✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
会社の海外拠点・海外進出を調べる方法 — 会社サイト31,159社で数えたら、書いているのは5.6%だった
先に結論です。会社の海外拠点を確実に確かめられるのは、上場企業の有価証券報告書です。「関係会社の状況」という欄に、海外子会社の名前・所在地・出資比率が載っています。非上場の会社については、公式サイトの会社概要・拠点一覧・沿革を見るのが基本で、そこに書かれていなければ外から確かめる手段はほとんどありません。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「応募先に海外勤務の可能性があるか知りたい」「取引先が海外に工場を持っているか確かめたい」という相談をときどき受けます。そこで、しょくばログが保存している会社の公式サイトのうち、文字化けが少なく読める31,159社を対象に、海外拠点・海外進出について書いている会社を数えました。
- 海外拠点や海外進出に触れている会社は1,758社(5.6%)。20社に1社ほど
- そのうち23.1%は「海外進出」「海外展開」という言葉だけで、現地法人・工場・事務所といった具体的な拠点の話が出てこない
- 業種別では製造業10.3%がいちばん高く、建設業は2.1%、医療・福祉は0.5%
- 従業員300人以上では10.9%、1〜9人では4.0%
- 拠点について書いている会社のうち、中国に触れているのが47.7%、米国32.3%、欧州26.3%、タイ22.8%
以下、調べる場所を順に説明してから、数えた結果を詳しく見ていきます。
海外拠点を調べる4つの場所
1. 有価証券報告書の「関係会社の状況」(上場企業なら確実)
上場企業は、金融商品取引法にもとづいて毎年、有価証券報告書を出しています。その中の【関係会社の状況】に、子会社・関連会社の名称、住所(国・都市)、資本金、主な事業、議決権の所有割合が並んでいます。海外の子会社もここに載るので、どの国に何社あるかが一覧で分かります。
有価証券報告書は金融庁のEDINETで誰でも無料で見られます。会社名で検索し、最新の有価証券報告書を開いて「関係会社の状況」を探してください。【事業の内容】の欄に、国内外の会社のつながりを図にした「事業系統図」が付いていることも多く、全体像をつかむにはこちらが早いです。
親会社・子会社の関係を外から確かめる方法はグループ会社・親会社の調べ方に詳しく書きました。海外子会社の確認も、考え方は同じです。
2. 会社の公式サイト(非上場ならここが中心)
非上場企業には有価証券報告書の提出義務が基本的にありません。そのため、非上場企業の海外拠点は、会社が自分で公開している情報しか手がかりがないのが実情です。見る場所は次の3つです。
- 会社概要・拠点一覧(事業所一覧):海外の現地法人や事務所の名前と住所が並んでいるか
- 沿革:「◯年 タイに現地法人設立」のように、いつどこに出たかが書かれているか
- 英語版サイト:海外拠点がある会社は英語版を持っていることが多く、拠点一覧が日本語版より詳しい場合があります。会社の英語表記の確かめ方は会社の英語表記を調べる方法へ
3. 業界紙・報道・調査会社のデータ
新しく海外に工場を建てる、現地法人を設立する、撤退するといった動きは、会社のニュースリリースや業界紙で報じられることがあります。また、信用調査会社は海外進出企業をまとめて集計しています。たとえば帝国データバンクは2026年9月、中国に進出している日本企業が1万118社だったと発表しました。この調査の中身と、しょくばログの台帳で見えることは中国進出企業の記事にまとめています。個社ごとの詳しい情報は有料の企業調査になります。
4. 公的な統計(全体の傾向を知るとき)
経済産業省は「海外事業活動基本調査」という統計で、海外に現地法人を持つ日本企業の動向を毎年集計しています。ただし、これは業種別・地域別の傾向を見る統計で、個別の会社名は公表されません。「この会社に海外拠点があるか」を調べる用途には使えない点に注意してください。
法人番号のデータベースでは分からない
ここは、しょくばログの限界として正直に書いておきます。しょくばログの台帳は国税庁の法人番号をもとにしていますが、日本の会社が海外に作った現地法人は、その国の法律で作られた会社なので、日本の法人番号の台帳には基本的に載りません。逆に、海外の会社が日本で商売をするために登記した「外国会社」は載ります。つまり、台帳で「この会社の海外子会社」を引くことはできず、だからこそ今回は会社サイトの記載を数えました。
うちのデータで見る「海外拠点を書いている会社」
集計の条件は次のとおりです。
