✍ 古家あきら | 2026-09-25 更新
札幌の電気工事会社「協伸システム」が破産申請へ — 売上は3年で5億8,697万円から2億8,768万円に。札幌市の「電気」系の会社724社と、社名で業種を決めつけてはいけない理由(DB実測)
先に結論です。協伸システムのニュースは「受注が減ったところに、資材と外注の費用が上がり、最後は取引先からの回収不能が重なった」という、工事業でよく見る資金繰りの詰まり方です。 売上高は2021年3月期から2024年3月期の3年で、およそ半分になっていました。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、倒産のニュースが出た直後に、その会社名で検索して来る人が増えます。取引先の方、働いていた方、工事を頼んでいた方だと思います。今回はこのニュースを入口に、札幌市に本店がある「電気」系の会社を登記データで数え、外から何が分かって何が分からないのかを書きます。
出典:札幌市内の電気工事業者「協伸システム」が破産申請へ 負債総額1億6000万円 東京商工リサーチ(STVニュース北海道・2026年9月18日)
出典:1996年創業の電気工事会社 札幌「協伸システム」破産申請へ 負債約1.6億円 東京商工リサーチ(HBCニュース北海道・2026年9月18日)
公表されている事実
報道で確認できる範囲は次のとおりです。推測は混ぜていません。
- 名称:株式会社協伸システム
- 本社:札幌市清田区(国税庁の法人番号公表サイトの登録は札幌市清田区真栄)
- 法人番号:6430002006095
- 設立:1996年1月
- 資本金:1,000万円
- 事業:戸建て住宅やマンション、倉庫などの照明器具・コンセント・設備機器への電源供給工事、オール電化のリフォーム工事。太陽光発電設備の工事も手がけていた
- 売上高:2021年3月期は約5億8,697万円、2024年3月期は約2億8,768万円
- 損益:2024年3月期は多額の貸倒損失を計上し、4,740万円の赤字
- 事業停止:2026年9月11日。破産申請の準備に入った
- 負債:約1億6,000万円
- 原因:受注不振と外注費の増加、資材価格の高騰で業績回復の見通しが立たなかった(東京商工リサーチの調べとして報道)
売上高の変化を計算すると、2024年3月期はピークだった2021年3月期の約49.0%です。3年で半分になったことになります。
「貸倒損失」が効いたという点
報道の中で、取引先の立場から見ていちばん大事なのは「多額の貸倒損失」という一言だと思います。貸倒損失は、工事代金などを請求したのに回収できなかったお金を損失として計上したものです。
電気工事は、建物全体の工事の中で元請けや他の業者から仕事を受ける形が多い仕事です。自社の受注が減っているときに、請求先の支払いが止まると、その穴を埋める体力が残っていない。倒産は1社だけで起きるのではなく、取引の連鎖の中で起きることが多いと、このニュースからも読めます。
破産申請の「準備に入った」段階と、裁判所が破産手続の開始を決定した段階は別です。倒産の種類ごとの違いは破産・民事再生・会社更生・特別清算の違いを整理した記事にまとめています。
札幌市の「電気」系の会社を登記データで数えてみた
国税庁の法人データには業種の欄がありません。そこで、しょくばログの台帳から、札幌市に本店がある会社のうち、社名に「電気」「電設」「電工」のどれかが入っている会社を数えました(2026年9月時点の台帳・人格のない社団などは除外)。
- 登録されている会社:724社
- そのうち閉鎖(清算結了・合併・休眠整理など)の登録がある会社:86社(11.9%)
- 今も登録が残る会社:638社
閉鎖の割合11.9%は、札幌市の会社全体(104,921社のうち12,266社・11.7%)とほぼ同じでした。全国で同じ条件で数えると42,836社のうち5,979社(14.0%)で、札幌の電気系の会社がとくに多く消えているわけではありません。
今も残る638社を、会社の形で分けるとこうなります。
- 株式会社:322社(50.5%)
- 有限会社:285社(44.7%)
- 合同会社:20社(3.1%)
札幌市の会社全体では、今も残る92,655社のうち有限会社は29,165社(31.5%)です。電気系の会社は、有限会社の割合が札幌全体より13ポイントほど高い。 有限会社は2006年から新しく作れなくなった形なので、「昔からある地元の電気屋さん」が多く続いている業界だと、登記の形から読めます。有限会社で働くことについては有限会社に就職するのは不利なのかという記事に書いています。
