✍ 古家あきら | 2026-10-23 更新
第三セクター・外郭団体・公社とは — 就職前に確かめたい「誰が出資しているか」(全国6,947法人、「公社」と名乗る法人の23.2%は株式会社)
先に結論です。第三セクターは「自治体がお金を出している、民間の形をした法人」です。株式会社や財団法人の形をとりながら、県や市町村が出資者に入っています。総務省の調査では、2025年3月31日時点で全国に6,947法人あります。
就職先として見るときに大事なのは、社名だけでは第三セクターかどうか分からないことです。しょくばログという会社データベースを運営していると、名前に「公社」とつく法人を毎日のように見かけます。数えてみると、活動中の1,935法人のうち449法人(23.2%)は株式会社でした。自治体が出資している会社もあれば、そうでない会社もあります。
確かめるべきなのは名前ではなく、①法人の種類 ②自治体が出資しているか ③どのくらいの割合かの3つです。順に説明します。
第三セクター・外郭団体・公社の違い
3つの言葉はよく混ざって使われますが、指している範囲が少しずつ違います。
- 第三セクター … 自治体が出資している株式会社・社団法人・財団法人。「第一セクター=国や自治体」「第二セクター=民間企業」に対して、その中間という意味の呼び名です
- 地方三公社 … 地方住宅供給公社・地方道路公社・土地開発公社の3つ。それぞれ専用の法律でつくられた特別な法人で、株式会社でも財団でもありません
- 外郭団体 … 自治体と関係の深い法人をまとめて呼ぶ言葉。法律で決まった定義はなく、「出資割合が何%以上」などの線引きは自治体ごとに違います
総務省は第三セクターと地方三公社をまとめて「第三セクター等」と呼び、毎年の調査の対象にしています。外郭団体は自治体ごとの呼び名なので、同じ法人がA市では外郭団体、B市の基準では外郭団体に入らない、ということも起こります。
全国に何法人あるか(総務省の調査)
総務省「第三セクター等の状況に関する調査結果の概要(令和7年3月31日時点)」の数字です。
- 社団法人・財団法人 … 3,035法人
- 会社法法人(株式会社など) … 3,301法人
- 地方三公社 … 611法人
- 合計 … 6,947法人(前回2023年3月時点の7,027法人から80減)
- 参考:地方独立行政法人 … 166法人(公立病院・公立大学など。第三セクター等とは別枠)
この2年間で新たにつくられた法人も86ありますが、それ以上に解散・統合が進み、全体の数は減っています。
「公社」という名前の法人を数えてみた
しょくばログには、国税庁の法人番号データをもとにした全国の法人の台帳があります。そこで名前に「公社」を含む法人を数えました。
- 名前に「公社」を含む法人 … 2,682法人(うち活動中1,935、閉鎖747)
- 活動中1,935法人の法人の種類
- 法人の種類を名前に含まない(地方三公社など) … 677
- 株式会社 … 449
- 一般財団法人 … 265
- 公益財団法人 … 224
- 一般社団法人 … 134
- 有限会社 … 123
- 公益社団法人 … 50
地方三公社は、総務省の数とほぼ一致した
名前から地方三公社を数えると、活動中は土地開発公社535・住宅供給公社45・道路公社29の合計609法人でした。総務省の調査の611法人とほぼ同じ数です。この3つは名前に「株式会社」などがつかず、法人番号の種類もすべて「その他の設立登記法人」でした。
つまり、「○○市土地開発公社」「○○県住宅供給公社」のような名前なら、自治体がつくった公社とみてほぼ間違いありません。
「○○公社株式会社」は、名前だけでは分からない
一方、株式会社や有限会社の「公社」は、事情が違います。たとえば名前に「振興公社」を含む法人は491ありましたが、そのうち175は株式会社でした。
株式会社の「公社」には、自治体が出資している第三セクターもあれば、昔の出資関係が終わって民間の会社になったもの、もともと民間で名前に「公社」を使っているだけのものもあります。名前で見当はつけられても、出資者は名前からは分かりません。
公社の閉鎖は「清算」と「登記官による閉鎖」が多い
閉鎖した公社747法人の理由(国税庁の閉鎖事由)は、清算の結了などが415、登記官による閉鎖が300、合併が31でした。土地開発公社に限ると、796法人のうち261法人(32.8%)がすでに閉鎖しています。
