✍ 古家あきら | 2026-10-11 更新
2026年9月の全国倒産は831件、建設業は27.4%減──破産が90.7%、従業員10人未満が91.5%を占めた月に、社名の台帳から見える業種ごとの閉鎖率
先に結論です。東京商工リサーチ(TSR)の発表によると、2026年9月の全国の企業倒産は831件で、前年同月より4.8%少なくなりました。負債総額は1,088億8,400万円(同3.1%減)です。 件数が前年同月を下回るのは4カ月ぶりで、今年の月次では3番目に低い水準とされています。
ただ、件数が減ったことと、倒産の中身が軽くなったことは別の話です。同じ発表では、破産の構成比が90.7%と5カ月連続で9割台に乗り、従業員10人未満の小さな会社の構成比は91.5%と年間で最も高くなりました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の「終わり方」は業種によってかなり表情が違うと感じます。この記事では、TSRの発表で確認できる数字を整理したうえで、社名に「建設」「運送」「不動産」などの言葉を持つ法人の閉鎖率を、台帳で並べてみます。
出典:2026年9月の全国企業倒産831件(東京商工リサーチ・2026年10月8日)
発表で確認できる9月の数字
TSRの発表から、そのまま拾える数字を並べます。
- 倒産件数:831件(前年同月比4.8%減)
- 負債総額:1,088億8,400万円(同3.1%減)
- 破産の構成比:90.7%(5カ月連続で90%台)
- 負債1億円未満の構成比:77.3%
- 従業員10人未満の構成比:91.5%(年間最高)
- 負債100億円以上:3カ月連続で発生
- 九州:67件(前年同月比5.6%減、5カ月ぶりに前年を下回る)
産業別では、前年同月と比べて明暗が分かれました。
- 建設業:132件(27.4%減)
- 卸売業:89件(11.8%減)
- 製造業:97件(3.9%減)
- サービス業他:294件(1.3%増)
- 小売業:107件(9.1%増)
- 運輸業:38件(18.7%増)
- 不動産業:30件(15.3%増)
- 農・林・漁・鉱業:12件(33.3%増)
件数全体を押し下げたのは、建設業の大きな減少です。一方で、運輸・小売・不動産は増えています。全体の数字だけを見ていると、この偏りは見えません。
特殊要因の倒産は、増えたものと減ったものがある
TSRは、原因を絞った集計も出しています。
- 人手不足関連:34件(前年同月は48件)
- そのうち「人件費高騰」:18件(前年同月は15件)
- 物価高倒産:68件(前年同月は77件、2カ月連続で前年を下回る)
- ゼロゼロ融資を使った後の倒産:19件(前年同月は44件、9カ月連続で前年を下回る)
人手不足関連は全体では減っていますが、内訳の「人件費高騰」は増えています。求人難による倒産は9件でした。採用の難しさそのものより、人を雇い続けるコストが重くなる形の倒産が目立つ、と読めます。この点は人件費高騰が理由の倒産を扱った記事でも触れています。
「減った」月でも、小さな会社の厳しさは変わらない
従業員10人未満が91.5%、負債1億円未満が77.3%、破産が90.7%。この3つを重ねると、9月の倒産の典型像は「小規模で、負債が1億円に届かず、再建ではなく破産で終わる会社」です。
こうした会社は、大きな債権者がいない代わりに、取引先や従業員への影響が表に出にくい面があります。倒産件数が前年を下回ったというニュースだけで「落ち着いてきた」と判断すると、身近な取引先の変化を見落としかねません。件数の見方については倒産件数が調べる先によって違う理由の記事で整理しています。
しょくばログの台帳で見る、業種語を含む社名の閉鎖率
ここからは、しょくばログ独自の数字です。国税庁の法人番号データをもとにした台帳のうち、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の5種類(516万社)を対象に、社名に業種語を含む法人を数えました。閉鎖済みは、台帳に登記の閉鎖が記録されている法人です。5種類全体の閉鎖率は13.5%です。
- 社名に「建設」を含む:92,323社、閉鎖済み14,820社(16.1%)
