✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

商社と問屋(卸売)の違い — 社名に「商事」「商会」「商店」がつく会社は何をしているのか。活動中の会社442万社のうち「商事」は8万9,969社、業種を届け出ている会社の約半分が卸売・小売

先に結論です。商社と問屋は、どちらも「仕入れた商品を、消費者ではなく事業者に売る会社」で、国の統計(日本標準産業分類)ではどちらも「卸売業」に入ります。 「商社」も「問屋」も法律で決まった区分ではなく、慣習的な呼び名です。おおまかには、扱う商品が幅広く、輸出入や事業への投資まで手がける会社を「商社」、特定の商品分野で、メーカーと小売店のあいだをつなぐ会社を「問屋」と呼ぶことが多い、という程度の違いです。

そして、社名に「商事」「商会」「商店」がついていても、卸売の会社とは限りません。 しょくばログの台帳で数えると、「商事」がつく活動中の会社は8万9,969社。そのうち業種を届け出ている会社を見ると、卸売・小売に分類される会社は約半分で、残りは不動産、運輸、建設などでした。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「求人票に○○商事とあるが、商社なのか」「商店という名前なのにお店がない」といった問い合わせをいただきます。社名の言葉と、実際にしている仕事がどのくらい一致しているのか。国税庁の法人番号公表サイトで閉鎖の記録がない会社(株式・有限・合同・合資・合名)442万2,900社の社名を数えてみました。

商社も問屋も、統計上は「卸売業」

国の統計で業種を分ける物差しが、総務省の日本標準産業分類です。大分類Iの「卸売業,小売業」の説明では、卸売業を次のように定めています(要約)。

小売業は、これに対して「個人や家庭が使うために商品を売る事業所」と、「事業者に少量・少額で売る事業所」です。つまり、誰に、どのくらいの量を売るかで卸売と小売が分かれます。商品を自分で作っているかどうかではなく、仕入れて売っているかどうかが基準です。

卸売業の中は、扱う商品で6つの中分類に分かれています。

このうち「各種商品卸売業」には、従業者が常時100人以上で、いろいろな商品をまとめて扱う会社という細分類があります。いわゆる総合商社のような会社は、ここに入ると考えられます。一方、特定の商品を専門に扱う専門商社や問屋は、扱う商品に応じて51〜55のどこかに分類されます。統計の上では「商社」という独立した区分はなく、総合商社も専門商社も問屋も、同じ卸売業の中で商品の種類と規模で分けられている、ということです。

なお、「代理商,仲立業」も卸売業(中分類55の中)に入ります。これは自分では商品を仕入れず、売り手と買い手の取引をとりもって手数料を受け取る事業者です。代理店とメーカーの立場の違いは、別の機会に整理します。

商社と問屋、呼び名の違いはどこにあるか

統計では同じ卸売業でも、ふだんの言葉では「商社」と「問屋」を使い分けています。法律上の定義がない以上、線ははっきりしていませんが、使われ方には次のような傾向があります。

就職・転職で見るときに大事なのは、呼び名よりも「何を」「誰から仕入れて」「誰に売っているか」です。同じ「専門商社」でも、扱う商品と取引先によって、営業のやり方も働き方も大きく変わります。会社の事業内容の確かめ方は会社の事業内容を調べる方法に、取引先の調べ方は会社の取引先を調べる方法にまとめています。

社名に「商事」がつく会社は8万9,969社

では、社名の言葉はどのくらい使われているのか。しょくばログの台帳で、活動中の会社442万2,900社の社名(「株式会社」などの部分を除く)に、商社・卸売を連想させる言葉が含まれる会社を数えました。

「商事」「商会」「商店」は、ほぼすべて(99%以上)が社名の最後に置かれていました。「○○商事」「○○商店」という形です。一方、「問屋」を社名に入れている会社は203社しかなく、「商社」も546社にとどまります。問屋や商社と呼ばれる会社の多くは、社名には「問屋」「商社」を入れず、「商事」「商会」「物産」などを使っている、ということです。

「商事」の会社の約半分は卸売・小売、残りは別の業種

社名に「商事」がついていれば、商社や卸売の会社なのでしょうか。これを確かめるため、経済産業省のgBizINFOに業種が載っている会社に絞って、届け出ている業種を見ました。gBizINFOは、補助金の採択や国の認定などをきっかけに情報が載る会社が多く、すべての会社が載っているわけではありません。そのため件数は少なくなりますが、社名とは別のところから業種を確かめられます。

「商事」「商会」「商店」がつく会社は、全体と比べて卸売・小売の割合が3倍以上あります。社名の言葉は、たしかに業種の手がかりになります。ただし、それでも約半分は卸売・小売以外の会社でした。不動産の管理や賃貸をしている「○○商事」、建設工事をしている「○○商店」は珍しくありません。

この結果には注意点があります。大分類Iは「卸売業,小売業」をまとめた区分なので、ここから卸売と小売は分けられません。また、gBizINFOに載っている会社だけの集計で、社名に「商事」がつく会社全体の傾向とは違う可能性があります。それでも、社名だけで「商社だ」「卸売の会社だ」と決めつけられないことは、はっきり読み取れます。業種の確かめ方は会社の業種を調べる方法にまとめています。

「商店」は古い会社が多く、閉鎖の記録も多い

社名の言葉ごとに、会社の種類と設立年の傾向も見てみました。

会社の種類

「商事」「商会」「商店」は、全体よりも有限会社の割合が高く、半分を超えています。有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなったので、有限会社が多いということは、それ以前からある会社が多いということです(有限会社の今の扱いは有限会社への就職は大丈夫かにまとめています)。とくに「商店」は合資会社が13.7%と、全体(1.3%)の10倍以上ありました。家業の商店が、昔ながらの会社の形のまま続いている姿がうかがえます。