登記官による閉鎖は、法務局が職権で登記記録を閉じたものです(仕組みは閉鎖された会社の登記簿の記事で説明しています)。いずれにしても、「公社」という名前の法人の4分の1以上がすでに残っていない、というのが台帳から見える実態です。
会社サイトで「第三セクター」と書く会社は0.1%
しょくばログが集めた会社サイトのテキスト31,159社分で、言葉が出てくる会社を数えました。
- 「第三セクター」 … 31社(0.1%)
- 「外郭団体」 … 22社(0.1%)
- 「指定管理」 … 282社(0.9%)
「第三セクター」と書く31社のうち、28社は株式会社でした。会社サイトで自分から第三セクターと名乗る会社はほとんどありません。代わりに会社概要の「株主」「出資者」の欄に、市町村の名前が書かれていることがあります。
求人のタイトルで「第三セクター」と書かれたものは、しょくばログが集めた求人の中には1件もありませんでした。求人票から第三セクターかどうかを読むのは、ほぼ無理と考えたほうがいいです。
第三セクターかどうかを確かめる手順
1. 法人番号で、法人の種類を確かめる
まず国税庁の法人番号公表サイトで、正式な名前と法人の種類を確かめます。株式会社か、財団法人か、地方三公社か。ここで「その他の設立登記法人」で名前が「○○公社」なら、地方三公社の可能性が高くなります。法人の種類ごとの違いは法人の種類の一覧にまとめています。
2. 会社概要の「株主」「出資者」を見る
会社サイトの会社概要に、株主や出資者の一覧を載せている第三セクターは多いです。「○○市 51%」「○○県・○○町・地元企業」のように書かれていれば、自治体が出資していることが分かります。株主の調べ方は親会社・グループ会社の調べ方、資本金については資本金の調べ方も参考になります。
3. 自治体のサイトで「出資法人」の一覧を探す
いちばん確実なのは、出資している側の自治体の資料です。多くの自治体が「出資法人一覧」「外郭団体の経営状況」「出資団体の経営評価」といった名前で、出資している法人と出資割合、決算の概要を公開しています。自治体のサイト内で「出資法人」と検索すると見つかることが多いです。
4. 自治体の出資割合を見る
出資割合で、自治体との関係の深さが変わります。総務省の調査でも、経営状況まで詳しく見ているのは「自治体の出資が25%以上」か「出資は少ないが補助金などの支援を受けている」法人です(今回は5,760法人)。出資が数%だけの法人と、過半数を自治体が持つ法人では、同じ第三セクターでも中身がまったく違います。
就職前に確認しておきたいこと
雇い主は「法人」で、自治体ではない
第三セクターで働く人を雇うのは、その株式会社や財団法人です。自治体が出資していても、雇用契約を結ぶ相手は法人です。給与や休日の決まりも、その法人の就業規則によります。「自治体系だから」と思い込まず、企業研究で民間の会社と同じように条件を確かめてください。
経営状況は、法人ごとに大きく違う
総務省の調査で経営状況が分かる5,760法人のうち、経常黒字の法人は3,503(60.8%)、債務超過の法人は235(4.1%)でした。分野で見ると、債務超過の割合がいちばん高いのは「観光・レジャー」の12.2%です。
また、自治体から補助金を受けている法人は2,661(46.2%)ありました。補助金があることは悪いことではありませんが、自治体の方針が変われば事業の形が変わる可能性がある、ということでもあります。自治体が公開している経営評価の資料には、法人ごとの決算と今後の方針(存続・統合・廃止の検討など)が書かれていることがあるので、応募前に読んでおくと安心です。
財団法人・社団法人なら、非営利の法人として見る
第三セクターの半分近くは社団法人・財団法人です。株式会社とは決算の見方やお金の流れが違います。非営利の法人の見方は非営利法人の倒産や経営状況の調べ方とNPO法人と一般社団法人の違いで扱っています。国がつくる独立行政法人は第三セクターとは別のもので、こちらは独立行政法人と会社の違いにまとめています。
公共施設の運営なら「指定管理」の期間を見る
体育館・文化ホール・道の駅などを運営する第三セクターの多くは、自治体から「指定管理者」として運営を任されています。指定管理には期間があり、期間が終わると別の会社に運営が移ることもあります。会社サイトで「指定管理」と書く282社の中にも、第三セクターと民間企業の両方が含まれていました。仕事が特定の施設に結びついているなら、指定の期間がいつまでかを確かめておくと、入社後の見通しが立てやすくなります。
よくある質問
第三セクターの職員は公務員ですか?
