✍ 古家あきら | 2026-09-17 更新

MBOから5年で再上場したオリバー(愛知・岡崎)— 社名も住所も社長も同じなのに、登記では「別の会社」。法人番号が変わった理由と、同じ社名・同じ住所に番号が2つある会社の見分け方

先に結論です。2026年9月16日、愛知県岡崎市の株式会社オリバー(証券コード619A)が東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。公開価格は仮条件の上限305円、初値は5円(1.6%)高い310円でした。ホテル・オフィス・レストラン・商業施設などの内装を企画から設計・施工・家具什器の提供までワンストップで手掛ける会社で、2021年9月に経営陣による株式公開買付(MBO)で非公開化してから、5年ぶりの再上場です。

出典:オリバーの初値は公開価格を5円上回る310円、きょうスタンダード市場に新規上場(株探ニュース・2026年9月16日) 出典:東京証券取引所スタンダード市場への新規上場承認に関するお知らせ(株式会社オリバー・2026年8月13日)

しょくばログという会社データベースを運営していると、「一度上場をやめた会社がまた上場するとき、会社は同じなんですか」という質問を受けることがあります。答えは「場合による」で、今回のオリバーは、外から見える社名・本店住所・社長がすべて同じなのに、登記上は上場廃止前とは別の法人です。うちの登記データで、旧「株式会社オリバー」(法人番号4180301000454)は2022年1月18日に「合併による解散等」で閉鎖され、今回上場した「株式会社オリバー」は法人番号6010001217933、gBizINFOの設立日は2021年4月30日です。今日は、この「番号の入れ替わり」がなぜ起きるのか、応募先・取引先として何を確かめればいいのかを、報道で確認できる数字とうちのデータで書きます。

公表された事実 — 1967年創業、名証二部から東証一部、MBOを経て5年で再上場

会社の沿革ページと報道で確認できる事実を並べます。数字はすべて出典からの引用です。

出典:沿革(株式会社オリバー) 出典:オリバーの公開価格は305円に決定、9月16日スタンダード市場に新規上場(株探・2026年9月8日)

ここで見てほしいのは、今回の上場が「募集(新株発行)」ではなく「売出し」だけで組まれている点です。会社が新しく株を発行して資金を集めるのではなく、既存の株主が持ち株を売る形です。IPO解説サイトのIPOナビが有価証券届出書を要約したところでは、上場前の主要株主は投資ファンドのインテグラル系で合計87.03%、社長の大川氏が5.04%とされています。MBOのときに株を買い集めたファンドが、5年かけて会社を立て直し、上場で持ち株を売って回収する。再上場の典型的な形です。

出典:オリバー(619A)IPO上場承認レポート|MBOを経て5年ぶり再上場(IPOナビ)

登記データでは「株式会社オリバー」が2つある — 旧法人は2022年1月18日に合併で閉鎖

ここからがうちのデータでしか書けない部分です。国税庁の法人番号公表サイト由来の登記データで、愛知県岡崎市の「株式会社オリバー」を引くと、同じ社名・同じ本店住所(岡崎市薮田1丁目1番地12)で、法人番号が2つ出てきます。

| | 旧・株式会社オリバー | 新・株式会社オリバー | |---|---|---| | 法人番号 | 4180301000454 | 6010001217933 | | 本店 | 愛知県岡崎市薮田1丁目1番地12 | 同じ | | 登記の状態 | 2022年1月18日 閉鎖(合併による解散等) | 現存 | | gBizINFOの設立日 | (記載なし) | 2021年4月30日 | | gBizINFOの資本金 | 63億6,249万8,000円 | (記載なし) | | gBizINFOの従業員数 | 471人 | 562人 | | 代表者 | 代表取締役社長 大川和昌 | 代表取締役 大川和昌 |

沿革ページには「2021年9月に株式公開買付による非公開化」としか書かれていませんが、登記の動きを読むとこうなります。2021年4月30日に、株を買い集めるための受け皿会社が別途設立され、その会社が旧オリバーの株を公開買付で取得して非公開化し、2022年1月に旧オリバーを吸収合併して、社名を「株式会社オリバー」に、本店を岡崎市に移した。IPOナビの上場承認レポートも、有価証券届出書の記載として「2022年1月にNEXT-O(インテグラルが設立)が旧オリバーを吸収合併して現在の株式会社オリバーになった」と要約しています。受け皿会社が親になって元の会社を吸収する、MBOの定番の組み方です。

