✍ 古家あきら | 2026-10-01 更新
資格手当の相場 — 会社サイト3.1万社のうち書いているのは3,310社(10.6%)。1級施工管理技士は月2万円、介護福祉士は月1万円が中央値
先に結論です。会社の公式サイトに資格名と金額が並んで書かれていた資格手当は、1級施工管理技士で月2万円、一級建築士で月2万5,000円、介護福祉士で月1万円、看護師で月2万円が真ん中の値でした。ただし、資格手当を書いている会社そのものが10社に1社ほどで、書いていても金額まで読み取れたのは2割です。資格手当は法律で支給が義務づけられた手当ではないので、「どの資格が対象か」「いくらか」はすべて会社次第です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の公式サイトに載っている募集要項や福利厚生のページを毎日のように読むことになります。そこで、保存している会社サイトのテキスト31,159社分を「資格手当」「免許手当」「資格給」で検索しました。いずれかに触れていたのは3,310社(10.62%)。そのうち、手当の名前のすぐ後ろに金額が書かれていたのは654社(19.8%)、さらに「どの資格にいくら」と資格名と金額が対になって書かれていたのは262社(7.9%)でした。
この記事の数字は、すべてこの31,159社の会社サイトを集計したものです。大手の求人サイトや公的統計の平均ではありません。「自社サイトに資格手当を書いている会社」の実際の書き方として読んでください。資格ごとの件数も必ず添えています。件数が20社に届かない資格は、中央値を出していません。
資格手当とは何か
資格手当は、会社が指定した資格を持っている社員に、毎月の給与に上乗せして払う手当です。「免許手当」「技能手当」「資格給」と呼ぶ会社もあります。
法律で「払わなければならない」と決まった手当ではありません。対象にする資格、金額、払う条件(その資格を仕事で使っているか、配属先で必要か)は、会社が就業規則や賃金規程で決めます。そのため、同じ資格でも会社によって月数千円のところもあれば、数万円のところもあります。
資格の取得を後押しする仕組みには、毎月払う資格手当のほかに、受験料や講習費を会社が持つ資格取得支援、合格したときに一度だけ払う合格祝い金・報奨金があります。求人を比べるときは、この3つを分けて見ると混乱しません。
資格手当の相場:資格別に見た金額
資格手当の名前の直後150字の中で、資格名のすぐ後ろに金額が書かれているものを、1社1つの値として拾いました。月500円〜10万円の範囲だけを使っています。
建設・不動産の資格
- 1級施工管理技士(67社):中央値 月20,000円(真ん中の半分は1万〜3万円)。いちばん多かったのは1万円(17社)、次が2万円(14社)
- 2級施工管理技士(42社):中央値 月6,500円(真ん中の半分は5,000〜1万円)。5,000円(12社)と1万円(11社)が多い
- 一級建築士(44社):中央値 月25,000円(真ん中の半分は16,250〜3万円)。3万円が10社で最多
- 二級建築士(23社):中央値 月15,000円(真ん中の半分は1万〜2万円)
- 宅地建物取引士(34社):中央値 月17,500円(真ん中の半分は1万〜2万円)。1万円と2万円がそれぞれ11社
同じ施工管理技士でも、1級と2級で中央値に約3倍の差がありました。一級建築士と二級建築士でも1万円の差です。級が分かれている資格は、求人に「施工管理技士 手当あり」としか書いていなければ、どの級でいくらかを確かめる必要があります。実際、級を書かずに「施工管理技士」とだけ書いていた会社が171社ありました。
介護・医療の資格
- 介護福祉士(97社):中央値 月10,000円(真ん中の半分は5,000〜13,500円)。1万円(28社)と5,000円(23社)が多い
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)(24社):中央値 月14,000円(真ん中の半分は1万〜2万円)
- 社会福祉士(36社):中央値 月10,000円(真ん中の半分は6,250〜15,750円)
- 看護師(37社):中央値 月20,000円(真ん中の半分は1万〜3万円)。3万円が9社で最多
- 准看護師(31社):中央値 月12,000円(真ん中の半分は6,000〜2万円)
