✍ 古家あきら | 2026-10-06 更新

葬儀社に許可は要るのか — 葬儀業と互助会の制度の違い(経産省の互助会一覧は228社、葬儀を掲げる会社サイト141社のうち互助会に触れていたのは24社)

先に結論です。葬儀社そのものに「葬儀業の許可」はありません。 葬儀の施行を仕事にするのに、国や自治体の許可や届出を求める法律はなく、葬儀社の看板を出すだけなら誰でも始められます。そのかわり、葬儀社が手がける仕事の一部には、別の法律の許可がかかっています。

しょくばログという会社データベースを運営していると、葬儀社の会社概要に「霊柩運送事業許可」「経済産業大臣許可 互第〇〇号」と書いてあるのを見かけることがあります。一方で、許可の記載がまったくない葬儀社も多く、それ自体は不自然なことではありません。そもそも葬儀業に許可の制度がないからです。この記事では、葬儀社にかかわる制度を法令で整理し、経産省の互助会一覧と、うちが保存している会社サイトの文章を数えた結果をお見せします。

葬儀業そのものに許可はない

「葬儀社」を名乗るのに資格も届出も要らない

葬儀の施行(式の段取り、祭壇の設営、会場や返礼品の手配など)を仕事にすることについて、許可・登録・届出を定めた法律はありません。旅行業や宅地建物取引業のように、業を始める前に役所の名簿に載る仕組みがないということです。

そのため「許可番号が書いていないから無許可の葬儀社だ」という見方は成り立ちません。葬儀社を選ぶときに許可の有無で白黒をつけることはできず、別のところを見て判断することになります。

葬儀社の仕事にかかわる許可・資格

許可がないのは「葬儀の施行」そのものです。葬儀社が手がける周辺の仕事には、次のような制度があります。

このうち、葬儀社を選ぶ人に直接かかわるのは、互助会と霊柩の運送の2つです。

互助会は経済産業大臣の許可が要る

前払式特定取引とは

互助会の仕組みは、会員が月々の掛金を積み立て、あとで葬儀や結婚式のサービスを受けるというものです。割賦販売法はこれを「前払式特定取引」として定めています。

条文の定義では、商品の引渡しや政令で定める役務(指定役務)の提供に先立って、その代金や対価の全部または一部を「二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領するもの」とされています(割賦販売法2条6項)。冠婚葬祭の儀式にかかわるサービスがこの指定役務に入っているため、互助会はこの取引にあたります。

そのうえで、35条の3の61は「前払式特定取引は、経済産業大臣の許可を受けた者でなければ、業として営んではならない」と定めています。許可を受けずに営むと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科もあり)の対象です(同法49条5号)。

前受金の半分は保全される

互助会がとくに規制されているのは、会員から受け取ったお金(前受金)が、サービスを提供するまで事業者の手元に残るからです。事業者が倒れれば、積み立てた人がサービスを受けられなくなります。

そこで割賦販売法は、毎年3月31日と9月30日を基準日として、前受金の合計額の2分の1に相当する額が営業保証金の額を上回る場合には、前受業務保証金の供託などの「前受金保全措置」を講じるよう求めています(同法18条の3を35条の3の62で準用)。裏返すと、保全されるのは前受金の半分が目安で、全額ではありません。この点は、互助会に入る前に知っておいてよいことです。

葬儀社と互助会は同じではない

互助会は許可を受けた会社が運営し、葬儀の施行も自社やグループの会館で行うのが一般的です。ただし「互助会の会社」と「葬儀社」は一致しません。互助会を持たず、葬儀の施行だけを請け負う葬儀社のほうがずっと多いからです。

ですから、葬儀社のサイトに互助会の許可が書いていなくても、それは「互助会をやっていない」というだけの話です。逆に、互助会の勧誘を受けたときは、その会社が経産省の許可を受けているかを確かめる意味があります。

経産省の互助会一覧:228社の中身

経済産業省は、許可を受けた事業者の一覧を公表しています。「前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)一覧(令和8年3月末現在)」を取得し、載っている事業者を数えました。

228社、許可の9割は昭和

都道府県で見ると

本社の所在地で数えると、228社は46都道府県にあります。多い順に東京都18社、愛知県14社、福岡県13社、神奈川県11社、長野県9社、静岡県・埼玉県8社でした。互助会は地域に根を張った事業なので、大都市に集中しているわけではありません。

うちのデータベースと突き合わせると

228社の社名と都道府県を、しょくばログの法人データベースと照らし合わせました。社名と都道府県が完全に一致して1社に絞れたのは195社です。残る33社は、一覧の社名の書き方(登記上の本店と営業所の併記など)や同名の会社があることで、機械的には1社に決められませんでした。

195社のうち、うちが会社サイトの文章を保存しているのは17社で、まだ一部にとどまります。

会社のサイトは何を書いているか:141社のデータ

しょくばログが保存している会社サイトの文章31,159社分を数えました。「葬儀」「葬祭」の語がある会社は484社で、そのうち葬儀社・家族葬・斎場・葬儀プランといった、葬儀を事業として掲げる語が2回以上出てくる会社を141社として数えています。

何を載せているか

141社の中で、それぞれの語に触れていた会社の数です。

互助会に触れても、許可まで書くのは一部

互助会に触れていた24社のうち、割賦販売法や経済産業大臣の許可にまで触れていたのは12社でした。半分です。許可番号まで書いていたのは6社にとどまります。

互助会に触れている会社の中には、互助会そのものを運営していない会社もあります(互助会の会員も利用できると案内している葬儀社など)。ですから「許可を書いていない=無許可」とは言えません。ただ、自社で互助会を運営していると読める会社でも、サイトで許可番号まで示しているのは少数です。互助会に入る前の確認は、サイトではなく経産省の一覧で行うほうが確実です。

