✍ 古家あきら | 2026-10-09 更新

塗装剥離の東京リムーバーが破産、負債約1億7,600万円──「取引先に大手の名前」をどう読むか。社名に「塗装」を持つ法人14,516社は有限会社が61.3%、取引先を載せる会社サイトは10.2%

先に結論です。茨城県猿島郡境町の東京リムーバー株式会社が、2026年9月30日に水戸地方裁判所から破産手続の開始決定を受けたと報じられました。負債総額は約1億7,600万円です。 工業用の塗装剥離・洗浄、めっき用治具の修理製作、産業廃棄物の収集運搬を手がけていた会社です。

報道の見出しには、同社が取引先として日産・ホンダ・日立建機などの名前を載せていたことも書かれていました。しょくばログという会社データベースを運営していると、会社サイトの「主要取引先」欄を見て安心した、という声をよく聞きます。ただ、取引先の欄は「その会社の経営が安定している」ことを示すものではありません。

この記事は、東京リムーバーの経営を評価するものではありません。報道で確認できる事実を並べたうえで、取引先の欄をどう読めばよいかを、一般化してまとめます。

出典:【茨城】塗装剥離の東京リムーバーが破産 負債1.76億円、日産・ホンダ・日立建機など取引先に掲載(JC-NET・2026年10月9日)

報道で確認できる事実

報道に書かれている内容を、そのまま並べます。

従業員数と、破綻に至った詳しい理由は、報道からは確認できませんでした。この記事でも推測では書きません。

数字の上では、負債総額が2018年2月期の年間売上を上回っています。社名に「東京」とありますが、本店は茨城県です。社名と所在地が一致しないことは珍しくないので、取引の前には法人番号の調べ方で本店所在地を確かめておくと安心です。

しょくばログの台帳で見た東京リムーバー

国税庁の法人番号データをもとにした、しょくばログの台帳でも確認しました。

破産の開始決定が出ても、手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは、データ上は存続のまま残ります。台帳に「閉鎖」と出ていないことは、会社が動いている証明にはなりません。破産・民事再生・特別清算の違いは倒産の種類を整理した記事で説明しています。

境町に本店を置く法人(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)は台帳上1,070社、うち閉鎖の記録がないのは939社です。社名に「塗装」を含む存続中の法人は、町内に5社ありました。

社名で見る「塗装」「めっき」の会社

社名に関連する言葉を持つ法人を数えました。対象は上の5種類の法人です。

5種類の法人全体(5,121,487社)では、閉鎖率は13.6%、有限会社の割合は32.6%です。

有限会社は2006年の会社法の施行以降は新しく作れないため、有限会社の割合は「古くからある会社が多いか」の目安になります。「塗装」の会社は約6割が有限会社で、全体の約2倍です。小さな規模で長く続けてきた会社が多い業界だと読めます。存続中の「塗装」の会社は東京都1,270社、神奈川県1,141社、埼玉県887社の順に多く、茨城県にも302社あります。

なお、これは「社名にその言葉を入れた会社」の断面で、業界全体の数ではありません。東京リムーバー自身も、社名に「塗装」は入っていません。

会社サイトの「主要取引先」はどれくらい載っているか

しょくばログが内容を読めた会社サイト31,159件を調べました。

塗装に関わる会社は、全体より取引先を載せる割合が高いことが分かります。下請けや加工の仕事は、どこの仕事をしているかが実力の証明になりやすいからだと考えています。

「取引先に大手」を見たときの4つのこと

ここからは個社の話を離れて、取引先の欄を読むときの考え方を一般化します。

1. 取引先の欄は「過去の実績」と読む

取引先の欄は、いつ時点の情報かが書かれていないことがほとんどです。一度でも仕事をした会社を載せ続けている場合もあります。今も継続して取引があるかどうかは、欄だけでは分かりません。

2. 大手の名前と、経営の安定は別の話

大手と取引があっても、一社あたりの発注量が小さければ、経営を支えるほどの売上にはなりません。むしろ取引先が少数に偏っていると、受注が減ったときの影響は大きくなります。取引先の調べ方は会社の取引先の調べ方でまとめています。

3. 売上・資本金・決算公告と合わせて見る

取引先の欄より確かなのは、数字の情報です。資本金は資本金の調べ方、決算の開示は決算公告を出していない会社の記事で整理しています。今回のように、負債が年間売上を上回る状態は、外からは見えにくいものです。

4. 許可が要る仕事は、許可の番号も確かめる

東京リムーバーは産業廃棄物の収集運搬も手がけていました。こうした許可が要る事業は、許可番号で確かめられます。方法は産業廃棄物の許可の確認方法で説明しています。取引先の与信の考え方全般は取引先の信用の調べ方も参考にしてください。

運営者として思うこと

塗装剥離やめっき治具の修理は、製造業の現場を裏から支える仕事です。名前が表に出ることは少なく、だからこそ取引先の欄に大手の名前を並べて、仕事の確かさを伝えようとする会社は多いのだと思います。

その欄はうそではありません。ただ、取引先の名前は「どんな仕事をしてきたか」を語るもので、「これからも続くか」を語るものではない。働く場として、取引先として会社を見るときは、取引先の欄で仕事の中身をつかみ、数字と登記で今の姿を確かめる。この2段で見ると、見誤りはだいぶ減ると考えています。

よくある質問

東京リムーバーは倒産したのですか?

報道によると、2026年9月30日に水戸地方裁判所から破産手続の開始決定を受けています(令和8年(フ)第56号)。負債総額は約1億7,600万円と報じられています。

しょくばログで見ると、もう閉鎖になっていますか?

2026年10月9日時点の台帳では、閉鎖の記録はありません。破産手続が終わるまでは、データ上は存続のまま残るのが普通です。

取引先に大手企業の名前があれば安心できますか?

安心の材料の一つにはなりますが、経営の安定を示すものではありません。取引先の欄は時点が書かれていないことが多く、売上や負債は分かりません。資本金・決算・登記と合わせて確かめることをおすすめします。

東京リムーバーに売掛金がある場合はどうすればよいですか?

報道では、破産債権の届出期限は2026年11月30日とされています。具体的な手続きは、破産管財人からの案内や裁判所の情報を確かめてください。この記事では個別の回収の見通しは判断できません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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