✍ 古家あきら | 2026-10-25 更新

会社が赤字か調べる方法 — 決算公告・有価証券報告書で見える会社と、見えない会社(決算の数字が外から見える法人は0.38%)

先に結論です。会社が赤字かどうかを外から確かめられるのは、有価証券報告書を出している会社か、決算公告を出している会社にほぼ限られます。しょくばログの法人データで数えると、活動中の法人4,988,967社のうち、何らかの決算の数字が外から見えるのは18,790社(0.38%)でした。残りの会社は、決算書そのものではなく、業界の閲覧制度や信用調査、会社の動きから間接的に判断することになります。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社、赤字じゃないか調べられますか」という相談をときどき受けます。転職先を決める前の方からも、取引を始める前の方からも来ます。正直にお答えすると、多くの会社は「調べても分からない」が答えです。ただ、分かる会社では手順どおりに見れば数字まで読めますし、分からない会社でも確かめられることはあります。その境目を、順番に書いていきます。

まず、その会社の決算が「見える側」かを確かめる

赤字かどうかを調べる前に、相手の会社が決算を外に出しているかを確かめます。目安は次の3つです。

有価証券報告書を出している会社

上場会社などは、金融商品取引法にもとづいて有価証券報告書を出しています。金融庁のEDINETで誰でも無料で読め、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益が過去5期分並んでいるので、赤字かどうかは表を見るだけで分かります。上場会社なら決算短信や会社のIRページにも同じ数字が載っています。

うちの台帳では、EDINETに提出者として登録されている活動中の法人は6,905社、そのうち上場は3,833社でした。

決算公告を出している株式会社

会社法第440条第1項は、株式会社に決算の公告を求めています。公告するのは貸借対照表で、損益計算書まで公告するのは大会社(資本金5億円以上、または負債200億円以上)だけです。また、官報や新聞で公告する会社は「要旨」でよいとされています(同条第2項)。

つまり、多くの株式会社の決算公告で見えるのは貸借対照表の要旨です。売上高は載らず、利益も損益計算書の形では載りません。読み方は後で書きます。

なお、有価証券報告書を出している会社は決算公告をしなくてよいとされています(同条第4項)。上場会社の決算が官報で見つからないのは、このためです。

決算公告の義務がない会社

特例有限会社(旧有限会社)と合同会社には、決算公告の義務がありません。特例有限会社は会社法の整備法で決算公告の規定が適用されず、合同会社はそもそも対象になっていません。

うちの台帳で数えると、活動中の法人のうち特例有限会社は1,426,057社(28.6%)、合同会社は412,431社(8.3%)でした。活動中の法人の3社に1社以上は、法律上も決算を外に出さなくてよい会社です。社名に「有限会社」「合同会社」とあれば、決算書で赤字を確かめる道は最初から細いと考えてください。

決算の数字が外から見える会社は、法人全体の0.38%

ここからは、うちの台帳(国税庁の法人番号公表サイトの全件に、EDINETとgBizINFOの公開データを突き合わせたもの)で数えた結果です。2026年10月25日に実測しました。

決算公告を出していない株式会社が大半であることは、「決算公告を出していない会社は違法?」で詳しく書きました。義務はあっても、実際に出している会社は少数です。

なお、決算公告は官報のほかに、会社のホームページで貸借対照表を載せる方法(電磁的公告)もあります。gBizINFOに取り込まれているのは官報の分なので、会社サイトだけで公告している会社はこの数字に入っていません。ここで数えたのは「外から見える会社の下限」です。

決算公告が2期以上そろう会社は59.9%

赤字かどうかを貸借対照表から読むには、1期分より2期分あったほうが確実です。前の期と比べると、利益が積み上がったのか、減ったのかが分かるからです。

官報の決算公告が見える12,086社を、gBizINFOに取り込まれている公告の件数で分けると、次のとおりでした。

2件以上そろう会社は7,234社(59.9%)です。決算公告が見える会社なら、6割は前の期との比較までできます。逆に4割は1期分しか見えないので、その1期だけで判断することになります。

決算公告(貸借対照表の要旨)から赤字を読む手順

決算公告の要旨には売上高がありません。それでも、次の順に見ると「赤字だったか」「赤字が続いているか」の見当はつきます。

1. 利益剰余金の増減を前の期と比べる

貸借対照表の純資産の部にある利益剰余金は、会社がこれまで稼いだ利益の積み上げです。前の期より減っていれば、その期は赤字だったか、配当などで利益を外に出したかのどちらかです。中小企業で配当を出していなければ、減っている=赤字の可能性が高いと読めます。