つまり、今回上場した「株式会社オリバー」は、法律上は2021年に生まれた会社です。1967年創業の歴史も、岡崎の本店も、社長も、社員も引き継いでいますが、法人番号は別で、旧番号の会社は登記上「閉鎖」になっています。合併で法人が消えるときの登記の動きは「買収された会社」は登記から消えるのかに、うちのデータの閉鎖事由別の数字と一緒に書きました。

法人番号の頭4桁を見ると、新会社が「東京で作られた」ことが分かる

もう1つ、番号そのものに痕跡が残っています。法人番号の2〜5桁目は「登記所コード」で、その会社が設立登記されたときに本店を管轄していた法務局を表します(法人番号のチェックデジットの計算方法で仕組みを書きました)。

岡崎市に本店を置く1万1,113法人のうち、「0100」で始まる番号を持つのはわずか11件で、新オリバーはその1つです。国税庁の案内では、本店を移転しても法人番号は変わりません(番号は「付いたときの管轄」を映したまま残ります)。だから、「岡崎の老舗なのに東京の番号」という食い違いが、受け皿会社が東京で作られた事実をそのまま保存しています。

社名や住所が同じでも、法人番号の頭4桁がその土地の会社と違うときは、「その会社は別の場所で作られ、後から来た」か「別の会社が名前を引き継いだ」かのどちらかを疑ってください。これは今回のような正当なMBOでも起きますし、事業譲渡の後に旧社名を名乗る新会社が現れるケースでも起きます(事業譲渡後の倒産の見分け方)。

「見えなくなった数字」が5年ぶりに戻ってくる — 従業員631人、平均勤続11.2年、平均年収548万円

上場廃止で外から見えなくなるのは、有価証券報告書に載る従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与といった、働く側にいちばん関係のある数字です。北陸最大手スーパー・アルビスがライフのTOBで上場廃止へで「何が見えなくなるか」を分けて書きましたが、今回はその逆で、5年間見えなかった数字が再上場で戻ってきた形です。

IPOナビが有価証券届出書から要約した数字では、2026年6月30日時点の従業員は631人(2025年12月末は577人)、平均年齢37.6歳、平均勤続年数11.2年、平均年間給与548万5,862円。売上高は2025年12月期で350億300万円、営業利益31億5,300万円。2022年12月期は営業損失20億円だったのが、2023年以降は3期連続で営業黒字です。

ここで、うちのデータとの差を見てください。gBizINFOに載っている従業員数は、旧法人が471人、新法人が562人。有価証券届出書の631人より少なく、時点も揃っていません。gBizINFOの数字は会社が届け出たり、他の公的データから転記されたりしたもので、更新のタイミングがばらばらです。上場していない5年間、外から見える従業員数は「いつの時点かよく分からない1つの数字」しかなかったというのが、非公開会社の実態です。上場しているかどうかの確かめ方は会社が上場しているか確認する方法に書きました。

岡崎市の法人は1万1,113件、閉鎖率15.5% — 社名に「インテリア」を持つ法人は全国5,722件、「家具」は閉鎖率21.2%

オリバーの本店がある岡崎市の法人を、うちの登記データで数えます。岡崎市に本店を置く法人は1万1,113件、うち登記が閉鎖されているのは1,728件(15.5%)で、全国579万1,529件の閉鎖率13.2%より少し高めです。閉鎖1,728件のうち「合併による解散等」は251件(14.5%)。全国の閉鎖法人76万2,832件では合併による解散等は5万9,612件(7.8%)なので、岡崎市はその2倍近い比率です。株式会社に絞ると5,695件のうち閉鎖821件(14.4%)です。

次に、オリバーと同じ「インテリア」「家具」を社名に持つ法人です。

| 社名に含む語 | 法人数 | 閉鎖 | 閉鎖率 | 閉鎖の内訳(清算結了等/合併/登記記録の閉鎖) | |---|---|---|---|---| | インテリア | 5,722件 | 896件 | 15.7% | 599件(66.9%)/16件(1.8%)/280件(31.3%) | | 家具 | 3,151件 | 668件 | 21.2% | 399件(59.7%)/18件(2.7%)/249件(37.3%) | | 全法人 | 579万1,529件 | 76万2,832件 | 13.2% | 49万1,764件(64.5%)/5万9,612件(7.8%)/21万87件(27.5%) |

