✍ 古家あきら | 2026-10-07 更新
「居酒屋」倒産が1〜9月で167件、1989年以降で最多──9割が従業員5人未満。しょくばログDBで社名に「居酒屋」「酒場」を持つ会社191社を数えると、閉鎖率19.4%・稼働中の半分近くが有限会社
先に結論です。東京商工リサーチの集計で、2026年1〜9月の「居酒屋」の倒産(負債1,000万円以上)は167件となり、前年同期の126件から32.5%増えました。1〜9月としては1989年以降で最多です。 倒産した居酒屋の9割(151件)は従業員5人未満で、原因の9割(150件)は販売不振でした。年間で初めて200件を超える可能性にも触れられています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、こうした集計が出たあとに「行きつけの店、取引先の店は大丈夫か」と調べる人が増えます。ただ、居酒屋は会社の名前と店の名前が違うことがほとんどで、社名から探すのが難しい業態です。そこで、しょくばログの法人データで社名に「居酒屋」「酒場」などを含む会社を数えると191社、そのうち登記が閉鎖されているのは37社(19.4%)でした。
この記事は特定の店や会社を評価するものではありません。一次資料の数字を整理したうえで、台帳から見える居酒屋の会社の姿と、働く人・取引する人が確かめたい点を書きます。
出典:東京商工リサーチ「『居酒屋』倒産が過去最多、初の年間200件超も ~ コスト増と価格競争、消費税減税で増加懸念 ~」(2026年10月6日)
一次資料で確認できる数字
東京商工リサーチが集計対象にしているのは、「居酒屋(酒場・ビヤホール)」の倒産で、負債1,000万円以上のものです。記事で示されている数字は次のとおりです。
- 2026年1〜9月:167件(前年同期比32.5%増)。1〜9月としては1989年以降で最多
- 2025年1〜9月:126件
- 2019年1〜9月(コロナ前):98件
- 原因別:販売不振が150件(構成比89.8%)
- 従業員規模別:5人未満が151件(構成比90.4%)
年間の推移も添えられています。コロナ禍の2020年は174件まで増え、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」などで2022年は120件まで減りました。その後、資金繰り支援が段階的に終わり、物価高が進んだことで、2024年は過去最多の185件になっています。
背景として挙げられているのは、食材や酒類の値上げに加えて、人件費や家賃も上がっていることです。コストを吸収する余力の乏しい小さな店が苦しくなっている、という整理です。
「年間200件超」と消費税の話
東京商工リサーチは、このままのペースなら年間で初めて200件を超える可能性があるとしています。9か月で167件なので、残り3か月で34件あれば超える計算です。
もう一つ懸念として書かれているのが、2027年4月から2年間に限って行われる飲食料品の消費税の引き下げです。記事によると、店内での飲食は10%のまま、食料品やテイクアウトは8%から1%に下がります。持ち帰りに対応できる店は差を埋める手がありますが、小さな居酒屋にとってテイクアウトは、ノウハウ、人手、設備投資のどれをとっても簡単ではない、という指摘です。
消費税の引き下げで、どの業種の会社がどれくらい影響を受けるかは、飲食料品の消費税引き下げを法人データで数えた記事で詳しく書いています。
しょくばログの台帳で見る「居酒屋の会社」
しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号公表サイトの全件をもとにしたもの)から、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社のうち、社名に「居酒屋」「酒場」「ビヤホール」「ビアホール」「立呑」「立ち飲み」などを含む会社を数えました。
- 該当は191社。うち登記が閉鎖されているのは37社で、閉鎖率は19.4%。同じ5種類の会社全体の閉鎖率13.5%より5.9ポイント高い
- 語ごとに見ると、「居酒屋」は104社で閉鎖率26.9%、「酒場」は75社で9.3%
- 閉じ方は「清算の結了等」22社、「登記官による閉鎖」14社、「合併による解散等」1社
- 稼働中は154社。都道府県別では東京都41社、北海道17社、神奈川県16社、山口県10社の順
数がとても少ないことに気づくと思います。居酒屋を営む会社の大半は、社名に「居酒屋」を入れていません。店名と社名が別だったり、個人事業として営業していたりするからです。この191社は居酒屋業界全体ではなく、「社名から業態がわかる会社」だけを数えたものとして読んでください。
