✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

歯医者の倒産・廃業、2026年1〜9月で143件と過去最多──名称に「歯科」を持つ医療法人は全国4,888、閉鎖済みは8.1%。通っている歯科・勤め先の歯科で確かめたいこと

先に結論です。帝国データバンクによると、2026年1〜9月に倒産した歯科医院は23件、休廃業・解散は120件で、合わせて143件でした。 どちらも同じ期間としては過去最多です。廃業した医院の半数超は黒字で、廃業時の院長の平均年齢は70歳を超えていました。

つまり、歯医者が減っている理由は「赤字だから」だけではありません。続ける人がいないから閉じるという面が大きい、というのがこの調査から読めることです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、医療法人も会社と同じように登記があり、閉じれば記録が残ることを日々目にします。この記事では、報道の数字を並べたうえで、台帳から歯科の医療法人を数え、患者と歯科で働く人が知っておきたいことを一般化して整理します。個別の医院を評価するものではありません。

出典:「歯医者」の倒産・休廃業解散動向(2026年1-9月)(帝国データバンク・2026年10月6日)

調査で確認できる数字

帝国データバンクの公表内容から、数字だけを抜き出します。

倒産は負債1,000万円以上の法的整理を数えたものです。休廃業・解散は、手続きをせずに活動を止めたことが確認されたものや、登記で解散が確認されたものを指し、倒産は含みません。

背景として挙げられているのは、競争の激化による利益の圧迫、人件費と歯科材料(銀・パラジウムなど)の値上がり、デジタル投資の負担、そして院長の高齢化と後継者不足です。都市部では大型の医療法人や自由診療に強い医院の開業が続いて競争が厳しくなり、地方では人口減少で患者が減っています。調査は「競争過多の都市部」と「担い手不足の地方」の二極化と表現しています。

しょくばログの台帳で見た歯科の医療法人

国税庁の法人番号データをもとにした台帳で、名称に「医療法人」と「歯科」の両方を含む法人を数えました。

歯科の医療法人の閉鎖率は、医療法人全体とほとんど変わりませんでした。閉鎖の理由の内訳は、清算の結了などが364(91.7%)、登記官による閉鎖が32、合併が1です。ほとんどが、きちんと手続きを踏んで閉じています。登記官による閉鎖が何を意味するかは閉鎖登記簿の記事で説明しています。

存続している4,491法人を都道府県別に見ると、大阪府457、北海道420、兵庫県353、福岡県266、神奈川県202、愛知県172、東京都146の順でした。

東京都が少なく見えるのは、数え方の限界です。東京の医療法人は「医療法人社団〇〇会」のように、名称に「歯科」を入れないことが多いためです。ここでの数字は「名称に歯科を入れている医療法人」に限った断面で、歯科医院の総数ではありません。また、個人で開業している歯科医院は法人ではないので、台帳には載っていません。

歯科まわりの会社も数えてみた

株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社のうち、社名に「歯科」または「デンタル」を含む会社は3,347社で、閉鎖済みは609社(18.2%)でした。歯科技工所や歯科材料の卸など、歯科医院を支える会社が多く含まれます。

5つの会社形態全体の閉鎖率は13.5%なので、歯科まわりの会社はやや高めです。有限会社が多いのは、2006年より前に設立された小さな会社が多いことを示しています。歯科医院が減れば、その仕事を受けていた技工所や卸にも影響が及びます。

通っている歯科が閉じたときに確かめたい3つのこと

1. 治療中の記録をどうするか

歯科医師法では、診療録(カルテ)は5年間保存することになっています。転院するときは、新しい医院に事情を伝えれば、紹介状や資料の取り寄せについて相談に乗ってもらえることが多いです。閉院の知らせを見たら、治療の途中であることを早めに伝えてください。

2. 運営しているのが医療法人かどうか

看板の医院名と、運営している法人の名前は違うことがよくあります。医療法人なら法人番号で登記の状態を確かめられます。手順は法人番号の調べ方で説明しています。決算書にあたる事業報告書を都道府県で閲覧する方法は医療法人の経営状況の調べ方にまとめています。

3. 「解散」と「閉鎖」の違い

解散の登記が出ても、清算が終わるまで法人は残ります。台帳の表示が「閉鎖」に変わるのは、清算が終わって登記が閉じたあとです。違いは会社が解散・休眠しているか調べる方法で整理しています。

歯科で働く人が知っておきたいこと

歯科衛生士や歯科助手として働く人にとって、院長の年齢や後継者の有無は、外からは見えにくいけれど大事な情報です。今回の調査でも、黒字でも閉じる医院が半数を超えていました。面接のときに「院長が引退したあと、医院はどうなる予定か」を聞くのは失礼なことではありません。後継者がいないことが原因の倒産全体の動きは後継者難倒産の記事で取り上げています。

もし勤め先が倒産して給与が払われない場合は、国の未払賃金立替払制度を使える場合があります。条件と流れは給料が遅れる会社の記事で説明しています。

運営者として思うこと

歯医者が減ったというニュースは、経営が苦しい医院が増えたと受け取られがちです。ただ、台帳で見る限り、歯科の医療法人だけが特に閉じやすいわけではありませんでした。そして調査では、閉じた医院の半数超が黒字でした。

問題の中心は、お金より人にあるように見えます。院長ひとりで成り立っている医院は、院長が引退すれば終わります。通う側も働く側も、その医院が「誰の手で続いているか」を少しだけ意識しておくと、閉院の知らせに慌てずにすみます。

よくある質問

歯医者の倒産や廃業は増えているのですか?

帝国データバンクによると、2026年1〜9月の倒産は23件、休廃業・解散は120件で、合計143件はこの期間として過去最多です。休廃業・解散は前年同期の106件から14件増えました。

廃業した歯科医院は赤字だったのですか?

調査では、過去5年の廃業事例のうち業績が分かった120件の半数超が黒字でした。院長の高齢化と後継者不足が大きな理由として挙げられています。

通っている歯科の運営法人が閉じていないか調べられますか?

医療法人であれば、法人番号で登記の状態を確かめられます。しょくばログの会社ページでも、存続か閉鎖かを表示しています。ただし個人開業の医院は法人ではないため、登記からは調べられません。

歯科医院がなくなったらカルテはどうなりますか?

歯科医師法では診療録を5年間保存することになっています。治療中であれば、閉院前に医院へ申し出て、転院先への引き継ぎを相談してください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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