介護福祉士は、今回いちばん多くの会社が資格名と金額を並べて書いていた資格です。介護の求人では「介護福祉士 月2万円、実務者研修 月7,000円、初任者研修 月5,000円」のように、資格の段階ごとに金額を刻んで書いている会社もありました。
件数が少なく、相場を出さなかった資格
電気工事士(第一種6社・第二種8社)、電気主任技術者(4社)、保育士(8社)、管理栄養士(15社)、調理師(7社)、理学療法士・作業療法士(7社)、大型・中型・けん引免許(あわせて8社)、フォークリフト(2社)、危険物取扱者(2社)、衛生管理者(2社)は、資格名と金額が並んで書かれていた会社が20社に届きませんでした。数が少ないので、中央値は出していません。
これらの資格は、会社サイトでは「資格手当あり(当社規定による)」とまとめて書かれることが多く、金額まで公開している会社が少ない、というのが実際のところです。
資格名を書かず「資格手当○円」とだけ書く会社
資格名を書かずに、手当の名前のすぐ後ろに金額だけを書いていた会社は448社ありました。この最初の金額の中央値は月8,000円(真ん中の半分は5,000〜2万円)。いちばん多かったのは5,000円(106社)、次が1万円(72社)です。
「資格手当 5,000円〜」のように下限だけを書く会社も多いので、この数字は「その会社の資格手当の入り口の額」くらいに読むのが無難です。
また、「上限」「最大」と組み合わせて書いていた会社が294社あり、その上限額の中央値は月27,500円(真ん中の半分は2万〜4万円)でした。資格を複数持っていても、合計に上限を設けている会社があるということです。
資格手当を書いている会社の割合:業種別
資格手当に触れていた会社の割合を、業種(日本標準産業分類の大分類)ごとに出しました。保存している会社サイトが300社以上ある業種だけを載せています。
- 建設業:24.30%(3,489社中848社)
- 医療・福祉:16.38%(3,296社中540社)
- 不動産業・物品賃貸業:14.31%(503社中72社)
- 学術研究・専門・技術サービス業:11.81%(1,406社中166社)
- 情報通信業:8.99%(2,103社中189社)
- 金融業・保険業:8.09%(507社中41社)
- 卸売業・小売業:7.45%(1,504社中112社)
- 製造業:6.98%(6,600社中461社)
- 運輸業・郵便業:6.32%(981社中62社)
- 宿泊業・飲食サービス業:3.72%(807社中30社)
- 生活関連サービス業・娯楽業:3.63%(468社中17社)
建設業は4社に1社が資格手当を書いていて、2位の医療・福祉を大きく引き離しています。施工管理技士や建築士は、工事現場に置く技術者の要件や、建設業の許可・経営事項審査の評価に関わるため、会社にとって「社員に持っていてほしい資格」がはっきりしている業種です。不動産業が3位なのも、宅地建物取引士を事務所に一定数置く決まりがあるためと読めます。
一方、宿泊・飲食や生活関連サービスは4%を下回りました。資格が仕事の前提になりにくい業種では、資格手当という形をとる会社が少ないということです。
資格手当を書く会社は、資格取得支援も書いていることが多い
資格手当を書いていた3,310社のうち、受験費用の負担などの資格取得支援にも触れていたのは37.0%(1,225社)。資格手当を書いていない会社では、資格取得支援に触れていたのは9.1%でした。
取らせるところまで面倒を見て、取ったら毎月の給与で報いる、という組み合わせで制度を置いている会社が多い、ということです。資格を取りながら働きたい人は、両方がそろっているかを見ると会社の本気度がわかります。
資格手当で応募前に確かめる4つのこと
1. 自分の資格が対象に入っているか
資格手当は、会社が決めた資格にしか付きません。同じ分野の資格でも、どの資格・どの級までを対象にするかは会社ごとに決まります。求人に資格名が書いていなければ、自分の持っている資格が対象かを具体的に聞いてください。
2. 級・種別ごとの金額
前の章のとおり、1級と2級では金額に大きな差があります。「施工管理技士 手当あり」とだけ書かれていたら、どの級にいくらなのかを確かめます。
3. 「当社規定による」としか書いていない場合
資格手当に触れていた会社のうち、「規定」「規程」とだけ書いていたのは338社(10.2%)でした。金額が書いていないのは珍しくないので、遠慮せず面接か内定時の労働条件通知書で確かめてかまいません。複数の資格を持っている場合に合算されるのか、いちばん高いものだけなのか、上限があるのかも、あわせて聞いておくと安心です。
