✍ 古家あきら | 2026-10-06 更新

特定商取引法に基づく表記の見方 — 通販サイトの運営会社を法人番号までたどる(表記の中身が読めた会社サイト247社のうち、登記上の商号がそのまま書かれていたのは94.7%)

先に結論です。「特定商取引法に基づく表記」は、通信販売をする事業者が広告に載せなければならない項目をまとめたページです。 運営会社を確かめるときに見るのは、そのうち「販売業者(事業者の名称)」「所在地」「電話番号」「代表者または責任者」の4つです。ここに書かれた名称で法人番号を検索し、住所が登記と合うかを見れば、たいていのサイトは登記上の会社までたどれます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「このネットショップの会社は実在しますか」という問い合わせをときどき受けます。そのとき最初に開いてもらうのが、この表記のページです。どこまで役に立つのかを確かめるため、しょくばログが保存している会社サイト31,159社の文章で、表記の書き方を数えてみました。

表記の中身が読めた会社サイトの大半は、登記と同じ名前を書いていました。ただし残りの13社には、登記と違う会社名が書かれているなど、そのままでは検索に乗らない書き方が混じっていました。以下、表記の項目の意味、読み方、データの中身の順に書きます。

「特定商取引法に基づく表記」とは何か

通信販売の広告に義務づけられた表示

特定商取引法11条は、販売業者や役務提供事業者が通信販売の条件について広告をするとき、決められた事項を広告に表示するよう求めています。通信販売とは、郵便・電話・インターネットなどで申込みを受けて商品やサービスを売る取引のことです(同法2条2項)。ネットショップの商品ページも、サービスの申込みフォームが付いたサイトも、この広告にあたります。

「特定商取引法に基づく表記」という見出しは法律が決めた名前ではありません。11条の表示事項を1つのページにまとめるときの慣習的な呼び名です。「特定商取引法に基づく表示」「特商法表記」と書くサイトもあります。

表示しなければならない項目

条文で決まっている項目は、大きく分けて次のとおりです(同法11条1〜5号、施行規則23条)。

運営会社を確かめる目的なら、見るのは「事業者の情報」と「代表者・責任者」の2つで足ります。名称・住所・電話番号・代表者名がそろって初めて、登記と突き合わせられるからです。

省略してよい場合

11条ただし書きは、広告に「請求があれば、これらの事項を書いた書面(または電子データ)を遅滞なく提供する」と表示すれば、表示事項の一部を省略できると定めています。どの項目を省略できるかは施行規則25条に細かく決められていて、返品特約の主な中身(撤回できるか、何日以内か、返送費用は誰が持つか)などは省略できません。

つまり「請求があれば遅滞なく開示します」とだけ書いて名称や住所を出していないサイトは、条文の上では一部省略の形をとっていることになります。その場合は、実際に請求して書面やメールで名称・住所を受け取ってから取引するのが筋です。

返品の扱いも表記で決まる

通信販売にはクーリング・オフがありません。代わりに15条の3が、商品を受け取った日から数えて8日以内なら申込みの撤回や契約の解除ができると定めています。ただし、販売業者が広告に「返品できない」などの特約を表示していれば、その特約が優先されます。表記の返品欄は、この特約を書く場所でもあります。返品の可否で揉めたときに根拠になるのはこの欄なので、運営会社と並んで最初に読んでおく価値があります。

表記から運営会社をたどる手順

1. 表記のページを開く:サイトのいちばん下(フッター)にあることが多いです。見つからなければ「会社概要」「運営会社」「ご利用ガイド」の中も探します 2. 「販売業者」欄の名称を写す:株式会社・合同会社などの法人格が付いているかを見ます。法人格が無く店名だけなら、個人事業者か、店名しか書いていないかのどちらかです 3. 名称で法人番号を検索する:国税庁の法人番号公表サイトか、しょくばログで会社名を検索します。法人格の付け方(前株・後株)や英字・カナの違いで出てこないことがあるので、ゆらぎを変えて何度か試します 4. 所在地を登記と突き合わせる:検索で出た本店所在地と、表記の所在地が合うかを見ます。違う場合は、表記の住所が営業所や倉庫なのか、そもそも別の会社なのかを確かめます 5. インボイス登録番号があれば使う:表記や領収書にT+13桁の番号があれば、Tを除いた13桁は法人番号と同じです。インボイス番号から会社を逆引きする方法でそのまま登記上の会社にたどり着けます 6. 法人格が無ければ個人事業者として見る:個人事業者は法人番号を持ちません。見分け方は個人事業主と法人の見分け方にまとめてあります

店名やサイト名しか分からない状態から始める場合は、表記以外の経路(求人票・商標・ドメインなど)も含めて店名・サイト名から運営会社を調べる方法に書いています。表記はその中でいちばん速い経路です。

会社サイトは表記に何を書いているか:247社のデータ

表記に触れる会社は2.9%、中身まで読めたのは247社

しょくばログは、法人番号と結びついた会社サイトの文章を31,159社分保存しています。このうち「特定商取引法に基づく表記」「特定商取引法に基づく表示」「特商法表記」などの見出しを含む会社は913社(2.9%)でした。

