✍ 古家あきら | 2026-10-04 更新
深夜酒類提供飲食店営業の届出とは — 営業許可との違いと、届出が要る時間。全国25万8,163件、会社サイト31,159社で書いていたのは0社
先に結論です。深夜0時を過ぎてお酒を出すバーや居酒屋は、「飲食店営業許可」に加えて「深夜における酒類提供飲食店営業の届出」が必要です。 許可は保健所、届出は警察署で、出す先も根拠の法律も違います。
- 何の届出か:風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)33条の届出です。酒類を出す飲食店を「深夜」、つまり午前0時から午前6時までの間に営むときに出します
- どこへ、いつまでに:営業所ごとに、所在地を管轄する公安委員会へ出します。窓口は管轄の警察署の生活安全課です。期限は、深夜の営業を始める日の10日前までです(施行規則103条)
- 要らない店:お酒を出していても、ふだんから主食になる食事を出している店(ラーメン店や定食屋など)は、この届出の対象から外れます。ただし深夜に営業する飲食店としての決まりは別にあります
- 外から確かめる方法は乏しい:届出をした店の一覧を公表する仕組みは、確認した範囲では見つかりませんでした。許可証のような掲示の義務も、条文にはありません
しょくばログという会社データベースを運営していると、飲食店を営む会社のサイトをよく読みます。営業時間に「翌2:00」「26:00」と書いている店は珍しくありません。一方で、深夜営業の届出に触れているサイトは、数えてみると1社もありませんでした。この記事では、条文と警察庁の統計で制度を整理し、会社データとサイトの記載から見えたことを数字で出します。
深夜酒類提供飲食店営業とは何か
法律上の定義
風営法2条13項4号は、「飲食店営業」を、食品衛生法55条1項の許可を受けて、設備を設けて客に飲食をさせる営業と定めています。そのうち「バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業」を「酒類提供飲食店営業」と呼びます。ここから、営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものが除かれます。
この酒類提供飲食店営業を「深夜」に営もうとする人が、33条の届出をします。深夜とは、風営法13条1項で「午前零時から午前六時までの時間」と決められています。
まとめると、届出が要るのは次の3つがそろったときです。
- 食品衛生法の飲食店営業許可を受けた店であること
- 客にお酒を出し、ふだんの営業で主食を出す店ではないこと
- 午前0時から午前6時までの間に営業すること
「24時閉店」は深夜に入るのか
条文の読み方としては、深夜は午前0時から始まります。営業時間の終わりが「24:00」なら、深夜に入る前に店を閉めていることになります。反対に「25:00」「翌1:00」と書く店は、深夜に営業しています。
境目にある店や、閉店後も客が残る運営をしている店は、自分で判断せずに管轄の警察署へ聞くのが確実です。
「主食を出す店」は届出が要らない
ラーメン店や牛丼店、定食屋が深夜にビールを出していても、ふだんの営業で主食を出している店は「酒類提供飲食店営業」に当たりません。何が「通常主食と認められる食事」かは、最終的に警察の判断です。お茶漬けやおにぎりを少し置いただけで主食の店になるかどうかは、この記事では断定しません。
ただし、届出が要らない店でも、深夜に飲食店を営む以上、風営法32条の決まりは守ります。これは後で説明します。
飲食店営業許可との違い
2つは別の手続き
飲食店を開くときにまず要るのは、保健所の飲食店営業許可です(食品衛生法55条)。深夜酒類提供飲食店営業の届出は、その許可を受けた店が、深夜にお酒を出すために追加で警察へ出すものです。定義の時点で「食品衛生法の許可を受けて営むもの」とされているので、営業許可のない店が届出だけで営業することはできません。
営業許可の確かめ方は、飲食店の営業許可を確認する方法で整理しています。
違いを並べると
- 根拠の法律:営業許可は食品衛生法、深夜酒類の届出は風営法
- 出す先:営業許可は保健所、届出は公安委員会(窓口は警察署の生活安全課)
- 性質:営業許可は「許可」で、基準を満たさないと出ません。届出は「届出」で、許可のような審査を経て許可証が出るものではありません
- 単位:どちらも営業所(店舗)ごと
- 期限:届出は深夜の営業を始める日の10日前まで(施行規則103条3項)
「接待」をする店は届出ではなく許可
客の横に座ってお酌をするような「接待」をして飲食させる店は、風営法2条1項1号の風俗営業です。これは届出ではなく公安委員会の許可が要ります(3条)。さらに風俗営業は、条例で特別に認められた地域などを除いて、深夜は営業できません(13条1項)。
