✍ 古家あきら | 2026-10-10 更新
「ラーメン店」の倒産が46.4%増の41件。飲食業は年度上半期で初の500件超。社名に「ラーメン」を持つ383法人をしょくばログDBで見る
先に結論です。東京商工リサーチが2026年10月8日に公表した集計で、2026年度上半期(4〜9月)の「ラーメン店」の倒産は41件、前年同期比46.4%増でした。 飲食業のなかで増加率がもっとも高い業種です。飲食業全体の倒産は514件(同3.4%増)で、年度上半期としては1997年以降の30年間で最多、初めて500件を超えました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、ラーメン店ほど「店の名前」と「会社の名前」がつながらない業種は少ないと感じます。この記事では公表された数字を押さえたうえで、台帳で社名に「ラーメン」を持つ法人を数え、働く人や取引先が店の運営会社を確かめる手順を書きます。特定のお店や会社を評価する記事ではありません。
出典:「ラーメン店」の倒産 飲食業界ワーストの46.4%増(東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2026年10月8日)
出典:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203322_1527.html
公表された数字を整理する
東京商工リサーチの集計(負債1,000万円以上の倒産が対象)から、確かめられる数字だけを並べます。
- 飲食業の倒産:514件(前年同期比3.4%増)。年度上半期では30年間で最多
- 業種別:「食堂,レストラン」110件(27.9%増)、「居酒屋(酒場,ビヤホール)」96件(15.6%増)、「ラーメン店」41件(46.4%増)、「喫茶店」35件(12.9%増)、「中華料理店」16件(33.3%増)
- 要因:「物価高」倒産が79件(23.4%増)、「人手不足」倒産が41件(57.6%増)
- 原因別:最多は「販売不振」の424件で、構成比82.4%
- 形態別:「破産」が484件で94.1%。民事再生法は22件と前年の2倍
- 資本金別:1千万円未満が460件で89.4%
- 負債額別:1億円未満が456件で88.7%
件数でいえばラーメン店は41件で、食堂・レストランや居酒屋より少ない数です。それでも増え方が飲食業のなかでいちばん急でした。また、倒産の9割近くが資本金1千万円未満・負債1億円未満の小さな会社だという点も、この集計の大事なところです。
切り口:なぜラーメン店は増え方が急なのか
東京商工リサーチは、小さな飲食店ほどインバウンド需要が届かず、食材・光熱費・人件費の上昇が負担になっていると説明しています。そのうえで、値上げが客離れにつながるため価格転嫁が難しいとしています。
ここから、ラーメン店にあてはまりやすい事情を3つに分けて考えます。以下は公表内容をふまえた一般的な整理で、個別の店の事情を示すものではありません。
1. 「一杯の値段」に見えない線がある
ラーメンは、お客さんの頭の中に「このくらいの値段」という相場がある食べ物です。小麦、豚骨や鶏ガラ、チャーシュー、光熱費はスープを長時間炊く店ほど効きます。原価が上がっても、価格を上げにくい。東京商工リサーチの言う「価格転嫁の難しさ」が、いちばん出やすい業態だと読めます。
2. 少人数の店は、1人欠けると回らない
人手不足倒産が飲食業で57.6%増えたことも見逃せません。厨房とホールを数人で回す店は、1人抜けると営業時間を縮めるしかありません。売上が下がっても、家賃と仕込みの手間はほとんど減りません。
3. 開業しやすい分、競争も激しい
ラーメン店は個人でも始めやすい業態です。そのため出店が多く、同じ商圏に似た店が並びます。東京商工リサーチは、10月以降の最低賃金の引き上げと、来年4月からの消費減税の影響も含めて動向が注目されるとしています。
しょくばログDBで見る「ラーメン」を社名に持つ法人
ここからは、しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データを元にした約575万法人)での集計です。社名に語を含む法人を数え、登記上の閉鎖の有無を見ました。
