✍ 古家あきら | 2026-10-04 更新
10月の食品値上げは3,153品目、調味料は820品目 — 値上げ表に載らない小さな醤油の会社を台帳で見ると、今も残る743社の27.6%が合資・合名会社(しょくばログDB)
先に結論です。帝国データバンクの調査によると、主要な食品メーカー195社が2026年10月に値上げする飲食料品は3,153品目でした。 1回あたりの平均値上げ率は10%。分野別では「酒類・飲料」が1,399品目で最も多く、マヨネーズや醤油、たれ類を中心とする「調味料」が820品目で続きます。2026年の値上げ品目は、判明している分だけで2万187品目となり、2年連続で年2万品目を超えました。
この調査の対象は、主要な食品メーカーです。一方で、同じ原材料高やエネルギー代の値上がりは、地域の小さな醸造元にも、その調味料を仕入れて料理を出す飲食店にもかかっています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、値上げのニュースで名前が出る会社より、名前が出ない会社のほうが圧倒的に多いことに気づきます。社名に「醤油」が付く法人を数えると856社ありました。この記事では、その会社たちが登記の上でどんな姿をしているかを、台帳の数字で見ていきます。特定の会社の経営を評価するものではありません。
出典:「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年10月(帝国データバンク・2026年9月30日)
出典:飲食料品値上げ、10月は3153品目 値上げラッシュはピーク越え(帝国データバンク プレスリリース・PR TIMES)
調査で確認できる事実
帝国データバンクが公表した内容のうち、この記事で使う数字は次のとおりです。
- 2026年10月の値上げは3,153品目、1回あたりの平均値上げ率は月平均10%
- 単月で3,000品目を超えるのは2か月連続で、2023年6〜7月以来、3年3か月ぶり(9月は4,965品目)
- 10月の分野別では「酒類・飲料」が1,399品目で最多、「調味料」が820品目
- 2026年の値上げは1〜12月の判明分で2万187品目。分野別の年間では「加工食品」6,961品目、「調味料」6,250品目、「酒類・飲料」3,309品目、「菓子」1,390品目
- 値上げの理由(重複あり)は「原材料高」91.3%、「エネルギー(電気代など)」63.8%、「中東情勢」27.8%、「円安」8.1%
- 11月の値上げ予定は1,469品目。帝国データバンクは、2026年内の値上げは10月をピークにいったん落ち着くとみる一方、来年以降も断続的な値上げが続くと予想しています
ここで目を留めたいのは「調味料」です。10月の単月では酒類・飲料に次ぐ2位ですが、年間で見ると6,250品目と、加工食品に次ぐ規模になっています。調味料は家庭だけでなく、飲食店の厨房で毎日使われるものです。
値上げの表に載らない会社がある
調査の対象になっている195社は、全国的に商品を出している主要メーカーです。値上げを発表すれば報道されますし、スーパーの棚の値札も変わります。
ところが、醤油や味噌のように地域ごとに作り手がいる調味料では、主要メーカーの外側に、小さな醸造元がたくさんあります。そうした会社も、原料や瓶、段ボール、電気代の値上がりは同じように受けています。違うのは、値上げを発表しても全国のニュースにはならないことと、取引先が地元の飲食店や小売店に限られることです。
値上げの理由の9割超が「原材料高」だという数字は、大手だけの話ではありません。値段を上げるかどうかを決める立場は同じで、決めたあとの影響が見えにくいだけです。
しょくばログの台帳で見ると
しょくばログは、国税庁が公表している法人番号のデータをもとに、全国の法人を収録しています。商号(社名)に「醤油」を含む法人を数えました。社名で数えているので、醤油を作っていない会社が混じることも、醤油を作っていても社名に入れていない会社が漏れることもあります。その前提で読んでください。
社名に「醤油」が付く法人は856社
- 収録されている法人:856社
- そのうち登記が閉鎖されている法人:113社(13.2%)
- 今も登記が残っている法人:743社
閉鎖の割合13.2%は、台帳全体の13.3%とほぼ同じです。閉鎖の内訳は、清算が終わったもの75社、法務局が長く動きのない会社を整理したもの(職権による閉鎖)33社、合併5社でした。
今も残る743社の27.6%が合資会社・合名会社
社名に「醤油」が付く会社の特徴がはっきり出るのは、会社の種類です。今も登記が残っている743社を種類別に分けると次のようになります。
- 株式会社:292社(39.3%)
