✍ 古家あきら | 2026-09-22 更新

日銀が政策金利を1.25%へ引き上げ(賛成7・反対2)— 影響が最大の不動産業は1社平均で年230万円の利息増。社名に「不動産」を含む31,560法人の閉鎖率は12.6%で、「建設」の16.1%より低かった

先に結論です。日本銀行は2026年9月18日、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.25%程度へ引き上げると決めました。賛成7・反対2。新しい水準は9月24日から適用され、基準貸付利率も1.5%になります。 同じ日に帝国データバンクが出した影響度調査では、有利子負債を持つ約16.8万社で借入金利が0.25%上がると、支払利息は1社平均で年46万円増え、経常利益は平均1.9%押し下げられ、約2,700社(1.6%)が経常赤字に転落する試算でした。業種別に見ると、影響が最も大きいのは不動産業で1社平均230万円の利息増、最も小さいのは建設業で16万円増です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、こういう調査を読んだあとに「では登記の側から見ると、その業種はどう見えるのか」を数えたくなります。うちのデータベース(国税庁法人番号公表サイト由来・5,791,529法人)で社名に「不動産」を含む法人は31,560件、「建設」を含む法人は95,019件。閉鎖登記の割合は不動産が12.6%、建設が16.1%で、金利の影響がいちばん小さいはずの建設のほうが、登記が消えている割合は高いという結果でした。金利感応度と、会社が消える確率は別物です。以下、一次資料の数字と、登記データから数えられることだけを並べます。

一次資料で確認できること — 日本銀行の決定(2026年9月18日)

まず、決定の中身を日本銀行の公表文で押さえます。

出典:https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf (日本銀行「金融市場調節方針の変更について」2026年9月18日)

| 項目 | 内容(公表文より) | |---|---| | 金融市場調節方針 | 無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す(賛成7・反対2) | | 補完当座預金制度の適用利率 | 1.25% | | 基準貸付利率(補完貸付制度) | 1.5% | | 適用開始 | 次の営業日(9月24日)から | | 景気認識 | 中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している |

公表文には「何年ぶり」という表現はありません。帝国データバンクの調査では、政策金利は「1.00%程度から1.25%程度」への引き上げで、1995年以来およそ31年ぶりの高水準だと説明されています。

帝国データバンクの試算 — 0.25%上昇で利息46万円増、赤字転落は約2,700社

次に、企業側の影響を数字で見ます。

出典:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260918-riage26y9/ (帝国データバンク「日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査(2026年9月)」2026年9月18日)

対象は、2025年度に決算を迎え、長短借入金を含む有利子負債と支払利息が発生している約16.8万社。平均値は上下5%ずつを除いたトリム平均です。

| 借入金利の上昇幅 | 支払利息の増加(1社平均・年) | 経常利益の押下げ | 経常赤字に転落する企業 | |---|---|---|---| | +0.25% | 46万円 | 1.9% | 約2,700社(1.6%) | | +0.50% | 92万円 | 3.8% | 約5,500社(3.3%) | | +1.00% | 185万8,000円 | 7.7% | 約1万社(6.2%) |

業種別(+0.25%の場合)では、不動産業が利息増230万円・経常利益5.4%減・赤字転落3.6%で最大、建設業が利息増16万円・経常利益1.4%減で最小です。企業の平均借入金利は2025年度で1.34%と、2019年度以来6年ぶりに1.3%台に戻りました。

調査の締めくくりには、資金繰りの悪化を借入で補ってきた中小企業は利息の増加で一層厳しい局面に直面する一方、コスト増を価格に転嫁して収益力が改善した企業も多く、金利上昇への対応力が高まる動きもうかがえる、と両面が書かれています。0.5%上昇のケースを別の調査で読んだ金利上昇と赤字企業率の記事でも、悪化幅が突出したのは不動産業でした。

登記の側から数える — 社名に「不動産」を含む31,560法人

ここからがうちのデータベースの出番です。業種は登記に載らないので、社名に「不動産」を含む法人を数えました(不動産会社のすべてではなく、社名で名乗っている会社の集合です)。

| 区分 | 件数 | 割合 | |---|---|---| | 社名に「不動産」を含む法人 | 31,560件 | — | | うち閉鎖登記済み | 3,990件 | 12.6% | | 閉鎖事由「清算の結了等」 | 2,528件 | 閉鎖分の63.4% | | 閉鎖事由「登記記録の閉鎖等」 | 1,139件 | 閉鎖分の28.5% | | 閉鎖事由「合併による解散等」 | 322件 | 閉鎖分の8.1% |

法人種別は株式会社18,924件(60.0%)、有限会社10,145件(32.1%)、合同会社1,584件(5.0%)。本店所在地は東京都6,404件(20.3%)、大阪府2,667件、神奈川県1,970件、愛知県1,641件、福岡県1,309件の順です。

全法人の閉鎖率は13.2%(762,832件)なので、「不動産」を名乗る法人の12.6%はほぼ平均並み。参考までに、うちが業種分類を当てている「不動産業・物品賃貸業」85,749法人でも閉鎖率は13.9%で、大きくは変わりません。

