✍ 古家あきら | 2026-10-24 更新

運輸安全マネジメントの公表とは — 運送会社の安全の取り組みを確かめる方法(会社サイトでトップに載せていたのは、トラック5.5%・バス14.1%・タクシー4.9%)

先に結論です。トラック(一般貨物)・バス・タクシーの会社は、車両の数にかかわらず、毎事業年度が終わってから100日以内に「輸送の安全に関する基本的な方針」「目標とその達成状況」「事故の統計」を公表しなければなりません。 車両200両以上の会社と貸切バスの会社は、これに安全管理規程や教育・内部監査の状況なども加わります。いわゆる「運輸安全マネジメント」のページは、この公表の置き場所として使われていることが多いものです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、運送会社に応募しようとしている人や、配送を頼む会社を探している担当者から「安全かどうかを外から見る方法はないか」と聞かれます。そこで、しょくばログが集めている会社サイト31,159社のトップページを調べました。トップページに「運輸安全マネジメント」の言葉が出てくるのは、トラック関連の会社サイト1,940社のうち107社(5.5%)、バス関連270社のうち38社(14.1%)、タクシー関連890社のうち44社(4.9%)でした。 ただし、公表の方法はホームページに限られていません。載っていないことが、そのまま義務違反を意味するわけではない点に注意してください。

運輸安全マネジメントとは

運輸安全マネジメントは、運送会社が社長を含む経営の側から安全の仕組みをつくり、計画・実行・確認・見直しを回していく制度です。国土交通省によると、平成18年(2006年)10月に導入されました。

国は「運輸安全マネジメント評価」として、経営トップや安全統括管理者へのインタビューと、文書・記録の確認を行います。国土交通省はこの評価について、保安監査のように処分につながる性格のものではないと説明しています。つまり、評価は会社の取り組みを良くするための助言であって、合否を付けるものではありません。

制度の中身は、大きく次の2つに分かれます。

外から確かめられるのは、主に後者の「公表」です。

公表が求められる会社と、公表する中身

規則の書き方

トラックについては貨物自動車運送事業輸送安全規則の第2条の8、バス・タクシーについては旅客自動車運送事業運輸規則の第47条の7に定めがあります。どちらも、毎事業年度の経過後100日以内に、輸送の安全に関する基本的な方針などの「国土交通大臣が告示で定める事項」を、インターネットの利用その他の適切な方法で公表しなければならない、という書き方です(e-Govの法令データで確認)。

さらに、輸送の安全に関わる行政処分を受けたときは、処分の内容と、それを受けて講じた措置・講じようとする措置を、遅滞なく公表しなければなりません。

全ての会社が公表するもの(3項目)

近畿運輸局の「自動車運送事業者による安全情報の公表について」(2025年4月30日更新)は、告示の中身を次のように整理しています。

1. 輸送の安全に関する基本的な方針 2. 輸送の安全に関する目標及びその達成状況 3. 自動車事故報告規則第2条に規定する事故に関する統計(総件数及び類型別の事故数)

同じページでは、この3項目は保有車両数にかかわらず、貨物軽自動車運送事業者を除くすべての自動車運送事業者に公表が義務づけられている、と説明されています。軽バンで個人が荷物を運ぶ「貨物軽自動車運送事業」は対象外です。

安全管理規程を届け出る会社が追加で公表するもの

安全管理規程の届出が義務づけられている会社は、上の3項目に加えて、安全管理規程、輸送の安全のために講じた措置と講じようとする措置、情報の伝達体制などの組織体制、教育・研修の実施状況、内部監査の結果とそれに基づく措置、安全統括管理者に関する情報を公表します。貸切バスの会社は、さらに運転者・運行管理者・整備管理者に関する情報と、事業用自動車に関する情報も加わります。