- 有限会社:150社(20.2%)
- 合資会社:133社(17.9%)
- その他の法人(協同組合など):93社(12.5%)
- 合名会社:72社(9.7%)
- 合同会社:3社(0.4%)
台帳全体で今も登記が残っている法人は約499万社あり、そのうち合資会社は1.2%、合名会社は0.2%しかありません。醤油の会社では、この2つを合わせて27.6%。全体の約20倍の割合です。
合資会社や合名会社は、明治から昭和の初めにかけて、家業を法人にするときによく使われた形です。今では新しく作られることは少なくなりました。醤油の会社に多く残っているのは、家業として代々続いてきた醸造元が多いことの表れだと考えられます。合資会社の仕組みは「合資会社・合名会社とは」で詳しく書いています。
地域では九州・瀬戸内・関東に分かれる
今も残る743社を本店所在地で並べると、福岡県47社、兵庫県44社、広島県37社、千葉県36社、長野県33社、香川県32社の順でした。千葉県の銚子・野田、兵庫県の龍野、香川県の小豆島など、醤油づくりで知られる地域を含む県が上位に並びます。
ちなみに社名に「味噌」が付く法人は371社で、今も残る318社のうち合資会社は8.2%、合名会社は2.2%でした。醤油ほどではないものの、こちらも台帳全体よりは高い割合です。
飲食店・取引先・働く人が確かめたいこと
1. 仕入れ値の上がり方を、品目ごとに記録しておく
調味料は1回の値上げ幅が小さく見えても、使う量が多い店ほど積み上がります。帝国データバンクの集計では平均値上げ率は10%です。主な調味料について「いつ・いくらからいくらに上がったか」を残しておくと、メニューの価格を見直すときの根拠になります。
2. 地元の醸造元から仕入れているなら、相手の事情も聞いておく
小さな醸造元は、値上げを言い出しにくい立場にいることがあります。急に取引が止まるより、事前に話し合えるほうがお互いのためです。価格を上げにくい業種の事情は「価格転嫁できない業種」でまとめています。
3. 取引先の会社の種類を、法人番号で確かめる
合資会社や合名会社には、会社の借金に対して個人の財産で責任を負う社員(無限責任社員)がいます。取引の相手がどの形の会社なのかは、法人番号で登記を確かめれば分かります。調べ方は「会社の取引先の調べ方」にあります。
4. 「老舗」であることと、経営が安定していることは別に見る
業歴が長いことは信用の材料になりますが、それだけで安定しているとは言えません。2026年は業歴100年を超える会社の倒産も多いペースで推移しています(老舗倒産112件の記事)。老舗を外から見るときのポイントは「老舗と新興の見分け方」で書いています。
5. 働く人は、家業の会社の「次の代」を聞いてみる
家族経営の醸造元に勤めている、あるいは応募を考えている人にとっては、後を継ぐ人が決まっているかどうかが大切です。面接や面談で聞きにくければ、代表者の年齢や、若い人が働いているかどうかから様子をつかむこともできます。
よくある質問
10月の値上げ3,153品目は、どれくらい多いのですか。
帝国データバンクによると、単月で3,000品目を超えたのは9月に続いて2か月連続で、2か月続けて超えるのは2023年6〜7月以来3年3か月ぶりです。11月は1,469品目の予定で、年内の値上げは10月がピークになる見通しとされています。
なぜ醤油の会社には合資会社や合名会社が多いのですか。
台帳の数字からわかるのは、今も残る743社の27.6%がこの2つの形だという事実までです。理由は登記からは読めませんが、合資・合名会社は昔の家業の法人化で多く使われた形なので、代々続く醸造元が多いことが関係していると考えられます。
社名に「醤油」が付く会社の閉鎖率13.2%は高いのですか。
台帳全体の閉鎖率13.3%とほぼ同じです。この数字だけで、醤油の会社が特に危ないとも、特に安全とも言えません。閉鎖の記録には、休眠会社の一斉整理のように事業の状況と直接関係しないものも含まれます。
小さな醸造元の値上げ情報は、どこで分かりますか。
全国的なニュースになることは少ないので、取引先から直接届く案内が中心になります。取引がある場合は、価格改定の予定がないかを担当者に早めに聞いておくのが確実です。
まとめ
10月の食品値上げは3,153品目で、調味料は820品目でした。値上げの理由の9割超は原材料高で、これは調査の対象になった主要メーカーだけの事情ではありません。しょくばログの台帳では、社名に「醤油」が付く法人は856社あり、今も残る743社の27.6%が合資会社・合名会社という、家業として続いてきた形の会社でした。値上げの表に名前が載らない会社とも取引は続きます。仕入れ値の記録と、相手の会社を法人番号で押さえておくこと。この2つは、値上げが続く中で役に立ちます。