✍ 古家あきら | 2026-09-17 更新

社長の年齢は外から調べられるか — 登記に生年月日は載らない。平均60.8歳・後継者不在率50.1%の公表値と、会社サイト32,838社で「生まれ年」が読めたのは0.4%だった

先に答えを書きます。社長や取締役の年齢・生年月日は、登記では調べられません。 会社の登記事項を定めた会社法911条3項に載っているのは、取締役については「氏名」(13号)、代表取締役については「氏名及び住所」(14号)までで、生年月日はどこにも出てきません。「取締役 生年月日 調べ方」で検索してここに来た方への正直な答えは、「有価証券報告書を出している会社なら分かる。それ以外は分からないので、推定するしかない」です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社の社長は何歳くらいか」「後継ぎはいるのか」という問い合わせに近い検索が定期的に入ってきます。応募先を選ぶ人にとっては「社長が70代で後継者がいない会社」はそれだけで不安材料ですし、取引先の与信でも代表者の年齢は見たい項目です。ただ、うちのデータベースは代表者の「名前」までしか持っておらず、年齢は持っていません。持っていない理由は単純で、公的データのどこにも無いからです。

順番としては、なぜ登記に年齢が載らないのか、それでも確実に分かる会社はどこか、分からない会社をどう推定するか、推定の材料になる公表統計(平均年齢・年代別分布・後継者不在率)、うちのデータで測った「会社サイトから年齢が読める割合」、と進めます。

登記に載るのは「氏名」まで — 会社法911条3項を読む

株式会社の登記事項は会社法911条3項に列挙されています。e-Gov法令検索で条文を取ってきて、役員に関する号だけ抜き出すとこうなります。

つまり登記簿(登記事項証明書)で分かるのは、役員の氏名と、代表者の住所だけです。生年月日・年齢・性別・経歴は、登記の制度上そもそも記録されません。登記簿を誰でも取れること自体は 会社の登記簿は誰でも見られる に書いたとおりですが、取っても年齢は出てこない、ということです。

しかも代表者の「住所」も、2024年10月1日から縮んでいます。法務省の「代表取締役等住所非表示措置」で、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人は申し出れば登記事項証明書の住所が最小行政区画(市区町村、東京都は特別区)までしか記載されなくなりました。上場会社は上場を証する書面だけで申し出できます。非上場会社は本店の実在性を証する書面・代表者の身分証明書・実質的支配者の本人特定事項を証する書面の3点が要ります。この措置を使っている会社では、住所から生活圏を推測することすらできません。

役員の氏名は登記で分かるので、「役員名簿を見たい」だけなら登記簿で足ります。代表者名の調べ方と履歴の追い方は 会社の代表者名を調べる方法 にまとめています。

確実に分かるのは有価証券報告書を出している会社だけ

生年月日が公的な書類で公開されている会社が、一種類だけあります。有価証券報告書(有報)を出している会社です。

有報の様式を定めた「企業内容等の開示に関する内閣府令」の第二号様式(有価証券届出書の様式で、有報の第三号様式はこれを準用します)をe-Gov法令検索からPDFで落として確認すると、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の「(2) 役員の状況」の表の列は 役職名・氏名・生年月日・略歴・任期・所有株式数 です。生年月日が様式で必須項目になっているので、有報を出す会社の取締役・監査役は全員、EDINETで生年月日まで公開されています。社長の年齢を確実に知りたいなら、EDINETで社名を検索して最新の有報を開き、「役員の状況」を見るのが唯一の正攻法です。

では有報を出している会社はいくつあるか。会社が上場しているか確認する方法 で数えたとおり、EDINETコードリストで「上場」区分は3,822件、上場していないのに有報を出している会社が1,100社以上あります。合わせて約4,900社。うちのデータベースで活動中の会社は5,028,697社(2026年9月17日集計)なので、社長の生年月日が公的に分かる会社は、活動中の会社の0.1%です。残りの99.9%は「分からない」が正解になります。