第三セクターの職員を雇っているのは、株式会社や財団法人などの法人です。自治体の職員として採用されるわけではありません。自治体から職員が出向してきている法人はありますが、それは出向元が自治体であるという話で、法人が採用する職員とは立場が違います。
第三セクターの一覧はどこで見られますか?
全国をまとめた法人名の一覧は、総務省の調査結果の概要には載っていません。いちばん確実なのは、出資している自治体のサイトにある「出資法人一覧」「外郭団体一覧」です。都道府県が、県内の第三セクターの経営状況をまとめて公開していることもあります。
「公社」と名前につけば、自治体の法人ですか?
名前に「公社」がつく活動中の法人1,935のうち、449は株式会社、123は有限会社でした。地方三公社(土地開発公社・住宅供給公社・道路公社)は自治体がつくった法人ですが、株式会社の「公社」は自治体が出資しているとは限りません。会社概要の株主欄や、自治体の出資法人一覧で確かめてください。
外郭団体と第三セクターは同じですか?
重なる部分は大きいですが、同じではありません。第三セクターは総務省の調査で範囲が決まっていますが、外郭団体には法律上の定義がなく、自治体ごとに「出資割合25%以上」などの基準を決めています。同じ法人でも、自治体によって外郭団体と呼ぶかどうかが変わります。
第三セクターは潰れないのですか?
潰れないとは言えません。総務省の調査でも、第三セクター等の数は2年間で80減っています。しょくばログのデータでも、名前に「公社」を含む法人の27.9%はすでに閉鎖していました。解散・統合は自治体の方針で決まることも多いので、出資している自治体の経営評価の資料を確かめておくのが確実です。
まとめ
- 第三セクターは、自治体が出資している株式会社・社団法人・財団法人。総務省の調査では全国6,947法人(2025年3月時点)
- 地方三公社(土地開発・住宅供給・道路)は専用の法律でできた法人で、しょくばログの台帳でも活動中609法人と総務省の611法人にほぼ一致
- 名前に「公社」とつく活動中の法人のうち23.2%は株式会社。名前だけでは自治体が出資しているか分からない
- 会社サイトで「第三セクター」と書く会社は0.1%、求人タイトルでは0件。確かめるなら株主欄と自治体の出資法人一覧
- 就職前は、出資割合・経営評価の資料・指定管理の期間を見る。雇い主はあくまで法人
データについて
- 第三セクター等の数・経営状況:総務省「第三セクター等の状況に関する調査結果の概要(令和7年3月31日時点)」
- 「公社」を含む法人:しょくばログの法人台帳(国税庁 法人番号公表サイトのデータ)で、名前に「公社」を含む法人を集計(2026-10-23)。名前で拾っているため、名前に「公社」を含まない第三セクターは入っていません
- 会社サイトの語:しょくばログが収集した会社サイトのテキスト31,159社分(2026-10-23 集計)。文字化けの多いファイルは除外
- 個社名は載せていません