✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新

中小企業の賞与は何ヶ月分が普通か — 5〜29人の事業所は年末1.05か月・29.6万円、求人票の「賞与年2回」が約束しないこと

「中小企業の賞与は何ヶ月分が普通か」への答えは、規模を切ってから出さないと意味がありません。従業員5〜29人の事業所では、令和7(2025)年の年末賞与は支給事業所の労働者1人平均で296,405円、きまって支給する給与の1.05か月分。1,000人以上の事業所は783,584円・1.63か月分です(厚生労働省「毎月勤労統計調査」令和7年年末賞与、e-Stat 事業所規模別表)。金額で2.6倍、月数で0.58か月の差があります。

さらに、5〜29人の事業所では賞与を支給した事業所が73.6%しかありません。残り26.4%は年末賞与を出していない。この「出さない事業所」まで含めて全労働者で割ると、5〜29人の年末賞与は220,525円まで下がります。「中小企業の賞与は平均◯万円」と言うとき、支給事業所だけの平均なのか、出さない事業所も含めた平均なのかで、数字は8万円近く変わります。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、求人票の「賞与年2回」「昇給あり」を見て「じゃあ年収はこれくらいか」と計算してしまう相談をよく受けます。この記事では、①年末賞与を事業所規模別・業種別に全部並べる、②昇給の相場を100人以上(厚労省)と20人以下(商工会議所)の2つの調査で見る、③うちのデータで「賞与年2回」と書いた求人のうち月数まで書いた割合を数える、④求人票の賞与・昇給表記が法律上なにを約束していないか、⑤面接で聞く3つの数字、の順に書きます。求人票の月給欄の読み方は求人票の給与の見方、「中小企業」の線引きは中小企業の定義に分けてあり、この記事は賞与と昇給の実額を担当します。

年末賞与を事業所規模別に並べる — 5〜29人は1.05か月、1,000人以上は1.63か月

毎月勤労統計調査の年末賞与は、11月〜翌1月に「特別に支払われた給与」のうち賞与として支給された分を特別集計したものです。対象は常用労働者5人以上の事業所。令和7年分は2026年4月8日に2月分速報と同時に公表され、事業所規模別の内訳はe-Statに掲載されています。以下、支給事業所における労働者1人平均賞与額、きまって支給する給与に対する支給割合(か月分)、支給事業所数割合、そして支給しない事業所も含めた全労働者1人平均の順に並べます。

いちばん段差が大きいのは5〜29人と30〜99人の間です。金額で約9.4万円、月数で0.16か月、支給事業所の割合で18.7ポイント違います。30人を超えると9割以上の事業所が賞与を出すのに、29人以下では4分の1が出さない。「賞与が出るかどうか」の分かれ目は、30人前後にあるというのが、この表から読める最初の事実です。

もう1つ、全労働者平均で見ると差はさらに広がります。支給事業所ベースでは1,000人以上は5〜29人の2.6倍ですが、出さない事業所を含めた全労働者ベースでは756,159円対220,525円で3.4倍。「大企業と中小企業の賞与格差」を語るときに、どちらの数字を使っているかは確認したほうがいい。

なお、5人以上計の424,889円は前年比2.8%増で、支給事業所ベースの前年比は2021年0.1%、2022年3.2%、2023年0.7%、2024年2.5%、2025年2.8%と推移しています。夏季賞与(2025年、2025年11月6日公表)は5人以上計で426,337円・1.02か月分・支給事業所73.4%、30人以上で496,889円・1.17か月分・支給事業所91.2%。年末と夏で金額はほぼ同じなので、年2回なら年間で「5人以上計で約2.1か月分、30人以上で約2.4か月分」が全体の目安になります。

5〜29人の事業所を業種別に見る — 飲食は0.46か月、不動産は1.65か月

「中小企業の賞与」と一口に言っても、5〜29人の中で業種差は規模差より大きい。同じ令和7年年末賞与の5〜29人の事業所を業種別に並べると次のようになります(支給事業所における労働者1人平均、か月分、支給事業所数割合、全労働者平均の順)。

