✍ 古家あきら | 2026-09-20 更新

帝国データバンク・東京商工リサーチの評点の見方 — 評点が付いている会社は3社に1社以下、目安は公式の数字だけで読む

先に結論です。帝国データバンク(TDB)の評点も東京商工リサーチ(TSR)の評点も100点満点で、目安として公式に確認できる数字は「40点台の会社が最も多い」「51点以上は2割に満たない」(TDB)と、「80点以上=警戒不要/65〜79=無難/50〜64=多少注意/30〜49=一応警戒/29以下=警戒」(TSR)の区分です。 そして見落とされがちなのが、評点が付いている会社の数そのものです。TDBの企業概要データベースCOSMOS2の収録は151万社、TSRが評点とリスクスコアを付与している企業は約160万社。うちのデータベースにある活動中の法人5,028,697社と並べると、どちらも3社に1社以下です。取引先や転職先の評点を調べようとして「そもそも載っていない」のは、珍しいことではなく多数派です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この会社の帝国データバンクの評点は何点ですか」という問い合わせを時々いただきます。うちには評点のデータはありませんし、個社の評点は両社と契約した人だけが見られるものなので、お答えできません。ただ、その会社の評点が「何点なら安心か」「そもそも付いているのか」「付いていない会社は何を見ればいいのか」は、両社が公表している仕組みとうちの台帳の数字で、かなりの部分まで答えられます。この記事はその整理です。評点の点数や分布は、両社の公式サイトで確認できた数字以外は書きません。 ネット上に出回っている区分表のうち公式で確認できなかったものは、確認できなかったと明記します。

2社の評点は「満点が同じで、中身が違う」

TDBとTSRの評点は、どちらも100点満点の実数で表されます。ここまでは同じですが、何を何点で見ているかは別物です。

帝国データバンクの評点 — 7つの要素、配点は非公表

TDBの公式サイト(報告書の読み解き方シリーズ「評点とその推移」2014年12月公開)によると、評点は次の7要素で構成されています。

| 要素 | 何を見ているか(TDBの説明) | 客観点/主観点 | |---|---|---| | 業歴 | 創業後の経過年数 | 客観点 | | 資本構成 | 自己資本比率をベースにした財務の安全性 | 客観点 | | 規模 | 業種別の年商規模に、株式公開の有無や従業員数を加味 | 客観点 | | 損益 | 赤字・黒字の推移に、利益額の規模を加味 | 客観点 | | 資金現況 | 調査本文のマーキング結果を点数化 | 両面 | | 経営者 | 業界経験・経営経験・資産保有状況など | 両面 | | 企業活力 | 営業基盤・人材・将来性などの定性評価 | 主観点 |

各要素の配点(何点満点か)は、TDBの公式サイトで確認できた範囲には載っていません。 また、A〜Eのようなランク区分の点数表がネット上に多く出回っていますが、これもTDBの公式ページ(FAQ・読み解き方シリーズ・サービス紹介)では確認できませんでした。この記事では載せません。公式で確認できたのは、FAQの「景気動向にも左右されますが、40点台の企業が最も多くなっています」という一文と、次の分布の記述です。

帝国データバンクの分布 — 最頻値46点、51点以上は2割未満

TDBの読み解き方シリーズには、評点の分布について次の数字が書かれています(2014年12月公開の記事で、集計は2013年)。

同じTDBの評点でも、「COSMOS2に載っている全体」と「わざわざ調査依頼が入った会社(報告書)」で分布が違う、というのがこの記述のポイントです。調査を依頼される会社は取引額が大きい・上場している・業歴が長いなど、もともと点が高くなる条件を持った会社に偏ります。「50点台なら平均的」という通説は、報告書ベースの分布から来ているのだと思います。全体で見れば、50点台は上位2割に入る側です。

TDBはこの記事で、「新設会社の42点と老舗の42点は意味合いがぜんぜん違う」として、点数そのものより推移の「向き」を見るよう勧めています。低い評点でも上昇傾向にある会社、高い評点でも下降している会社に注目せよ、という趣旨で、2015年の別記事(新設会社の与信判断)でも「新設会社の平均的な評価が低くなるのは必然」と書いています。業歴が7要素の1つである以上、設立したばかりの会社は構造的に点が出ません。

