✍ 古家あきら | 2026-10-14 更新
執行役員とは──取締役との違い、専務・常務の位置、登記に載らない役職の読み方(会社サイト31,159社で見た「執行役員」5.69%)
先に結論です。執行役員は、会社法に定めのない「社内の役職名」です。 取締役や監査役は会社法で決まった役員で、名前が登記されます。執行役員は会社が自分で作る肩書きで、登記には載りません。名前に「役員」と付いていても、法律上の役員ではないことが多い、というのが一番の注意点です。
専務・常務も同じで、会社法には「専務」「常務」という言葉は出てきません。「専務取締役」「常務取締役」なら取締役であることは確かですが、専務や常務の部分は会社が付けた呼び名です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、会社サイトの役員一覧に「取締役」「執行役員」「専務」「常務」が混ざって並んでいて、どこまでが登記上の役員なのか分かりにくい、という場面によく出会います。そこで、手元に保存している会社サイト31,159社の文章で、これらの言葉がどのくらい出てくるかを数えました。
執行役員とは何か
執行役員は、取締役会が決めた方針に沿って、実際の業務を進める責任者に付ける肩書きです。営業・製造・管理といった部門ごとに置かれることが多く、「営業本部長」のような部長職の上、取締役の下、という位置づけにする会社が一般的です。
ただし、これは決まりではありません。会社法の条文に「執行役員」という言葉はなく、置くかどうか、何人置くか、どんな権限を持たせるかは、会社ごとに決めます。
取締役との違い
取締役は、会社法で決まった機関です。株主総会で選ばれ、氏名が登記されます(会社法911条3項13号)。取締役会を置く会社では、取締役会が会社の業務執行を決め、取締役の仕事を監督します(会社法362条2項)。
執行役員は、その取締役会の決定を受けて動く側です。立場の違いを並べると次のとおりです。
- 取締役:会社法上の役員。株主総会で選ばれる。氏名が登記される。会社に対する責任が法律で決まっている
- 執行役員:会社が決める役職。取締役会などで選ぶ会社が多い。登記されない。立場は社員(雇用)の場合も、委任契約の場合もある
取締役会は「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」を取締役に任せず、自分で決めなければなりません(会社法362条4項3号)。執行役員をこの「重要な使用人」として扱い、取締役会で選ぶ会社が多いのはこのためです。ここからも、執行役員が法律上は「使用人」の側に置かれることが多いと分かります。
「取締役兼執行役員」とは
取締役が執行役員を兼ねることもよくあります。役員一覧で「取締役 常務執行役員」と並んでいれば、その人は登記上の取締役であり、社内では常務執行役員として部門を見ている、という読み方になります。
会社法363条1項は、取締役会を置く会社で業務を執行する取締役として、代表取締役と、取締役会の決議で選ばれた取締役を挙げています。取締役兼執行役員は、この「業務を執行する取締役」に近い役回りを社内の肩書きで表したもの、と考えると分かりやすいと思います。
「執行役」と「執行役員」は別物
紛らわしいのが「執行役」です。執行役は会社法で決まった役員で、指名委員会等設置会社だけが置きます(会社法402条1項)。取締役会の決議で選ばれ、氏名が登記されます(会社法911条3項23号ロ)。会社の代表は「代表執行役」です。
一字違いですが、「執行役」は法律上の役員、「執行役員」は社内の役職名、と覚えておくと読み違えません。
専務・常務・副社長の位置
専務・常務・副社長も、会社法に定めのない呼び名です。よく見かける並びの例を挙げます。
- 会長 → 社長 → 副社長 → 専務 → 常務 → 取締役 → 執行役員 → 部長
これはあくまで一例で、決まった順番があるわけではありません。会長を置かない会社、副社長がいない会社、専務と常務のどちらかしかない会社もあります。執行役員の中に「専務執行役員」「常務執行役員」「上席執行役員」と段階を作る会社もあり、この場合は専務・常務が取締役ではなく執行役員の格付けを表しています。
見分けるときは、肩書きに「取締役」が付いているかを見てください。