- 対象:保存済みの会社サイト32,838社のうち、文字化けが少なく読める31,159社
- 数えた言葉:「海外拠点」「海外支社」「海外支店」「海外事務所」「海外子会社」「現地法人」「海外工場」「駐在員事務所」「海外生産」「海外進出」「海外展開」のいずれか
- 「海外旅行」「海外研修」のような、拠点と関係のない言葉は数えていません
- 集計スクリプト:scripts/analyze_kaigai_hp_cache.py(2026年9月29日実行)
ひとつ断っておくと、これはサイトに書いてあるかどうかの集計で、実際に海外拠点があるかどうかの集計ではありません。拠点があっても書いていない会社もあれば、代理店との契約を「海外拠点」と呼んでいる会社もありえます。
全体では5.6%、具体的な拠点の話まであるのは4.3%
31,159社のうち、上の言葉のどれかが出てくる会社は1,758社(5.6%)でした。このうち「現地法人」「海外工場」「駐在員事務所」など具体的な拠点を表す言葉があるのは1,352社で、全体の4.3%です。
残りの406社(言及した会社の23.1%)は「海外進出」「海外展開」という言葉だけでした。「海外展開を目指しています」「海外進出を支援します」のように、目標やサービスの説明として使われている場合も含まれます。「海外展開」と書いてあることと、海外に拠点があることは別、と読んでください。
拠点の中身の内訳
海外について書いている1,758社のうち、それぞれの言葉が出てくる割合です(1社で複数に当てはまります)。
- 現地法人・海外子会社:510社(29.0%)
- 海外工場・海外生産:207社(11.8%)
- 駐在員事務所:81社(4.6%)
- 海外代理店・総代理店:47社(2.7%)
- 輸出・輸入:402社(22.9%)
現地法人がもっとも多く、駐在員事務所は少数です。駐在員事務所は市場調査や連絡のための拠点で、現地で営業活動はできないのが一般的です。求人で「海外拠点あり」と書かれていたら、現地法人なのか駐在員事務所なのかで、行った先の仕事の中身が大きく変わります。
業種別:製造業10.3%、医療・福祉0.5%
業種ごとの割合です(各業種300社以上あるものに限定。業種は商号や事業内容から機械的に推定したものです)。
- 製造業:10.3%(6,600社中683社)。具体的な拠点の話まであるのは8.8%
- 卸売業・小売業:7.7%(1,504社中116社)
- 学術研究・専門・技術サービス業:7.5%(1,406社中105社)
- 運輸業・郵便業:7.3%(981社中72社)
- 金融業・保険業:6.7%(507社中34社)
- 情報通信業:6.3%(2,103社中133社)
- 不動産業:3.4%(503社中17社)
- 生活関連サービス業:2.4%(468社中11社)
- 建設業:2.1%(3,489社中74社)
- 宿泊業・飲食サービス業:1.7%(807社中14社)
- 医療・福祉:0.5%(3,296社中17社)
製造業が抜けて高いのは、海外に生産拠点を持つ会社が多いからです。運輸業が7.3%あるのは、国際物流を扱う会社が海外に拠点を置いているためと考えられます。反対に、建設業・飲食・医療福祉は国内の現場で完結する仕事が中心なので、ほとんど出てきません。業種の調べ方は会社の業種を調べる方法にまとめています。
規模別:300人以上で10.9%
従業員数が分かっている会社で、規模別に比べました。
- 1〜9人:4.0%
- 10〜49人:3.8%
- 50〜99人:4.4%
- 100〜299人:6.9%
- 300人以上:10.9%
100人を超えたあたりから上がり、300人以上では1割を超えます。ただ、1〜9人の会社でも4.0%が海外について書いている点は見落とせません。小さな商社や、海外から部品を仕入れる会社、海外向けにネット販売をする会社などが含まれます。「小さい会社だから海外とは無縁」とは言えません。従業員数の調べ方は会社の従業員数を調べる方法へ。
拠点の国:中国47.7%、米国32.3%
具体的な拠点について書いている1,352社のうち、国・地域の名前が出てくる割合です(都市名も含めて数え、「中国地方」などは除きました)。
- 中国:645社(47.7%)
- 米国:437社(32.3%)
- 欧州(ドイツ・英国・フランス・オランダなど):355社(26.3%)
- タイ:308社(22.8%)
- ベトナム:266社(19.7%)
- インド:242社(17.9%)
- 台湾:206社(15.2%)
- 韓国:182社(13.5%)
- インドネシア・シンガポール:各165社(12.2%)
- マレーシア:115社(8.5%)
- フィリピン:110社(8.1%)
- メキシコ:72社(5.3%)
