✍ 古家あきら | 2026-10-11 更新
上場審査を担っていたOJAD(旧OKINAWA J-Adviser)が破産──TOKYO PRO Marketは192社、「上場を手伝う会社」も台帳で確かめる
先に結論です。沖縄県名護市の株式会社OJAD(旧商号:株式会社OKINAWA J-Adviser)が、2026年9月28日に那覇地方裁判所から破産手続開始決定を受けたと報じられました。 東証のプロ投資家向け市場「TOKYO PRO Market」で、上場を目指す会社の審査や支援を担っていた会社です。負債総額や破産に至った原因は、報道の時点で分かっていません。
この件で押さえておきたいのは、OJADが審査の仕事を2019年にすでに他社へ譲っていたことです。今回の破産で、TOKYO PRO Marketに上場している会社の審査役がいなくなるわけではありません。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「上場を手伝います」「上場準備中です」という言葉を、求人や営業資料でよく見かけます。今回はその「上場を手伝う側」の会社が止まった例です。台帳とJPXの公表数字を並べて、何を確かめればよいかを書きます。
出典:【沖縄】株式上場支援のOJADが破産 沖縄公庫が5500万円出資、2019年にはJ-Adviser事業を譲渡(JC-NET・2026年10月9日)
報道で確認できる事実
JC-NETの記事から、確認できることを並べます。
- 会社:株式会社OJAD(沖縄県名護市)。2012年7月設立、旧商号は株式会社OKINAWA J-Adviser
- 手続:2026年9月28日、那覇地裁が破産手続開始を決定
- 事業:株式上場支援、経営コンサルティング、企業間マッチング
- 公的出資:沖縄振興開発金融公庫が2012年8月に500万円、2015年12月に5,000万円を出資(公表資料で確認できる合計は5,500万円)
- 事業譲渡:2019年7月、J-Adviser事業を日本M&Aセンターへ譲渡。同年8月に今の商号へ変更
- 分からないこと:負債総額、直近の売上高、事業を止めた時期、破産の原因
2015年当時の様子は、日刊工業新聞も伝えています。公庫の追加出資で資本金は1億6,300万円になり、当時の経営者は沖縄で3社の上場を準備していると話していました。
出典:沖縄公庫、沖縄Jアドバイザーに5000万円追加出資(日刊工業新聞・ニュースイッチ・2016年1月2日)
公庫の2015年の発表では、当時TOKYO PRO Marketに上場していた14社のうち5社がOJADの支援を受けており、うち2社は沖縄県内の会社だったと報じられています。ただし、出資金がそのまま損失になるかどうかは、破産時点の株の持ち方や評価額しだいで、まだ確認されていません。
TOKYO PRO Marketと「J-Adviser」の仕組み
TOKYO PRO Marketは、東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの市場です。JPXの概要ページによると、ほかの市場と大きく違う点は次のとおりです。
- 株主数・流通株式・利益の額といった数値の上場基準がない
- 上場の審査をするのは東証ではなくJ-Adviser
- 上場申請から承認までは10営業日(その前にJ-Adviserの意向表明手続がある)
- 主な投資家は特定投資家等(いわゆるプロ投資家)
出典:日本取引所グループ「TOKYO PRO Market 概要」
つまりJ-Adviserは、会社を上場させられるかどうかを見極め、上場後も助言を続ける役です。OJADはその資格を持つ会社として、沖縄の会社の上場を後押ししていました。2026年10月時点の東証のJ-Adviser一覧にOJADの名前はないと報じられており、審査の仕事は2019年の譲渡で日本M&Aセンターに移っています。譲渡と今回の破産の関係は確認されていません。
上場会社3,883社のうち、TOKYO PRO Marketは192社
JPXの「上場会社数」で見ると、2026年10月9日時点の東証の上場会社は3,883社です。そのうちTOKYO PRO Marketは192社、全体の約4.9%にあたります。
月末の数字を追うと、6月末183社、7月末185社、8月末187社、9月末190社と、少しずつ増えています。東証全体の上場会社数は同じ期間に3,897社から3,890社へ減っているので、TOKYO PRO Marketだけが増えている形です。
しょくばログの台帳に入っている株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社は、閉鎖済みを含めて516万社あります。上場している3,883社は、そのうち約0.08%です。「上場企業です」という言葉は、それだけ珍しい肩書きだということになります。会社が上場しているかの確かめ方は会社が上場しているか確認する方法にまとめています。
しょくばログの台帳で見たOJADと沖縄の会社
