✍ 古家あきら | 2026-09-15 更新

資本金が少ない会社は危ないのか — 日本の会社の資本金の分布と、就活・転職で見る目安

「内定先が資本金300万円の会社なんですが、大丈夫でしょうか」——しょくばログという会社データベースを運営していると、こういう相談がよく来ます。求人票や会社概要に書いてある資本金の額を見て、心配になる気持ちはよく分かります。

先に結論を書きます。資本金が少ないことは、それだけでは危なさの根拠になりません。国税庁の調査では、資本金1,000万円以下の会社が全法人の87.3%を占めます。つまり日本の会社の9割近くが「資本金の少ない会社」で、それが普通の状態です。資本金300万円も1,000万円も、2006年より前の会社法では最低ラインとして義務づけられていた金額で、今もその名残でよく見る数字というだけのことも多いのです。

もう一つ大事な前提があります。資本金は「今その会社が持っているお金」ではなく、「設立したときに払い込んだお金」です。設立から10年、20年経った会社の資本金が当時のままでも、それは会社が儲かっていないという意味ではありませんし、逆に資本金が大きくても、今の財布が厚いとは限りません。資本金だけで会社の今の体力を測ろうとすること自体が、そもそも無理筋です。

ここから先は、うちのデータベースで資本金の情報が取れている81,540社(建設業許可業者)、7,124社(上場企業)、4,860社(gBizINFOに情報がある企業)の分布を、国税庁の全数に近い統計と並べて見ていきます。そのうえで、就活・転職で資本金の代わりに何を見ればいいかを整理します。

資本金1,000万円以下の会社が、全体の87.3%を占めている

まず全体像です。国税庁「会社標本調査」(令和5年度分)は、法人税の確定申告書のデータから、日本の内国普通法人295万6,717社の実態を推計した調査です。休廃業していない稼働中の会社等が対象で、資本金階級別の内訳は次のとおりです。

| 資本金階級 | 法人数 | 構成比 | |---|---|---| | 1,000万円以下 | 2,581,180社 | 87.3% | | 1,000万円超〜1億円以下 | 356,027社 | 12.0% | | 1億円超〜10億円以下 | 13,387社 | 0.5% | | 10億円超 | 6,123社 | 0.2% |

資本金1,000万円以下と1,000万円超1億円以下を足すと99.3%です。日本のほぼすべての会社は、資本金1億円以下で成り立っています。「資本金が少ない会社」というくくり方をした瞬間に、日本の会社の大多数が対象に入ってしまう、という感覚をまず持ってください。資本金の総額(全法人の合計)は154兆8,252億円で、少数の大企業が金額の大半を占め、件数では小さい会社が大半を占めるという、よくある偏った分布です。

組織別に見ると、株式会社(2006年の会社法施行以降に存続している旧有限会社を含む)が2,659,393社で全体の89.9%、そのうち1,000万円以下が2,302,489社(86.6%)です。会社の規模を法人の種類から読む方法は法人の種類一覧にまとめています。

なぜ「資本金1円」の会社が存在できるのか — 2006年、最低資本金制度の撤廃

「資本金1円」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。これは誇張ではなく、法律上本当に可能です。理由は2006年(平成18年)5月1日に施行された会社法にあります。

それ以前の旧商法では、株式会社の資本金は1,000万円以上と定められていました(旧商法168条ノ4)。旧有限会社法では、有限会社の資本金は300万円以上でした(旧有限会社法9条)。これが「最低資本金制度」です。株主や社員が会社の借金に対して個人の財産で責任を負わない(間接有限責任)代わりに、会社債権者を保護するための最低限の元手を積ませる、という考え方でした。

ところが、この制度には実効性への疑問が以前からありました。資本金は設立後に使ってしまえば減っていくお金で、必ず会社に残っている保証はありません。それなのに新しく会社を作りたい人にとっては、1,000万円や300万円をまず用意しなければならないという参入障壁になっていました。この「債権者保護としての実効性は薄いのに、起業の壁にはなる」という矛盾が問題視され、2006年施行の会社法で最低資本金制度は撤廃されました。これにより、株式会社も合同会社も、理論上は資本金1円から設立できるようになっています。

有限会社という会社の種類自体も、この会社法改正で新規には作れなくなりました。既存の有限会社は「特例有限会社」として存続していますが、新設はできません。有限会社という名前の会社をこれから作ることはできない、という点は有限会社は就職に不利かでも触れています。

