✍ 古家あきら | 2026-10-25 更新
アクセルマークが債権2件の「取立不能のおそれ」を開示、合計約1億6900万円──相手の名前が出ない理由と、保証金・預け在庫・代表者への貸付で起きること。社名に「ホビー」「玩具」が入る672社のデータも
先に結論です。東証グロース上場でトレーディングカード事業などを手がけるアクセルマーク株式会社が、2026年10月22日、保有する債権2件について「取立不能のおそれ」が生じたと開示しました。 1件目は、業務提携先だった法人への保証金・売掛金・預け在庫で合計約1億493万円。2件目は、別の貸付先の法人と、その代表取締役個人への貸付金で残高約6444万円です。
開示を読んで目を引くのは、どちらの相手も名前が公表されていないことです。理由は、相手方に「法的整理や手形の不渡り等の事実」が起きていないためと説明されています。つまり、資金繰りが悪化し、連絡が取れなくなっていても、破産などの手続きが始まるまでは、外からはふつうに存続している会社に見えるということです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「法人番号で調べたら存続になっていたのに、取引先から入金がない」という相談を受けることがあります。この記事では一社の経営を評価するのではなく、取引先の異変が公開データに出るまでの時差と、その間に契約でできる備えに落とし込みます。
出典:債権等の取立不能のおそれに関するお知らせ(アクセルマーク株式会社・2026年10月22日)
出典:債権の取立不能のおそれに関するお知らせ(アクセルマーク株式会社・2026年10月22日)
出典:アクセルマークが債権取立不能のおそれ、提携先と貸付先(不景気.com・2026年10月22日)
開示で確認できる事実
1件目:業務提携先への保証金・売掛金・預け在庫
- アクセルマークが資金を出して商品を仕入れ、提携先を通じて消費者に販売する仕組みの取引だった
- 2025年6月ごろから提携先の資金繰りが悪化し、アクセルマークは業務提携契約を解除した
- その後、支払いの催告と面談を重ねたが、2025年12月の面談を最後に連絡が取れない状態が続いている
- 内訳は、保証金7865万5000円、売掛金493万1000円、提携先の管理下にある商品(預け在庫相当額・税込)2134万4000円で、合計1億493万1000円
- 合計額は2025年9月期の連結純資産の13.0%、2026年6月30日時点の連結純資産3億4541万7000円と比べると30.3%
2件目:貸付先の法人と、その代表者個人への貸付
- 2026年3月13日、貸付先の代表取締役個人に5100万円、貸付先の法人に1350万円(借り換えで、代表者が連帯保証人)を貸し付けた
- 4月以降は毎月総額5万円ほどの返済を受けていた
- 2026年7月22日、代表者から「個人について破産の申し立てを検討している」との通知を受けた
- 残高は代表者個人向け5097万円、法人向け1347万3000円で、合計6444万4000円。2026年6月30日時点の連結純資産と比べると18.6%
なお、どちらの債権も、アクセルマークはすでに全額について貸倒引当金や商品評価損を計上済みとしています。相手方とは資本関係・人的関係はないとのことです。
台帳で確かめたこと
アクセルマーク本体は中野区本町の株式会社
しょくばログの台帳では、アクセルマーク株式会社の法人番号は8011201015613、所在地は東京都中野区本町1丁目32番2号で、開示資料の住所と一致します。なお、同じ名前を含む法人として大阪市中央区に「有限会社アクセルマーク」があり、こちらは別の法人です。同じ名前でも法人番号が違えば別の会社なので、取引や応募の前には法人番号で確かめてください。
社名に「ホビー」「玩具」「おもちゃ」「トレカ」が入る法人は672社
今回の開示はトレーディングカード事業の取引に関わるものなので、台帳で社名に「ホビー」「玩具」「おもちゃ」「トレカ」「トレーディングカード」のいずれかを含む法人を数えました。
- 該当は672社。うち登記が閉鎖されているのは110社(16.4%)。台帳全体の閉鎖の割合は13.2%
- 閉鎖の理由は「清算の結了等」が69社、「登記官による閉鎖(長く登記の動きがない会社の整理など)」が39社、「合併」が2社
- 法人の種類では、有限会社が290社(43.2%)と最も多く、株式会社が233社、協同組合が51社。玩具の卸や製造の組合が各地に残っていることがわかります