分からない会社をどう推定するか — 4つの材料

有報が無い会社で社長の年齢を推定する材料は、実務上この4つしかありません。

どれも「本人の生年月日」ではなく「周辺情報からの推定」です。この記事の目的は、推定の幅を公表統計で狭めることにあります。

公表統計①:社長の平均年齢は60.8歳、60歳以上が52.6%

推定の土台になるのが、帝国データバンクが毎年出している全国「社長年齢」分析調査です。2025年版(2026年2月16日公表、2月27日に一部訂正)は、同社の企業概要ファイル「COSMOS2」約150万社から個人・非営利・公益法人等を除いた会社(株式・有限)の、2025年12月時点の社長データを集計したものです。

何も情報が無い会社の社長は、「6割の確率で60歳以上、7割以上の確率で50〜70代」と見るのが統計上いちばん外れにくい仮定です。30代以下の社長は全体の3%しかいないので、「若い社長のベンチャー」を想定して応募したら実は70代の創業者だった、という方向のズレのほうが起きやすい。逆に、代表挨拶に「2015年に就任」と書いてあれば、新社長の平均52.8歳を当てはめて「現在63歳前後」と仮置きできます。

なお、ここでいう年齢は「社長」の年齢で、社員の平均年齢とは別の話です。従業員の平均年齢の目安は 会社の平均年齢の目安 にまとめています。

公表統計②:後継者不在率は50.1% — 社長が若いほど「決まっていない」

社長の年齢を知りたい理由の多くは「この会社、続くのか」です。そこで見るべきなのが同じ帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年、2025年11月21日公表)。全国・全業種の約27万社について、2023年10月〜2025年10月の後継者の決定状況を分析したものです。

見落としやすいのは、若い社長ほど後継者が「いない」という点です。30代未満で83.2%、40代で64.1%。これは経営が危ないからではなく、単に決める時期ではないからです。逆に70代で26.8%、80代以上で22.2%と、高齢の社長ほど後継者は決まっている。「社長が70代=後継者がいない=危ない」という連想は、統計とは逆向きです。70代・80代で後継者が決まっていない2〜3割の会社を心配するのが筋で、社長の年齢だけで判断できる話ではありません。

秋田県は社長の平均年齢(62.6歳)も後継者不在率(73.7%)も全国で最も高く、三重県はどちらも最も低い側(59.7歳・33.9%)にいます。地域で見ると、社長の高齢化と後継者問題はある程度重なっています。

もう一つ、承継の経緯で「M&Aほか」が20.6%まで増えていることは、応募者にも関係します。社長が高齢で後継者がいない会社は、廃業ではなく他社への売却で続くケースが5社に1社になっている。買収後に社名や法人番号がどうなるかは 合併・買収されたら法人番号はどうなるか で扱っています。

うちのデータで数えた:会社サイトから社長の年齢が読めるのは0.4%

推定の材料の1番目に挙げた「会社サイトの代表挨拶・略歴」が、実際どれだけ当てになるかを数えました。しょくばログには会社サイトの採用ページを中心に取り込んだテキストが32,838社分あります(2026年9月17日時点)。これを機械的に走査した結果です。

つまり、代表挨拶のページ自体は4社に1社が持っているのに、そこから年齢を逆算できる「生まれ年」を書いている会社は250社に1社しかありません。就任年まで含めても、年齢の推定材料が拾えるのは1%前後です。「会社サイトを見れば社長の年齢くらい分かるだろう」は、うちのデータでは成り立ちませんでした。

注意点として、この32,838社は「会社サイトがあり、うちが採用ページを取り込めた会社」に偏っています。従業員1〜9人の会社や、サイトを持たない会社は入っていません。サイトを持てる規模の会社でこの割合なので、全体ではさらに低いと見るのが自然です。