社名に「家具」を持つ法人の閉鎖率21.2%は全国平均の1.6倍で、しかも閉鎖のうち「登記記録の閉鎖」(12年以上登記のない休眠会社の整理など)が37.3%と、全国平均27.5%より高い。家具製造・家具販売の看板を掲げたまま、事業実態がなくなって整理された会社が相対的に多いことが数字に出ています。オリバー自身が「富士スチール」から「家具製造」に軸足を移し、さらに「施設インテリア」へ広げてきた沿革と重ねると、同じ「家具」の看板でも、製造だけで残るのが難しかった業界であることがうかがえます。社名に「インテリア」を持つ法人は東京都1,065件、神奈川県506件、埼玉県419件、北海道381件、大阪府380件の順で、愛知県は298件(閉鎖57件・19.1%)です。

なお、うちのデータの閉鎖率は登記上の閉鎖を数えたもので、倒産件数ではありません。年ごとの増減に使うと休眠会社の一斉整理の影響を受けるため、ここでは断面の比率だけを使っています。

応募先・取引先として確かめる3つのこと

1. 法人番号で引く。社名で引かない。「株式会社オリバー」で検索すると岡崎市に2件出ます。応募先・契約相手がどちらの番号なのかを、求人票や契約書の法人番号で確かめてください。閉鎖された側の番号が書かれていたら、その書類は古いか、間違っています。実在と閉鎖の確認手順は会社の実在・倒産を確認する方法に書きました 2. 「創業◯年」と「設立◯年」を分けて読む。オリバーは創業1967年ですが、今の法人の設立は2021年です。創業年は歴史の長さ、設立年は今の法律上の器の年齢で、退職金制度や社内規程が引き継がれているかは「設立」の側に左右されます。面接で「今の法人になったのはいつですか」と聞くのは失礼ではありません 3. 再上場した会社は、届出書の数字を「5年分まとめて」見る。上場廃止の間の数字は外からは見えていません。届出書には直近数期分が載るので、非公開化直後(オリバーなら2022年12月期の営業損失20億円)から今までの流れを、1期だけでなく通しで読むと、立て直しの実態が分かります。上場した日に初めて見える数字の読み方は設置型社食のKOMPEITOが東証グロースに上場に書きました

よくある質問

再上場した会社は、上場廃止前と「同じ会社」と言えますか

事業・社名・本店・従業員が引き継がれていれば、働く側・取引する側にとっては実質的に同じ会社です。ただし、オリバーのようにMBOの受け皿会社が旧会社を吸収合併した場合、法律上の法人は別で、法人番号も変わります。契約や雇用関係は合併で新会社に引き継がれるのが原則ですが、書類上の法人番号は必ず新しい方を使ってください。

法人番号が変わると、過去の実績や許認可はどうなりますか

吸収合併では、消える側の権利義務は存続する側に包括的に引き継がれます。ただし、許認可の中には引き継ぎに届出や再申請が要るものがあり、登記上の会社が変わったタイミングで許認可の名義も変わっているかは、許認可データの側で確かめる必要があります。調べ方は会社の許認可を調べる方法に書きました。

同じ社名・同じ住所で法人番号が2つある会社は、他にもありますか

あります。合併・組織再編・事業譲渡のたびに起きます。うちの登記データで「合併による解散等」で閉鎖された法人は全国5万9,612件あり、そのうち少なくない数が、同じ社名・同じ住所の現存法人と対になっています。片方が閉鎖・片方が現存なら正常な組織再編の痕跡ですが、両方が現存で社名も住所も同じ場合は、別の会社が同じ名前を名乗っている可能性を疑ってください。

初値が公開価格を上回ったら、良い会社ということですか

初値は「その日の需給」で決まる数字で、会社の安全性や働きやすさとは別です。オリバーの初値310円は公開価格比+1.6%で、ほぼ公開価格どおりの評価でした。応募先・取引先として見るなら、初値より、届出書に載った従業員数・平均勤続年数・平均給与・営業利益の推移を通しで読む方が役に立ちます。

まとめ

しょくばログでは、法人番号・社名・所在地から、登記の状態(現存/閉鎖と事由)、gBizINFOの従業員数・資本金、許認可の有無を1つの画面で見られるようにしています。応募や契約の前に、社名ではなく番号で引いてみてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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