✍ 古家あきら | 2026-10-10 更新
デイサービスの倒産、1〜9月で47件と過去最多。会社サイト1,812社を数えると「定員」を載せていたのは19.2%、送迎は31.1%、料金は18.5%だった
先に結論です。2026年1〜9月のデイサービス(通所介護)事業者の倒産は47件で、前年同期の35件から34.2%増え、1〜9月としては過去最多になりました。 東京商工リサーチが2026年10月10日に公表したものです。原因の8割近くは「売上不振」で、人手不足による倒産も前年同期の3件から11件に増えています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、介護の事業所は「閉まる前に外から気づきにくい」業種だと感じます。利用者は毎日通い、送迎の車も走っているのに、経営の数字は外からほとんど見えません。この記事では公表された事実を押さえたうえで、しょくばログが保存している会社サイトのうち、デイサービスに触れているサイトが「定員」「送迎」「料金」をどれだけ載せているかを数えました。個別の事業所を責める記事ではありません。
出典:2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明(東京商工リサーチ・2026年10月10日公開)
出典:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203326_1527.html
報道で確かめられる事実
東京商工リサーチの公表から、確認できる数字だけを並べます。
- 2026年1〜9月のデイサービス事業者の倒産は47件。前年同期の35件から34.2%増え、1〜9月として過去最多
- 年間の最多は2022年の69件
- 原因別では「売上不振」が37件(78.7%)で最多。赤字の積み重ねによる「既往のシワ寄せ」が5件(10.6%)
- 人手不足による倒産は11件(前年同期3件)。内訳は人件費の高騰7件、後継者難2件、求人難1件、従業員の退職1件
- 物価高による倒産は2件(前年同期1件)
- 同じ期間の訪問介護事業者の倒産は64件(前年同期比11.1%減)、老人福祉・介護事業全体では136件(前年同期と同数)
介護事業全体の件数は横ばいなのに、その中でデイサービスだけが増えている、という形です。東京商工リサーチは背景として、サービスの多様化による競争の激しさ、物価高、人手不足が重なっている点を挙げています。
切り口:「売上不振」の中身は、利用者が集まらないこと
デイサービスの売上は、ほぼ「利用者の数×通う回数」で決まります。介護報酬の単価は国が決めるので、値上げで吸収する余地は小さい業態です。原因の78.7%が売上不振だったという数字は、裏返せば「利用者を集めきれなかった事業所が多い」ということになります。
一方で、費用の側は動いています。送迎の燃料、食事の材料、そして人件費です。人手不足による倒産11件のうち7件が人件費の高騰によるものでした。単価は動かせないのに費用は上がる。この挟み撃ちの中で、利用者が少し減っただけで赤字になる事業所が出てきます。
ここで見落とされやすいのが、事業所を選ぶ側の目線です。家族がデイサービスを探すとき、最初に見るのはたいてい事業所や運営会社のホームページです。そこに定員や送迎の範囲、料金の目安が書いていなければ、比べる段階で候補から外れやすくなります。情報の出し方は、利用者が集まるかどうかに直接つながる部分だと私たちは考えています。
しょくばログの会社サイトで数えると
ここからは、しょくばログが保存している会社ホームページ(文字として読めた31,159社)を機械的に数えた結果です。「デイサービス」「通所介護」「デイケア」「通所リハ」のいずれかの語が2回以上出てくるサイトを「デイサービス系」と呼びます。訪問介護や居宅介護支援と一緒に運営している法人も含みます。
- デイサービス系のサイトは1,812社で、読めたサイト全体の5.82%
- 「定員」の語があったのは347社(19.2%)
- 「送迎」の語があったのは563社(31.1%)
- 「利用料」「料金」の語があったのは336社(18.5%)
- 定員・送迎・料金の3つがすべてそろっていたのは37社(2.0%)
- 3つのどれも見当たらなかったのは883社(48.7%)
- 「営業日」「営業時間」「サービス提供時間」のいずれかがあったのは220社(12.1%)
- 「重要事項説明書」の語があったのは127社(7.0%)
- 「事業所番号」「介護保険事業所」の語があったのは102社(5.6%)
- 「第三者評価」「情報公表」の語があったのは77社(4.2%)
法人の種類は、株式会社が30.6%、有限会社が4.4%、合同会社が1.7%で、残りの63.4%は社会福祉法人や医療法人などを含む「その他の法人」でした。デイサービスは株式会社だけの世界ではない、という点も押さえておきたいところです。
なお、「求人」「採用情報」などの語は91.0%のサイトに出てきました。しょくばログは採用まわりのページもあわせて保存しているため、この数字は高めに出ます。それでも、利用者向けの情報(定員・送迎・料金)より、働く人向けの情報のほうがはるかに多く載っている、という傾向ははっきりしています。
数字を読むときの注意