なお、141社のうち経産省の一覧と社名・都道府県で一致したのは15社でした。葬儀を掲げる会社サイトの大半は、互助会を持たない葬儀社です。

霊柩の運送:搬送に触れる52社、許可まで書くのは12社

ご遺体の搬送に触れていたのは52社でしたが、一般貨物自動車運送事業の許可に触れていたのは12社でした。搬送を自社でしていても許可をサイトに書かない会社もあれば、搬送を霊柩の専門会社に任せている葬儀社もあります。気になるときは、搬送を自社で行うのか、許可を持つ会社に頼むのかを聞いてみてください。

どんな会社が書いているか

141社の法人の種類は、株式会社113社、その他の法人(一般社団法人や協同組合など)18社、有限会社9社でした。所在地は東京都41社、大阪府10社、神奈川県・愛知県6社と、大都市に偏っています。これはうちが保存しているサイトの偏りも映しているので、全国の葬儀社の分布とは別物として見てください。

社名に「葬儀」「葬祭」を含む法人

法人データベース全体(5,791,529法人)で、社名に「葬儀」または「葬祭」を含む法人は1,839社ありました。うち登記上閉鎖しているのは241社(13.1%)で、法人全体の閉鎖割合13.2%とほぼ同じです。

目を引くのは法人の種類です。今も存続している1,598社のうち、有限会社が784社(49.1%)を占め、株式会社の592社より多くなっています。存続している法人全体で有限会社が占める割合は28.4%なので、葬儀の会社は有限会社の割合が高い業種です。有限会社は2006年の会社法施行後は新しく作れないため、古くから地域で続く葬儀社が多いことがうかがえます。

ほかの語では、社名に「セレモニー」を含む法人が625社(閉鎖81社)、「典礼」が200社(閉鎖34社)、「互助会」が389社(閉鎖32社、8.2%)でした。社名に「互助会」を含む法人は、経産省の一覧の228社よりずっと多く、許可とは関係のない親睦団体や、すでに許可を持たない法人も含まれていると考えられます。社名だけで互助会の許可の有無は判断できません。

葬儀社を確かめる手順

1. 会社そのものを確かめる:社名と所在地で法人番号を引き、登記が生きているか、本店の所在地がどこかを確かめます。会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法の手順がそのまま使えます 2. 互助会なら経産省の一覧で照合する:勧誘を受けた会社、または入会しようとしている互助会が、「前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)一覧」に載っているかを見ます。ブランド名ではなく、運営会社の社名と所在地で探します 3. 互助会の解約条件を書面で読む:契約前に、解約したときに戻る金額と手数料の考え方を、契約書面や約款で確かめます 4. 搬送の体制を聞く:病院や自宅からの搬送を自社で行うのか、霊柩運送の許可を持つ会社に頼むのかを確かめます 5. 見積の内訳をもらう:葬儀業には許可制度がないぶん、確かめられるのは見積と契約の中身です。何が含まれ、何が追加になるのかを書面でもらいます 6. 行政処分を調べる:互助会は経済産業省、霊柩の運送は運輸局の処分の対象になります。会社の行政処分を調べる方法で、処分歴がないかを確かめられます

許認可全般の調べ方は会社の許認可を調べる方法に、取引相手として会社を確かめるときの項目は新しい取引先を確認するときのチェック項目にまとめています。運送業の許可の見方は、引越業者の許可を確認する方法で一般貨物自動車運送事業の許可を詳しく扱っています。

よくある質問

葬儀社を開業するのに許可や資格は要りますか?

葬儀の施行そのものに、許可・届出・資格の制度はありません。ただし、霊柩車でご遺体を運んで料金を受け取るなら一般貨物自動車運送事業の許可が、互助会のように費用を前もって分割で受け取るなら経済産業大臣の許可が要ります。ほかに、会館を建てるときの建築や消防の手続きなど、事業の中身に応じた手続きはあります。

葬祭ディレクターがいない葬儀社は問題がありますか?

葬祭ディレクターは業界の技能審査による資格で、葬儀を行うための免許ではありません。いなくても違法ではありません。うちが数えた141社でも、サイトで葬祭ディレクターに触れていたのは40社でした。経験の目安のひとつとして見るのがよいと思います。

互助会の積立金は、会社が倒産したら全額戻りますか?

割賦販売法の前受金保全措置は、前受金の合計額の2分の1に相当する額を基準にしています。全額が保全される仕組みではありません。保全の方法(前受業務保証金の供託か、供託委託契約か)は事業者ごとに異なるので、気になるときは契約書面や事業者に確かめてください。

互助会に入っていなくても、互助会の会館で葬儀はできますか?

会員以外の葬儀を受けている互助会もありますが、料金や扱いは会社ごとに違うので、その会社に直接確かめるのが確実です。互助会の会員であることは、その会社で葬儀をする義務ではありません。

葬儀社のサイトに許可番号が書いていないのは怪しいですか?

葬儀業に許可の制度がない以上、許可番号がないことは不自然ではありません。うちが数えた141社でも、互助会の許可番号を書いていたのは6社、霊柩の運送の許可に触れていたのは12社でした。許可を確かめるなら、互助会は経産省の一覧、搬送は運輸局の許可、と確かめる先を分けてください。

データについて

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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