安全管理規程の届出が必要な会社の線引き

どの会社が安全管理規程を届け出るかは、次のとおりです。

中小の運送会社の多くは200両に届かないため、届出の義務はなく、公表は基本の3項目になります。

いつまで、どこに載るか

毎年の公表は、事業年度の経過後100日以内に行い、次の年度の公表までその状態を続けます。行政処分の公表は、処分を受けた日から3年を経過する日までです。

公表の方法として、近畿運輸局は自社ホームページへの掲載、報道機関へのプレス発表、自社広報誌への掲載、営業所など利用者が出入りする場所での掲示、旅客の会社なら車内の掲示を例に挙げています。ホームページは方法の一つにすぎません。 会社サイトに見当たらない場合は、営業所の掲示など別の方法で公表している可能性があります。

会社サイト31,159社で数えたこと

しょくばログでは、会社のホームページのトップページを集めています(2026年10月時点で31,159社)。トップページの文章に「貨物自動車運送事業」「一般貨物」「トラック」が出てくる会社をトラック関連、「乗合バス」「貸切バス」「観光バス」「路線バス」などが出てくる会社をバス関連、「タクシー」「ハイヤー」「一般乗用旅客」が出てくる会社をタクシー関連として分けました。トラックを使う製造業や、タクシー会社と取引のある会社も混ざるため、運送会社そのものの数より広めに数えています(集計は scripts/analyze_unyu_anzen_mgmt.py)。

「運輸安全マネジメント」がトップページから見える割合

バスが高いのは、貸切バスの会社がすべて安全管理規程の届出の対象になっていることと合っています。範囲を「輸送の安全」「安全方針」「安全への取り組み」といった言葉まで広げると、トラック関連249社(12.8%)、バス関連74社(27.4%)、タクシー関連107社(12.0%)でした。

「運輸安全マネジメント」の言葉が出てくる会社は、3つの区分以外も含めて157社ありました。会社の公開情報にある業種で見ると、運輸業・郵便業が117社(74.5%)です。

トラック関連は、会社の規模で差が出る

トラック関連1,940社を、従業員数(gBizINFOの登録値)で分けると次のとおりです。

200両以上で安全管理規程の届出が必要になる会社は、規模の大きい側に集まります。小さな会社ほど、トップページから運輸安全マネジメントへの入り口を作っていない傾向が見えます。義務の重さの違いを考えると、自然な結果です。

トップページに載っているのは、ほとんどが入り口だけ

トップページの文字を見ると、「運輸安全マネジメント」はメニューやお知らせの見出しとして出てくるものが大半でした。トラック関連で「運輸安全マネジメント」や「輸送の安全に関する情報」などが出てくる108社のうち、「基本方針」「目標」「達成状況」「事故の統計」「安全統括管理者」「安全管理規程」といった公表項目の言葉がトップページに一つもない会社が90社(83.3%)です。

中身は別のページやPDFに置かれている、ということです。見出しがあっても、リンク先を開いて3項目がそろっているかを確かめる必要があります。

Gマークとの重なり

トラック関連で「運輸安全マネジメント」の言葉がある107社のうち、Gマーク(安全性優良事業所)にも触れている会社は39社(36.4%)でした。Gマークは全日本トラック協会が事業所ごとに認定するもので、公表の義務とは別の制度です。両方を見ると、その会社の安全への取り組みをより立体的に確かめられます。Gマークの見方は運送会社のGマーク(安全性優良事業所)とはで整理しています。

運送会社の安全の取り組みを確かめる手順

1. 会社サイトで「運輸安全マネジメント」「輸送の安全」を探す

トップページのメニュー、フッター、会社案内の中を見ます。見当たらなければ、サイト内検索や、検索エンジンで「会社名 運輸安全マネジメント」「会社名 輸送の安全に関する」と調べます。PDFで置いている会社も多くあります。

2. 3項目がそろっているか、年度が新しいかを見る

基本方針、目標と達成状況、事故の統計の3つがあるかを確かめます。次に年度を見ます。事業年度の経過後100日以内に更新することになっているので、何年も前の年度のまま止まっていれば、更新が滞っている可能性があります。目標に対して「達成」「未達成」と、結果まで書いているかも見どころです。