つまり「深夜までお酒を出す店」でも、接待をするかどうかで、必要な手続きも、深夜に営業できるかどうかも変わります。無許可で風俗営業を営むと、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、または両方です(49条1号)。
届出の手続き
届出書に書くこと
33条1項が定める届出書の記載事項は3つです。
- 氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名
- 営業所の名称と所在地
- 営業所の構造と設備の概要
届出書の様式は施行規則の別記様式第47号、添付する「営業の方法を記載した書類」は別記様式第48号です(施行規則103条)。
愛知県警察の案内では、届出書と営業の方法の書面のほか、営業所の平面図、住民票の写しが要り、法人の場合は定款、登記事項証明書、役員の住民票も出します。群馬県警察は、届出の手数料は無料と案内しています。
店や名前が変わったら
届出をした人は、営業をやめたとき、または名称・住所・代表者、営業所の名称、構造・設備の概要が変わったときにも届け出ます(33条2項)。施行規則104条が準用する42条2項により、期限は廃止・変更の日から10日以内です。
営業できない場所がある
都道府県は、条例で地域を決めて、深夜の酒類提供飲食店営業を禁止できます(33条4項)。住居系の用途地域が対象になるのが一般的ですが、範囲は都道府県で違います。
- 愛知県:第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域
- 群馬県:第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域
愛知県の案内には準住居地域が入っておらず、群馬県の案内には入っています。物件を決める前に、その都道府県の警察の案内で確認する必要があります。
届出をせずに深夜営業すると
届出をしないで深夜に酒類提供飲食店営業をすると、50万円以下の罰金です(55条6号)。届出書や添付書類にうその記載をした場合も同じです。
届出をした店が守る決まり
店の構造の基準
深夜に飲食店を営む人は、営業所の構造と設備を国家公安委員会規則の基準に合うように保ちます(32条1項)。基準は施行規則99条にあります。
- 客室1室の床面積は9.5平方メートル以上(客室が1室だけなら除く)
- 客室の中に見通しを妨げる設備を置かない
- 客室の出入口に鍵をかける設備を付けない(店の外に直接通じる出入口は除く)
- 店内の明るさが20ルクス以下にならないようにする(施行規則101条)
- 騒音や振動を条例の数値より下に保つ
18歳未満と20歳未満の扱い
32条3項は、22条1項の禁止事項の一部を飲食店営業に準用しています。お酒を出す深夜営業の店に関係するのは、主に次の点です。
- 午後10時から翌朝6時まで、18歳未満の人を客として入れない(保護者が一緒の場合は除く)
- 午後10時から翌朝6時まで、18歳未満の人を客に接する業務につかせない
- 20歳未満の人にお酒やたばこを出さない
働く側から見ると、高校生のアルバイトを夜10時以降にホールに立たせる店は、この決まりに引っかかるおそれがあります。求人を見るときの目安にもなります。
違反したときの処分
公安委員会は、法令違反があった店に「指示」を出し、さらに6か月以内の営業停止を命じることができます(34条)。停止命令に違反すると、2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金、または両方です(50条3号)。
全国の届出は25万8,163件、5年でほぼ横ばい
警察庁「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」によると、深夜酒類提供飲食店営業の届出数(営業所数)は次のとおりです。
- 2021年末:261,149件
- 2022年末:260,730件
- 2023年末:257,930件
- 2024年末:256,728件
- 2025年末:258,163件(前年より1,435件、0.6%増)
5年前と比べると2,986件、率にして1.1%少ない水準です。コロナ禍の時期をはさんでも、届出の数はほとんど動いていません。比べると、ナイトクラブなどの特定遊興飲食店営業の許可は592件(2025年末)で、深夜酒類の届出はその400倍を超えます。