OJADは台帳では「存続」のまま
台帳の上では、株式会社OJAD(名護市)はまだ閉鎖になっていません。破産手続が始まっても、手続が終わって登記が閉鎖されるまでは、データの表示は変わりません。破産・民事再生・特別清算の違いは倒産の種類を整理した記事で説明しています。
社名に「OJAD」を含む法人は全国に2つあります。似た名前の会社と取り違えないように、確かめるときは法人番号で調べるのが確実です。OJADの法人番号は報道にも載っています。
沖縄の会社は5万8,751社、閉鎖済みの割合は8.8%
台帳で沖縄県の会社(上の5種類)を数えると、5万8,751社。そのうち閉鎖済みは5,169社で、割合は8.8%でした。全国では516万社のうち69万9,039社が閉鎖済みで、13.5%です。名護市に絞ると2,134社、閉鎖済みは266社(12.5%)でした。
閉鎖済みの割合は、会社が多く作られた時期の新しさや、休眠会社の整理の時期にも左右されます。沖縄の会社が倒れにくいという意味には読めないので、地域ごとの「いまの構成」を見る数字として受け取ってください。
社名に「コンサル」を含む会社は沖縄に254社
OJADは上場支援のほか経営コンサルティングも手がけていました。社名に「コンサル」を含む会社は全国に2万7,126社、沖縄県には254社あります。経営コンサルタントの倒産の動きは経営コンサルタントの倒産を扱った記事で詳しく見ています。
なお、社名に「IPO」を含む会社は全国に94社、「上場」を含む会社は17社で、沖縄県にはどちらもありませんでした。上場支援の会社は、社名だけでは見つけにくい業種です。
上場支援を頼む側・取引する側が確かめたい4つのこと
1. 「J-Adviser」の資格は今も有効か
TOKYO PRO Marketへの上場を手伝うと言われたら、その会社が東証のJ-Adviser一覧に載っているかを見てください。過去に資格を持っていても、OJADのように事業を譲って外れている場合があります。
2. 審査役と、支援をする会社は同じとは限らない
上場の準備を手伝うコンサル会社と、上場の可否を審査するJ-Adviserは、別の会社であることが多いです。契約書で、どの会社が何をするのかを分けて確かめます。
3. 公的な出資は「安全の保証」ではない
公的な金融機関や地元の団体が出資していても、事業がうまくいくとは限りません。今回のOJADもその例です。取引先として見るなら、出資者の名前より、決算公告や登記の動きを見るほうが確かです。外から見える手がかりは取引先の信用の調べ方で整理しています。
4. 「上場準備中」の求人は、何が根拠か聞く
求人や会社説明で「上場準備中」と書かれていたら、J-Adviserや主幹事証券会社が決まっているか、どの市場を目指しているかを聞いてみてください。答えが具体的なら、準備が進んでいる手がかりになります。
運営者として思うこと
OJADは、沖縄の会社が地元で上場を目指せるようにと、官民の出資で作られた会社でした。審査の仕事を手放した後のことは、報道でもまだ分かっていません。
上場を手伝う会社も、ほかの会社と同じように台帳の1社です。看板や肩書きではなく、法人番号から登記と公表情報をたどる。私たちが台帳を作っている理由も、そこにあります。
よくある質問
OJADが破産すると、TOKYO PRO Marketの上場会社に影響はありますか?
報道によると、OJADは2019年にJ-Adviser事業を日本M&Aセンターへ譲渡しており、2026年10月時点の東証のJ-Adviser一覧に名前はありません。上場会社の審査役がOJADのまま、という状態ではないとみられます。
TOKYO PRO Marketに上場している会社は何社ありますか?
日本取引所グループの公表では、2026年10月9日時点で192社です。東証の上場会社3,883社のうち約4.9%にあたります。
TOKYO PRO Market上場の株は、個人でも買えますか?
JPXの概要では、主な投資家は特定投資家等(いわゆるプロ投資家)とされています。一般の個人投資家が自由に売買できる市場ではありません。
しょくばログで見ると、OJADはもう閉鎖になっていますか?
2026年10月11日時点の台帳では、まだ閉鎖になっていません。破産手続が終わって登記が閉鎖されると、表示が変わります。
この記事のデータについて
- 会社の数・閉鎖済みの割合は、しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データをもとにした株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)を2026年10月11日に集計したものです
- 閉鎖済みの割合は、ある時点の断面の比率です。年ごとの倒産の増減を示すものではありません
- 社名による数え方は、社名に言葉を含む会社の数です。その業種の会社すべてではありません
- 上場会社数は日本取引所グループの公表値、OJADに関する事実はJC-NETと日刊工業新聞の報道によります