事故の件数が書かれていても、それだけで会社の良し悪しは決められません。車両の数や走る距離が会社によって大きく違うからです。件数の大小より、件数をどう受け止めて次の目標にしているかを読むほうが、会社の姿勢が分かります。

3. 行政処分を受けていないかを確かめる

輸送の安全に関わる行政処分を受けた会社は、処分の内容と改善の措置を3年間公表することになっています。会社側の公表と合わせて、国土交通省が公開している処分情報も確かめると確実です。調べ方は会社の行政処分を調べる方法にまとめています。

4. 許可と会社の実体を確かめる

そもそも運送の許可を持っているかは別に確かめます。タクシー・バスならタクシー会社・バス会社の許可を確認する方法、トラックを含む業種別の許認可は会社の許認可を調べる方法が入り口になります。会社が実際に動いているかは会社が実在するか・倒産していないかを確かめる方法で確認できます。

5. サイトに無ければ、直接聞く

ホームページに載っていなくても、営業所の掲示など別の方法で公表している場合があります。応募するなら面接で、取引を考えているなら担当者に「輸送の安全に関する情報はどこで公表していますか」と聞いてみてください。すぐに出てくる会社は、普段から仕組みが回っていると考えられます。

応募する人・取引する人が見るときの注意

運輸安全マネジメントのページが立派でも、安全が保証されるわけではありません。逆に、小さな会社がホームページを持っていなかったり、トップページに入り口を置いていなかったりしても、それだけで安全に問題があるとは言えません。今回の集計も、トップページの文字を数えたものです。下の階層にあるページは含んでいないため、実際に公表している会社はこの数字より多いはずです。

ドライバーとして応募する人なら、公表の中身にある「教育・研修」「目標」に加えて、点呼や健康管理の体制、車両の整備について面接で聞くと、日々の働き方が見えてきます。表彰や認証の見方は会社の受賞歴・表彰歴の調べ方と企業の認定マーク一覧、会社研究の進め方は転職前の企業研究のやり方も参考にしてください。

よくある質問

小さな運送会社にも、安全情報の公表義務はありますか?

あります。近畿運輸局の説明では、基本方針、目標と達成状況、事故の統計の3項目は、保有車両数にかかわらず、貨物軽自動車運送事業者を除くすべての自動車運送事業者に公表が義務づけられています。安全管理規程の届出が必要かどうかは車両数で変わりますが、公表そのものは規模に関係ありません。

会社のホームページに運輸安全マネジメントのページが無いのは、違反ですか?

それだけでは判断できません。公表の方法はホームページに限られず、営業所での掲示や広報誌への掲載なども例として挙げられています。ホームページを持っていない会社もあります。気になる場合は、どこで公表しているかを会社に直接聞くのが確実です。

「運輸安全マネジメント評価」で、会社の安全性の順位は分かりますか?

分かりません。国土交通省の評価は、経営トップや安全統括管理者へのインタビューと書類の確認を通じて、会社の取り組みに助言するものです。国土交通省も、保安監査のように処分につながる性格のものではないと説明しています。会社を並べて順位を付ける仕組みではありません。

事故の件数が多い会社は、避けたほうがいいですか?

件数だけで決めるのはおすすめしません。車両の数や運行の距離が大きい会社ほど、件数は増えやすくなります。事故を類型別に分けて示しているか、目標と達成状況を正直に書いているか、事故を受けて何を変えたかが書かれているか、といった読み方のほうが会社の姿勢を反映します。

Gマークと運輸安全マネジメントは何が違いますか?

運輸安全マネジメントの公表は、法令で決められた会社の義務です。Gマーク(安全性優良事業所)は、全日本トラック協会がトラックの事業所ごとに評価して認定する制度で、取るかどうかは会社が選びます。しょくばログの集計では、トップページに「運輸安全マネジメント」があるトラック関連107社のうち、Gマークにも触れていたのは39社でした。

まとめ

出典:

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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