✍ 古家あきら | 2026-10-25 更新

地方の鉄道・バス・タクシー718社は4年連続の増収増益、それでも3期連続赤字の会社が32都府県に──東京商工リサーチの調査を、社名「タクシー」「ハイヤー」4,494社の台帳で読む

先に結論です。東京商工リサーチ(TSR)が2026年10月22日に公表した調査で、全国の中小の鉄道・バス・タクシー会社718社は、2025年度の売上高合計が8,974億4,200万円(前年度比7.0%増)、純利益合計が506億8,000万円(同8.1%増)となり、4年連続の増収増益でした。 ところが中身を見ると、3期連続で赤字の会社は74社(10.3%)あり、その会社がある都府県は32にのぼります。

業界全体の数字は回復しているのに、地域ごと・会社ごとに見ると苦しいところが残っている。合計の数字だけ見ていると、この差を見落とします。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「地元のバス会社やタクシー会社に応募したいけれど、経営は大丈夫だろうか」という声を聞くことがあります。この記事では特定の会社を評価するのではなく、調査の数字と台帳のデータから、地域の交通会社を見るときの手がかりを整理します。

出典:「中小交通インフラ」 4年連続で増収増益を維持 一方で、3期連続の赤字企業が32都府県に広がる(東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2026年10月22日)

調査で確認できる事実

全体は回復、ただし増収は6割台

TSRの調査対象は、中小企業の「普通鉄道業」「一般乗合旅客自動車運送業(路線バス)」「一般乗用旅客自動車運送業(タクシー)」のうち、5期続けて業績がわかった718社です。大手と準大手の私鉄は除かれています。

コロナ禍で大きく落ち込んだ2021年度は合計325億円の赤字でしたが、2025年度は506億円の黒字まで戻りました。一方で、増収だった会社は473社(65.8%)で、前の年度の64.9%からほとんど変わっていません。赤字の会社は177社(24.6%)で、4社に1社が赤字という状況は続いています。

3期連続赤字が20%を超えたのは7県

3期連続赤字の会社の割合が20%を超えたのは、宮城県・栃木県・富山県・岐阜県・岡山県・高知県・長崎県の7県です。さらに、人口減少率が5%以上で、かつ3期連続赤字が20%以上という条件に当てはまったのは高知県・富山県・長崎県の3県でした。

売上5億円未満が6割、業歴50年以上が7割

売上高5億円未満の会社が446社(62.1%)を占めます。業歴は50年以上100年未満が451社(62.8%)、100年以上も44社あり、50年以上が全体の約7割です。TSRはこれを「新陳代謝が進んでいない業界」と表現しています。小さな会社が長く地域を支えている業界だということです。

しょくばログの台帳で確かめたこと

TSRの調査は業績がわかる718社に絞った分析です。しょくばログでは、国税庁の法人番号データをもとにした台帳(株式会社・有限会社・合名・合資・合同会社)で、社名に「タクシー」「ハイヤー」「鉄道」「電鉄」が入る会社を数えました。社名で拾っているので、実際に旅客を運んでいるかどうかまでは確かめていません。介護タクシーや、社名に「タクシー」を含む別業種の会社も入っている点はご注意ください。

社名「タクシー」「ハイヤー」は4,494社、閉鎖理由の4分の1が「合併」

社名に「タクシー」か「ハイヤー」が入る会社は4,494社で、そのうち登記が閉鎖されているのが731社(16.3%)でした。台帳全体の閉鎖の割合は13.6%です。

目を引いたのは閉鎖の理由です。

台帳全体では、閉鎖のうち合併による解散は7.8%しかありません。タクシー・ハイヤーの会社は、合併でなくなった割合が全体の約3倍です。グループ会社どうしの統合や、近隣の会社への吸収が多い業界だと読めます。ただし、閉鎖日の年ごとの推移は休眠会社の一斉整理で数字が跳ねるため、ここでは使っていません。