- 専務取締役・常務取締役:取締役なので登記される
- 専務執行役員・常務執行役員:執行役員なので登記されない
- 専務・常務だけ:会社によって違う。登記で取締役かどうかを確かめる
会社サイト31,159社で数えた「執行役員」
しょくばログが保存している会社サイトの文章31,159社分で、役職名が出てくるかどうかを数えました(2026年10月14日集計)。役員一覧のページだけでなく、ニュースや沿革に出てくる場合も含みます。
- 取締役(代表取締役を除く):4,954社(15.90%)
- 監査役:2,140社(6.87%)
- 執行役員:1,772社(5.69%)
- 常務:1,138社(3.65%)
- 専務:1,069社(3.43%)
- 常務取締役:947社(3.04%)
- 専務取締役:744社(2.39%)
- 副社長:636社(2.04%)
- 専務執行役員・常務執行役員:405社(1.30%)
- 社長執行役員:389社(1.25%)
- 執行役(「執行役員」を除く):92社(0.30%)
「専務」「常務」には、後ろに「執行役員」が続くものは入れていません。それでも専務・常務は執行役員と同じくらいの社数で出てきます。中小の会社では、執行役員を置かずに専務・常務で序列を表すことが多いのだと思います。
会社が大きいほど執行役員を置く
gBizINFOに従業員数が載っている会社で、規模ごとに「執行役員」が出てくる割合を分けました。
- 0〜9人:4,039社中61社(1.51%)
- 10〜49人:8,752社中224社(2.56%)
- 50〜299人:11,583社中647社(5.59%)
- 300〜999人:4,577社中473社(10.33%)
- 1,000人以上:2,179社中366社(16.80%)
規模が大きくなるほど割合がはっきり上がります。取締役の人数には限りがあるので、部門が増えた会社ほど、取締役の下に業務の責任者として執行役員を置く必要が出てくる、という流れと合っています。
会社の種類で見ると、株式会社25,823社中1,737社(6.73%)、有限会社1,128社中7社(0.62%)、合同会社293社中5社(1.71%)でした。有限会社でほとんど見かけないのは、規模の小さな会社が多いことと関係していそうです。
執行役員と一緒に出てくる言葉
「執行役員」が出てくる1,772社で、ほかの言葉も出てくる割合を見ました。
- 取締役(代表取締役を除く):1,223社(69.0%)
- 監査役:767社(43.3%)
- 専務執行役員・常務執行役員:405社(22.9%)
- 社長執行役員:389社(22.0%)
- 取締役兼執行役員の書き方:301社(17.0%)
- 副社長:237社(13.4%)
7割の会社で取締役と執行役員が一緒に出てきます。役員一覧に両方が並んでいる会社が多い、ということです。読むときは、どの人が取締役で、どの人が執行役員だけなのかを分けて見る必要があります。
社長の肩書きに「執行役員」が入る会社
国のgBizINFOには、代表者の肩書きと氏名が載っている会社があります。活動中の会社で代表者欄がある66,898社を見ると、「執行役員」を含む肩書きは542社でした。そのうち「代表取締役社長執行役員」が453社です。
社長執行役員は、取締役としての代表権を持ち、同時に執行役員のトップでもある、という意味の肩書きです。取締役会での決定と、業務の実行の両方の責任者であることを示しています。
一方、「代表執行役」(後ろに「員」が付かないもの)は106社でした。こちらは指名委員会等設置会社の法律上の代表者です。肩書きが似ていても、会社の機関の設計がまったく違うことが分かります。
肩書きの書き方そのものは他の記事でも扱っています。会社の代表者の調べ方、創業者と代表者が違う会社もあわせて読むと、役員欄の見え方がつかみやすくなります。
会社サイトの役員一覧の読み方
役員一覧を見て「誰が登記上の役員か」を確かめたいときは、次の順で見ると迷いません。
1. 肩書きに「取締役」「監査役」が付いている人:登記上の役員です。登記事項証明書に名前が載っています 2. 「執行役員」「専務執行役員」などだけの人:社内の役職です。登記には載りません 3. 「専務」「常務」だけの人:会社によって違います。登記で取締役かどうかを確かめます 4. 「執行役」「代表執行役」の人:指名委員会等設置会社の法律上の役員です。登記されます
