✍ 古家あきら | 2026-10-08 更新
社名の由来を調べる方法 — 会社サイト3万1,159社で数えたら「社名の由来」を載せているのは1.3%、載せている会社の約半数は「想い・願い」を語っていた
先に結論です。社名の由来は、登記簿にも法人番号の公表情報にも載っていません。調べる先は、①会社サイト(「社名の由来」のページ、社長メッセージ、沿革)、②旧社名の履歴、③社史や周年記念誌の3つです。 それでも見つからなければ、会社に直接聞くのがいちばん確実です。
ただし、①で見つかる会社は思ったより少ないです。しょくばログが保存している会社サイト31,159社で数えると、こうなりました。
- 「社名の由来」という言葉そのものを載せている会社は399社(1.3%)。 「社名に込めた」「社名について」「社名の意味」などの言い方まで広げても824社(2.6%)でした
- 載せている会社の約半数(49.5%)は、由来の近くで「想い」「願い」を語っている。 地名や土地の話は16.4%、造語は7.2%、頭文字・略称は5.5%、外国語は5.0%でした
- 由来を載せている会社の6割(60.0%)は、同じサイトに「沿革」も載せている。 由来を語る会社は、会社の成り立ちを語る会社でもある、ということです
しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社名はどういう意味なのか」「名字なのか地名なのか」を聞かれることがあります。データベースには商号(会社の正式な名前)は載っていますが、由来は載っていません。登記にも由来を書く欄がないからです。以下、どこを見ればいいかを、数字と一緒に整理します。
社名の由来は、なぜ公的な記録に載っていないのか
会社を設立するときに登記するのは、商号・本店の所在地・目的・資本金・役員などです。商号を「なぜその名前にしたか」を届け出る仕組みはありません。国税庁の法人番号公表サイトも、登記された商号・所在地・フリガナを公表しているだけです。
つまり由来は、会社が自分で語らない限り、外からは分からない情報です。調べ方は「会社が語っている場所を探す」ことになります。
商号に何が使えるかは決まっていて、2002年11月からはローマ字やアラビア数字なども使えるようになりました(商業登記規則の改正。法務省が案内しています)。今の会社名にアルファベットが多いのはこのためです。読み方を調べたいときは会社名の読み方(フリガナ)を調べる方法が先に役立ちます。
調べ方1:会社サイトのどこを見るか
由来が書かれている場所は、だいたい次のどれかです。
- 「社名の由来」「社名に込めた想い」のページや見出し — 会社案内・会社概要の中に置かれていることが多いです
- 社長メッセージ・代表あいさつ — 「社名の○○には〜という意味があります」と、文章の中で触れていることがあります
- 沿革 — 社名変更の行に、新しい社名の意味が添えられていることがあります。沿革の読み方は会社の沿革の見方にまとめています
- ロゴ・CI(コーポレートアイデンティティ)の説明 — ロゴの形と一緒に社名の意味を説明しているケースです
- 採用ページ・よくある質問 — 学生向けに「社名の由来は?」を載せている会社もあります
探すときは、サイト内検索かブラウザのページ内検索で「由来」「社名」「込め」「意味」と打つのが早いです。Googleで「会社名 社名の由来」と検索すると、会社サイト以外のインタビュー記事が出てくることもあります。
「社名の由来」を載せている会社はどのくらいあるか
しょくばログが保存している会社サイト31,159社で、由来を語る言葉が出てくる割合を数えました。
- 「社名の由来」「社名由来」「商号の由来」:399社(1.3%)
- 上に加えて「社名に込めた」「社名の意味」「社名について」「社名には」「CIの由来」「ネーミング」など:824社(2.6%)
同じ会社サイトで「沿革」が出てくるのは14,470社(46.4%)でした。年表は半分近くの会社が載せているのに、名前の意味まで書く会社は50社に1社程度です。会社サイトに由来がないのは珍しいことではないので、見つからなくても「何か隠している」と考える必要はありません。
業種によって載せる割合が違う
業種が分かる会社で、300社以上ある業種を並べました(左が広い言い方まで含めた割合、右が「社名の由来」等の言葉そのものの割合)。
- 学術研究・専門・技術サービス業:4.8% / 1.9%