同じ資料の「風俗営業者等に対する行政処分件数」では、深夜酒類提供飲食店営業への処分が2025年に654件ありました。2021年526件、2022年682件、2023年775件、2024年753件と推移しています。風俗営業者等への処分の総数3,693件(2025年)のうち、およそ18%が深夜酒類の店です。
会社のサイトでは、深夜営業の届出はどう見えるか
しょくばログは、会社の公式サイトのテキストを保存しています。2026年10月4日時点で、文字化けの少ない31,159社分を集計しました。
「深夜酒類提供」に触れていた会社は0社
31,159社のサイトで、「深夜酒類提供」「深夜における酒類提供」「深夜酒類」のどれかを含む会社は0社でした。業種コードが宿泊業・飲食サービス業(JSIC M)の会社に絞った807社でも0社です。
届出には掲示の義務がないので、書かれていないのは法律違反ではありません。ただ、外から「届出済みか」を確かめる手がかりが、会社のサイトにはほぼ無いということです。
0時を過ぎる営業時間を書く会社は目視で9社
JSIC M の807社のうち、お酒に関する言葉と、0時以降の時刻(「翌2:00」「25:00」「26:00」など)を営業時間の近くに書いている会社を機械で拾い、20社を目で確かめました。
- 酒類を出す店で、0時を過ぎる営業時間を書いていた会社:9社(店舗の営業時間として7社、求人の勤務時間として2社)
- 閉店が「24:00」や「翌0:00」ちょうどの会社:4社。条文の読み方では深夜に入る前に閉める店です
- 残り:24時間営業のコンビニや、ホテルの設備の説明、「深夜営業の店はつくらない」と書く会社などで、深夜の酒類提供とは関係ありませんでした
9社のうち、営業時間の最後は「翌5:00」「翌6:00」までありました。それでも、9社とも届出には触れていません。
風営法に触れるサイトも13社
31,159社全体で「風営法」「風俗営業の許可」などの言葉を含む会社は13社(0.04%)でした。飲食店の会社に限らず、法律の話題そのものが会社サイトにはほとんど出てきません。
法人データで見る「居酒屋」「スナック」の会社
しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号データをもとにしたもの)で、社名に「居酒屋」「スナック」を含む会社(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)を数えました。
- 社名に「居酒屋」:104社。閉鎖は28社(26.9%)で、会社全体の閉鎖率13.5%の約2倍です。現存76社のうち有限会社が54社(71.1%)でした
- 社名に「スナック」:54社。閉鎖は10社(18.5%)。現存44社のうち有限会社23社(52.3%)、株式会社18社(40.9%)でした
会社全体の現存446万社に占める有限会社は32.0%なので、どちらも有限会社が多めです。2006年より前に設立され、そのまま続いている会社が多いことがうかがえます。有限会社の意味は有限会社に就職するのは不利なのかで書いています。
一方で、届出は全国で25万件を超えます。社名に「居酒屋」「スナック」が入る現存の会社は合わせて120社にすぎません。深夜にお酒を出す店の多くは、個人事業か、店名とは違う社名の会社が運営しているということです。店名から運営会社を追う方法は店名・サイト名から運営会社を調べる方法、個人か法人かの見分け方は取引先が個人事業主か法人かを見分ける方法にまとめています。
深夜営業の店を調べるとき・働くときに見ておきたいこと
届出の有無を確かめたいとき
届出をした店の一覧を公表している例は、確認した範囲では見つかりませんでした。条文にも、届出を受けた証明書を交付する定めや、店内に掲示する義務はありません。外から確かめる方法は限られるので、取引先として必要なら、店側に届出書の控えを見せてもらうのが現実的です。
会社の許認可全般を確かめる考え方は、会社の許認可を調べる方法で整理しています。お酒を売る(小売・卸)側の免許は、深夜酒類の届出とは別物で、酒類販売業免許を調べる方法で扱っています。
求人に応募するとき
深夜営業の店で働くときは、次の点を見ておくと判断しやすくなります。
- 営業時間の終わりが0時を過ぎているか。過ぎていれば、店は届出をして営業しているはずです
- 18歳未満の場合、午後10時以降に客に接する仕事はできません。夜の時間帯を当然のように求める求人は注意が必要です
- 接客の内容が「接待」に当たる店(客の横に座る、一緒にお酒を飲むなど)は、風俗営業の許可が要る別の業態です。求人の仕事内容に書かれた接客のしかたを確かめてください
飲食業界の倒産の動きは、8月の飲食業倒産が30年で最多の80件で取り上げています。
よくある質問
深夜酒類提供飲食店営業は「許可」ですか、「届出」ですか?