対照の「建設」95,019法人 — 閉鎖率16.1%、その46%は「登記記録の閉鎖」

金利の影響が最小とされた建設業を、同じ方法で数えます。

| 区分 | 件数 | 割合 | |---|---|---| | 社名に「建設」を含む法人 | 95,019件 | — | | うち閉鎖登記済み | 15,324件 | 16.1% | | 閉鎖事由「清算の結了等」 | 7,948件 | 閉鎖分の51.9% | | 閉鎖事由「登記記録の閉鎖等」 | 6,986件 | 閉鎖分の45.6% | | 閉鎖事由「合併による解散等」 | 373件 | 閉鎖分の2.4% |

法人種別は株式会社51,792件(54.5%)、有限会社38,910件(40.9%)。本店は東京都8,275件、大阪府6,388件、北海道5,866件、神奈川県5,695件、埼玉県4,574件で、北海道が3位に入るのは「不動産」との違いです。業種分類「建設業」260,687法人で見ても閉鎖率は14.9%で、やはり不動産側より高くなります。

目を引くのは閉鎖事由の構成です。「不動産」では閉鎖の63%が清算で、登記記録の閉鎖等は28%。「建設」では清算が52%まで下がり、登記記録の閉鎖等が46%まで上がります。「登記記録の閉鎖等」には、12年以上登記のない株式会社を法務局が職権で整理する「みなし解散」が含まれます。つまり建設では、手続きを踏んで畳まれた会社と同じくらい、放置されて消えた会社があるということです。有限会社の比率が4割と高いことも、古い会社が多いことを示しています。

金利に弱い業種と、消えやすい業種は一致しない

ここまでの数字を並べると、帝国データバンクの「不動産業が最も影響を受け、建設業が最も小さい」という試算と、登記の閉鎖率は逆向きです。矛盾しているわけではありません。試算は「借入を持っていて、決算を出している会社」の利息負担を測ったもので、閉鎖率は「登記が残っているすべての会社」のうち消えた割合です。不動産は借入で物件を持つ商売なので金利の効き方が大きい。建設は借入依存が小さい代わりに、人手や受注の波で会社が入れ替わりやすく、放置される会社も多い。効いている力が違うので、数字も違って当然です。

応募先や取引先を見るときに使えるのは、この「どの力が効く業種か」の見立てです。不動産なら、借入の大きさを外から推し量る手がかりが要ります。決算書が手に入らない相手の負債を登記や乙区からどこまで読めるかは会社の借金を外から調べる記事にまとめました。建設なら、会社がまだ動いているかどうかの確認が先です。

もうひとつ、情報の薄さも業種で違います。うちのデータベースに厚生労働省・職場情報総合サイト由来の従業員数などが入っている現存法人は、「建設」79,695件のうち3,608件(4.5%)、「不動産」27,570件のうち415件(1.5%)でした。不動産は、外から人の情報が見える会社が建設の3分の1しかありません。数字がない相手は、採用人数・離職者数の調べ方にある手順で自分で拾うか、面接で直接聞くしかありません。

応募者・取引先が今日からできること

よくある質問

利上げで、すぐに会社の借入金利は上がりますか?

一斉には上がりません。帝国データバンクの試算は、借入金利が現行から0.25%上がった場合の年間影響を示したもので、実際には変動金利の借入から順に、金融機関の基準金利の改定にあわせて反映されます。固定金利の借入は借り換えまで変わりません。

「不動産」と社名にある会社は、すべて不動産業ですか?

違います。今回の31,560件は「社名に不動産を含む法人」で、資産管理会社や副業的な法人も入ります。逆に、社名に不動産と付かない不動産会社(○○ハウジング、○○エステートなど)は含まれていません。業種分類で数えた「不動産業・物品賃貸業」85,749件のほうが広い集合ですが、こちらも登記から機械的に当てたものです。

閉鎖率が高い業種は、危ない業種ということですか?

そうとは言い切れません。「建設」の閉鎖の46%は「登記記録の閉鎖等」で、みなし解散のように放置された会社の整理が含まれます。倒産で消えた会社だけを数えた数字ではないので、閉鎖率は「入れ替わりの激しさ」として読むのが安全です。

自分の勤め先が利上げに弱いかどうか、外から分かりますか?

決算書がなければ正確には分かりません。手がかりは、業種(借入で資産を持つ商売か)、登記簿の乙区にある抵当権や根抵当権の有無と金額、そして帝国データバンクや東京商工リサーチの評点です。この3つの見方は本文中でリンクした各記事にまとめています。

まとめ

日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.25%程度へ引き上げました(賛成7・反対2、9月24日から適用)。帝国データバンクの試算では、借入金利0.25%上昇で1社平均の利息負担は年46万円増え、不動産業は230万円増で最大、建設業は16万円増で最小です。一方、うちのデータベースで社名に「不動産」を含む31,560法人の閉鎖率は12.6%、「建設」を含む95,019法人は16.1%で、金利に弱い業種と登記が消えやすい業種は一致しませんでした。会社を見るときは、その業種にどの力が効くのかを先に決めてから、借入・登記・人の情報のどれを確かめるかを選ぶのが近道です。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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