登記事項証明書は、法務局の窓口や登記情報提供サービスで誰でも取れます。取り方は会社の登記簿は誰でも見られるにまとめています。
取締役会を置いている会社かどうかも、役員の並び方に関わります。取締役会を置く会社は取締役が3人以上必要で、置かない会社は1人でも構いません。詳しくは取締役会設置会社とはを見てください。
転職・取引のときに気をつけたいこと
転職の面接や取引先との商談で「執行役員」の名刺を受け取ったとき、知っておくと役に立つ点を3つ挙げます。
1. 権限は会社ごとに違う
執行役員がどこまで決められるかは、会社の社内規程で決まります。契約を結ぶ権限を持っている場合もあれば、持っていない場合もあります。大きな取引で相手の権限が気になるときは、契約書の署名者が代表取締役か、権限を任された人かを確かめるのが確実です。
2. 雇用か委任かで立場が違う
執行役員を社員のまま任命する会社もあれば、いったん退職して委任契約を結ぶ会社もあります。転職先で執行役員として迎えると言われたら、雇用契約なのか委任契約なのかを確認してください。委任契約の場合は労働基準法などが当てはまらない場面があり、残業代や退職金の扱いが変わることがあります。個別の扱いは専門家に相談するのが安心です。
3. 役員の数が多い会社は肩書きを分けて見る
役員一覧に20人、30人と並んでいる会社でも、登記上の取締役は数人ということがよくあります。人数の多さで会社の規模や経営体制を判断せず、取締役と執行役員を分けて数えると実態がつかめます。
運営者として思うこと
会社の情報を集めていて感じるのは、「役員」という言葉が二つの意味で使われていることです。一つは会社法で決まった役員、もう一つは会社の中で偉い人、という広い意味です。執行役員はちょうどその境目にあり、名前で誤解されやすい肩書きです。
しょくばログでは、登記に基づく情報(商号・本店所在地・法人番号)と、会社サイトから読める情報を分けて扱っています。役職名もその線引きで読むと、会社の体制を落ち着いて見られると思います。上場していない会社の役員報酬が外から見えにくい理由は、非上場の会社の役員報酬が分からない理由で書いています。
よくある質問
執行役員は役員ですか?
会社法上の役員ではありません。会社法で役員とされるのは取締役・会計参与・監査役で、執行役員は会社が独自に作る役職です。ただし社内では役員として扱う会社もあるので、その会社での扱いは社内規程や役員一覧の書き方で確かめてください。
執行役員と部長はどちらが上ですか?
一般的には執行役員のほうが上に置かれます。部長の上で部門全体を見る責任者を執行役員にする会社が多いためです。ただ、決まった順番があるわけではなく、部長と執行役員を兼ねる人もいます。
執行役員は登記されますか?
登記されません。登記されるのは取締役・監査役・代表取締役などの法律上の役員です。指名委員会等設置会社の「執行役」は登記されますが、これは「執行役員」とは別のものです。
専務と常務はどちらが上ですか?
一般的には専務が上とされることが多いですが、会社法に決まりはありません。会社によっては片方しか置かないこともあります。「専務取締役」「常務取締役」と取締役が付いていれば、どちらも登記上の取締役です。
会社サイトに執行役員がいない会社は体制が弱いのですか?
そうとは言えません。しょくばログの集計では、従業員0〜9人の会社で「執行役員」が出てくるのは1.51%でした。規模の小さな会社では取締役が直接業務を見ることが多く、執行役員を置く必要がそもそもない場合がほとんどです。
この記事の数字について
- 会社サイトの集計は、しょくばログが保存している会社サイトの文章31,159社分を対象に、2026年10月14日に数えたものです。役員一覧以外のページ(ニュース・沿革など)に出てくる場合も含みます
- 従業員数別の集計は、gBizINFOに従業員数が載っている会社に限ります
- 代表者の肩書きは、gBizINFOに代表者欄がある活動中の会社66,898社を対象にしています
- 条文は e-Gov 法令検索の会社法(362条・363条・402条・911条)で確認しました