✍ 古家あきら | 2026-10-08 更新
創業者と代表者(社長)は同じとは限らない — 会社サイト3万1,159社で「創業者」と書くのは4.7%、創業50年以上の会社の沿革では13.6%に社長の就任が2回以上あった
先に結論です。登記や会社データベースに「代表者」として載っているのは、今の代表取締役です。会社をつくった創業者とは限りません。 そもそも「創業者」は登記の項目にない言葉で、法人番号の情報にも、登記事項証明書にも、創業者という欄はありません。
しょくばログが保存している会社サイト31,159社を数えると、こうなりました。
- 「創業者」という言葉が出てくる会社サイトは1,462社(4.7%)。 創業者が誰かは、会社が自分で書かない限り外からはほとんど分からない
- 沿革を載せている14,470社のうち、社長・代表取締役の「就任」が2回以上書かれているのは681社(4.7%)。 創業から50年以上たつ会社に絞ると13.6%に上がる
- 「創業者」の前後20字以内に「会長」「相談役」などがある会社は88社、「故」「逝去」などがある会社は57社。 創業者が今は社長ではない、と読める書き方が一定数ある
しょくばログという会社データベースを運営していると、「会社ページの代表者の名前が、創業者として聞いていた名前と違う。データが間違っているのでは」という声をいただくことがあります。調べてみると、ほとんどはデータの誤りではありません。創業者がすでに退いていて、二代目や三代目、あるいは創業家と関係のない人が今の代表者になっている、というケースです。
「代表者」と「創業者」は、制度の上で別のもの
まず言葉の整理からです。
代表者(代表取締役) は、会社法で登記しなければならない事項です。株式会社なら、代表取締役の氏名と住所が登記されます(会社法911条3項14号)。代表取締役が替われば、そのたびに変更の登記をします。つまり登記に載っているのは、いつでも「今の代表者」です。
創業者 は、法律上の用語ではありません。事業を始めた人を指す、ふだんの言葉です。登記事項にも創業者の欄はありません。
近い制度上の言葉に 発起人 があります。株式会社をつくるときの発起人の氏名・住所は定款に書く事項です(会社法27条5号)。ただ、発起人は登記事項ではないので登記簿には出てきません。しかも、個人商店として始めた事業を何年も後に法人にした会社では、「事業を始めた人」と「会社設立時の発起人」が別の人であることもあります。
整理すると次のとおりです。
- 代表者(代表取締役):登記される。今の人だけが載り、替わると変更登記される
- 発起人:定款に書かれる。登記簿には出ない
- 創業者:法律上の用語ではない。会社が自分で名乗らない限り、公的な記録からは特定できない
しょくばログの会社ページに出ている代表者名も、公的データ(gBizINFO)にある「今の代表者」です。創業者の情報ではありません。代表者を公的な記録で確かめる手順は会社の代表者を調べる3つの方法にまとめています。
「創業者」と書いている会社サイトは4.7%
では、会社は自分のサイトで創業者に触れているのでしょうか。しょくばログが保存している会社サイト31,159社の本文を、言葉の出現で数えました。
- 「創業者」が出てくる:1,462社(4.7%)
- 「初代」が出てくる:654社(2.1%)
- 社長・代表・当主・店主などの近くに「二代目」「3代目」などがある:314社(1.0%)
- 「事業承継」が出てくる:431社(1.4%)
- 「創業家」が出てくる:15社(0.05%)
「創業者」と書く会社は20社に1社ほどです。創業者が誰かは、多くの会社にとって外に向けて書く情報ではない、ということになります。
「二代目」「3代目」のような書き方は1.0%と、さらに少数でした。代々続く家業であることを打ち出す会社(和菓子店、酒蔵、老舗の商店など)では目立ちますが、全体で見れば例外的です。
なお「事業承継」には、事業承継の支援を仕事にしている会社(税理士事務所やM&A仲介など)のサイトも含まれます。この数字は「自社が承継した」会社の数ではありません。
創業者は今どこにいるのか — 前後に書かれた肩書き
「創業者」が出てくる1,462社について、その前後20字以内にどんな言葉があるかを数えました。
- 「会長」「相談役」「名誉」がある:88社(6.0%)
- 「社長」「代表取締役」がある:183社(12.5%)
- 「故」「逝去」「永眠」「他界」がある:57社(3.9%)
実際の文面を見ると、「創業者(現相談役)」「創業者 取締役会長」のように、創業者が会長や相談役に退いて、別の人が社長を務めている書き方がありました。反対に「創業者であり代表取締役社長の〜」のように、創業者が今も社長という会社もあります。
ただし「社長」「代表取締役」が近くにある183社が、すべて「創業者=今の社長」というわけではありません。「創業者の後を継いで2代目社長に」のような文も同じように数えているからです。この数字は「創業者と今の社長の関係を、会社がどう書いているか」の手がかりであって、創業者が社長を続けている会社の割合ではありません。