合併で会社がなくなると、法人番号はどうなるのか、取引先として何を確かめればいいのかは合併・買収で法人番号はどうなるかにまとめています。

赤字の割合が高かった7県の、社名「タクシー」「ハイヤー」の会社

TSRが3期連続赤字20%超とした7県で、いまも登記が残っている社名「タクシー」「ハイヤー」の会社を数えると、宮城県141社、長崎県97社、高知県93社、岡山県73社、栃木県70社、岐阜県44社、富山県13社でした。この数は、TSRの調査で赤字とされた会社の数ではありません。地域に交通会社がどれくらい残っているかの目安です。

社名「鉄道」「電鉄」は344社

社名に「鉄道」か「電鉄」が入る会社は344社で、閉鎖は44社でした。ここには鉄道事業者のほか、鉄道関連の工事会社や不動産会社なども含まれます。自治体が出資する鉄道会社(いわゆる第三セクター)については第三セクターとはで解説しています。

応募する人・取引する人が見ておきたい3つのこと

1. 「業界は好調」と「この会社は好調」は別の話

全体の増収増益と、3期連続赤字が1割ある事実は、同時に成り立っています。業界ニュースだけで判断せず、決算公告を出しているか、直近の業績を説明してくれるかを確かめましょう。決算が外から見えるかどうかの調べ方は会社が赤字か調べる方法にあります。

2. 許可と安全の公表を確かめる

バスやタクシーで運賃を取って人を運ぶには国の許可が要り、輸送の安全に関する情報を公表する決まりもあります。許可の確かめ方はタクシー会社・バス会社の許可を確認する方法、安全の公表は運輸安全マネジメントの公表とはで解説しています。

3. 合併・統合は「なくなる」とは限らない

タクシー会社の閉鎖で合併が多いのは、事業がグループや近隣の会社に引き継がれている場合があるからです。応募先の社名が変わった、取引先が合併した、というときは、まず引き継いだ会社を法人番号で確かめるのが近道です。会社がいまも存続しているかの調べ方は会社が実在するか・倒産していないかの確認方法で紹介しています。

よくある質問

「中小交通インフラ」の718社には、どんな会社が入っていますか?

TSRの企業データベースから、中小企業基本法の中小企業にあたる鉄道・路線バス・タクシーの会社で、5期続けて業績がわかった会社です。大手・準大手の私鉄は除かれています。業績がわからない会社は入っていないため、TSR自身も実際の業況はさらに厳しい可能性があるとしています。

3期連続赤字の会社に応募するのは避けるべきですか?

赤字だけで判断はできません。設備の更新で一時的に赤字になる会社もあれば、自治体の補助を受けて路線を維持している会社もあります。面接で、路線や営業区域の見通し、ドライバーの人数を聞いてみるのが現実的です。

社名に「タクシー」が入る会社の閉鎖割合16.3%は高いのですか?

台帳全体の13.6%よりはやや高めです。ただ、閉鎖のうち4分の1は合併によるもので、すべてが経営破綻ではありません。閉鎖の理由の読み方は会社の解散・休眠の調べ方で解説しています。

有限会社のタクシー会社が多いのはなぜですか?

社名「タクシー」「ハイヤー」の会社では、有限会社が株式会社とほぼ同じ数あります。2006年より前に設立された会社が多い、業歴の長い業界だからと考えられます。有限会社への就職で気になる点は有限会社に就職するのはどうかにまとめています。

運営者として思うこと

台帳を見ていて、タクシー会社の閉鎖に合併がこれほど多いのは意外でした。地域の交通は、1社が倒れて終わりではなく、隣の会社やグループが引き継いで続いていくことが多いのだと思います。

10月16日には改正地域交通法が施行されました。人口が減るなかで、鉄道・バス・タクシーがどう役割を分け合うかは、地域ごとに答えが違うはずです。働く人や取引する人にとっては、業界全体の数字より、目の前の会社が路線や営業区域をどう守ろうとしているかを聞くことのほうが、ずっと役に立ちます。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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