- 存続している562社のうち、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録があるのは223社(39.7%)。台帳全体で存続している法人の登録率は49.3%
社名に「トレカ」「トレーディングカード」を含む法人は40社で、多くが東京都(19社)に集まっていました。ただし社名だけでは事業の中身はわからず、「トレカ」の文字を含んでいても別の業種の会社も混ざっています。数は業界の規模を測るものではなく、名前だけで判断しないための目安として見てください。
取引先の異変が公開データに出るまでの時差
今回の1件目では、資金繰りの悪化(2025年6月ごろ)から、連絡が取れなくなる(2025年12月以降)まで、少なくとも半年あります。その間も、相手方は法人番号のデータ上では存続している会社のままです。破産の手続きが始まり、最後に登記が閉鎖されて、はじめて台帳にも「閉鎖」が反映されます。
法人番号やインボイスの登録状況で確かめられるのは、会社が実在するか、いまも登記が残っているかまでです。支払いが遅れているか、連絡がつくかは、取引をしている当事者にしかわかりません。公開データでの確認方法は会社が実在するか・倒産していないかの確認方法に、手形の不渡りが外からどこまで見えるかは不渡りは外から見えるかにまとめています。
開示から読み取れる、取引で気をつけたい3つのこと
1. 保証金と預け在庫は「売掛金」より大きくなりやすい
1件目の内訳では、売掛金は493万円ほどで、保証金(約7866万円)と預け在庫(約2134万円)のほうがはるかに大きくなっています。販売を委託したり、相手の倉庫に在庫を置いたりする取引では、請求書に出てこないお金や商品が相手の手元にたまるということです。預けている総額を定期的に数え、取引の上限をどこに置くかを決めておくことが大事です。上限の考え方は与信限度額の決め方で解説しています。
2. 代表者の連帯保証は、代表者の資力しだい
2件目では、法人向けの貸付に代表者の連帯保証が付いていましたが、その代表者個人が破産の申し立てを検討していると通知してきました。中小企業の取引では「社長が保証してくれるから」と安心しがちですが、会社と社長が同時に苦しくなれば、保証は支えになりません。
3. 連絡が取れなくなったら、記録を残して早めに動く
1件目では、契約解除のあとも催告と面談を重ねていました。取引先と連絡がつきにくくなったら、催告の日付や内容を記録に残し、弁護士への相談を早めに検討するのが基本です。新しい取引先を選ぶ段階での確認項目は新規取引先の確認事項に、無料でできる与信の見方は取引先の信用を調べる方法にまとめています。
よくある質問
相手の会社名が公表されていないのはなぜですか?
開示資料では、相手方に法的整理や手形の不渡りなどの事実が起きていないため、事業を続けるうえでの影響を考えて名前の公表を控えると説明されています。名前が出ていない以上、どの会社のことかを推測で特定しようとするのは避けるべきです。
「取立不能のおそれ」と「倒産」は同じですか?
違います。「取立不能のおそれ」は、債権を持っている側が「回収が難しくなりそうだ」と判断したことを投資家に知らせるものです。相手方が倒産したという意味ではありません。上場会社は、一定の規模を超える債権でこのおそれが生じると開示が求められます。
法人番号のサイトで取引先が「存続」なら安心できますか?
登記が残っていることはわかりますが、支払い能力までは示しません。破産などの手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは、存続として表示されます。閉鎖の時期の読み方は会社の解散・休眠の調べ方で解説しています。
インボイスの登録がない取引先は危ないのですか?
登録の有無だけで危ないとは言えません。免税事業者のまま取引する会社も多くあります。ただし、登録番号から法人番号をたどれるので、会社の実在を確かめる手がかりにはなります。台帳全体の登録状況はインボイス登録をしていない会社の割合で紹介しています。
運営者として思うこと
会社データベースを運営していると、「データで確かめたのに防げなかった」という声に触れることがあります。今回の開示が示しているのは、公開データに異変が出るのは、多くの場合、最後の段階だということです。台帳でわかるのは、相手が実在するか、登記がいまも残っているかまで。そこから先は、預けている金額を数えること、保証の中身を確かめること、連絡が途切れたら早く動くことが、取引をしている当事者にしかできない備えになります。しょくばログは、その最初の確認を手早く済ませるための道具として使ってもらえればと思います。