✍ 古家あきら | 2026-10-02 更新

認証工場と指定工場の違い — 車検を頼む前に整備工場を確かめる方法。会社サイトで車検・整備に触れる438社のうち、認証か指定に触れていたのは28.1%

先に結論です。認証工場は、地方運輸局長の「認証」を受けて、エンジンやブレーキを外すような整備(特定整備)を仕事として行える工場です。指定工場は、その認証工場のうち、設備・技術・管理の体制と検査の設備を備え、自動車検査員を選んでいる工場が、さらに「指定」を受けたものです(国土交通省の説明。根拠は道路運送車両法78条1項と94条の2第1項)。

車検で何が変わるかというと、ここが一番わかりやすい違いです。

どちらの工場かを確かめる方法は、主に2つです。

一方、会社のサイトに書いてあるかどうかは、かなりまちまちです。 しょくばログという会社データベースを運営していると、業種をまたいで会社の公式サイトの文章を読む機会が多いのですが、保存している31,159社のサイトを数えたところ、「車検」と「整備(自動車整備・整備工場・鈑金など)」の両方に触れていたのは438社でした。そのうち認証工場・指定工場に触れていたのは123社(28.1%)、認証や指定の番号まで載せていたのは42社(9.6%)です。7割の会社は、サイトを読んでもどちらの工場なのかがわかりません。

認証工場と指定工場はどう違うのか

認証は「整備をしてよい」という入口

国土交通省の説明では、認証工場は「一定の規模の作業場と作業機械、特定整備に従事する従業員を有する工場」に対して、地方運輸局長が認証したものです。特定整備を事業として行うには、この認証が必要になります(道路運送車両法78条1項)。

つまり、車の大事な部品を外して直す仕事を請け負う工場は、まず全部が認証工場という位置づけです。オイル交換やタイヤ交換だけの店は対象外ですが、ブレーキやエンジン回りを預けるなら、その工場が認証を受けているかは最低限の確認ポイントになります。

指定は「車検の検査まで任せられる」上位の段階

指定工場は、認証工場の中から選ばれます。国土交通省の言い方では、「自動車の整備について一定の基準に適合する設備、技術及び管理組織を有するほか、自動車の検査の設備を有し」、かつ自動車検査員を選任している工場です(同法94条の2第1項)。

整備に加えて、国の検査場で行うのと同じ検査を工場内で行える体制があるかどうかが分かれ目です。だから指定工場は保安基準適合証を出せて、車を運輸支局まで運ぶ手間がなくなります。

「指定工場のほうが上で、認証工場は劣る」という話ではありません。整備の腕前そのものを分けているのではなく、検査まで自社で完結できる体制を持っているかの違いです。認証工場に車検を頼んでも、工場の人が車を運輸支局に持ち込んで検査を受けるので、利用者が自分で持ち込む必要は通常ありません。違いが出やすいのは、日数や費用の組み立て方です。

2020年4月に「分解整備」から「特定整備」に変わった

古い記事やサイトでは「分解整備」という言葉が使われています。これは2020年(令和2年)4月の制度改正で「特定整備」に名前が変わりました。

国土交通省によると、それまでの「分解整備」(エンジンやブレーキなどを取り外して行う整備)に加えて、取り外しをしなくても装置の働きに影響する整備や改造(電子制御装置整備)が対象に入りました。たとえば、いわゆる自動ブレーキ(衝突被害軽減制動制御装置)やレーンキープに使う前方カメラの調整がこれに当たります。自動運転レベル3以上の車の「自動運行装置」も対象装置に加わっています。

利用者の目線でいうと、フロントガラス交換やバンパー修理のあとにカメラの調整(エーミング)が要る車では、その作業を行う工場が電子制御装置整備の認証を受けているかも確認したほうがよい、ということです。

整備工場が認証・指定かを調べる方法

1. 都道府県の自動車整備振興会の「整備工場検索」

各都道府県には「自動車整備振興会」という業界団体があり、いくつかの振興会は自分のサイトで工場検索を出しています。今回実際に開いて確認できたのは、次のようなページです。

ただし、京都府の検索が「会員の工場」と明記しているように、振興会のサイトは会員の工場が対象で、すべての認証工場が網羅されているとは限りません。 載っていなかったら「認証がない」と決めつけず、工場に認証番号を聞く、管轄の運輸支局に問い合わせる、という順で確かめるのが確実です。

2. 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」

国土交通省は、行政処分を受けた事業者の情報を「ネガティブ情報等検索サイト」にまとめています。事業分野に「自動車整備事業者」があり、処分を受けた工場の名前・所在地・処分内容を検索できます。

ここに出てくるのは処分を受けた工場だけなので、「載っていない=問題がない」の確認には使えますが、認証の有無そのものは確かめられません。 行政処分の公表先が業種ごとにバラバラな点は、会社の行政処分を調べる方法で詳しく書きました。

3. 工場に「認証番号」を聞く

いちばん手早いのは、工場に直接聞くことです。今回数えた会社サイトでも、沿革に「〇〇運輸局認証自動車工場取得(第〇-〇〇〇〇号)」のように番号まで書いている会社がありました。番号を答えられる工場なら、上の検索や運輸支局で照らし合わせられます。