2. 当期純利益(損失)の記載があれば、それを見る

要旨によっては、利益剰余金の内訳として当期純利益(または当期純損失)の金額が書かれています。書かれていれば、それがその期の最終的な損益です。「△」や「−」がついていれば赤字です。

3. 純資産がマイナスになっていないか(債務超過)を見る

1期の赤字より重く見るべきなのが債務超過です。純資産の合計がマイナスなら、資産を全部売っても負債を返しきれない状態です。赤字が何期も続くと、ここに表れます。債務超過は貸借対照表の要旨だけで分かるので、決算公告が1件しか見えない会社でも確かめられます。

4. 大会社なら損益計算書の要旨も見る

大会社の決算公告には損益計算書の要旨もつきます。営業利益(営業損失)・経常利益(経常損失)・当期純利益(当期純損失)を見れば、本業で赤字なのか、特別な損失で最終赤字になったのかまで分かります。

官報で会社の公告を探す方法は「官報で会社を調べる方法」にまとめています。売上高まで知りたいときは「会社の売上高を無料で調べる方法」も参考にしてください。

決算が見えない会社で確かめられること

活動中の法人の99%以上は、ここまでの方法では決算が見えません。その場合は、業界ごとの制度や、有料の調査、会社の動きから間接的に判断します。

業界によっては、決算書を閲覧できる

業種によっては、許認可の手続きで役所に決算書を出していて、それを誰でも見られる制度があります。

相手が有限会社や合同会社でも、建設業の許可を持っていれば決算変更届は見られます。法人格より先に「その業界に閲覧制度があるか」を確かめると、見える範囲が広がります。

信用調査会社のデータを使う

帝国データバンクや東京商工リサーチは、決算公告を出していない会社についても取材で業績を集めています。有料ですが、取引の規模が大きいなら検討の価値があります。評点の読み方は「TDB・TSRの評点の見方」で整理しました。

会社の動きから見当をつける

決算書がなくても、登記や求人の動きに変化が出ることはあります。本店の移転が続く、役員がまとめて入れ替わる、求人の条件が急に下がる、といった変化です。ただし、どれも赤字の証拠ではありません。確かめるきっかけとして使い、気になれば面接や商談の場で直接聞くのが確実です。

赤字と分かっても、それだけで「危ない」とは言えない

赤字の会社を見つけると不安になりますが、1期の赤字だけで会社の良し悪しは決まりません。設備投資や新規事業の立ち上げで、計画的に赤字を出す会社もあります。反対に、黒字でも現金が回らずに止まる会社もあります(「黒字倒産とは」)。

業種によっても赤字の出やすさは違います。うちのデータでは、3期連続の赤字が最も多い業種が、法人のいちばん消えにくい業種でもありました(「3期連続赤字が最も多い業種」)。

見るときは、1期だけの赤字か、何期も続いているか、債務超過になっていないかの3点に分けて考えると、判断を誤りにくくなります。

よくある質問

非上場の会社が赤字かどうか、無料で調べる方法はありますか?

株式会社で決算公告を出していれば、官報で貸借対照表の要旨が見られます。建設業・社会福祉法人・医療法人などは、業界の閲覧制度で決算書を見られることがあります。どれにも当てはまらない会社は、無料で決算の数字を確かめる方法はほぼありません。

決算公告に売上高が載っていないのはなぜですか?

大会社以外の株式会社が公告するのは貸借対照表だけで、損益計算書(売上高が載る書類)は対象外だからです。官報で公告する場合は要旨でよいとされているため、載る項目も限られます。

有限会社や合同会社の赤字は調べられますか?

決算公告の義務がないため、決算書からはほぼ調べられません。建設業許可の決算変更届のような業界の閲覧制度がある場合や、信用調査会社のデータを使う場合に限られます。

赤字の会社に転職するのはやめたほうがいいですか?

1期の赤字だけで判断するのはおすすめしません。赤字が何期続いているか、債務超過になっていないか、赤字の理由(投資なのか、本業の不振なのか)を確かめてください。理由は面接で聞いても失礼にはあたりません。

上場会社の決算が官報で見つかりません。

有価証券報告書を出している会社は、決算公告をしなくてよいとされています。上場会社の業績はEDINETや会社のIRページで確かめてください。

まとめ

出典:

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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