✍ 古家あきら | 2026-09-20 更新

インボイス登録していない会社の割合 — 国税庁の登録データ246万件を法人番号503万件と突き合わせた。株式会社64%・有限会社40%・合同会社34%が登録済み

先に結論です。登記が残っている法人5,028,697件のうち、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録が有効なのは2,451,991件=48.8%。半分強(51.2%)は登録していません。 ただし、これは「法人番号がある法人」を全部分母にした数字で、休眠会社や活動実態のない法人も含みます。gBizINFOに従業員数の記載がある会社に絞ると90.4%、建設業許可を持つ会社に絞ると98.2%が登録済みで、動いている会社の未登録はむしろ少数派です。法人種別では株式会社63.8%・有限会社39.9%・合同会社34.4%・合資会社7.4%・合名会社7.8%と、種別でここまで差が出ます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「取引先がインボイス登録しているか確認したい」という相談と同じくらい、「登録していない会社ってそんなに多いの?」という素朴な疑問を受けます。国税庁の公表サイトは1社ずつ番号を引く用途には便利ですが、「全体の何割が登録しているか」はどこにも出ていません。そこで、国税庁が毎月出している全件データファイルを丸ごと落として、うちの台帳と法人番号で突き合わせました。個別のT番号から会社名を引く方法はインボイスの登録番号(T番号)から会社名を逆引きする方法に書いたので、この記事は「率で全体を見る」ことに絞ります。

数え方 — 国税庁の全件データ255万件と、法人番号503万件を法人番号で結んだ

使ったデータは2つです。

法人のT番号は「T+13桁の法人番号」なので(法人番号とは何か)、Tを外すだけで法人番号と1対1で結べます。個人事業者のT番号は法人番号とは別体系なので、この記事は法人だけの話です。

ここで一つ注意が要ります。全件データには「登録した」記録だけでなく、「登録の失効」「登録の取消」の記録も履歴として入っています。国税庁のリソース定義書によると、事業者処理区分は01=新規、02=公表内容の変更、03=登録の失効、04=登録の取消です。最新の履歴が有効な登録になっている法人だけを「登録済み」と数えると、次のようになりました。

有効な登録2,463,964件のうち、うちの台帳の活動中法人と一致したのが2,451,991件、閉鎖済みの法人と一致したのが5,155件、うちの台帳に無い法人番号が6,818件でした。以下の登録率はすべて「活動中の法人のうち、有効な登録がある法人の割合」です。

全体 — 登記ベースでは48.8%、会社(株式・有限・合同・合資・合名)に絞ると52.1%

「会社の半分がインボイス未登録」と聞くと驚くかもしれませんが、この分母には、登記だけ残って何年も申告していない会社や、事業を実質やめている会社が大量に含まれています。国税庁の令和5年度分 会社標本調査で「法人税の申告をしている法人」は2,956,717社です。定義が違うので厳密な割り算ではありませんが、分母を申告している法人に置き換えると、登録率は8割前後まで上がる計算になります。「半分が未登録」は登記の数字、「動いている会社の大半は登録済み」が実態に近い、と読むのが正確だと思います。日本の会社数が数え方で178万・296万・446万と変わる話は日本に会社は何社あるかにまとめてあります。

法人種別 — 株式会社63.8%、有限会社39.9%、合同会社34.4%、合資・合名は1割未満

法人種別ごとの登録率です(活動中の法人数 → 登録済み件数 → 登録率)。

有限会社の低さは、2006年の会社法施行以降は新しく作れない種別で、古い会社が多く休眠も多いこと、そして小規模で免税事業者(基準期間の課税売上高1,000万円以下)のまま登録しない選択をしている会社が多いことの両方が効いていると考えています。合資会社・合名会社は登記だけ残っている会社の比率がとくに高い種別で(合資会社・合名会社とは)、登録率1割未満はそれを裏づける数字です。

合同会社の34.4%は少し意外でした。合同会社は2006年以降に増えた比較的新しい種別ですが、1人会社・資産管理会社・副業の受け皿として作られたものが多く、売上1,000万円以下の免税事業者のまま登録しない会社が相当数あるということだと思います。

「その他の設立登記法人」52万件の中も、名称から分類すると差が大きいです。

医療・福祉・教育は消費税の非課税取引(社会保険診療・介護保険サービス・授業料など)が売上の中心で、登録する必要性が薄い法人が多い分野です。低い=怪しいではまったくありません。

都道府県別 — 愛知57.3%が最高、沖縄41.1%が最低、東京は45.8%

活動中の法人全体での登録率を都道府県別に見ると、高い順に次の通りです。

低い順は次の通りです。

大都市圏では大阪府49.7%、神奈川県47.3%、福岡県47.6%、北海道46.5%でした。東京の低さは、法人が全国の23%集中していて(日本に会社は何社あるか)、その分だけ登記だけの休眠会社やペーパーカンパニーも多いためだと見ています。愛知・静岡・岐阜・北陸が高いのは、製造業と建設業の比率が高い地域だからで、次の業種別の数字と整合します。

株式会社だけに絞ると、福井県77.0%・山形県76.6%・新潟県75.7%・島根県74.9%・富山県74.7%が上位、東京都57.4%・沖縄県57.6%・大阪府61.2%・千葉県61.5%・神奈川県61.8%が下位です。同じ株式会社でも、地方の方が2割ポイント近く登録率が高い。地方の株式会社は取引先が法人中心のBtoBが多く、東京はサービス業・個人向け・少人数の会社が多い、という構造の違いが出ています。