撤廃されても消えていない下限 — 純資産300万円のライン

最低資本金制度そのものはなくなりましたが、会社法にはその名残が一つ残っています。会社法458条は、株式会社の純資産額が300万円を下回る場合、剰余金の配当ができないと定めています。配当した後の純資産が300万円を割り込むような配当は、会社法上認められません。

つまり「資本金の下限」という形の規制はなくなった一方で、「配当できる財産の下限」という形で300万円という数字だけが生き残っている、というのが正確な理解です。設立時にいくらの資本金を積むかは会社の自由になりましたが、儲けを株主に配るときには、会社に最低限の体力を残しておけ、という発想自体は今も生きています。

資本金の"相場"は業種で変わる — 建設業47万社の実態と、うちのデータベースの81,540社

資本金の水準は業種によっても大きく違います。会社標本調査で建設業を見ると、全国47万529社のうち85.9%が資本金1,000万円以下、13.9%が1,000万円超1億円以下です。全業種平均(1,000万円以下87.3%)とほぼ同じ水準で、建設業だからといって資本金が特に大きいわけではありません。

ただし、これは建設業を営むすべての会社の数字です。うちのデータベースでは、東京・大阪・新潟・福島の4都府県の建設業許可業者について、資本金(千円単位で許可情報に記載されている値)を81,540社分集計できました(登録された資本金の値が0円・空欄・非数値だったものは2件のみで除外)。この81,540社に絞ると、資本金階級別の分布は次のようになります。

| 資本金階級 | 件数 | 割合 | |---|---|---| | 〜100万円 | 5,368件 | 6.6% | | 100万円超〜300万円 | 17,964件 | 22.0% | | 300万円超〜500万円 | 16,278件 | 20.0% | | 500万円超〜1,000万円 | 23,792件 | 29.2% | | 1,000万円超〜3,000万円 | 11,093件 | 13.6% | | 3,000万円超〜1億円 | 6,444件 | 7.9% | | 1億円超 | 601件 | 0.7% |

1,000万円以下の合計は77.8%で、全国の建設業全体(85.9%)より低く出ています。ここには分母の偏りがあります。建設業許可を取るには「財産的基礎」の要件があり、一般建設業では自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・許可申請直前5年間の継続営業実績のいずれかを満たす必要があります(特定建設業ではさらに厳しく、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上等)。この要件は資本金そのものではなく自己資本や資金調達能力で満たすこともできるため資本金だけが底上げされるわけではありませんが、許可を取れている時点で一定の財産的基礎をクリアした会社の集まりであり、無許可の零細事業者は含まれません。だから「うちのDBで資本金が取れている建設業者」は、全国の建設業者全体よりわずかに資本金が高めに偏って見える、という点は正直に書いておきます。

許認可の有無から会社の実態を確認する方法は会社の許認可を調べる方法にまとめています。

株式会社と有限会社、資本金の分布はこんなに違う — 「300万円」「1,000万円」という数字が今も残っている

先ほどの81,540社を法人の種類で分けると、旧最低資本金制度の名残がはっきり見えました。

| 資本金階級 | 株式会社(n=63,238) | 有限会社(n=18,264) | |---|---|---| | 〜100万円 | 8.4% | 0.4% | | 100万円超〜300万円 | 10.4% | 62.4% | | 300万円超〜500万円 | 19.3% | 22.1% | | 500万円超〜1,000万円 | 34.3% | 11.6% | | 1,000万円超〜3,000万円 | 16.7% | 2.8% | | 3,000万円超〜1億円 | 10.0% | 0.8% | | 1億円超 | 0.9% | 0.0% |

有限会社は「100万円超300万円」の階級に62.4%が集中しています。実際に資本金がちょうど300万円の会社を数えると11,374件で、有限会社18,264社の62.3%にあたります。旧有限会社法が求めていた最低資本金300万円のラインに、今も6割超の有限会社が乗っている計算です。

株式会社側でも同じことが起きています。資本金がちょうど1,000万円の会社は19,529件で、株式会社63,238社の30.9%です。旧商法の最低資本金1,000万円のラインは、会社法施行から約20年経った今でも、株式会社の約3割にくっきり残っています。設立時に「とりあえず旧基準どおりの金額にしておこう」という選び方が、税理士や司法書士の実務でも根強く続いてきたことがうかがえます。

なお、国税庁の会社標本調査では有限会社は独立した区分として集計されておらず、「株式会社(旧有限会社を含む)」としてまとめて扱われています。会社法上、既存の有限会社は特例有限会社として株式会社の一種に位置づけられているためです。うちのデータベースは登記上の法人種別コードをそのまま保持しているため、有限会社だけを取り出して見ることができました。これは国の統計だけを見ていては気づけない切り口です。合同会社という別の会社形態の資本金事情は合同会社は就職に不利かで扱っています。