言えるのは、会社サイトで「創業者」に触れている会社でも、今の社長が誰なのかは別に確かめる必要がある、ということです。
沿革に「社長の就任」が2回以上ある会社
次に、沿革に書かれた社長交代を数えました。沿革を載せている会社は14,470社(全体の46.4%)です。沿革の見出しから3,000字の範囲に、「代表取締役」または「社長」の後に12字以内で「就任」が続く書き方が何回あるかを数えています。
- 就任が1回以上書かれている:1,216社(沿革ありの8.4%)
- 就任が2回以上書かれている:681社(4.7%)
- 就任が3回以上書かれている:318社(2.2%)
1回だけの就任は、「〇〇を設立、代表取締役に就任」のように創業者自身の就任であることが多く、交代の証拠にはなりません。2回以上あれば、少なくとも1回は代表者が替わっていると読めます。
これを、本文から創業年が読み取れた会社に絞って、創業からの年数で分けるとこうなりました。
- 創業10年未満(213社):就任2回以上は13社(6.1%)
- 創業10〜29年(375社):15社(4.0%)
- 創業30〜49年(554社):59社(10.6%)
- 創業50年以上(2,379社):323社(13.6%)
創業から30年を超えたあたりで、沿革に社長交代を書く会社が増えます。創業者が現役でいられる年数を考えれば自然な結果です。
この数字は「社長が替わった会社の割合」ではありません。社長交代を沿革に書いた会社の割合です。交代があっても沿革に書かない会社は多いので、実際に代表者が替わっている会社はこれよりずっと多いはずです。沿革に何が書かれ、何が書かれないかは会社の沿革の見方で数えています。
創業者と代表者が分かれる、よくある3つの形
創業者と今の代表者が別の人になる道すじは、だいたい次の3つです。
1. 親族への承継(二代目・三代目)
創業者の子や親族が後を継ぐ形です。名字が同じなので、外から見ると「同じ人がずっと社長」に見えることがあります。名字だけで創業者と判断しないほうが安全です。代表者の名前はフルネームで確かめます。
2. 社内の役員・社員への承継
親族ではない役員や社員が社長になる形です。創業者は会長や相談役に退くことが多く、上で見た「創業者(現相談役)」のような書き方はこの形によく出てきます。
3. M&A・グループ入り
会社ごと別の会社やファンドに買われ、親会社から代表者が送り込まれる形です。社名も所在地も変わらず、代表者だけが替わることがあります。会社サイトに「グループ入り」「の傘下」「株式を取得」などの言葉がある会社は724社(2.3%)ありました(自社が買収した側の文も含みます)。
社名や住所が同じでも中身が変わっている例は、MBOから5年で再上場したオリバーの記事でも取り上げています。
後継者が見つからないまま代表者が亡くなったり引退したりすると、承継されずに会社が終わることもあります。「後継者難」倒産が過去最多の記事は、その一例です。
創業者と今の代表者を確かめる順番
取引先の確認や、転職先の下調べで「この会社をつくった人と、今動かしている人」を分けて知りたいときは、次の順番で見ていきます。
1. 今の代表者を公的な記録で確かめる。 しょくばログの会社ページ、または登記事項証明書で、今の代表取締役の氏名を確認します。登記簿は誰でも取得できます(会社の登記簿は誰でも見られる) 2. 過去の代表者は、登記の履歴で確かめる。 代表者の変更は、履歴事項全部証明書や閉鎖事項証明書に残ります。古い変更ほど閉鎖事項証明書を見る必要があります 3. 創業者は、会社の自己紹介で確かめる。 会社サイトの沿革・代表メッセージ・会社の歴史のページを見ます。創業者の名前と「今どうしているか」(会長、相談役、故人など)が書かれていることがあります 4. 創業年と設立年を分けて読む。 個人商店として創業し、後から法人にした会社では、創業者と設立時の代表者が別人のこともあります。創業と設立の違いは会社の設立年の調べ方にまとめています 5. 上場会社なら有価証券報告書を見る。 「沿革」と「役員の状況」の略歴に、代表者の経歴や就任時期が載ります
社長の年齢が外から分かるかどうかは、社長の年齢は外から調べられるかで整理しています。登記には生年月日が載らないので、年齢から「そろそろ交代か」を読むのも簡単ではありません。
取引や転職で、この違いが効いてくる場面
創業者と今の代表者の違いは、知識として知っておくだけでなく、実際に判断が変わる場面があります。
- 取引先の与信:「創業者の人柄を知っているから大丈夫」と思っていた会社が、実は数年前に代表者が替わり、方針も変わっていることがあります。今の代表者で判断し直します
- 転職・応募:面接で聞く社風や理念が、創業者の時代のものか、今の社長のものかで中身が違うことがあります。代表メッセージの署名と、登記の代表者名が一致しているかを見ておくと、情報の古さに気づけます
- M&A後の会社:社名が同じでも、親会社が替わっていれば意思決定の場所も替わります。「グループ入り」などの記載や、代表者の経歴(親会社出身かどうか)を見ます
よくある質問
登記簿で創業者を調べることはできますか?
