✍ 古家あきら | 2026-10-11 更新
リフォーム工事業の倒産、1〜9月で96件と過去最多ペース──社名に「リフォーム」を持つ会社は全国2,763社、閉鎖率15.1%。頼む前・入る前に確かめたいこと
先に結論です。東京商工リサーチ(TSR)の2026年10月11日の発表によると、2026年1〜9月の「建築リフォーム工事業」の倒産(負債1,000万円以上)は96件でした。 前年同期の80件から20.0%増え、統計を取り始めた2002年以降で最も多いペースです。このまま進むと、年間で120件を超えるとTSRは見ています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、リフォームの見積もりを取った人から「この会社、大丈夫でしょうか」という相談に近い検索が多く届きます。この記事では、TSRの数字をそのまま紹介したうえで、うちの台帳で社名に「リフォーム」を含む会社を数え直しました。特定の会社を評価する記事ではありません。業界全体の数字から、頼む側・働く側が使える見方にまとめます。
出典:リフォーム工事業の倒産、過去最多ペース ~ 資材高と人手不足、値引き要求で「利益なき工事」 ~(東京商工リサーチ・2026年10月11日)
TSRの発表で確認できる数字
TSRの記事に書かれている数字を並べます。
- 1〜9月の倒産件数:2026年は96件。2025年の80件がそれまでの最多で、2012年は74件、2008年は67件、統計開始の2002年は17件
- 原因:「販売不振」が67件(前年同期比19.6%増)、「赤字累積」が17件(同70.0%増)。この2つで全体の約9割
- 負債の規模:1億円未満が78件で81.2%、1億円以上5億円未満が18件で18.7%
小さな会社の倒産が中心です。ただ、TSRは中堅規模の倒産もじわじわ増えていると書いています。
背景として挙げられているのは、資材の値上がり、働き方改革にともなう職人不足、人件費の上昇、そして受注競争です。値引きを求められて赤字のまま受ける工事が増え、業界関係者は「競合のなかでユーザー側が強くなる傾向もみられる」と話しています。記事の副題にある「利益なき工事」は、この状態を指しています。
人手不足が倒産に結びつく流れは、年度上半期の人手不足倒産240件を扱った記事でも取り上げました。
しょくばログの台帳で、社名に「リフォーム」を持つ会社を数えた
国税庁の法人番号データをもとにした、しょくばログの台帳で数えました。対象は株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の5種類です。
- 社名に「リフォーム」を含む会社:2,763社
- うち登記が閉鎖されている会社:417社(閉鎖率15.1%)
- 5種類の会社全体の閉鎖率:13.5%(516万2社のうち69万9,039社)
リフォームの会社は、会社全体より閉鎖率が1.6ポイント高い結果になりました。周辺の業種も社名で数えると、こうなります。
- 工務店:34,494社、閉鎖率17.2%
- リフォーム:2,763社、閉鎖率15.1%
- 塗装:14,544社、閉鎖率14.0%
- 設備:31,474社、閉鎖率13.2%
- 内装:3,196社、閉鎖率13.1%
工務店のほうが閉鎖率は高く、リフォームは塗装・内装・設備より少し高い位置です。社名に入っている言葉で数えているので、業種をそのまま表すわけではない点には注意してください。
会社の種類別に見ると、株式会社は1,563社のうち265社が閉鎖(17.0%)、有限会社は1,029社のうち142社(13.8%)、合同会社は151社のうち9社(6.0%)でした。合同会社が低いのは、制度ができてからの年数が短く、新しい会社が多いためと考えるのが自然です。会社の種類による違いが、そのまま「安全度」の違いになるわけではありません。
社名に「リフォーム」を含む会社が建設業の許可をどれくらい持っているかは、リフォーム会社に建設業許可がないのは普通かを扱った記事で別に数えています。集計の時期と対象の種類が違うため、社数はこの記事と少しずれます。
「閉鎖」と「倒産」は同じではない
ここで1つ大事な点があります。登記の閉鎖は倒産の数ではありません。