資本金が大きい会社ほど倒産しにくい、は本当か — 閉鎖率を調べようとして分かった限界

資本金と会社の存続の関係も確かめようとしました。うちのデータベースには法人番号の登記閉鎖日が入っている項目があり、これまでの記事では閉鎖の有無を資本金や業種と突き合わせて使っています。

ところが、今回の81,540社(建設業許可業者)については、資本金階級のどこを見ても閉鎖済みの会社が0件でした。これは「建設業許可を持つ会社は絶対に倒産しない」という意味ではありません。建設業許可の情報は、その時点で有効な許可を持っている業者のリストです。会社が閉鎖されれば許可自体が失効し、名簿から外れていきます。つまりこのデータソースは、定義上ほぼ現存企業だけで構成されており、閉鎖企業を含んでいません。だから資本金階級別の閉鎖割合を、このデータから出すことはできませんでした。

出せない数字を出せたことにしないために、ここは正直に「分からなかった」と書きます。会社の実在や倒産を資本金以外の切り口で確認する方法は会社が実在しているか・倒産していないか確認する方法に、資本金が大きくても倒産する実例は資本金が大きいのに倒産する会社にまとめています。うちの一般社団法人の記事では別のデータソース(国税庁法人番号公表サイトの全件データ)を使っており、そちらでは閉鎖企業も含めて数えられています。同じ「資本金と存続」というテーマでも、どのデータソースを使うかで答えられる範囲が変わる、という点も併せて共有しておきます。

上場企業でも資本金1億円以下が3割いる — EDINETで見る「規模と資本金は別」

「大企業なら資本金も大きいはず」という思い込みも確かめておきます。うちのデータベースには、EDINET(金融庁の開示システム)に有価証券報告書を提出している上場企業等7,204社のうち、資本金の情報が取れる7,124社分のデータがあります(80社は値が0・空欄・非数値のため除外)。

| 資本金階級 | 件数 | 割合 | |---|---|---| | 1,000万円以下 | 1,031件 | 14.5% | | 1,000万円超〜3,000万円 | 207件 | 2.9% | | 3,000万円超〜5,000万円 | 224件 | 3.1% | | 5,000万円超〜1億円 | 777件 | 10.9% | | 1億円超〜3億円 | 411件 | 5.8% | | 3億円超〜10億円 | 1,201件 | 16.9% | | 10億円超 | 3,273件 | 45.9% |

資本金1億円以下の上場企業等は2,239件で、全体の31.4%を占めます。税法上の中小法人の基準である資本金5,000万円以下に絞っても1,462件(20.5%)です。これは、上場企業の多くが増資と減資を繰り返してきた結果でもあります。資本金を意図的に1億円以下に抑えて税制上の中小法人扱いを受ける「減資」を行った企業が近年話題になったこともありますが、それが良いか悪いかは別として、資本金の額と、その会社の事業規模・時価総額・売上は、上場企業ですら一致しないというのが実態です。会社の規模を資本金以外の指標で見る方法は会社の規模を調べる方法にまとめています。

そもそも資本金とは何か — 「今のお金」ではなく「設立時に払い込んだ額」

ここまでの数字を正しく読むために、資本金の定義に一度立ち返ります。資本金は、会社設立時または増資時に、株主が会社に払い込んだお金の額です。貸借対照表の純資産の部に記載される会計上の数字であり、現金や預金として今そのまま会社にある保証はありません。設備投資や人件費、仕入れに使われて、資本金という「勘定科目上の数字」だけが残っている会社がほとんどです。

逆に、減資(資本金を減らす手続き)をすれば、経営が傾いていなくても資本金は小さくなります。増資すれば、業績が悪くても資本金は大きくなります。資本金の額だけを見て「この会社は儲かっている」「この会社は危ない」と判断するのは、通帳の残高を見ずに口座を開いた日の入金額だけで今の財産を判断するようなものです。中小企業の法律上の定義でも資本金は判断基準の一つに過ぎず、業種によって扱いが変わります。定義の詳しい線引きは中小企業の法律上の定義で解説しています。

就活・転職で資本金を見るとき、代わりに見るべき4つの指標

相談を受けるたびに私が伝えているのは、資本金そのものより、次の4つを見てほしいということです。

資本金は「調べれば分かる数字」の一つではありますが、それ単体で会社の安全性を判定する道具ではありません。資本金の調べ方そのものは会社の資本金の調べ方に、老舗か新興かを見分ける視点は会社が老舗か新興かを見分ける方法にまとめてありますので、資本金の数字が出てきたら、そこで終わらせずに他の指標と組み合わせて見てください。

よくある質問

資本金が少ない会社は本当に危なくないのですか?