許認可全体の探し方(建設業・宅建業・産廃など)は、会社の許認可を調べる方法にまとめています。

会社サイトに「認証・指定」はどれくらい書かれているか

しょくばログでは、会社の公式サイトの文章を保存して、業種をまたいで数えられるようにしています。文字化けしたものを除いた31,159社のうち、「車検」と「整備(自動車整備・整備工場・自動車の整備・車の整備・鈑金・板金)」の両方に触れていた438社(1.41%)を「車検・整備に触れている会社」として数えました。

数え方の注意として、「中古車検索」「試乗車検索」のように「車検」を含むだけの言葉は除き、保険会社や共済の「指定工場」(事故修理の提携先という意味)は指定工場に数えていません。

438社の内訳はこうなりました。

目立つのは、「整備士」には6割の会社が触れているのに、工場の認証・指定に触れているのは3割弱という差です。採用ページで整備士を募集している会社が多いぶん、「人の資格」は書かれやすく、「工場の資格」は書かれにくい。これは以前書いた美容室の記事(美容師免許は書くが、店の届出は書かない)と同じ傾向です。

もう1つ、新しい名称の「特定整備」(25社)より、旧名称の「分解整備」(36社)のほうが多く出てきます。 2020年の改正からしばらくたっても、サイトの文章は昔のまま、という会社が少なくないことがうかがえます。サイトに「分解整備」としか書いていないからといって認証が古いとは言えませんが、電子制御装置整備が要る作業を頼むときは、工場に直接確かめたほうが確実です。

なお、車検・整備に触れていた438社の法人の種類は、株式会社が408社(93.2%)、有限会社が25社(5.7%)でした。しょくばログが保存しているのは自社サイトを持つ会社が中心なので、町の小さな工場は少なめに出ていると考えてください。

社名から見る「整備会社」の素顔 — 有限会社が6割

サイトを持たない工場も含めて見るために、国税庁の法人番号データ(しょくばログのDB)で社名を数えました。

比べる相手として、DBの会社(株式・有限・合名・合資・合同)全体で現存しているのは4,460,963社、そのうち有限会社は1,429,550社(32.0%)です。整備系の社名では有限会社の割合が全体の約2倍になります。

有限会社は2006年の会社法施行以降は新しく作れないので、現存する有限会社はすべて設立から20年以上たっています。整備工場は地域で長く続いている家業型の会社が多い、ということがこの数字からも読めます。有限会社という形そのものの読み方は有限会社に就職するのは不利なのかで書きました。

閉鎖している割合(登記の閉鎖がある割合)は、「自動車整備」13.2%(427件)、「モータース」12.2%(713件)、「オートサービス」12.4%(196件)で、DBの会社全体の13.5%(699,039社)とほぼ同じ水準でした。

社名には整備以外の会社(バイク販売や自動車販売だけの会社など)も混じるので、これは「整備工場の数」ではなく「整備らしい社名の会社の傾向」として見てください。業種の調べ方そのものは会社の業種を調べる方法にまとめています。

整備工場で働く人が見ておきたいこと

整備士として転職するなら、応募先が認証工場か指定工場かで仕事の中身が変わります。指定工場は工場内で車検の検査まで行うので、自動車検査員の資格を活かせる場があります。今回の438社でも「検査員」に触れていた会社は2割ありました。

資格手当の相場は、同じシリーズの資格手当の相場の記事で、会社サイトに書かれた金額を業種横断で集計しています。

よくある質問

認証工場と指定工場、車検はどちらに頼むのがいいですか?

どちらでも車検は受けられます。違いは、指定工場は工場内で検査まで済ませて保安基準適合証を出せるので車を運輸支局に持ち込まなくてよく、認証工場は整備後に運輸支局等へ車を持ち込んで検査を受ける点です。持ち込みは通常工場側が行うので、利用者から見た差は日数や費用の組み立て方に出ます。見積もりの中身で比べるのがいちばん確実です。

認証を受けていない工場に整備を頼んでも大丈夫ですか?

特定整備(エンジンやブレーキの脱着、自動ブレーキのカメラ調整など)を事業として行うには、地方運輸局長の認証が必要です(道路運送車両法78条1項)。オイル交換やタイヤ交換などはこの範囲に入りませんが、ブレーキや足回りを預けるなら、その工場が認証を受けているかを先に確かめておくと安心です。

「分解整備」と「特定整備」は別の資格ですか?

同じ制度の新旧の名前です。2020年4月に「分解整備」の範囲を広げて「特定整備」に改めました。広がったのは、部品を外さなくても装置の働きに影響する整備(電子制御装置整備)で、自動ブレーキやレーンキープのカメラ調整などがこれに当たります。サイトに「分解整備」とだけ書いてある工場もあるので、カメラ調整が要る作業は工場に直接確認してください。

整備工場の認証は会社の登記簿に載りますか?

載りません。登記簿や法人番号のデータは「会社があるか」を示すもので、認証や指定のような許認可は別の仕組みで管理されています。確かめるには、各県の自動車整備振興会の工場検索、工場への認証番号の確認、管轄の運輸支局への問い合わせを使います。

保険会社の「指定工場」とは違うのですか?

違います。保険会社や共済が言う「指定工場」は、事故修理の提携先という意味で使われることが多く、道路運送車両法の指定(指定自動車整備事業)とは別物です。今回の集計でも、共済の「指定整備工場」と書いている会社があったため、こうした表現は指定工場の数から外しています。

データについて

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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