「届出」です。風営法33条1項により、営業所ごとに公安委員会へ届出書を出します。窓口は管轄の警察署の生活安全課です。前提として、保健所の飲食店営業許可(食品衛生法)を受けている必要があります。
何時から届出が必要になりますか?
午前0時から午前6時までの「深夜」にお酒を出して営業する場合です(風営法13条1項・33条1項)。営業時間の終わりが24:00ちょうどなら、条文上は深夜に入る前に閉めています。境目の運営をする店は、管轄の警察署に確認してください。
居酒屋でも届出は要りますか?
0時以降も営業してお酒を出すなら、原則として要ります。ただし、ふだんの営業で主食になる食事を出している店は、酒類提供飲食店営業から外れます(風営法2条13項4号)。どこまでが主食の店かは警察の判断なので、迷ったら相談するのが確実です。
届出はいつまでに出しますか?
深夜の営業を始める日の10日前までです(施行規則103条3項)。営業をやめたときや、名称・営業所の構造などが変わったときは、10日以内に届け出ます。
届出をしたかどうかは外から分かりますか?
分かりにくいのが実情です。届出をした店の一覧の公表は確認した範囲では見つからず、店内に掲示する義務もありません。しょくばログが保存する会社サイト31,159社でも、届出に触れていた会社は0社でした。
データについて
- 会社サイトの集計:しょくばログが保存している会社の公式サイトのテキストのうち、文字化けの多いもの(置換文字が0.5%を超えるもの)を除いた31,159社を、2026年10月4日に集計しました。0時以降の営業時間は機械で拾った20社を目で確かめて分類しました。会社名は出していません
- 法人データ:国税庁の法人番号公表データをもとにした、しょくばログの会社データベース(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の約516万社)です。業種コード(JSIC)は、しょくばログが付与したものです
- 全国の届出数・行政処分:警察庁生活安全局保安課「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」(令和8年4月、https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/080423huzokukankeitoukei.pdf)の数字です。5年間の増減率と、処分総数に占める割合は、しょくばログが計算した値です
- 条文:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)の2条・3条・13条・22条・32条・33条・34条・49条・50条・55条、同法施行規則(昭和60年国家公安委員会規則第1号)の42条・99条・101条・102条・103条・104条を、e-Gov法令検索のAPIで確認しました(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122 ほか)
- 手続き・営業できない地域:愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」(https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/fuei/kyoka/hoan/shinyaeigyou.html)、群馬県警察「深夜酒類提供飲食店営業開始届出手続」(https://www.police.pref.gunma.jp/28799.html)で確認しました
- 確認できなかったこと:「通常主食と認められる食事」の具体的な判断基準、届出をした店の一覧を公表している都道府県があるか、届出の受理時に控えなどを渡す運用があるかは確認していません