「資本金が少ない=危ない」と単純には言えません。国税庁の調査では資本金1,000万円以下の会社が全法人の87.3%を占めており、資本金の少ない会社が日本では多数派です。資本金は設立時に払い込んだ額であり、今の会社の財務状況とは別物です。危なさを見るなら、従業員数・社会保険の加入・決算公告の有無・事業の継続年数など、複数の指標を組み合わせて確認してください。

資本金1円の会社は本当に存在できますか?

法律上は可能です。2006年5月1日施行の会社法で、それまで株式会社1,000万円・有限会社300万円だった最低資本金制度が撤廃されたため、理論上は資本金1円からでも株式会社や合同会社を設立できます。ただし配当に関しては、会社法458条により純資産300万円未満になる剰余金の配当はできないという制限が残っています。

資本金300万円や1,000万円の会社をよく見るのはなぜですか?

2006年の会社法施行前は、株式会社の最低資本金が1,000万円、有限会社の最低資本金が300万円と法律で決まっていました。うちのデータベースで建設業許可業者の資本金を集計したところ、株式会社の30.9%がちょうど1,000万円、有限会社の62.3%がちょうど300万円で、旧制度のラインが今も色濃く残っていることが確認できました。撤廃から約20年経った今でも、設立時にこの金額を選ぶ慣行が続いているためです。

上場企業なら資本金も大きいのですか?

必ずしもそうではありません。うちのデータベースでEDINET開示企業7,124社の資本金を集計したところ、資本金1億円以下の企業が2,239件で全体の31.4%を占めていました。増資・減資を経て資本金の額が事業規模と連動しなくなっている企業が一定数あるためです。会社の規模を見るには、資本金より従業員数や売上高、時価総額など別の指標を確認したほうが実態に近づけます。

資本金が大きい会社なら倒産しないのですか?

そうとは言えません。資本金は設立時や増資時に払い込まれた過去の金額で、その後の借入や損失によって財務状況は変わります。実際に資本金10億円を超える会社が破産したケースもあります。今回、うちのデータベースの建設業許可業者データでは、現存許可業者のみが対象という性質上、資本金階級別の閉鎖割合を算出できませんでした。倒産のリスクを資本金だけで判断するのではなく、決算公告や事業実態など別の材料も確認することをおすすめします。詳しくは資本金が大きいのに倒産する会社にまとめています。

この記事で使った数字について

全法人・組織別・業種別の資本金階級別法人数と資本金総額は、国税庁「会社標本調査(令和5年度分)-調査結果報告- 税務統計から見た法人企業の実態」(国税庁長官官房企画課、令和7年4月)https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2023/pdf/R05.pdf の第1表・第2表・第3表・第4表・第5表を用いました。調査対象は令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に終了した事業年度で、標本調査(標本法人割合78.0%)に基づく推計値です。

最低資本金制度(旧商法168条ノ4・株式会社1,000万円、旧有限会社法9条・有限会社300万円)とその撤廃の経緯は、鳥飼総合法律事務所「会社法QA 第23回 最低資本金制度の廃止」https://www.torikai.gr.jp/columns/detail/post-3293/ を参照しました。会社法の施行日(2006年5月1日)は経済産業省「会社法の現代化について」https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/kaishahousei/h18_corporatelaw.html のページタイトル・概要に基づきます。会社法458条(純資産300万円未満の場合の剰余金配当の制限)の条文内容は、公開されている法務専門家の解説記事複数を突き合わせて確認しました。条文の正確な文言は e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)で確認できます。

建設業許可における財産的基礎要件(一般建設業:自己資本500万円以上等、特定建設業:資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上等)は、国土交通省「産業・不動産業:許可の要件」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html によります。

うちのデータベースの集計は、しょくばログが運営する会社台帳(companies.db)に登録済みの、東京都・大阪府・新潟県・福島県の建設業許可情報81,542行(重複する法人番号を除いた実会社数81,540社)、EDINET開示企業の資本金情報7,204件(有効値7,124件)、gBizINFO基本情報の資本金情報4,861件(有効値4,860件)を、2026年9月15日に集計したものです。値が0・空欄・非数値のものは無効値として除外し、件数を本文中に明記しました。建設業許可業者の資本金階級別閉鎖割合は、データソースの性質上(現存許可業者のみを収録)算出できなかったため、本文でその旨を明記しています。個別の法人名は出していません。

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古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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