国名が出てくるのは拠点の話がある会社のページのどこかで、拠点の所在地とは限りません(取引先の国として書かれている場合も含みます)。それでも、中国がほぼ半数で、米国・欧州、そしてタイ・ベトナムなど東南アジアの国々が続くという並びははっきり出ました。
もうひとつ、拠点の話がある会社のうち36.2%は3つ以上の国・地域の名前を出していました。反対に19.7%は国名がどこにも出てきません。「海外拠点あり」とだけ書いて国を明かさない会社も、5社に1社ほどあるということです。
地域別・法人の種類別
都道府県別(300社以上ある県に限定)では、東京都9.1%、大阪府8.1%、愛知県8.0%が高く、沖縄県0.9%、北海道1.0%、宮城県1.4%が低くなりました。製造業と商社が集まる地域ほど高い、という分かりやすい結果です。
法人の種類別では、株式会社が6.5%、有限会社が1.5%でした。
書かれ方の読み方
「海外進出」「海外展開」だけなら、具体を聞く
先に書いたとおり、言及した会社の23.1%は「海外進出」「海外展開」という言葉だけでした。これは「すでに出ている」とも「これから出たい」とも読めます。応募や取引の判断に使うなら、どの国に、どんな形(現地法人・工場・事務所・代理店)で、いつからの3点を確かめてください。
現地法人・駐在員事務所・代理店は別物
同じ「海外拠点」でも、中身はかなり違います。
- 現地法人:その国の法律で設立した会社。現地で営業も生産もできる
- 駐在員事務所:連絡・調査のための拠点。現地で売上を立てる活動は通常できない
- 代理店:自社の拠点ではなく、現地の別会社と販売契約を結んでいるだけのこともある
会社サイトで「世界◯か国に拠点」と書かれていても、その数に代理店が含まれていることがあります。
サイトの更新が止まっていないか
沿革や拠点一覧は、一度作ると更新されないことがよくあります。撤退した拠点が残っていたり、新しい拠点が載っていなかったりします。ページの更新時期の見方はホームページの更新が止まっている会社は大丈夫かで書いたので、あわせて確認してください。
転職・取引の前にどう使うか
転職で海外勤務を希望する、あるいは避けたい場合は、まず会社サイトの拠点一覧と沿革を見て、拠点の国と形をメモしておきましょう。そのうえで面接では「海外拠点への赴任はどのくらいの頻度で、どの部署から出ていますか」と具体的に聞くのが確実です。転勤全般の確かめ方は転勤があるかの調べ方にまとめています。
取引先を調べるときは、上場企業ならEDINETの有価証券報告書で「関係会社の状況」を確認し、非上場なら会社サイトの記載と、業界紙などの報道を照らし合わせてください。その前提として、会社が実在して事業を続けているかの確認も欠かせません。手順は会社のドメインで実在を確認する方法と取引先の信用を調べる方法へ。
海外に工場を持つ製造業なら、品質や環境の国際規格を取っていることも多いので、ISO認証の調べ方もあわせて見ておくと、会社の姿がつかみやすくなります。
よくある質問
海外進出している企業の一覧はどこで見られますか?
すべての会社をまとめた無料の公式一覧はありません。上場企業なら、EDINETの有価証券報告書で1社ずつ海外子会社を確認できます。業界や国ごとの一覧が必要な場合は、信用調査会社や出版社がまとめた有料のデータを使うことになります。経済産業省の「海外事業活動基本調査」は傾向を見る統計で、個別の会社名は出てきません。
非上場企業の海外子会社は調べられますか?
確実に調べる方法はほとんどありません。非上場企業は有価証券報告書の提出義務が基本的になく、海外子会社は日本の登記や法人番号の台帳にも載らないからです。会社の公式サイト、英語版サイト、ニュースリリースに書かれていれば手がかりになります。書かれていなければ、面接や商談で直接聞くのが確実です。
会社サイトに「海外拠点あり」と書いてあれば、海外勤務がありますか?
そうとは限りません。現地の人だけで運営している拠点もあれば、代理店を拠点と呼んでいる場合もあります。今回の集計でも、海外について書いている会社の23.1%は「海外進出」「海外展開」という言葉だけでした。海外勤務の有無は、募集要項の勤務地欄と面接で確かめてください。
小さい会社でも海外拠点を持っていることはありますか?
あります。今回の集計では、従業員1〜9人の会社でも4.0%が海外拠点や海外進出について書いていました。小さな商社や、海外から仕入れる会社、海外に生産を委託している会社などです。規模だけで海外との関わりを判断しないほうがよいと思います。
海外の会社が日本に持つ拠点は調べられますか?
こちらは調べやすいです。海外の会社が日本で継続して商売をするときは「外国会社」として登記するので、国税庁の法人番号の台帳にも載ります。しょくばログでも法人番号から検索できます。