なお、9月に公開した8月の飲食業倒産の記事では、「炉端」「串」なども含めて広く数えたため、居酒屋・酒場の法人は801件、閉鎖率15.1%でした。拾う言葉の範囲を変えると、数も率も動きます。閉鎖率は「その業態が危ない」という証拠ではなく、一つの断面として見るのが正確です。
稼働中の半分近くが有限会社
台帳で目立つのは、会社の種類です。稼働中の154社の内訳は次のとおりでした。
- 有限会社:72社(46.8%)
- 株式会社:45社
- 合同会社:21社
- 合資会社:14社
- 合名会社:2社
同じ5種類の会社全体では、稼働中に占める有限会社の割合は32.0%です。社名に「居酒屋」「酒場」を持つ会社では、それより15ポイント近く高くなっています。有限会社は2006年の会社法の施行以降、新しく作れなくなりました。つまり稼働中の半分近くが、少なくとも20年近く続いてきた会社ということになります。合名会社・合資会社も合わせて16社あり、古くからの家業として続く店が多い業態だとわかります。
業歴が長いことは信用の材料になる一方で、経営者の高齢化や後継ぎの問題を抱えやすい面もあります。今回の集計で倒産の大半を占めたのは5人未満の店でした。小さな店ほど、店主一人の体調や判断で営業が左右されます。
居酒屋で働く人・取引する人が確かめたいこと
1. 店の名前ではなく、運営している会社を確かめる
働く先や取引先として居酒屋を見るときは、店名ではなく運営会社の名前と13桁の法人番号を確かめてください。店名から運営会社を探す方法は店名・サイト名から運営会社を調べる記事に、法人番号の調べ方は法人番号の調べ方の記事にまとめています。
2. 値上げや営業時間の変化を「材料」として見る
メニューの値上げ自体は悪い兆しとは限りません。コストを価格に乗せられている証拠でもあるからです。気にしたいのは、急な営業日・営業時間の短縮や、人手が足りず席を減らしている状態が続くことです。
3. 給与の遅れは記録を残す
倒産の前には、給与の支払いが遅れたり、分割になったりすることがあります。働いている側なら、給与明細や連絡のやりとりを残しておくと、未払い賃金の立替払い制度を使うときの助けになります。手順は給料が遅れる会社の記事に書いています。
4. 深夜営業の届出が出ているか
深夜0時以降にお酒を出す店は、飲食店営業の許可とは別に、公安委員会への届出が必要です。法令を守って営業しているかを見る一つの手がかりになります。詳しくは深夜酒類提供飲食店営業の届出の記事を見てください。
よくある質問
Q. 居酒屋の倒産はなぜ増えているのですか。
東京商工リサーチは、食材や酒類の値上げに加え、人件費や家賃も上がり、コストを吸収する余力の乏しい小さな店が苦しくなっていることを挙げています。原因の89.8%は販売不振でした。
Q. 167件には、負債の小さな店も含まれますか。
東京商工リサーチの集計は負債1,000万円以上の倒産が対象です。それより小さい規模の閉店や、倒産の手続きをとらずに廃業した店は含まれていません。実際に店を閉じた数は、この件数より多いと考えるのが自然です。
Q. 社名に「居酒屋」がある会社の閉鎖率26.9%は高すぎませんか。
対象は104社と少なく、数社の違いで率が大きく動きます。また、登記の閉鎖には、清算を終えた会社のほか、長く登記の動きがない会社を登記官が整理したものも含まれます。この数字だけで「居酒屋は閉じやすい」とは言えません。
Q. 消費税の引き下げで、居酒屋の売上は減るのですか。
引き下げの対象は食料品やテイクアウトで、店内での飲食は10%のままです。スーパーやコンビニで買って家で飲む人との価格差が広がるため、店内飲食が中心の店には逆風になりうる、というのが東京商工リサーチの見方です。どの程度の影響になるかは、まだ実績がありません。
まとめ
2026年1〜9月の「居酒屋」倒産は167件で、1〜9月としては1989年以降で最多でした。9割が従業員5人未満、9割が販売不振によるもので、年間で初めて200件を超える可能性も指摘されています(数字は東京商工リサーチ、2026年10月6日公表)。
しょくばログの台帳で社名に「居酒屋」「酒場」などを持つ会社191社を見ると、閉鎖率は19.4%、稼働中の46.8%が有限会社でした。長く続いてきた小さな会社が多い業態です。働く先や取引先を確かめるときは、店名ではなく運営会社と法人番号で照らし合わせてください。取引先の確かめ方全般は、取引先の調べ方の記事にまとめています。