✍ 古家あきら | 2026-10-12 更新

ゼロゼロ融資を受けた後の倒産、2026年度上半期は149件で3年続けて減少──それでも飲食店は20件。「食堂」「料理」の会社は有限会社が6割近い

先に結論です。東京商工リサーチ(TSR)の2026年10月8日の発表によると、2026年度上半期(4〜9月)に「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保の融資)を受けていたことが分かった倒産は149件でした。 前年同期より30.6%少なく、3年続けて前年を下回っています。9月は19件で、10件台は4年7か月ぶりです。

ただ、減ったから一安心という話でもありません。業種で見ると飲食店が20件と高い水準のままで、TSRは物価高が重なっていると書いています。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「取引先がゼロゼロ融資を受けていたか、調べる方法はないか」と聞かれることがあります。答えを先に言うと、外からは分かりません。この記事では、TSRの数字を押さえたうえで、うちの台帳で飲食の会社がどんな顔ぶれなのかを数え、外から見える手がかりを整理します。特定の会社を評価する記事ではありません。

出典:年度上半期の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 149件 物価高で「飲食店」が高水準、9月は4年7カ月ぶりに10件台(東京商工リサーチ・2026年10月8日)

TSRの発表で確認できる数字

TSRの記事に書かれている数字を並べます。集計の対象は、負債1,000万円以上の倒産のうち、ゼロゼロ融資を受けていたことが判明したものです。

149件のうち飲食店の20件は13.4%にあたります。全体が3割減るなかで、飲食店の件数は高いまま残った、という読み方になります。TSRは、日銀が2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げたことにも触れ、借り換えた後の利払いの負担を注視しています。

飲食業全体の倒産は、ラーメン店の倒産と年度上半期の飲食業514件を扱った記事で書きました。全業種の流れは、2026年9月の全国倒産831件の記事にまとめています。

ゼロゼロ融資を受けたかどうかは、外からは見えない

最初に、できないことをはっきりさせておきます。ある会社がゼロゼロ融資を受けたか、いくら借りて、返済がどこまで進んでいるかは、公開データでは分かりません。法人番号のデータにも、登記にも、その情報は載っていません。しょくばログでも表示していません。

倒産の報道で「ゼロゼロ融資を受けていた」と分かるのは、破産の手続きや取材の中で借入の中身が明らかになるからです。生きている会社について、外の人が同じことを知る方法はありません。

税金の滞納も、外から見えにくい点では同じです。どこまで確かめられるかは、税金滞納の倒産と公開データの記事で試しました。

しょくばログの台帳で、飲食の会社を数えた

そこで、うちの台帳で分かる範囲を数えました。台帳は国税庁の法人番号データがもとで、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の5種類は516万2社あります。

業種が「宿泊業、飲食サービス業」と判別できた会社は1万6,885社で、そのうち登記が閉鎖されているのは2,783社(16.5%)でした。台帳全体の閉鎖率13.5%より高めです。ただし台帳の業種は社名や公開情報から判別しているもので、5種類の会社の76.5%は業種を判別できていません。1万6,885社は飲食の会社の全数ではなく、「飲食と分かった会社」です。

飲食の会社は有限会社の割合が高い

閉鎖していない1万4,102社のうち、有限会社は6,390社で45.3%でした。台帳全体(閉鎖していない5種類の会社)では32.0%なので、13ポイントほど高くなっています。

社名で見ると、差はもっとはっきりします。閉鎖していない会社のうち有限会社の割合は次のとおりでした。

有限会社は、2006年の会社法の施行から新しく作れなくなりました。いま残っている有限会社は、それより前からある会社です。つまり、「食堂」「料理」の会社の6割近くは、コロナ禍よりずっと前から続いている会社だということになります。一方でカフェは株式会社や合同会社の割合が高く、比較的新しい会社が多いと読めます。

ここで勘違いしやすい点があります。有限会社だからゼロゼロ融資を受けている、という意味ではありません。言えるのは、長く続く小さな飲食の会社が多い業種で、コロナ禍に借り入れて、物価高のなかで返している会社が少なくないだろう、という背景までです。

閉鎖率は社名で差がある

登記が閉鎖されている割合は、「食堂」が1,098社のうち216社(19.7%)、「料理」が561社のうち107社(19.1%)、「焼肉」が203社のうち32社(15.8%)、「カフェ」「珈琲」が1,320社のうち188社(14.2%)でした。

閉鎖には、清算を終えた会社のほか、長く登記の動きがない会社を法務局が整理した「登記官による閉鎖」も含まれます。倒産の件数とは別物で、比べたり足したりはできません。倒産の数に表れない会社の終わり方は、倒産統計に映らない会社の終わり方の記事で詳しく書きました。

取引する人・働く人が確かめたい3つのこと

1. 法人番号と、登記の状態を見る

まずは相手の会社が実在し、登記が閉鎖されていないかを確かめます。店の名前と会社の名前が違うことは飲食ではよくあるので、運営している会社の法人番号を押さえておくと行き違いが減ります。似た社名の見分け方は類似商号の記事にまとめています。

2. 支払いの条件を、相手の規模に合わせる

TSRの数字では、ゼロゼロ融資を受けた後の倒産の63.0%が資本金1,000万円未満の会社です。小さな会社は手元のお金が薄く、利払いや仕入れ値が上がると、支払いが急に苦しくなります。食材や備品の納入で掛け売りが大きくなるときは、締めの回数を増やせないか相談してみてください。外から集められる手がかりは取引先の信用の調べ方で整理しています。黒字でも資金が回らなくなる仕組みは、黒字倒産の記事で書きました。

3. 働く人は、給料日と店舗の動きを気にかける

給料の支払いが遅れる、店舗がいくつも閉まる、仕入れ先が変わる、といった動きは、現場にいる人のほうが先に気づきます。応募の前なら、会社の評判やクチコミも見ておくと安心です。見方は会社の評判の調べ方にまとめました。

運営者として思うこと

ゼロゼロ融資の倒産は、件数だけ見れば山を越えつつあります。それでも、長く続いてきた小さな飲食の会社にとっては、借りたお金を返す時期と、食材や光熱費が上がった時期が重なっています。台帳の数字は、その背景を少し具体的にしてくれるだけで、どの会社が危ないかを教えてくれるものではありません。外から見えるのは法人番号と登記と公開情報までです。そこまでを確かめてから、条件の話をするのが現実的だと思います。

よくある質問

ゼロゼロ融資を受けた後の倒産は、増えているのですか?

TSRによると、2026年度上半期は149件で、前年同期から30.6%減りました。年度上半期では2023年の335件をピークに3年続けて減っています。ただし飲食店は20件と高い水準です。

取引先がゼロゼロ融資を受けたかどうか、調べる方法はありますか?

公開データではありません。法人番号のデータや登記には融資の情報が載っておらず、しょくばログでも分かりません。確かめられるのは、会社が実在するか、登記が閉鎖されていないか、といった範囲です。

有限会社の飲食店は危ないということですか?

そうではありません。有限会社は2006年より前からある会社というだけで、経営の状態とは関係ありません。長く続いてきたこと自体は、むしろ一つの手がかりです。

しょくばログで「閉鎖」と出ていなければ安心ですか?

登記が閉鎖されていないことは、会社が登記上残っているという意味です。資金繰りの状態までは分かりません。大きな取引の前には、相手から決算の数字を見せてもらえないか相談するのが確実です。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