閉鎖したリフォームの会社417社の閉鎖理由を見ると、「清算の結了等」が265社(63.5%)、登記官による閉鎖(長く登記の動きがない休眠会社の整理など)が119社(28.5%)、合併による解散が33社(7.9%)でした。会社全体でも、清算の結了等が64.4%、登記官による閉鎖が27.8%、合併が7.7%で、割合はほぼ同じです。
閉鎖の多くは、事業をたたんで清算を終えた会社です。反対に、破産した会社は手続きが終わるまで登記が残り、台帳の上では「閉鎖」にならない期間があります。TSRの96件は倒産の件数で、うちの閉鎖率は登記の状態です。2つを足したり比べたりはできません。倒産の数に表れない会社の終わり方は、倒産統計に映らない会社の終わり方の記事で詳しく書きました。
同じ社名のリフォーム会社が多い
数えていて目についたのが、同じ社名の会社です。活動中の「リフォーム」を含む会社2,346社のうち、ほかの会社とまったく同じ社名を持つ会社は326社(13.9%)ありました。社名にして132通りです。
「〇〇リフォーム」のように、地名や一般的な言葉に「リフォーム」を付けた社名は重なりやすいのだと思います。見積書やチラシに書かれた社名だけで検索すると、別の会社の情報を見てしまうおそれがあります。似た社名・同じ社名の会社の見分け方は、類似商号を扱った記事にまとめています。
工事を頼む人・働く人が確かめたい4つのこと
1. 契約書の社名と所在地を、法人番号でそろえる
見積書、契約書、領収書に書かれた社名と本店所在地が同じか確かめます。法人番号がわかれば、同じ社名の別会社と取り違えることはありません。しょくばログでも社名と所在地から会社を探せます。
2. 着手前の大きな支払いは、工程に分けられないか相談する
倒産で困るのは、代金を先に払ったのに工事が終わっていない場合です。契約金額の大部分を着工前に払う形なら、着工時・中間・完成時に分けられないか相談する余地があります。支払い条件の決め方に正解はありませんが、分けておけば止まったときの損失は小さくなります。
3. 値引き幅が大きすぎる見積もりは、理由を聞く
TSRの記事は、値引きで赤字の工事を受けることが倒産につながると指摘しています。相見積もりで1社だけ極端に安いときは、どの工程や材料で安くなっているのかを聞いてみてください。答えが具体的なら判断材料になります。外から見える手がかりの集め方は、取引先の信用の調べ方で整理しています。
4. 働く人は、求人票の数字と会社の情報を合わせて見る
職人不足が続く業界なので、求人は多く出ています。応募の前に、会社の設立年や所在地、口コミを合わせて確かめておくと安心です。見方は会社の評判の調べ方に、倒産しそうな会社の外からの見え方は人手不足倒産の見分け方にまとめました。
運営者として思うこと
リフォームは、頼む側にとって金額が大きく、何年かに一度しか頼まない買い物です。会社の数字を見る習慣がない人のほうが多いはずです。今回の台帳の数字は、リフォームの会社が特に危ないと言うためのものではありません。閉鎖率の差は1.6ポイントで、同じ社名の会社が多いという特徴のほうが、頼む側にとっては実害につながりやすいと感じました。
社名だけで会社を判断せず、法人番号と所在地で「どの会社と契約するのか」をはっきりさせる。倒産が増えている時期だからこそ、この一手間を勧めたいと思います。
よくある質問
リフォームの会社が倒産したら、払ったお金は戻りますか?
破産の手続きでは、残った財産が債権者に分けられます。工事代金を前払いしていた施主も債権者の1人ですが、全額が戻ることは多くありません。だからこそ、支払いを工程ごとに分けておくことが大切です。
しょくばログで「閉鎖」と出ていない会社なら安心ですか?
安心とは言えません。破産の手続き中の会社は、手続きが終わるまで登記が閉鎖されないことがあります。台帳の状態は1つの手がかりとして使い、最近の報道や会社の連絡先が生きているかも合わせて確かめてください。
同じ社名の会社がいくつも出てきたら、どう見分けますか?
本店所在地と法人番号で見分けます。契約書や見積書に法人番号がなければ、会社に聞いてかまいません。法人番号は公開された情報なので、教えてもらえないこと自体が確認のきっかけになります。
リフォームの倒産はこれからも増えますか?
TSRは、このペースなら年間120件を超えると見ています。そのうえで、資材高・人手不足・値引き競争が続くかぎり、薄利と赤字のはざまの時期がしばらく続くと書いています。先の件数は、この記事の時点ではわかりません。