区別に見ると、多いのは北区(111社)、白石区(103社)、東区(102社)でした。協伸システムがあった清田区には54社が残っています。
社名に「ソーラー」「太陽光」が入る会社は、半分以上が合同会社
協伸システムは太陽光発電設備の工事にも広げていました。そこで、社名に「ソーラー」か「太陽光」が入る会社も全国で数えました。
- 登録されている会社:4,742社
- 閉鎖の登録がある会社:1,020社(21.5%)
- 今も残る3,722社のうち、合同会社:2,120社(57.0%)、株式会社:1,074社(28.9%)
電気系の会社(閉鎖14.0%)と比べると、閉鎖の割合がはっきり高く、形も合同会社が半分以上です。社名に「ソーラー」が入る合同会社には、発電所を持つためだけに作られた会社も含まれていると考えられ、工事を請け負う会社とは中身が違う点に注意が要ります。北海道に限ると78社で、閉鎖の登録は19社(24.4%)でした。
社名だけで業種を決めつけない
ここは運営者として正直に書いておきます。国税庁のデータに業種がないため、しょくばログでは社名などを手がかりに業種を推定しています。札幌市で社名に「システム」が入る会社は1,095社あり、その推定では1,077社が「情報通信業」側に分類されていました。協伸システムもその1社で、実際の仕事は電気工事でした。
社名は会社の中身を表していないことがよくあります。取引や応募の前には、会社のホームページの事業内容や、建設業の許可の有無を見るのが確実です。電気工事を請け負う会社かどうかは、建設業の許可で確かめられます。許可の考え方はリフォーム会社の建設業許可を調べた記事に、公共工事の実績の見方は経審の点数の調べ方の記事にまとめています。
同じ名前の会社が全国に3社ある
もう一つ、台帳を引いて気づいたことがあります。「協伸システム」を名前に含む会社は、札幌の1社のほかに、埼玉県の株式会社と、東京都の有限会社(社名は「協伸システム運輸」)が登録されていました。「協伸」を含む会社は全国で266社あります。
ニュースを見て「うちの取引先では」と慌てる前に、法人番号と本店の住所で同じ会社かどうかを確かめてください。 今回の会社の法人番号は6430002006095です。法人番号の調べ方は法人番号の調べ方の記事にまとめています。
また、事業を止めた会社でも、国税庁のデータはすぐには「閉鎖」になりません。協伸システムも、この記事を書いている時点では閉鎖の登録はありませんでした。実例は破産決定した4社が国税庁データで閉鎖表示になっていなかった記事で詳しく書いています。
工事会社と取引する・働くときに見ておきたいこと
特定の会社を責めるための話ではなく、今回のニュースから一般的に言えることを3つにまとめます。
1. 売上の推移を聞いてみる。 3年で半分という変化は、中にいる人や長い取引先なら気づける変化です。信用調査会社の評点の読み方は帝国データバンク・東京商工リサーチの評点の見方の記事をどうぞ。 2. 支払いの遅れを見逃さない。 工事代金の入金が遅れる、手形の期日が延びるといった変化は、取引先がいちばん早く気づけるサインです。借入の状況を外から調べる方法は会社の借金を外から調べる方法の記事にまとめています。 3. 1社への依存度を下げる。 今回の会社も、取引先からの回収不能が赤字の一因でした。請求先が1社に偏っていないかは、自社側でも見直せる点です。
建設の周りでは、足場を組む鳶工事の会社の倒産も増えていて、その記事で登記データを整理しています。
よくある質問
協伸システムはもう破産したのですか?
報道の時点では、9月11日に事業を停止し、破産申請の準備に入った段階です。裁判所が破産手続の開始を決定したという報道は、この記事を書いている時点では確認できていません。
工事を頼んでいた場合はどうすればいいですか?
破産申請の準備に入った会社は、通常、代理人の弁護士が窓口になります。未完成の工事や保証の扱いは、会社や代理人から出る案内を確認してください。個別の判断が必要な場合は弁護士など専門家に相談するのが確実です。
札幌の電気工事会社は危ない会社が多いということですか?
そうは言えません。社名に「電気」「電設」「電工」が入る札幌の会社の閉鎖割合は11.9%で、札幌市の会社全体(11.7%)とほぼ同じでした。1社の倒産から業界全体を判断しないでください。
社名に「システム」とあればIT企業ですか?
そうとは限りません。今回の協伸システムは電気工事の会社でした。事業内容は社名ではなく、ホームページや建設業の許可、求人票の仕事内容で確かめるのが確実です。
※この記事の会社数は、国税庁の法人番号公表データをもとにしたしょくばログの台帳(2026年9月時点)を集計したものです。社名に特定の語が入る会社を数えており、実際の業種と一致しない会社も含まれます。