- 社名に「運送」を含む:10,846社、閉鎖済み1,374社(12.7%)
- 社名に「不動産」を含む:30,989社、閉鎖済み3,893社(12.6%)
- 社名に「商店」を含む:81,178社、閉鎖済み12,864社(15.8%)
- 社名に「製作所」を含む:43,855社、閉鎖済み7,815社(17.8%)
- 社名に「商事」を含む:106,383社、閉鎖済み15,221社(14.3%)
閉鎖率がもっとも高いのは「製作所」の17.8%、次いで「建設」の16.1%です。全体の13.5%を上回ります。一方、「運送」と「不動産」は全体並みか、わずかに下回ります。
もう一つ、会社の形にも違いがあります。「建設」を含む社名のうち有限会社は38,910社で、全体の42.1%です。「製作所」では24,836社(56.6%)、「運送」では5,604社(51.7%)を有限会社が占めます。有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなった形なので、これらの業種は古くから続く会社が多いと読めます。
注意点が二つあります。まず、社名に言葉を含むかどうかで業種を分けているので、実際の事業とずれる会社が含まれます。次に、閉鎖の数は過去から積み上がった累計で、休眠会社の一斉整理で閉鎖された会社も含みます。「9月に閉鎖が増えた」という意味ではなく、いまの台帳を切り取ったときの割合です。月次の倒産件数と直接つないで読むものではありません。
月次の倒産ニュースを仕事に活かすには
運営者の立場から、一般化して3つにまとめます。
1. 全体の件数より「自分の業種」の欄を見る
9月は建設業が27.4%減った一方、運輸業は18.7%増えました。同じ月でも業種で逆の動きになります。取引先の多い業種の欄だけでも毎月確認しておくと、変化に気づきやすくなります。
2. 小さな取引先ほど、法人番号で実体を確かめる
倒産の9割以上が従業員10人未満の会社です。社名だけで確認すると、似た名前の別法人と取り違えることがあります。法人番号で会社を確かめる方法を使えば、所在地と法人の種類まで一度で照らせます。
3. 台帳の「存続」は、動いている証明ではない
破産を申請しても、手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは、台帳上は存続のまま残ります。取引先の状態を見るときは、台帳に加えて取引先の信用の調べ方にある支払い状況や決算の出し方も合わせて確認してください。
運営者として思うこと
件数が前年を下回るたびに「倒産は落ち着いた」という見出しが出ますが、中身を見ると、小さな会社が破産で終わる構図は変わっていません。ニュースは月ごとに動いても、台帳に積み上がる閉鎖の割合は、業種ごとにゆっくり違いが出ています。
数字は、読む人の立場で意味が変わります。発注側なら取引先の確認に、働く側なら勤め先の業種の傾向をつかむ手がかりに使えます。どちらの場合も、発表された数字を出発点にして、自分に関係のある会社の実体を確かめる習慣が役に立ちます。
よくある質問
2026年9月の倒産は、前年より減ったのですか?
TSRの発表では、831件で前年同月比4.8%減です。負債総額も1,088億8,400万円で、同3.1%減でした。件数が前年同月を下回るのは4カ月ぶりです。
建設業の倒産が減ったのはなぜですか?
9月は132件で27.4%減でした。発表の数字から減少の理由までは確認できません。1カ月の増減には月ごとのばらつきがあるため、単月の数字だけで傾向を断定するのは避けたほうが安全です。
社名に「建設」を含む会社は、何%が閉鎖していますか?
しょくばログの台帳では、92,323社のうち14,820社(16.1%)が閉鎖済みです。5種類の会社全体の13.5%より高い割合ですが、過去からの累計で、年ごとの動きを示すものではありません。
台帳で「存続」になっている会社は安全ですか?
安全とは言えません。破産を申請しても、手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは、データ上は存続のままです。取引先の状態は、支払い状況や公式の情報とあわせて確認してください。