設立年(gBizINFOに設立年が載っている会社)

「商店」「商会」は半数前後が1969年以前の設立です。反対に、カタカナの「トレーディング」は2010年以降の設立が約4割を占めていました。同じ「物を仕入れて売る会社」でも、時代によって選ばれる社名の言葉が変わってきたことが分かります。社名の由来の調べ方は社名の由来を調べる方法にまとめています。

閉鎖の記録がある割合

同じ言葉を社名に含む会社のうち、法人番号公表サイトに閉鎖の記録がある会社の割合です。

「商店」は閉鎖の記録がある割合が27.2%と、全体のほぼ2倍でした。古い会社が多いぶん、清算や合併、休眠会社の整理で閉じた会社も多く含まれていると考えられます。この数字は「商店という社名だと危ない」という意味ではありません。会社の古さと、閉じた理由の違いが混ざった数字です。

社名から商社・卸売の会社を見分けるときの手順

社名の言葉は手がかりにはなりますが、それだけでは足りません。応募先や取引先が「何を仕入れて、誰に売っている会社か」を確かめるときは、次の順で見ていくと確実です。

1. 会社サイトの事業内容を読む:「取扱商品」「主要仕入先」「主要販売先」が書いてあれば、卸売の会社とほぼ判断できる。「メーカー各社の正規取扱店」「○○の一次問屋」といった書き方も手がかりになる 2. 取引先の業種を見る:販売先がスーパーや工務店、工場などの事業者なら卸売、一般の消費者なら小売。両方ある会社も多い 3. 公的な情報で業種を確かめる:gBizINFOや、許認可(酒類・医薬品・食品など、扱う商品によって必要なもの)の名簿で、届け出ている業種を確かめる 4. 求人票の仕事内容を見る:「ルート営業」「既存取引先への提案」「受発注・在庫管理」「輸出入の手続き」といった仕事内容は、卸売の会社に多い。「店頭販売」「接客」が中心なら小売の色が濃い

求人票の読み方は求人票の見方に、企業研究の進め方は転職の企業研究のやり方にまとめています。

社名の言葉と「インボイス登録」の関係

参考までに、国税庁の適格請求書発行事業者(インボイス)として登録されている会社の割合も見ました。

事業者を相手に売る卸売の会社は、取引先からインボイスを求められやすいため、登録している割合が高くなりそうに思えます。ところが「商事」は全体より約10ポイント低い結果でした。社名に「商事」がついていても、実際には取引のない休眠に近い会社や、不動産の管理など別の事業をしている会社がかなり含まれていることが、ここからもうかがえます。インボイス登録の割合についてはインボイス登録していない会社の割合でくわしく見ています。

よくある質問

商社と問屋のどちらに就職するほうがよいですか

どちらがよいとは一概にいえません。統計上はどちらも卸売業で、違いは扱う商品の幅や取引のやり方です。同じ「商社」でも、総合商社と、地域の専門商社では、規模も働き方もまったく違います。呼び名ではなく、扱う商品、取引先、営業のやり方、勤務地や転勤の有無といった中身で比べるのが確実です。

社名に「商事」がついていれば、商社と考えてよいですか

社名だけでは判断できません。gBizINFOに業種が載っている「商事」の会社1,108社のうち、卸売・小売に分類されるのは49.7%で、残りは不動産業、運輸業、建設業などでした。会社サイトの事業内容や取引先、求人票の仕事内容で確かめてください。

「商店」という社名なのにお店がないのはなぜですか

「商店」は、もともと商売をしている家や店を指す言葉で、店舗を持たない卸売や、工事・運送などの仕事をしている会社にも使われています。「商店」がつく会社は半数以上が1969年以前の設立で、家業の屋号をそのまま社名にした例も多いと考えられます。店舗の有無は、社名ではなく会社サイトや地図で確かめるのが確実です。

総合商社と専門商社の違いは何ですか

総合商社は、食料・資源・機械・化学品など幅広い商品を扱い、輸出入や事業への投資まで手がける大きな会社を指します。統計では「各種商品卸売業(従業者が常時100人以上のもの)」がこれに近い区分です。専門商社は、鉄鋼や電子部品、医薬品など特定の分野に絞って扱う会社で、統計では扱う商品に応じた卸売業の分類に入ります。

問屋はなくなっていく仕事ですか

この記事のデータからは判断できません。しょくばログの台帳で社名に「問屋」を含む会社は203社と少数ですが、問屋と呼ばれる会社の多くは「商事」「商会」などの社名を使っているため、社名の数だけで業界の大きさは測れません。業界の動きを知りたいときは、経済産業省の統計や業界団体の公表資料を見るのが確実です。

まとめ

集計について:しょくばログの台帳(国税庁 法人番号公表サイトの全件データ)のうち、閉鎖の記録がない株式・有限・合同・合資・合名会社442万2,900社の社名を、「株式会社」などの部分を除いて集計しました(2026年10月13日時点)。業種と設立年は、経済産業省gBizINFOに載っている会社のみの集計です。業種の分類は総務省「日本標準産業分類」の大分類で、Iは「卸売業,小売業」をまとめた区分です。インボイス登録は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトのデータとの照合です。卸売業の定義は、総務省「日本標準産業分類」大分類I 卸売業,小売業の説明によります。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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