✍ 古家あきら | 2026-10-07 更新
NEDO支援の熱電発電ベンチャー「Eサーモジェンテック」(京都)が破産──自社サイトの決算公告では、純資産が3年で8,477万円からマイナス1億6,950万円に。しょくばログDBで見る、社名に「発電」を持つ会社2,713社の閉鎖率18.8%
先に結論です。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を何度も受けてきた熱電発電ベンチャー、株式会社Eサーモジェンテック(京都市南区)が、2026年9月25日に京都地裁から破産手続きの開始決定を受けました。 7月には温泉地で実証実験をし、8月20日には新製品が省エネ補助金の対象設備に登録されたばかりでした。
外から見ると「突然」に見えます。ただ、同社が自社サイトで公開していた決算公告を4期分並べると、数字のほうは少しずつ動いていました。純資産は2023年3月期の8,477万円から、2026年3月期にはマイナス1億6,950万円になっていました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「国の支援を受けている会社なら安心ですよね」という質問を受けることがあります。この記事は同社の技術や経営を評価するものではありません。採択や受賞といった「実績」と、決算の「数字」を分けて読む方法を、今回の公開情報を材料に整理します。
出典:【京都】Eサーモジェンテックが破産 NEDO支援の熱電発電ベンチャー、8月にも省エネ補助対象設備に登録(JC-NET・2026年10月6日)
出典:熱電発電デバイスと熱電発電システムの研究開発・製造・販売/株式会社Eサーモジェンテック(NEDO公式サイト)
出典:決算公告|株式会社Eサーモジェンテック(同社公式サイト)
報道と公式情報で確認できる事実
JC-NETの報道と、NEDOの公式ページで確認できる内容は次のとおりです。
- 所在地は京都市。2013年設立。熱電発電デバイスと熱電発電システムの研究開発・製造・販売を手がけていた
- 主力は、曲面にも貼れるフレキシブル構造の熱電発電モジュール「フレキーナ」。工場やプラントで捨てられている低温の排熱を電気に変える技術
- NEDOの支援は、2016年にシード期の研究開発型ベンチャー事業化支援、2017年と2018年に新エネルギー技術革新支援事業、2020年にシーズ発掘・事業化技術研究開発事業などに採択。2022年には「J-Startup KANSAI」に選ばれている
- 2026年7月に温泉地で実証実験、8月20日に省エネ補助の対象設備に登録
- 2026年9月25日に京都地裁が破産手続き開始決定。負債総額は報道では明らかになっていない
しょくばログの台帳では、同社の法人番号は「6130001050736」、本店所在地は京都市南区で、登記はまだ閉鎖されていません。破産手続きが始まっても、登記が閉鎖されるのは手続きが終わってからです。この時間差は破産決定が出ても台帳に「閉鎖」が出ない会社の記事で詳しく書いています。
なお、名前が似た「サーモジェン有限会社」(長野県長野市)という別の法人もありますが、こちらは2023年7月に登記が閉鎖されている、今回とは無関係の法人です。社名だけで判断せず、法人番号で照合する方法を使ってください。
決算公告4期分を並べると、数字はこう動いていた
同社は、会社法で求められる決算公告を自社サイトに載せていました。貸借対照表の数字を年ごとに並べます(円単位の数字を万円未満切り捨てで表記)。
- 2023年3月期:純資産 8,477万円/現金及び預金 9,752万円/負債合計 1億1,272万円
- 2024年3月期:純資産 5,547万円/現金及び預金 6,062万円/負債合計 8,980万円
- 2025年3月期:純資産 192万円/普通預金 4,450万円/負債合計 1億1,022万円(当期純損失 1億2,340万円)
- 2026年3月期:純資産 マイナス1億6,950万円/普通預金 379万円/負債合計 2億3,218万円(当期純損失 1億7,143万円)
読み取れることは三つです。
一つ目は、2026年3月期に債務超過になっていたことです。資産合計6,267万円に対して、負債合計が2億3,218万円ありました。
二つ目は、短期借入金が1年で約3倍に増えていたことです。2025年3月期の5,661万円が、2026年3月期には1億7,396万円になっています。手元の普通預金は4,450万円から379万円に減っていました。
三つ目は、出資で集めたお金の大きさです。2026年3月期の資本金は1億円、資本準備金は7億540万円で、合わせて8億540万円。一方で繰越利益剰余金はマイナス9億7,490万円でした。研究開発型の会社が、売上が立つ前に出資を使って開発を進めるのは珍しくありません。赤字そのものが問題なのではなく、「次の資金が入る前に手元資金が尽きる」形になっていたことが、数字から読み取れます。
