみられています。改正の直前の2025年9月には、1か月で3,530社と駆け込みの動きもありました。
すでに日本で会社を経営している外国人も、すぐに新しい基準の対象になりますか?
出入国在留管理庁の案内では、すでにこの資格を持っている方には2028年10月16日までの経過措置があります。その間の更新は、経営の状況や、新しい基準に合わせられる見込みなどを見て判断されます。
同じ住所に会社がたくさん登記されているのは問題ですか?
問題ではありません。バーチャルオフィスや登記サービスの利用は合法で、国内の個人事業主や副業の会社にも広く使われています。ただし、その住所に行っても働く場所がないことは多いので、求人に応募する・取引を始めるときは、実際に働く場所や連絡先を別に確かめるのが安全です。
しょくばログのデータで、会社の経営者の国籍は分かりますか?
分かりません。国税庁の法人番号公表データには、代表者の国籍は入っていません。この記事の住所の集計も、国籍とは関係のない数字です。
まとめ
- 外国人による新設法人は、2026年上期に4,731社と前年同期比52%減(帝国データバンク推計)
- 2025年10月16日から、「経営・管理」の基準に資金3,000万円以上・常勤職員・日本語・事務所などが加わった
- 国税庁データでは、1つの住所に100社以上が登記された場所が全国に236か所、合計73,918社。そこでは合同会社の割合が33.2%と、全体の2倍以上
制度が求めるようになった「資金・人・事務所」は、どの会社を見るときにも使える物差しです。国籍ではなく、事業の中身で会社を見ることをおすすめします。