5〜29人の飲食サービス業等は、賞与を出す事業所が47.8%と半分を切り、出す事業所でも0.46か月分。全労働者平均は30,902円で、不動産業・物品賃貸業(478,764円)の15分の1です。同じ「小さな会社」でも、飲食と不動産では年末賞与が桁で違う。求人票に「賞与あり」と書いてあるだけでは、この幅のどこにいるのか分かりません。

中分類まで下りると、同じ大分類の中でも割れます。5〜29人の建設業では設備工事業が531,036円・1.38か月に対して職別工事業(大工・左官・塗装など)は280,132円・0.93か月。卸売業・小売業では卸売業が495,165円・1.40か月、小売業が199,028円・0.81か月で、飲食料品小売業に至っては88,513円・0.51か月、支給事業所は42.6%です。情報通信業の中の情報サービス業は560,539円・1.42か月と高いのですが、賞与を受ける労働者の割合は64.6%で、出す会社と出さない会社の差が大きい業種でもあります。

業種の確認は会社の業種を調べる方法、規模の当たりは会社の規模を調べる方法で。「その会社の業種×規模」を先に確定させてから、この表の該当行を相場として置くのが順番です。

事業所規模と企業規模は別もの — 「中小企業」の線とずれる

ここで1つ注意があります。毎月勤労統計調査の「5〜29人」は事業所の規模であって、企業の規模ではありません。大企業の小さな営業所も「5〜29人の事業所」に入ります。一方、中小企業の定義で書いた中小企業基本法の線引き(製造業等は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下)は企業単位です。

だから「5〜29人の事業所の賞与」は「中小企業の賞与」とぴったり同じではない。ただ、実務上は次のように読めば大きく外しません。

会社の従業員数そのものは会社の従業員数を調べる方法で確認できます。

昇給の相場 — 100〜299人で3.6%、20人以下で3.38%

賞与と並んで求人票に書かれる「昇給あり」「昇給年1回」も、率を約束していません。昇給の実態は、規模によって2つの調査を使い分けます。

常用労働者100人以上の会社は、厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」(2025年10月14日公表、有効回答1,847社)です。1人平均賃金の改定額・改定率(予定を含む)は次の通り。

100〜299人と5,000人以上で、月額6,520円・1.5ポイントの差です。1人平均賃金を「引き上げた・引き上げる」企業の割合も、5,000人以上の98.9%に対して100〜299人は89.7%。定期昇給制度がない企業は100〜299人で20.0%(5,000人以上は10.3%)、定昇制度がある企業のうちベースアップを行った割合は100〜299人で53.3%(5,000人以上は85.2%)です。100〜299人の会社では5社に1社に定期昇給制度そのものがなく、制度があっても半分近くはベアなし。「昇給あり」の中身は、この分布のどこかです。

労働組合の有無でも分かれます。改定額は労働組合ありが15,229円・4.8%、なしが11,980円・4.0%。組合の有無の調べ方は会社に労働組合があるか調べる方法に書きました。

100人未満の会社は厚労省のこの調査の対象外なので、日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」(2026年6月8日公表、回答2,260社、うち従業員20人以下が55.7%)を使います。こちらは公的統計ではなく商工会議所の会員企業調査なので、厚労省の数字と単純には比べられませんが、20人以下の会社の昇給を規模別に出している調査は他にほとんどありません。

20人以下の会社では、3割近くが直近1年で賃金を上げておらず、上げた会社の3分の2は業績改善なしの「防衛的」な賃上げです。厚労省調査の100〜299人(3.6%)と商工会議所調査の20人以下(3.38〜3.52%)を並べると、規模が小さくなるほど率は下がるが、4%台の大企業との差は1〜1.5ポイント程度に収まっている、というのが2026年時点の全体像です。