ここで注意したいのは、決算公告の負債2億3,218万円は2026年3月末時点の数字で、破産手続きでの負債総額とは別だということです。
採択・受賞・登録は「財務の証明」ではない
今回、外から見えていた「実績」は多くありました。NEDOの採択が複数回、J-Startup KANSAIへの選定、2026年4月の受賞、8月の補助対象設備への登録です。
ただ、これらは技術や事業の将来性を評価したもので、会社の資金繰りを保証するものではありません。補助対象設備の登録は製品の性能や仕様についての手続きですし、研究開発の採択も、テーマの評価が中心です。
しょくばログでは以前、国の認定を受けていた測量会社や、補助金を受けていた会社の破産も扱ってきました。どれも「認定や採択があったから安心」とは言えない例です。補助金の採択歴の調べ方は補助金を採択された会社の調べ方にまとめています。
しょくばログの台帳で見る「発電」の会社
社名に「発電」を含む会社(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)を、しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号公表サイトの全件をもとにしたもの)で数えました。
- 該当は2,713社。うち登記が閉鎖されているのは510社で、閉鎖率は18.8%。同じ5種類の会社全体の閉鎖率13.6%より5.2ポイント高い
- 閉じ方は「清算の結了等」411社、「合併による解散等」89社、「登記官による閉鎖」10社
- 稼働中の2,203社のうち、合同会社が1,533社で約7割。株式会社は645社、有限会社は22社
- 社名に「熱電」を含む会社は全国で20社と、ごく少数
合同会社が7割というのは、ほかの業種ではまず見ない偏りです。太陽光発電などの案件ごとに、発電所を持つためだけの会社をつくる例が多いためと考えられます。こうした会社は従業員を置かないことも多く、「発電」という社名だけでは、研究開発をする会社なのか、発電所を持つだけの会社なのかは区別できません。
応募者・取引先が確かめておきたいこと
研究開発型のベンチャーに応募する人、製品を導入する会社が、公開情報で見られる点をまとめます。
- 決算公告を探す:株式会社には決算公告の義務があります。自社サイト、官報、電子公告のどこかに出ていないか確認する。出ていない会社の扱いは決算公告を出していない会社の記事で書いています
- 純資産と手元資金を、2期以上で比べる:1期だけでは傾きが分かりません。純資産が毎年どれだけ減っているか、預金がどれだけ残っているかを並べる
- 短期借入金の増え方を見る:1年で何倍にもなっているときは、資金のつなぎが続いているサインのことがある
- 決算月を確かめる:最新の数字がいつの時点のものかで、読み方が変わります。決算月の調べ方は会社の決算月の調べ方にまとめています
製品を導入する側にとっては、保守や部品供給が続くかどうかも大事です。導入前に、メーカーが止まった場合の対応を契約で決めておくと安心です。
よくある質問
NEDOなど国の支援を受けた会社は倒産しにくいのですか?
そうとは言えません。研究開発の支援は技術やテーマを評価して出るもので、会社の資金繰りを保証するものではありません。今回のように、採択や補助対象登録の直後に破産する例もあります。
決算公告はどこで見られますか?
会社によって、官報、日刊新聞、電子公告(自社サイトなど)のいずれかで公告します。今回の会社は自社サイトに4期分のPDFを載せていました。会社のサイトに「決算公告」「電子公告」のページがないか探すのが早道です。
債務超過の会社は、すぐに倒産するのですか?
すぐにとは限りません。出資や借入で資金を確保できれば、債務超過のまま事業を続ける会社もあります。ただ、手元資金が少なく、短期借入金が急に増えているときは、資金の余裕が小さくなっていると考えたほうが安全です。
破産した会社の製品を使っている場合はどうなりますか?
破産手続きでは、破産管財人が会社の財産や契約を整理します。保守や保証の扱いは、管財人からの連絡や、裁判所が示す債権者向けの手続きを確認してください。個別の判断は弁護士に相談するのが確実です。
まとめ
- Eサーモジェンテック(京都市南区)は、2026年9月25日に京都地裁から破産手続き開始決定を受けた
- 自社サイトの決算公告では、純資産が8,477万円(2023年3月期)からマイナス1億6,950万円(2026年3月期)に変わり、短期借入金は1年で約3倍になっていた
- 採択・受賞・補助対象登録は技術の評価で、財務の証明ではない
- しょくばログの台帳では、社名に「発電」を持つ会社2,713社の閉鎖率は18.8%。稼働中の約7割は合同会社だった
会社の「実績」と「数字」は、別々に確かめる。今回の件から持ち帰れるのは、この一点だと思います。