ただし、913社の多くは、フッターのリンク名として見出しが残っているだけで、表記のページそのものは保存されていません。見出しの後ろ2,000字以内に、販売業者(事業者名・運営会社など)の項目と、所在地か電話番号の項目がそろい、項目の見出しが4種類以上ある会社を「中身まで読めた」と数えると、247社になりました。以下の割合は、この247社が分母です。

名称・所在地・電話・責任者は9割前後が書いている

247社の表記に、各項目の見出しや記載があった割合です。

運営会社を確かめるのに使う4項目(名称・所在地・電話・責任者)は、9割前後の会社が書いていました。一方、価格・支払・返品・送料の書かれている割合は2〜4割にとどまります。これは手抜きとは限りません。会社サイトの表記は商品ページとは別のページにあり、価格や送料は商品ページやご利用ガイドに書く会社が多いからです。保存しているのは表記のページの周辺だけなので、ここで数えた割合は「表記のページに書いてある割合」と読んでください。

「請求があれば遅滞なく開示します」型の省略の文言は、913社全体で見ても「遅滞なく」の語が出てくるのは7社(0.8%)でした。会社として自社サイトを出している事業者は、省略せずに名称や住所を載せるのが普通だということです。

登記上の商号がそのまま書かれていたのは94.7%

247社それぞれについて、しょくばログの法人データにある登記上の商号(全角・半角や空白をそろえたもの)が、表記の中にそのまま含まれているかを調べました。

13社を目視すると、表記には登記と違う会社名が書かれていたものが少なくとも4社ありました。グループ会社や販売を受け持つ別会社の名前を載せている形です。サイトの持ち主と販売業者が別会社なら、契約の相手は表記に書かれた会社のほうです。ほかに、登記では旧字(「罐」)や大きい仮名(「シヤツ」)なのに表記では新字や小さい仮名で書いているもの、屋号を前に付けて商号を後ろに書いたものがありました。残りは、こちらの抽出がうまくいかなかったものです。

旧字や仮名の大小の違いは、検索で出てこない原因になります。表記の名前で検索して何も出てこないときは、字体を変えてもう一度検索してください。

インボイス番号まで書く会社は5.7%

表記の中にインボイスの登録番号(T+13桁)があった会社は14社(5.7%)、「法人番号」の語があった会社は12社(4.9%)でした。法人番号まで書いてあれば検索のゆらぎに悩まずに済みますが、表記に番号を載せる会社はまだ少数です。番号が無い場合は、手順の3〜4のとおり名称と所在地で突き合わせることになります。

どんな会社が表記を載せているか

表記の見出しに触れていた913社の法人の種類は、株式会社784社(85.9%)、その他の設立登記法人67社、有限会社36社、合同会社21社でした。中身まで読めた247社に限ると、株式会社が229社(92.7%)です。

業種(日本標準産業分類の大分類、しょくばログの推定)は、913社のうち分類できなかった会社が370社(40.5%)、製造業180社(19.7%)、卸売・小売業69社(7.6%)でした。

表記を読むときの注意

よくある質問

「特定商取引法に基づく表記」が無いサイトは違法ですか?

通信販売の条件を広告しているのに表示事項が無ければ、特定商取引法11条の表示義務を満たしていない可能性があります。違反には主務大臣の指示(14条)などの行政処分があり得ます。ただし、商品を売っていない会社案内だけのサイトや、申込みを受けないサイトには、そもそも表記が必要ありません。表記が無いことだけで違法かどうかは決まらないので、まずそのサイトで実際に申込みができるかを見てください。

表記に住所や電話番号が書かれていないのはなぜですか?

11条ただし書きにより、「請求があれば遅滞なく書面や電子データで提供する」と表示すれば、表示事項の一部を省略できます。この場合は問い合わせれば名称・住所・電話番号が開示されるはずです。省略の文言も無く、請求しても答えない事業者との取引は避けたほうが無難です。なお、会社サイト913社の範囲では、この省略の文言を使っていたのは1%未満でした。

表記の会社名で検索しても法人番号が出てきません

よくある原因は、①法人格の前後(株式会社〇〇/〇〇株式会社)の違い、②英字とカナの違い、③旧字や小さい仮名の違い、④店名だけで法人格が無い(個人事業者)、⑤商号変更や合併で登記の名前が変わった、のどれかです。今回のデータでも、登記の旧字と表記の新字が違う例がありました。所在地の市区町村で絞り込むか、表記にインボイス番号があれば13桁で直接検索してください。

表記の「責任者」は代表取締役と同じ人ですか?

同じとは限りません。施行規則23条2号は、法人がウェブサイトで広告する場合に「代表者または通信販売に関する業務の責任者」の氏名を求めているので、通販担当の部長などを書くこともできます。代表者を確かめたいときは、登記事項証明書か会社概要を見てください。

個人のネットショップでも本名と住所を書かないといけないのですか?

条文の上では、個人事業者も「氏名、住所、電話番号」が表示事項です(施行規則23条1号)。11条ただし書きによる一部省略の扱いは個人でも同じで、請求に応じて提供する旨を表示する形がとられることがあります。個人事業者のショップを確かめる場合は、法人番号では検索できないので、インボイス登録番号の有無や、個人事業主と法人の見分け方の手がかりを使います。

データについて

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