うちのデータで数えた — 「賞与」と書いた求人96件のうち、月数を書いたのは9件

ここからがしょくばログのデータです。うちのデータベースには、会社の自社採用ページから機械的に抜き出した求人が6,735件(2,628社)入っていて、そのうち給与欄として文字列を取れたのが3,044件(1,300社)あります。この3,044件の給与欄に「賞与」または「ボーナス」の語が含まれるものを数えました(2026年9月13日集計)。

月数を書いた9件の中身は「昨年度実績3.3ヶ月分」「計4ヶ月分」「賞与3.9ヶ月+評価額」「前年度2.30ヶ月」「決算賞与1回(昨年度実績6ヵ月分)」「計4.0か月分」「3.5ヶ月分」で、うちのデータベースの業種分類で見ると建設業が3社、医療・福祉が2社、情報通信業・農業協同組合・サービス業が各1社でした。昇給の額を書いた1件は「前年度実績1時間あたり10円〜100円」で、これは時給の求人です。

注意として、これは各社の採用ページから「給与欄」として抜き出せた文字列だけの集計で、賞与の説明を別の行や福利厚生欄に書いている会社は数えられていません。なので「賞与に触れた求人が3,044件中96件しかない」とは読まないでください。読んでいいのは、賞与に触れた求人のうち、月数まで書いたのは約1割(9件/96件)、昇給に触れた求人のうち、額か率を書いたのは42件中1件、という比率のほうです。「賞与年2回」「昇給あり」という表記は、求人票の中では圧倒的に「回数だけ」「有無だけ」で書かれています。

「賞与年2回」「昇給あり」が法律上なにを約束していないか

求人票の賞与・昇給表記が金額を伴わないのは、書き手が不親切だからというより、制度がそうなっているからです。

逆に言うと、求人票に「前年度実績◯か月分」と書いてある会社は、書かなくていいものを書いている。うちのデータで9件/96件しかなかった「月数を書いた求人」は、それだけで情報開示の姿勢が1段違う、と読んでいいと思います。

面接で聞く3つの数字 — 「何ヶ月分ですか」では答えが返ってこない

「賞与は何ヶ月分ですか」と聞くと「業績によります」で終わります。相場の表を頭に入れたうえで、答えが数字で返ってくる聞き方に変えます。

この3つを面接前5分でできる会社研究チェックリストに足してください。福利厚生欄で賞与以外の一時金(決算賞与・報奨金)の有無を見る方法は会社の福利厚生を無料で調べる方法に書いてあります。

年収を計算するときは、月給×12+賞与(前年度実績の月数×基本給)で置き、賞与の部分は「保証ではない」と割り切って見るのが現実的です。5〜29人の事業所で年末1.05か月・夏も同程度なら、年間で基本給の約2か月分。月給25万円で基本給が22万円なら賞与は年間約44万円で、年収は344万円前後。求人票の「賞与年2回」を「4か月分」と読んで388万円と計算していたら、44万円分の期待がずれます。

よくある質問

中小企業の賞与は平均で何ヶ月分ですか?

厚生労働省「毎月勤労統計調査」の令和7年年末賞与を事業所規模別に見ると、5〜29人の事業所は支給事業所で1.05か月分(296,405円)、30〜99人は1.21か月分(390,219円)、100〜499人は1.25か月分(481,249円)です。夏季賞与は年末とほぼ同額なので、年2回なら5〜29人で年間約2.1か月分が目安です。ただし5〜29人では26.4%の事業所が年末賞与を支給しておらず、出さない事業所を含めた全労働者平均は220,525円まで下がります。

賞与が出ない中小企業はどれくらいありますか?

同じ調査で、令和7年年末賞与を支給した事業所の割合は5〜29人で73.6%、30〜99人で92.3%、5人以上計で76.5%です。つまり5〜29人の事業所の約4分の1は年末賞与を出していません。業種別では5〜29人の飲食サービス業等が47.8%、生活関連サービス業等が52.5%と低く、金融業・保険業は92.8%、複合サービス事業は97.9%と高い。日本商工会議所の2026年調査(回答2,260社)でも、2026年度に賞与・一時金を「支給しない」とした企業は全体4.4%、宿泊・飲食業では10.4%でした。

中小企業の昇給率の平均はどれくらいですか?

厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」(常用労働者100人以上)では、1人平均賃金の改定率は100〜299人で3.6%(10,264円)、300〜999人で4.0%、1,000〜4,999人で5.0%、5,000人以上で5.1%です。100人未満は日本商工会議所の2026年調査が参考になり、2025年4月から2026年4月の賃金改定率は全体4.29%・12,036円、従業員20人以下は3.52%・9,573円でした。20人以下では直近1年で改定率が0%以下だった企業が28.7%あります。

求人票の「賞与年2回」は金額を保証していますか?

していません。賞与は労働基準法施行規則5条の相対的明示事項で、制度があれば明示する必要はありますが、金額や月数の明示は求められていません。就業規則の賞与条項も「業績により支給しないことがある」と留保されている型が一般的です。うちのデータベースで会社の採用ページの給与欄3,044件を数えると、「賞与」に触れた96件のうち月数まで書いたのは9件でした。面接で「前年度の賞与は基本給の何か月分だったか」を夏・冬それぞれ聞くと実績値が返ってきます。

大企業と中小企業の賞与の差はどれくらいですか?

令和7年年末賞与で、1,000人以上の事業所は支給事業所で783,584円・1.63か月分、5〜29人は296,405円・1.05か月分で、金額で2.6倍です。賞与を出さない事業所も含めた全労働者平均では756,159円対220,525円で3.4倍に広がります。ただしこれは事業所規模の比較で、中小企業基本法の企業規模の線引きとは一致しません。大企業の小さな営業所は「5〜29人の事業所」に含まれ、賞与制度は企業単位で決まるので、応募先が大企業の一事業所なら本体の水準で見てください。

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出典

年末賞与の事業所規模別・業種別の数値(支給事業所における労働者1人平均賞与額、きまって支給する給与に対する支給割合、支給事業所数割合、全労働者1人平均賞与額)は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」の2026(令和8)年2月分結果速報・2025(令和7)年年末賞与の結果(2026年4月8日公表)の特別集計表、およびe-Stat 毎月勤労統計調査 全国調査の「令和7年年末賞与」事業所規模別(5〜29人、30〜99人、100〜499人、500人以上、1,000人以上)の原表から引用しました。夏季賞与は同調査の2025(令和7)年9月分結果速報・2025(令和7)年夏季賞与の結果(2025年11月6日公表)によります。対象は常用労働者5人以上の事業所で、規模は事業所単位です。

昇給の数値(1人平均賃金の改定額・改定率、賃金を引き上げた企業割合、定期昇給制度の有無、ベースアップ実施割合、労働組合の有無別)は、厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」(2025年10月14日公表、常用労働者100人以上の民営企業、有効回答1,847社)の第1表〜第5表から引用しました。100人未満の会社の賃上げ率・実施割合・防衛的賃上げの数値は、日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」集計結果(2026年6月8日公表、回答2,260社、調査期間2026年4月7日〜5月18日)によります。商工会議所の調査は会員企業を対象とした調査で、政府統計ではありません。 厚労省調査と対象・集計方法が異なるため、両者の数値は参考として並べています。

会社の採用ページの給与欄における賞与・昇給の記載件数は、しょくばログのデータベースに登録された自社採用ページ由来の求人6,735件(2,628社)のうち給与欄の文字列を取得できた3,044件(1,300社)を、2026年9月13日に独自に集計したものです。厚生労働省が公表している統計ではありません。 給与欄以外の箇所に賞与の説明を書いている会社は数えられていないため、「賞与に触れた求人の割合」ではなく「賞与に触れた求人のうち月数を書いた割合」として読んでください。労働基準法15条・同法施行規則5条の明示事項の区分はe-Gov法令検索の条文を参照しました。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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