✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新

消毒用エタノールの大洋製薬が破産。コロナ禍の売上約34億円から反動──しょくばログDBで見る社名に「製薬」を持つ法人1,230社

先に結論です。消毒用エタノールなどの殺菌消毒剤を製造していた大洋製薬株式会社(東京都文京区)が、2026年9月30日付で東京地裁から破産手続きの開始決定を受けました。 東京商工リサーチの情報を伝えた報道によると、負債は2025年9月期決算の時点で約16億円です。

報道で挙げられている経緯は、コロナ禍で衛生用品の需要が膨らんだあと、その反動で売上が落ち込み、資金繰りが続かなくなったというものです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、倒産のニュースには「ずっと調子が悪かった会社」だけでなく、「一度大きく伸びた会社」も出てくることに気づきます。急に増えた需要は、急に減ることもあります。この記事は大洋製薬の経営を評価するものではありません。特需で売上が跳ねた会社と取引する人・働く人が、何を見ておけばよいかを台帳の数字とあわせて書きます。

出典:「大洋製薬」が破産手続き開始決定 殺菌消毒剤など製造、コロナ禍以降に売り上げが落ち込む(東京新聞デジタル・2026年10月2日)

出典:東京の製薬会社「大洋製薬」に破産開始決定、負債16億円(不景気.com・2026年10月5日)

報道で確認できる事実

60年以上続いてきた会社が、コロナ禍で売上を伸ばし、その数年後に破産に至っています。需要が伸びた時期と、資金繰りが行き詰まった時期の間は5年ほどです。

しょくばログの台帳で見ると

本人の会社は、まだ「活動中」と表示される

しょくばログの台帳では、文京区本郷の大洋製薬株式会社(法人番号1010001004403)は、この記事を書いた時点で「活動中」の表示です。台帳の元になっている国税庁の法人番号公表サイトは、登記が閉鎖されたときに情報が更新されます。破産手続きが始まっても、手続きが終わって登記が閉じるまでは閉鎖の表示になりません。この見え方は会社の実在と倒産の確かめ方にまとめています。

なお、「大洋」を社名に含む医薬品関連の会社は他にもあり、社名だけで判断すると取り違えが起きます。照合は法人番号で行うのが確実です。

社名に「製薬」を持つ法人1,230社

台帳で、社名に「製薬」を含む法人を数えると、累計1,230社でした。そのうち活動中が1,055社、閉鎖が175社で、閉鎖率は14.2%です。台帳全体の閉鎖率13.3%とほぼ同じ水準でした。

閉鎖175社の内訳は次のとおりです。

閉鎖の約2割が合併です。製薬は再編が多い業界で、閉鎖がそのまま「廃業」を意味するわけではない点に注意が要ります。

活動中1,055社の法人の種類は、株式会社が888社(84.2%)で大半を占め、有限会社は41社(3.9%)にとどまります。社名に「薬品」を含む法人(活動中2,930社)では有限会社が46.9%を占めるのと比べると、はっきり違います。「薬品」には薬局や卸の小さな会社が多く含まれ、「製薬」はつくる側の会社が中心だからだと考えられます。

東京に4割が集まる

活動中1,055社の所在地を都道府県別に見ると、上位は次のとおりでした。

東京都が4割を占めます。大洋製薬も本社は文京区、工場は埼玉県でした。本社の住所と、実際にものをつくっている場所が違う会社は珍しくありません。取引先の拠点を確かめるときは、登記上の本店所在地だけでなく、工場や事業所の場所も見ておくと実態をつかみやすくなります。

活動中1,055社のうち、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録が確認できたのは573社(54.3%)でした。

取引先・働く人が確かめたいこと

1. 特需で伸びた売上は、元に戻る前提で見る

消毒剤や検査のように、感染症の流行で一時的に需要が増えた商品は、流行が落ち着くと需要も戻ります。伸びた時期に設備や人を増やしていると、売上が戻ったときに固定費だけが残ります。取引先の売上が急に伸びた時期があったなら、「いまの売上が、伸びる前と比べてどうか」を見ておくと判断しやすくなります。同じくコロナ禍の需要に関わった会社の例は無料PCR検査の補助金を取り消されたメディトランセの破産でも取り上げています。

2. 決算の数字を時系列で並べる

1年分の決算だけでは、伸びているのか、落ちているのかがわかりません。決算公告が出ていれば、数年分並べて見るのが基本です。ただ、決算公告を出していない会社も多く、その場合に代わりに見るものは決算公告を出していない会社は違法かにまとめています。

3. 取引先は法人番号とインボイス番号で確かめる

先ほど触れたとおり、製薬会社には似た社名が多くあります。請求書に書かれた登録番号(T+13桁)から法人番号を引けば、相手を一意に確かめられます。手順はインボイスの登録番号から会社を調べる方法と法人番号の調べ方にあります。

4. 破産なのか、民事再生なのかで、その後が違う

破産は会社をたたむ手続きで、事業は原則として止まります。民事再生は事業を続けながら立て直す手続きです。どちらかによって、製品の供給や代金の支払いがどうなるかが変わります。違いは倒産の種類(破産・民事再生・会社更生・特別清算)の違いで説明しています。

5. 働いていた人は、給与の未払いがないか確かめる

勤め先が破産した場合、未払いの給与や退職金は、破産の手続きの中で扱われます。国の未払賃金立替払制度が使える場合もあります。窓口は最寄りの労働基準監督署です。手続きの詳細は、破産管財人や労働基準監督署に確かめてください。

よくある質問

Q. しょくばログで見ると、この会社はまだ「活動中」です。間違いですか。

間違いではありません。台帳の元データは登記の閉鎖で更新されるため、破産手続きの開始が決まっただけでは表示は変わりません。手続きが終わり登記が閉じた時点で、閉鎖と表示されます。

Q. 社名に「製薬」がつく法人の閉鎖率14.2%は高いのですか。

台帳全体の13.3%とほぼ同じです。閉鎖の約2割は合併によるもので、廃業だけを数えた数字ではありません。また、閉鎖の数は過去の登記の整理で年によって大きく動くため、この割合から「製薬会社は危ない」とは言えません。

Q. 社名に「製薬」がない製薬会社は数えていないのですか。

数えていません。今回の数字は、社名に「製薬」という文字が入っている法人だけを集計したものです。医薬品をつくっていても社名に「製薬」を使っていない会社は含まれていないため、業界全体の数ではない点に注意してください。

Q. 取引先が破産したら、仕入れている製品はどうなりますか。

一般的には、破産手続きが始まると事業は止まり、製品の供給も止まります。在庫の扱いや代金の精算は破産管財人が判断します。代わりの仕入れ先を早めに確保すること、未払いや未納品の状況を整理しておくことが大切です。具体的な判断は、取引のある専門家に相談してください。

まとめ

急に伸びた売上は、急に戻ることがあります。取引先の数字を見るときは、いちばん良かった年ではなく、伸びる前と比べていまどうかを見ておく。それが今回のニュースから引き出せるいちばん実用的な教訓だと思います。

※この記事の台帳の数字は、国税庁の法人番号公表サイトのデータをもとにしょくばログが集計したものです(2026年10月5日時点)。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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