- 情報通信業:4.7% / 2.5%
- 金融業・保険業:3.4% / 1.0%
- 宿泊業・飲食サービス業:2.7% / 1.4%
- 製造業:2.3% / 1.0%
- 卸売業・小売業:2.3% / 1.3%
- 運輸業・郵便業:2.1% / 0.9%
- 不動産業・物品賃貸業:1.8% / 0.6%
- 生活関連サービス業・娯楽業:1.7% / 0.9%
- 建設業:1.4% / 0.6%
- 医療・福祉:1.0% / 0.3%
情報通信業や専門サービス業は、カタカナや英語の社名が多く、名前だけでは事業が伝わりにくいので、説明を置くのだと思います。建設業や医療・福祉は、地名や名字、事業内容をそのまま社名にしていることが多く、説明しなくても意味が伝わる、という事情がありそうです(ここは数字ではなく、私の読みです)。
法人の種類による違い
- 株式会社(25,823社):3.0% / 1.5%
- 有限会社(1,128社):1.2% / 0.9%
- その他の設立登記法人(社団・財団・医療法人など3,873社):0.5% / 0.1%
株式会社がいちばん高く、社団・財団・医療法人などは低めでした。法人の名前が地域名や事業名そのものであることが多いためと考えられます。
会社サイトに書かれている由来の中身
広い言い方で由来を載せていた824社について、その言葉から後ろ500字に出てくる語を数えました。1社が複数に当てはまることがあります。
- 「想い」「願い」「込め」など:408社(49.5%)
- 地名・土地(「地名」「この地」「地元」「ふるさと」など):135社(16.4%)
- 造語・組み合わせ:59社(7.2%)
- 頭文字・略称:45社(5.5%)
- 外国語(ラテン語・ギリシャ語・英語など):41社(5.0%)
- 創業者・人名(「創業者」「名字」「名前の一字」など):26社(3.2%)
- 旧社名・社名変更:22社(2.7%)
- どれにも当てはまらない:302社(36.7%)
いちばん多いのは、言葉の意味よりも「この名前に込めた願い」を語る書き方でした。「○○には〜という意味があり、〜でありたいという願いを込めています」という形です。由来の説明というより、経営理念の言い換えに近いものも多くあります。
意外だったのは、創業者や名字に触れているのが3.2%と少ないことです。名字を社名にしている会社自体は多いはずですが、名字が由来なら説明するまでもないので、わざわざ「社名の由来」を書かないのだと思います。由来のページがあるのは、説明しないと伝わらない名前の会社が中心です。
「どれにも当てはまらない」が36.7%あるのは、メニューに「社名の由来」という項目名だけがあって本文がそのページに無い場合や、ここで数えた言葉を使わずに説明している場合が含まれるためです。
調べ方2:旧社名から探す
今の社名だけ見ても意味が分からないとき、前の社名を見ると由来が分かることがあります。たとえば、創業者の名字を使っていた社名を、合併や事業の広がりに合わせて英語やカタカナに変えた、といった流れです。
旧社名は次の順で調べられます。
1. 会社サイトの沿革で「社名変更」「商号変更」の行を探す 2. 国税庁の法人番号公表サイトで、その会社の「変更履歴」を見る(2015年10月以降の商号・所在地の変更が載っています) 3. それより前の経緯は、法務局で登記事項証明書(必要なら閉鎖事項証明書)を取る
商号が変わっても法人番号は変わらないので、法人番号を手がかりにたどれます。詳しくは会社の旧社名を調べる方法にまとめています。
調べ方3:社史・周年記念誌・上場会社の資料
古い会社や大きな会社なら、社史や創業○周年の記念誌に社名の由来が書かれていることが多いです。国立国会図書館や地域の図書館の蔵書検索で、会社名と「社史」「年史」で探せます。
上場会社なら、有価証券報告書の「沿革」で社名変更の時期が分かります。由来そのものは書かれていないことが多いですが、変更の時期が分かれば、当時のニュースリリースや新聞記事を探す手がかりになります。
調べ方4:会社に直接聞く
ここまでで見つからなければ、問い合わせフォームや採用担当に聞くのが確実です。特に採用面接では、社名の由来を聞くのは失礼な質問ではありません。会社の成り立ちや大事にしていることを話してもらうきっかけになります。
商号に多い言葉は「由来」ではない