業種別 — 運輸70%・建設65%・製造65%、医療福祉33%・教育29%

うちの台帳には国税庁データに業種が無いため、社名のキーワードとgBizINFOから業種(日本標準産業分類の大分類)を推定しています。推定できた法人は活動中の約115万件で、残り388万件は「分類不能」です(会社の業種の調べ方に事情を書きました)。この推定ができた範囲での登録率です。

運輸・建設・製造が高いのは、取引相手が課税事業者の法人で、登録していないと相手が仕入税額控除を受けられず取引上不利になるからです。医療・福祉・教育が低いのは非課税売上が中心だから。不動産が半分を切るのは、居住用の家賃が非課税で、資産管理目的の会社が多いためだと思います。社名からの推定なので、「建設」と付く会社の中に不動産業が混ざる程度のぶれはある前提で見てください。

従業員規模・設立年 — 活動実態のある会社は9割以上が登録済み

ここからが、この記事でいちばん伝えたい数字です。gBizINFOに従業員数の記載がある活動中の会社144,775社について、規模別に登録率を出しました。

従業員が1〜4人の会社でも87.7%が登録しています。全体の48.8%との差は、「規模が小さいから登録しない」より「そもそも従業員数を公的データに出すような活動実態が無い法人が分母に大量にある」ことで説明がつきます。gBizINFOに従業員数が載る会社は補助金・調達・届出などで国のデータに接点がある会社なので、分母が「動いている会社」に寄っている点は割り引いてください。それでも、動いている会社に限れば小規模でも9割近くが登録済み、という水準感は変わらないと思います。会社の従業員数の調べ方は会社の従業員数を調べる方法にあります。

設立年別(gBizINFOに設立年月日がある活動中の63,773社)も同じ傾向です。

2023年以降に設立した会社だけ8割に落ちます。設立1〜2期目は基準期間が無く原則として免税事業者なので、登録を急がない会社があるのは自然です。

もう一つ、建設業許可のデータ(うちの台帳に許可情報がある4都府県の238,028社)では登録率98.2%。資本金別でも1,000万円未満98.4%・1,000万円ちょうど98.4%・1,000万円超1億円未満99.3%・1億円以上99.8%で、資本金の大小はほとんど関係ありません(資本金と会社の見方は資本金が少ない会社は危ないのか)。元請から「登録していないなら取引を見直す」と言われる業界なので、許可を持って営業している建設会社はほぼ全社が登録している、というのが実態です。

登録が「切れた」法人8.9万件 — 7割はすでに閉鎖された法人

登録の失効79,239件と取消9,377件を合わせた89,639法人(一度でも失効・取消になった法人)のうち、うちの台帳で閉鎖済みになっている法人は60,769件(67.8%)でした。つまり失効の大半は「登録をやめた」のではなく、清算・合併で法人自体が終わったケースです。残りの約2.9万件が、事業を続けながら登録をやめた(取消届出を出した)法人だと推定できます。会社の解散や休眠の調べ方は会社の解散・休眠の調べ方に書いています。

逆に、うちの台帳では閉鎖済みなのに登録が有効なままの法人が5,155件ありました。内訳は清算結了等3,454件・合併による解散等1,647件・登記記録の閉鎖等51件・その他3件。国税庁の公表サイトは事業廃止の届出をもとに失効させるので、登記の閉鎖から届出までのタイムラグ分がここに出ています。公表サイトで登録が有効=会社が実在して営業中、とは限らない、という点は覚えておいてください。実在確認は幽霊会社の見分け方の手順で別途やる必要があります。

いつ登録したか — 有効な登録の87%は制度開始日の2023年10月1日

有効な登録2,463,964件の登録年月日を見ると、制度開始日の2023年10月1日付が2,154,556件(87.4%)。2023年中の登録が2,209,396件で、そのあとは2024年に126,065件、2025年に96,617件、2026年(5月末まで)に31,481件と、年10万件前後のペースで増えています。2026年5月末時点で、6月以降に効力が生じる登録が2,994件(うち2027年付が405件)先に公表されていました。制度開始から2年半で、法人の登録は「まだ登録していなかった会社が後から登録する」局面から、「新設法人が登録する」局面に移っています。

この記事の数字の限界

よくある質問

インボイスに登録していない会社はどのくらいありますか

登記が残っている法人5,028,697件のうち、有効な登録があるのは2,451,991件(48.8%)で、51.2%が未登録です(国税庁 公表サイト 2026年5月末データとの突合)。ただし分母に休眠会社が大量に含まれるため、gBizINFOに従業員数がある会社に絞ると90.4%、建設業許可を持つ会社では98.2%が登録済みです。

株式会社と合同会社で登録率はどのくらい違いますか

株式会社は63.8%(2,513,796件中1,603,436件)、合同会社は34.4%(412,442件中141,863件)、有限会社は39.9%です。合資会社7.4%・合名会社7.8%は登記だけ残っている会社が多い種別です。

インボイスに登録していない会社は危ない会社ですか

そうとは言えません。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者には登録義務が無く(消費税法9条1項)、医療・福祉・教育・不動産のように非課税売上が中心の会社は登録する必要性そのものが薄いです。医療・福祉の登録率は33.3%、教育は29.2%ですが、業種の性質によるものです。

取引先がインボイス登録しているかどうかはどこで確認できますか

国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、T+13桁の登録番号を入力すると確認できます。法人の場合、Tのあとの13桁は法人番号と同じなので、会社名から法人番号を調べればそのまま引けます。手順はインボイスの登録番号(T番号)から会社名を逆引きする方法にまとめました。

登録が有効なら、その会社は営業中と考えていいですか

いいえ。うちの台帳で閉鎖済みの法人のうち5,155件は、登録が有効なまま公表サイトに残っていました。事業廃止の届出が出るまで失効しないためです。実在・営業中の確認は法人番号公表サイトの閉鎖情報や登記で別途行ってください。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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