4. 仕事でその資格を使わなくても払われるか
「業務に必要な資格に限る」「その資格を使う部署に配属された場合に限る」という条件を付けている会社があります。異動で資格を使わない部署に移ると手当がなくなる規程もありえるので、支給の条件を確認しておくと、入社後の思い違いを防げます。
資格手当は残業代と最低賃金の計算に入る
家族手当や通勤手当と違って、資格手当は残業代(割増賃金)の計算の土台に入ります。労働基準法37条5項と施行規則21条が計算から外してよいとしているのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に払われる賃金・1か月を超える期間ごとに払われる賃金だけで、資格手当はこの中に入っていないからです。
最低賃金の計算にも資格手当は入ります(最低賃金法施行規則1条が外しているのは、精皆勤手当・通勤手当・家族手当や割増賃金など)。月給に資格手当が含まれている求人で、最低賃金を下回っていないかを確かめる方法は求人の時給が最低賃金を下回っていないか確かめる方法にまとめています。
家族手当のほうの相場と扱いは家族手当の相場で、手当全体を含めた給与欄の読み方は求人の給与欄の見方で整理しています。賞与や昇給と合わせて年収で比べたいときは中小企業の賞与・昇給の相場、資格取得支援などほかの制度も含めて会社を比べたいときは会社の福利厚生を調べる方法も参考になります。
集計の方法
- 対象:しょくばログが保存している会社公式サイトのテキスト。文字化けのあるファイルを除いた31,159社
- 「資格手当」「免許手当」「資格給」のいずれかが出てくる会社を数えた(3,310社。うち「資格手当」は3,268社)
- 金額:手当の名前の直後150字の中で、資格名のすぐ後ろに続く金額を、資格ごとに1社1値で拾った。資格名と金額の間に別の資格名や別の「〜手当」、「上限」「最大」を挟むものは拾わない。月500円〜10万円の範囲だけを使った(時給への上乗せ額などを外すため)
- 無作為に選んだ50社の記載を目で確認し、50社とも自社の給与・手当・制度の説明であることを確かめた(うち2社は「職能資格手当」「特殊資格手当」という名前での記載)
- 業種は国税庁の法人番号データにしょくばログが付けている業種(日本標準産業分類の大分類)
- 個社名は出していない
よくある質問
資格手当の相場はいくらですか?
資格によって大きく違います。しょくばログが会社公式サイトを集計したところ、資格名と金額が並んで書かれていた会社の中央値は、1級施工管理技士が月2万円(67社)、2級施工管理技士が月6,500円(42社)、一級建築士が月2万5,000円(44社)、宅地建物取引士が月1万7,500円(34社)、介護福祉士が月1万円(97社)、看護師が月2万円(37社)でした。自社サイトに書いている会社の集計で、すべての会社の平均ではありません。
資格手当がない会社は多いですか?
会社公式サイトで資格手当に触れていたのは31,159社中3,310社(10.62%)でした。書いていない会社に資格手当がないとは限りませんが、少なくとも「アピールする項目」として載せている会社は10社に1社です。業種では建設業が24.30%でいちばん高く、宿泊・飲食サービス業は3.72%でした。
資格を複数持っていると全部もらえますか?
会社の規程次第です。全部を足す会社、いちばん高い資格だけを払う会社、合計に上限を設ける会社があります。会社サイトで「上限」「最大」と合わせて書いていた294社では、上限額の中央値が月2万7,500円でした。複数の資格を持っている人は、計算方法を必ず確認してください。
資格手当は残業代の計算に含まれますか?
含まれます。労働基準法37条5項と施行規則21条が残業代の計算から外してよいとしているのは家族手当・通勤手当・住宅手当などに限られ、資格手当は入っていません。最低賃金の計算にも含まれます(最低賃金法施行規則1条)。
入社後に資格を取っても資格手当はもらえますか?
対象の資格であれば払われますが、いつから払うか(取得した月か、翌月か、申請後か)は会社の規程で決まります。資格手当を書いていた会社の37.0%は、受験費用の負担などの資格取得支援にも触れていました。入社後に取るつもりの資格があるなら、支援の内容と、取ったあとの手当の額を両方聞いておくと判断しやすくなります。