代表者名が入っている会社は6.4%、商号に姓が入るのは11.4%

年齢の一つ手前の「代表者名」についても、うちのデータで現状を書いておきます。

姓の一致は「創業家が今も代表」のサインなので、この11.4%の会社では設立年から創業社長の年齢を推定しやすく、代替わりしていれば沿革に出やすい。逆に姓が一致しない88.6%の会社は、内部昇格・外部招聘・M&Aのどれかを経ているか、そもそも商号に人名を使っていないかのどちらかで、年齢の推定はより難しくなります。

社長の年齢を推定する手順 — 現実的な順番

ここまでの材料を、実際に調べる順番で並べます。

「危ない会社かどうか」を社長の年齢だけで判断しないことも大事です。人手不足倒産の見分け方 で書いたとおり、求人の出し方・従業員数の推移・所在地の変化のほうが、年齢よりずっと外から見える情報です。

よくある質問

取締役の生年月日は登記簿で調べられますか

調べられません。会社法911条3項が登記事項と定めているのは、取締役は「氏名」、代表取締役は「氏名及び住所」までです。生年月日・年齢・性別はどの登記事項証明書(現在事項・履歴事項・閉鎖事項)にも載りません。役員の氏名と就任・退任の年月日は履歴事項証明書で分かります。

社長の年齢が公的に分かる会社はどのくらいありますか

有価証券報告書を出している会社だけです。EDINETコードリストで「上場」区分が3,822件、非上場で有報を出す会社が1,100社以上で、合わせて約4,900社。活動中の会社5,028,697社に対して0.1%です。有報の「役員の状況」は様式(企業内容等の開示に関する内閣府令 第二号様式)で生年月日が必須項目になっています。

日本の社長の平均年齢は何歳ですか

帝国データバンクの全国「社長年齢」分析調査(2025年)で60.8歳です。1990年の54.0歳から35年連続で上がり続けています。年代別では50代が30.0%で最も多く、60歳以上が52.6%、30代以下は3.0%です。業種では不動産が62.9歳で最も高く、サービスが59.4歳で最も低い。都道府県では秋田県62.6歳が最高、三重県・沖縄県59.7歳が最低です。

社長が高齢の会社は後継者がいなくて危ない、と考えていいですか

統計は逆向きです。帝国データバンクの後継者不在率(2025年)は全国50.1%ですが、社長の年代別では30代未満83.2%・40代64.1%に対し、70代26.8%・80代以上22.2%。高齢の社長ほど後継者は決まっています。心配すべきは「70代以上で、かつ後継者が決まっていない2〜3割」で、年齢だけでは判断できません。会社サイトに「事業承継」「新体制」の記述があるか、役員に同じ姓の若い名前があるかを別途見てください。

会社サイトの社長挨拶から年齢は分かりますか

ほとんど分かりません。うちが取り込んだ会社サイトの採用ページ32,838社分で、社長挨拶・代表メッセージの見出しがあるのは25.3%ですが、「◯◯年生まれ」と年を書いている会社は128社・0.4%、就任に西暦年が付いているのは0.7%でした。読めるのは「就任年」「入社年」「創業年」までで、そこから幅を持って推定するのが現実的です。

まとめ

出典:会社法第911条第3項(e-Gov法令検索・法令API、2026年9月17日取得)、法務省「代表取締役等住所非表示措置について」(施行2024年10月1日)、企業内容等の開示に関する内閣府令 第二号様式(e-Gov法令検索掲載PDF「(2)役員の状況」)、帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」(2026年2月16日公表・2月27日訂正、COSMOS2約150万社・2025年12月時点)、同「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表・約27万社・2023年10月〜2025年10月)、日本取引所グループ/EDINETコードリストの件数は 会社が上場しているか確認する方法 で確認した値、しょくばログの会社データベース(活動中5,028,697社・代表者名あり323,524社・gBizINFO代表者名62,479社)と取り込み済みの会社サイトテキスト32,838社分(いずれも2026年9月17日集計)。会社サイトの語の集計は文字列の機械的な一致によるもので、文脈の判断は入れていません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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