社名の由来を調べる人の中には、「社名によく使われる言葉」を知りたい人もいると思います。しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号公表データをもとにした、閉鎖していない約499万社。法人格の部分は除いて数えました)で、商号に含まれる言葉を数えました。
- カタカナだけの社名:1,386,165社(27.78%)
- アルファベットを含む社名:869,239社(17.42%)
- 「工業」:154,899社(3.10%)
- 都道府県名のどれか:117,816社(2.36%)
- 「商事」:90,033社(1.80%)
- 「建設」:79,472社(1.59%)
- 「日本」:52,947社(1.06%)
- 「産業」:51,756社(1.04%)
- 「ジャパン」「JAPAN」:46,498社(0.93%)
- 「企画」:46,330社(0.93%)
- 「興業」:24,907社(0.50%)
- 「ホールディングス」:20,125社(0.40%)
ここで気をつけたいのは、「商号に含む」ことと「それが由来である」ことは別だという点です。都道府県名のうち「山口」「福島」「岡山」「千葉」などは名字でもあるので、地名なのか人名なのかは商号だけでは決められません。「日本」も「日本橋」のような地名の一部として入っている場合を含んでいます。
「日本」や「全国」が付く社名が大きな会社のしるしになるかどうかは、社名に「日本」「全国」を含む会社は大企業のサインかで別に数えています。社名の「株式会社」が前か後ろかについては前株と後株の違いをどうぞ。
社名の由来から分かること・分からないこと
由来が書かれていれば、会社が何を大事にしているか、どこで生まれた会社か、どんな経緯で今の形になったかの手がかりになります。
一方で、由来は会社が自分で語っている説明です。公的な記録で確かめられるものではありません。会社の実在や設立年を確かめたいときは、由来ではなく法人番号や登記を見るのが筋です。設立年の確かめ方は会社の設立年の調べ方、会社概要の項目の見方は会社概要の見方と、会社概要がない会社にまとめています。
よくある質問
社名の由来は登記簿や法人番号で調べられますか?
調べられません。登記されるのは商号そのもので、名前を付けた理由を届け出る欄はありません。法人番号公表サイトも、商号・所在地・フリガナと変更履歴を公表しているだけです。由来は会社サイトや社史など、会社が自分で語っている資料で探します。
会社サイトに社名の由来が載っていないのは普通ですか?
普通です。しょくばログが保存している会社サイト31,159社で、「社名の由来」という言葉を載せていたのは399社(1.3%)、言い方を広げても824社(2.6%)でした。載っていないことを理由に会社を疑う必要はありません。
社名が名字なのか地名なのか、見分ける方法はありますか?
商号だけでは見分けられません。「山口」「岡山」のように名字にも地名にもなる言葉は多いからです。代表者の名字と一致するか、本店所在地や創業の地と一致するかを見ると見当はつきますが、確実なのは会社サイトの説明か、会社に直接聞くことです。
昔の社名を知れば、由来は分かりますか?
分かることがあります。今の社名が英語やカタカナでも、前の社名に創業者の名字や地名が入っていて、そこから意味が分かる場合です。旧社名は沿革、法人番号公表サイトの変更履歴(2015年10月以降)、登記事項証明書でたどれます。
採用面接で社名の由来を聞いてもいいですか?
聞いて問題ありません。社名の由来は、会社が何を大事にしているかを話してもらうきっかけになります。会社サイトに書かれている場合は、読んだうえで「サイトで拝見した○○という意味について、もう少し伺えますか」と聞くと、調べてきたことも伝わります。
数字について
会社サイトの数字は、しょくばログが保存している会社サイトの本文31,159社分を、2026年10月8日に数えたものです。「社名の由来」等の言葉が出てくるかどうかで数えているため、メニューにだけ項目名がある会社も含みます。由来の中身は、言葉が最初に出てくる位置から後ろ500字に、上に挙げた語が含まれるかで分類しました。業種は日本標準産業分類の大分類で、業種が分かる会社のうち300社以上ある業種だけを載せています。商号の言葉は、しょくばログの法人データのうち閉鎖日が登録されていない4,988,967社を対象に、法人格の部分を除いた商号で数えました。個別の会社名は載せていません。