この集計は「その語がサイトの文字に含まれていたか」を見たもので、内容が正しいか、最新かまでは確かめていません。料金をPDFや画像だけで載せているサイトは数に入りません。また、ここで数えたサイトは台帳上いずれも活動中の法人で、倒産した47件とは別の集団です。「情報が少ない事業所は倒産しやすい」と言える数字ではありません。
社名に「デイサービス」を持つ法人
社名から見る方法もあります。しょくばログの台帳で社名に「デイサービス」「通所介護」「デイケア」を含む法人を数えると、累計280社、うち閉鎖済みが54社で、閉鎖率は19.3%でした。台帳全体(約575万社)の閉鎖率は13.3%なので、それより高めです。社名で見た分析は、茨城県のデイサービス運営会社の破産を扱った つくばアカデミーの破産開始決定の記事 でも触れています(このときは数え方が少し違い252社でした)。
利用者の家族が確かめたいこと
デイサービスが突然閉まると、困るのは利用者と家族です。次の受け入れ先を探すあいだ、家族が仕事を休むことになる場合もあります。選ぶ段階で、次の点を確かめておくと安心です。
1. 運営している法人の名前:事業所名と法人名は違うことが多いです。契約書や重要事項説明書に書かれた法人名を控えておきます。 2. 介護サービス情報公表システム:厚生労働省のシステムで、事業所ごとの定員や職員の数、運営の状況を見られます。サイトに載っていない情報を補えます。 3. 職員の入れ替わり:見学のときに「勤めて何年くらいの方が多いですか」と聞いてみます。人の出入りが激しいと、サービスの質にも経営にも響きます。 4. ケアマネジャーの評判:地域の事業所の様子を一番よく知っているのは、担当のケアマネジャーです。
運営法人そのものの調べ方は、介護事業所の運営法人の調べ方 にまとめています。
働く人・取引先が確かめたいこと
働く側にとっても、勤め先の事業所が閉まるのは大きな問題です。人手不足倒産が3件から11件に増えたことは、「人が辞めて回らなくなる」ことが経営の危機に直結する段階に来ていることを示しています。
- 送迎や入浴の体制が回っているか:職員の欠員が続き、管理者が現場に入りっぱなしになっていないか
- 利用者数の推移:空きの多い曜日が増えていないか
- 給与の支払い:支払い日が遅れる、手当の扱いが急に変わる、といった変化がないか
外から見える倒産の兆しは 人手不足倒産の見分け方 で整理しています。2026年度上半期の人手不足倒産全体の動きは 人手不足倒産が過去最多の240件になった記事 で扱いました。訪問介護の事業所の破産については 訪問介護・訪問看護の3法人の破産の記事 も参考になります。
取引先として備品や食材を納めている会社は、取引先の信用調査のやり方 と 会社の実在と倒産を確かめる方法 を入口にしてください。倒産件数が調査会社によって違う理由は 倒産件数が調査会社ごとに違う理由 にまとめています。
よくある質問
デイサービスの倒産は、なぜ今年増えているのですか
東京商工リサーチは、サービスの多様化による競争の激化、物価高、人手不足が重なっていることを背景に挙げています。原因別では売上不振が37件(78.7%)と最も多く、利用者を集めきれない事業所が増えていると読めます。
介護事業全体でも倒産は増えていますか
2026年1〜9月の老人福祉・介護事業全体の倒産は136件で、前年同期と同じ数でした。訪問介護は64件で前年同期より11.1%減っています。増えているのはデイサービスで、介護の中でも業態によって状況が分かれています。
通っているデイサービスが閉まったら、どうすればいいですか
まず担当のケアマネジャーに連絡し、次の事業所を探してもらいます。事業所が閉まるときは、利用者に事前に知らせて引き継ぎ先を調整することが求められています。急な閉鎖の連絡を受けたら、契約書と重要事項説明書を手元に用意しておくと話が早く進みます。
事業所の情報は、ホームページ以外でどこを見ればいいですか
厚生労働省の介護サービス情報公表システムで、事業所ごとの定員、職員の数、サービス内容などを見られます。しょくばログの集計では、定員をサイトに載せていたデイサービス系のサイトは19.2%にとどまったので、サイトだけで判断せず公表システムで補うのが確実です。
デイサービスで働いています。職場が危ないかどうか、どこを見ればいいですか
利用者数の減り方、職員の欠員が埋まらない期間、給与や手当の支払いの変化の3つを見ます。人手不足による倒産は前年同期の3件から11件に増えており、人が辞めて回らなくなることが経営の危機につながりやすくなっています。
まとめ
2026年1〜9月のデイサービスの倒産は47件で、同じ期間として過去最多でした。原因の8割近くは売上不振で、単価を動かせないまま費用だけが上がる構造の中、利用者を集めきれない事業所から苦しくなっています。
しょくばログの会社サイトで数えると、デイサービス系の1,812社のうち、定員を載せていたのは19.2%、送迎は31.1%、料金は18.5%で、3つがそろっていたのは2.0%でした。選ぶ側はサイトだけで判断せず、運営法人の名前と介護サービス情報公表システムで裏を取る。運営する側は、家族が比べるときに知りたい情報を先に出す。この2つが、閉鎖による混乱を減らす近道だと考えています。