✍ 古家あきら | 2026-10-12 更新

「物価高」倒産、年度上半期は436件で4年連続の増加──6割超が資本金1千万円未満。社名に「食堂」「カフェ」などを持つ会社は半数が有限会社だった(しょくばログDB)

先に結論です。東京商工リサーチの集計で、2026年度上半期(4〜9月)の「物価高」倒産は436件でした。 前年同期より17.8%多く、4年連続の増加です。2022年度からの円安局面で、上半期としては最も多い件数とされています。

数字を細かく見ると、倒れているのは小さな会社です。資本金1千万円未満が279件で、全体の63.9%を占めます。一方で負債総額は908億600万円と前年同期より7.5%減り、負債10億円以上の大型倒産も22件から18件に減りました。件数は増えたのに金額は減った、というのは「小さな倒産が積み上がっている」ことを示しています。

しょくばログという会社データベースを運営していると、こうした小さな会社ほど外から見える情報が少ないことを日々感じます。この記事では、報道で確認できる数字を並べたうえで、台帳から見える小さな会社の姿と、取引先や働く人が確かめたいことを整理します。個別の会社を評価するものではありません。

出典:年度上半期の「物価高」倒産436件 小・零細規模を中心に、4年連続増加(東京商工リサーチ・2026年10月8日)

報道で確認できる数字

東京商工リサーチの発表から、数字をそのまま並べます。

ここでいう「物価高」倒産は、負債1,000万円以上の倒産のうち、仕入れや原材料、資源の値上がりを価格に転嫁できなかったことなどが原因とされたものです。東京商工リサーチは、値上げや価格交渉の力が弱い小・零細企業で転嫁が進まず、件数を押し上げていると分析しています。

台帳で見ると、小さな飲食系の会社は有限会社が多い

しょくばログの台帳(国税庁の法人番号データのうち、株式会社・有限会社・合同会社・合資会社・合名会社の約516万件。閉鎖済みを含む)で、規模の手がかりを見てみます。台帳には資本金の項目がないため、法人格を手がかりにしました。

台帳で今も存続している会社は446万963社です。内訳は株式会社が251万3,796社、有限会社が142万9,550社、合同会社が41万2,442社。有限会社は存続している会社の32.0% にあたります。

有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなったため、今ある有限会社はすべて設立から20年以上たっています。旧法では最低資本金が300万円で、小さな規模のまま長く続いている会社が多い形態です。有限会社の見方は有限会社に就職するのは不利なのかを整理した記事で詳しく書いています。

次に、社名に「食堂」「レストラン」「ラーメン」「居酒屋」「カフェ」「弁当」のいずれかを含む会社を数えました。台帳上は3,294社で、うち存続しているのは2,661社です。存続している2,661社のうち、有限会社は1,390社で52.2%。全体の32.0%と比べると、はっきり多い割合です。株式会社は909社(34.2%)、合同会社は187社(7.0%)でした。

ただし、これは社名で拾える一部にすぎません。飲食店を営む会社の多くは、社名に業態を入れていません。また、有限会社が多いことと倒産しやすいことの因果は、この数字からは言えません。言えるのは、社名に業態を掲げる小さな飲食系の会社は、長く続いてきた小規模な会社が中心だということです。東京商工リサーチが「サービス業他」の増加を挙げていることと合わせると、物価高の影響を受けやすい層の輪郭が少し見えてきます。

取引先が確かめたいこと

物価高倒産の多くは、急に業績が崩れるのではなく、値上げできない状態が続いて資金が細っていく形をとります。外から気づける手がかりを3つ挙げます。

1. 値上げの連絡が来ているか、来ていないか

仕入れ値が上がっている業界で、長く価格が据え置かれている取引先は、利益を削って耐えている可能性があります。値上げの相談を受けたら、それは関係を続けたいという合図でもあります。転嫁の状況を外から読む考え方は価格転嫁率が4割を割った話の記事にまとめました。

2. 支払条件の変更や、納期の乱れ

支払いサイトの延長を求められる、納品が遅れがちになる、といった変化は資金繰りの合図になりやすいものです。取引先の確かめ方は取引先の信用の調べ方と会社が実在するか・倒産していないかの確かめ方で説明しています。

3. 円安・人件費など、ほかの要因との重なり

物価高だけでなく、円安や人件費の上昇が重なると負担は一気に増えます。月ごとの数字の読み方は円安倒産の記事、人件費の負担については人手不足倒産の中身が変わった記事で取り上げました。

小さな会社で働く人が知っておきたいこと

勤め先の給与が遅れ始めたら、早めに記録を残しておくことが大切です。会社が倒産して給料が払われないときは、国の未払賃金立替払制度を使える場合があります。条件や流れは給料が遅れる会社の記事で説明しています。赤字が続く業種の傾向は赤字が3期続く業種の記事も参考になります。

運営者として思うこと

台帳を眺めていると、有限会社のまま何十年も続いてきた小さな飲食店の会社が、全国にたくさんあることに気づきます。こうした会社は、価格を上げるとお客さんが離れるのではないかという不安と、仕入れ値の上昇との間で板挟みになりやすい立場です。

436件という数字は、そうした会社の一部が耐えきれなくなった結果です。取引先や働く人にできるのは、値上げを「悪いこと」と見ずに、続けるための調整として受け止めること、そして変化の合図に早めに気づくことだと考えています。

よくある質問

「物価高」倒産とは何ですか?

東京商工リサーチの定義では、負債1,000万円以上の倒産のうち、仕入れや原材料・資源の値上がりを価格に転嫁できなかったことなどが原因とされたものです。上半期(4〜9月)は436件でした。

件数が増えたのに、負債総額が減ったのはなぜですか?

小さな会社の倒産が増え、大型の倒産が減ったためです。負債10億円以上は前年同期の22件から18件に減り、資本金1千万円未満の会社が全体の63.9%を占めました。

どの業種で多いのですか?

飲食店などを含む「サービス業他」が111件で、唯一100件台でした。前年同期より24.7%増えています。

しょくばログで会社の規模はわかりますか?

台帳には資本金や売上の項目はありません。法人格(株式会社・有限会社など)、所在地、登記の状態は確かめられます。規模の目安として、有限会社はすべて設立20年以上で、旧法の最低資本金は300万円だった、という点は手がかりになります。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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