東京商工リサーチの評点 — 4項目、配点は公表されている

TSRは、公式サイトのサービス紹介(国内企業調査レポート「企業の総合評価」)と用語辞典で、4項目の配点まで公表しています。

| 項目 | 配点 | 何を見ているか(TSRの説明) | |---|---|---| | 経営者能力 | 20点 | 資産担保余力や経営姿勢、事業経験など | | 成長性 | 25点 | 売上の伸長や利益確保の状況、取扱い商品の市場性など | | 安定性 | 45点 | 業歴や財務内容に裏付けされた企業体力、仕入先・販売先・金融機関との関係や決済状況など | | 公開性・総合世評 | 10点 | 公的なものを含む資料の公開状況、総合世評、特別な加点・減点要素 |

安定性だけで45点、つまり満点の半分近くを占めます。業歴と財務、取引先・金融機関との関係、決済状況がここに入るので、TSRの評点は「潰れにくさ」に重心が置かれた設計だと読めます。

東京商工リサーチの区分 — 5段階

TSRの用語辞典には、点数帯ごとの区分名も載っています。

| 点数 | 区分 | |---|---| | 80〜100点 | 警戒不要 | | 65〜79点 | 無難 | | 50〜64点 | 多少注意 | | 30〜49点 | 一応警戒 | | 29点以下 | 警戒 |

区分名の付け方から分かるとおり、50点台は「多少注意」であって「良い」ではありません。 ただし、これは与信管理(売掛金を回収できるか)の目線で付けられた区分です。転職先を見る目線とは目的が違うので、「多少注意=ブラック企業」のように読み替えるのは飛躍です。

TSRは分布そのものは公表していませんが、2025年6月のTSRデータインサイト(「定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?」)に、評点とリスクスコアを組み合わせた6ランクのうち最下位のFランク(評点49以下・リスクスコア1〜5)の割合が出ています。対象は「評点とリスクスコアが付与された企業約160万社」で、Fランクは2022年3.02%、2023年2.75%、2024年2.69%。この約160万社のFランク企業の倒産率は2024年で1.84%、全体の倒産率は0.25%でした。「一応警戒」の帯に入っていても、1年以内に倒産するのは50社に1社程度、というのが公式の数字から読める規模感です。

評点が「ある会社」は3社に1社以下

ここからがうちのデータベースの出番です。両社の評点の付与範囲を、公式の数字で確認します。

うちの台帳(国税庁法人番号公表サイトの全件を取り込んだもの)で、閉鎖されていない活動中の法人は2026年9月20日時点で5,028,697社です。

| | 社数 | 活動中法人に対する割合 | |---|---|---| | 活動中の法人(うちの台帳) | 5,028,697 | 100% | | TDB COSMOS2 収録 | 151万 | 約30% | | TSR 評点・リスクスコア付与 | 約160万 | 約32% |

法人番号のある法人には、営業実態のない休眠会社や、一般社団法人・NPO法人・宗教法人なども含まれるので、「営業している株式会社」に絞れば割合はもう少し上がります。それでも、取引先や転職先の名前で評点を探して「載っていない」となる確率は、感覚よりずっと高い。評点が無いこと自体は、その会社の評価ではありません。単に、調査会社の調査が入っていないだけです。

会社側が評点を意識しているかも数えてみました。うちが取り込んでいる会社サイトの採用ページ32,838社分のテキストを検索すると、「帝国データバンク」の語があるのは59社(0.18%)、「東京商工リサーチ」は82社(0.25%)、「評点」は29社(0.09%)、「与信」は106社(0.32%)でした。採用ページという性質上、財務の話を書く場面が少ないのは当然ですが、評点を対外的にアピールする会社はほぼ存在しないというのが実数です。逆に言えば、採用ページや会社案内に「帝国データバンク評点◯点」と書いてある会社は相当に珍しく、書くだけの点数を持っているか、書くこと自体に慣れていないかのどちらかです。