- 社名に「ラーメン」を含む法人:306法人。うち閉鎖済み55法人で、閉鎖率18.0%
- 「ラーメン」「らーめん」「拉麺」「中華そば」「らあめん」のいずれかを含む法人:383法人。閉鎖済み66法人で、閉鎖率17.2%
- 台帳全体の閉鎖率(同じ条件):13.3%
383法人のうち活動中は317法人です。その内訳は有限会社が166法人(52.4%)、株式会社が117法人(36.9%)、合同会社が19法人(6.0%)でした。台帳全体の活動中法人では有限会社は28.6%なので、ラーメン系の社名を持つ会社は有限会社の割合が全体の約1.8倍です。2006年の会社法施行より前に法人化して、そのまま続いてきた店が多い姿が見えます。
活動中の所在地は、東京都44法人、神奈川県28法人、北海道21法人、福岡県17法人、大阪府14法人の順でした。閉鎖した66法人の閉じ方は、清算の結了等が46法人(69.7%)、登記官による閉鎖が14法人(21.2%)、合併が6法人(9.1%)です。
読むときの注意が2点あります。まず、閉鎖には倒産だけでなく、廃業や合併、休眠会社の整理も含まれます。閉鎖率は倒産率ではありません。もう1つは、全国のラーメン店の数に比べて、社名に「ラーメン」を含む法人はごく一部だという点です。多くの店は、屋号(店の名前)とは別の社名の会社や個人事業で運営されています。社名で探すだけでは、店の運営会社にはたどり着けません。
働く人・取引先が、店の運営会社を確かめる手順
ラーメン店で働こうとしている人や、食材・設備を納める取引先が確かめたい点を挙げます。
- 求人票や店のサイトの「会社概要」「特定商取引法に基づく表記」から、運営会社の正式名称を確かめる
- 正式名称と所在地で法人番号を検索し、商号や所在地の変更履歴を見る
- 複数店舗を出している場合は、店ごとに運営会社が違わないか確かめる(フランチャイズ加盟店は別会社のことが多い)
- 給与の支払い遅れ、急な営業時間の短縮、支払条件の変更が出たら、日付と内容を記録しておく
屋号から会社を探す具体的な方法は 店名やサイト名から運営会社を調べる方法 にまとめています。倒産していないかの確認は 会社の実在と倒産を確かめる方法 が入口になります。
関連する直近の動き
居酒屋の倒産は2026年1〜9月で167件と過去最多でした(居酒屋の倒産が過去最多の167件)。ラーメンに欠かせない製麺の会社では、八戸市の老舗が事業を止めています(阿部製麺所の事業停止と製麺法人のデータ)。人手不足倒産全体の動きは 年度上半期の人手不足倒産240件 で扱いました。倒産件数が調査会社で違う理由は 倒産件数が調査会社ごとに違う理由 を参照してください。
よくある質問
ラーメン店の倒産41件は、全国のラーメン店のどのくらいですか
東京商工リサーチの集計は負債1,000万円以上の倒産だけが対象です。負債の小さい倒産や、倒産の手続きをとらない廃業は含まれません。そのため、閉じたラーメン店の総数はこの41件より多いと考えるのが自然です。
社名に「ラーメン」がない会社が運営する店は、どう調べればいいですか
求人票や店のサイトに載っている運営会社名を手がかりにします。サイトに会社名がない場合は、特定商取引法に基づく表記や、通販・予約ページの事業者名を見ると見つかることがあります。
閉鎖率17.2%は、ラーメン業界が危ないということですか
いいえ。閉鎖には廃業や合併、休眠会社の整理も含まれ、倒産率ではありません。有限会社が多く、創業者の引退で店を閉じる例も含まれていると考えられます。
働いている店の運営会社が倒産したら、給料はどうなりますか
未払いの給料は、条件を満たせば国の未払賃金立替払制度で一部が立て替えられることがあります。勤務の記録や給与明細を手元に残し、労働基準監督署に相談してください。
まとめ
2026年度上半期のラーメン店の倒産は41件、前年同期比46.4%増と、飲食業のなかで増え方がもっとも急でした。飲食業全体も514件で30年間の最多です。物価高と人手不足に加え、値上げしにくい価格帯が重なっていると読めます。
しょくばログの台帳では、社名に「ラーメン」などを含む法人は383法人で、有限会社が半分を超えます。ただ、多くの店は屋号と違う社名の会社が運営しています。気になる店があれば、まず運営会社の正式名称を確かめ、法人番号から履歴を見てみてください。