できません。創業者は登記事項ではないので、登記簿には創業者の欄がありません。株式会社をつくった発起人は定款に書かれますが、定款は登記簿と違って誰でも取得できる書類ではありません。創業者を知りたいときは、会社サイトの沿革や代表メッセージなど、会社が自分で書いた情報を見ることになります。
しょくばログの代表者名が、聞いていた社長の名前と違います。誤りですか?
しょくばログの代表者名は公的データ(gBizINFO)にもとづく「今の代表者」です。聞いていた名前が創業者や前の社長であれば、代表者が交代している可能性があります。最新の状態は登記事項証明書で確かめられます。公的データの更新には時間差があるので、交代の直後は登記簿のほうが新しいこともあります。
創業者が会長になっている会社では、誰が経営しているのですか?
会社を代表して契約などを結ぶのは、登記上の代表取締役です。会長という肩書き自体は会社法の役職ではないので、会長が代表取締役を兼ねている会社もあれば、代表権のない会長もいます。登記事項証明書で、誰が代表取締役として登記されているかを確かめるのが確実です。
二代目・三代目の会社は、どうすれば見分けられますか?
会社が自分で書いていれば、沿革や代表メッセージから分かります。ただ、会社サイトで「二代目」「3代目」などの書き方をしている会社は1.0%で、多くの会社は書いていません。代表者の名字が創業者と同じかどうかは手がかりになりますが、名字だけで親族と決めつけないほうが安全です。
創業者がいない会社というのはありますか?
あります。たとえば、ほかの会社が子会社として設立した会社や、複数の会社が出資して共同でつくった会社では、特定の個人を創業者と呼ばないことがあります。こうした会社では「設立した親会社」が実質的な出発点になります。
まとめ
- 登記や会社データベースの「代表者」は今の代表取締役で、創業者ではない。創業者は登記の項目にない言葉
- 会社サイトで「創業者」と書いているのは4.7%。多くの会社では、創業者が誰かは外からは分からない
- 沿革に社長の就任を2回以上書いている会社は、沿革のある会社の4.7%、創業50年以上では13.6%。書かない会社も多いので、実際の交代はもっと多い
- 確かめる順番は、今の代表者(登記・公的データ)→過去の代表者(履歴・閉鎖事項証明書)→創業者(会社サイトの沿革・代表メッセージ)
数字について
- 会社サイトの数字は、しょくばログが保存している会社サイト31,159社の本文を、2026年10月8日に言葉の出現で数えたものです(scripts/analyze_sogyosha_daihyo_hp_cache.py)。文字化けの多いページは除いています
- 「就任」の回数は、沿革の見出しから3,000字の範囲で「代表取締役」または「社長」の後に12字以内で「就任」が続く書き方を数えています。役員の就任や子会社の社長就任が混ざることがあります
- 創業年は、本文中の「創業」の直後20字以内にある年(西暦・和暦)を読み取ったもので、年数は2026年から引いています
- 会社法の条文は、911条3項14号(代表取締役の氏名・住所の登記)、27条5号(定款への発起人の記載)によります