評点の要素のうち、無料で代替できるもの・できないもの

評点が付いていない会社、あるいは有料レポートを買う前に当たりを付けたい会社について、評点の構成要素を一つずつ、無料の公開情報で代替できるかを見ていきます。TDBの7要素とTSRの4項目を、共通する中身でまとめました。

| 評点の中身 | 無料で取れる代替情報 | うちの台帳での取得状況 | |---|---|---| | 業歴 | 法人番号の指定年月日(国税庁)/設立年月日(gBizINFO・登記) | gBizINFO由来の設立年月日 63,954社 | | 資本構成・規模 | 資本金(登記・gBizINFO・許認可名簿)/従業員数(gBizINFO・求人票) | 資本金 81,542社(建設業許可名簿4都府県)、従業員数 147,679社(gBizINFO) | | 損益 | 決算公告(官報)/有価証券報告書(EDINET) | 官報決算公告 14,134社、有報提出者 4,926社 | | 公開性 | 上場の有無(EDINET)/公式サイト・採用ページの有無 | 上場 3,834社、採用ページ取得 32,838社 | | 経営者 | 代表者名(登記・gBizINFO)/経歴は公式サイト | 代表者名 67,228社(gBizINFO) | | 資金現況・決済状況・金融取引 | 代替できない(調査員の聞き取り・取引先照会) | なし | | 企業活力・総合世評 | 代替できない(定性評価) | なし |

代替できるのは、TDBでいう客観点の側(業歴・資本構成・規模・損益)と経営者の一部まで。 資金現況(支払いが遅れていないか、銀行との関係はどうか)と企業活力は、調査員が会社を訪問して聞き取り、取引先に照会して初めて点になるものです。有料の信用調査の費用が何に払われているかは、企業の信用調査の費用相場で整理したとおりで、この「無料では絶対に埋まらない部分」の人件費が価格の正体です。

業歴 — 「50年以上が36.6%」は偏った数字

うちの台帳でgBizINFO由来の設立年月日が入っている63,954社を、2026年時点の業歴で分けると次のとおりです。

| 業歴 | 社数 | 割合 | |---|---|---| | 5年未満 | 2,808 | 4.4% | | 5〜10年 | 4,078 | 6.4% | | 10〜30年 | 15,621 | 24.4% | | 30〜50年 | 18,022 | 28.2% | | 50年以上 | 23,425 | 36.6% |

50年以上が3分の1を超えていますが、これは日本の会社の姿ではありません。gBizINFOに設立年月日が載るのは、法人自身が情報を登録したか、許認可・補助金などの公的データに紐づいた会社で、業歴の長い会社に大きく偏ります。個別の会社の業歴を確かめるときは、この分布ではなく、gBizINFOの設立年月日か登記の「会社成立の年月日」で当たります。手順と「設立」と「創業」の違いは会社の設立年を調べる方法に書きました。

資本金 — 半分が1,000万円未満、「ちょうど1,000万円」が4社に1社

資本金は評点の「資本構成」「安定性」に関わる項目ですが、無料で取れる資本金の実態は次のとおりです。うちの台帳で資本金(千円単位)が揃っている建設業許可名簿(東京・大阪・新潟・福島)の81,542社で分布を取りました。

| 資本金 | 社数 | 割合 | |---|---|---| | 1,000万円未満 | 42,782 | 52.5% | | 1,000万〜5,000万円未満 | 34,712 | 42.6% | | 5,000万〜1億円未満 | 2,916 | 3.6% | | 1億〜10億円未満 | 945 | 1.2% | | 10億円以上 | 187 | 0.2% |

このうちちょうど1,000万円の会社が20,622社(25.3%)です。2006年の会社法施行前は株式会社の最低資本金が1,000万円だったので、その時代に設立した会社がそのまま残っている、という数字です。建設業許可は一般許可で500万円以上の自己資本などの財産的要件があるため、全業種より資本金がやや厚めに出る母集団ですが、それでも半分が1,000万円未満。資本金だけで会社の体力を測ろうとすると、ほとんどの会社が同じ帯に入ってしまい、差が付きません。 評点で資本金が単独項目でなく「資本構成=自己資本比率」として見られているのは、この理由です。資本金の調べ方と限界は会社の資本金を調べる方法に書きました。

従業員数 — 6割が50人未満

gBizINFOに従業員数が載っている147,679社の分布です。

| 従業員数 | 社数 | 割合 | |---|---|---| | 10人未満 | 38,648 | 26.2% | | 10〜49人 | 50,958 | 34.5% | | 50〜299人 | 41,316 | 28.0% | | 300〜999人 | 12,340 | 8.4% | | 1,000人以上 | 4,417 | 3.0% |

これもgBizINFOに載る時点で一定の偏りがあります(従業員数を公的データに出している会社)。それでも6割が50人未満で、TDBの「規模」が業種別の年商をベースにしている理由がここにあります。人数は業種で桁が変わるので、人数の絶対値だけで規模を比べるのは筋が悪い。従業員数の取り方は会社の従業員数を調べる方法、売上高は会社の売上高を調べる方法にまとめています。

損益と公開性 — 無料で読めるのは全体の1%未満

損益(赤字か黒字か)は評点の中核ですが、外から読めるのは決算公告を出している会社と有価証券報告書の提出会社だけです。うちの台帳ではgBizINFO経由の官報決算公告が14,134社、EDINETの有報提出者(内国法人)が4,926社、うち上場が3,834社。活動中の法人5,028,697社に対して、合わせても1%に届きません。詳しくは会社の借金・負債を外から調べる方法と会社が上場しているか確認する方法で書いています。

TSRの「公開性・総合世評」10点のうち、公開性の部分は「資料を出しているか」です。上場していない中小企業が決算書を開示するかどうかは調査員に対してであって、ネット上には出てきません。無料で分かる公開性は、せいぜい公式サイトがあるか・会社概要に資本金と代表者名を明記しているか・採用ページで数字を出しているか、という程度です。

評点を「読む」ときの順番 — 点数より先に見る3つ

有料レポートを買って評点を手にした人、あるいは取引先から評点を聞かされた人が、点数を見る前に確認すべきことを、公式の説明から3つに絞ります。

1. どちらの会社の評点か。 TDBの46点とTSRの46点は同じ意味ではありません。TSRなら46点は「一応警戒」、TDBなら最頻値付近です。配点の設計も違います。 2. 業歴は何年か。 TDBが言うとおり、新設会社は業歴の点が出ないので構造的に低くなります。設立5年未満で40点台なら、老舗の40点台とは別物として読む必要があります。 3. 前回からの向きはどちらか。 TDBは推移を重視せよと公式に書いています。点数が1つしかない(初回調査)なら、推移は読めないと割り切る。

そのうえで、TDBなら「51点以上は全体の2割未満」、TSRなら「50〜64点=多少注意」という公式の物差しに当てる。「平均は50点」「60点あれば優良」といった具体的な閾値は、公式サイトで確認できたもの以外は、出所を確かめてから使ったほうがいいというのが、実際に公式ページを一通り読んだうえでの感想です。

うちのデータベースでできること・できないこと

しょくばログには評点はありません。個社の評点は載せませんし、推定もしません。できるのは、評点の客観点に当たる部分を無料情報で先に並べておくことです。

取引を始める前の確認なら、まず取引先の信用を調べる方法の3層で無料の範囲を埋め、それでも金額が大きいなら有料レポートで資金現況と評点を買う、という順番が現実的です。転職先の確認なら、評点よりも会社の代表者を調べる方法や求人票の中身のほうが、日々の働き方には直結します。

よくある質問

帝国データバンクの評点は何点あれば安心ですか

公式に確認できる分布は「40点台が最も多い」「51点以上は2割未満」(2013年集計)です。TDB自身が、点数の絶対値より業歴との関係と推移の向きを見るよう説明しています。「◯点以上なら安心」という閾値は公式サイトでは示されていないので、この記事でも書いていません。

東京商工リサーチの評点50点は良いほうですか

TSRの区分では50〜64点は「多少注意」です。65点以上が「無難」、80点以上が「警戒不要」。ただしこの区分は与信管理(代金を回収できるか)の目線で付けられたものです。

自分の会社の評点を無料で知る方法はありますか

両社とも評点はレポートやデータベースの商品として提供しています。TSRのミドルレポートは7,300円、企業情報のダイジェストなら数百円台からで、費用の一覧は企業の信用調査の費用相場にまとめました。「無料で評点が分かる」とうたうサービスは、登録や営業を前提にしたものが多いので注意してください。

取引先の評点が載っていませんでした。危ない会社ですか

そうとは限りません。TDBのCOSMOS2は151万社、TSRの評点付与は約160万社で、活動中の法人5,028,697社の3割前後です。評点が無いのは、調査が入っていないだけの場合がほとんどです。評点が無い会社の見方は取引先の信用を調べる方法にあります。

評点を上げる方法はありますか

この記事の範囲外ですが、公式の構成要素から言えることは、TDBの客観点(業歴・資本構成・規模・損益)は決算と時間で決まり、主観点(企業活力)と資金現況は調査への協力姿勢と資料の開示で変わる、ということです。TSRの「公開性」10点も資料の公開状況が対象です。具体的な手法は両社の案内や税理士に確認してください。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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