✍ 古家あきら | 2026-10-02 更新
富山・魚津の金型メーカー「石﨑製作所」が事業停止、負債約2億3000万円。売上はピークの2億円超から約1億2000万円へ──しょくばログDBで見る社名に「金型」を持つ法人1,968社、7割が有限会社
先に結論です。富山県魚津市で金型をつくってきた株式会社石﨑製作所が、2026年9月30日までに事業を止め、自己破産を申請する準備に入りました。 帝国データバンクの調べとして報じられた負債は約2億3000万円です。1974年の設立で、ピーク時に2億円を超えていた年売上は、2026年5月期には約1億2000万円まで減っていました。
しょくばログの台帳で社名に「金型」を含む法人を数えると、全国で累計1,968社。そのうち24.4%はすでに閉鎖の登記があり、全法人の13.3%を大きく上回ります。活動中の1,487社の68.6%が有限会社です。小さな会社が多く、長く続いてきた業種だということが、数字からも見えます。
しょくばログという会社データベースを運営していると、町工場の倒産のたびに「取引先として、もっと早く気づけたのか」という声を聞きます。この記事は石﨑製作所の経営を評価するためのものではありません。似た規模の製造業と付き合う取引先、そこで働く人が、何を確かめればよいかを書きます。
出典:【倒産】金型製造「石﨑製作所」(富山県魚津市)自己破産へ 負債約2億3000万円で事業停止(チューリップテレビ・2026年10月1日)
報道で確認できる事実
チューリップテレビの報道(帝国データバンクの調べ)から、確かめられる内容を並べます。
- 株式会社石﨑製作所は富山県魚津市の会社で、1974年(昭和49年)に設立
- 自動車部品やOA機器などに使う金型の製造を手がけてきた
- ピーク時の年売上は2億円を超えていたが、2026年5月期の年売上は約1億2000万円
- 近年は赤字が続いて債務超過になり、今後の資金繰りの見通しが立たなくなった
- コストの上昇と同業者との競争の激しさが重なった
- 9月30日までに事業を停止し、自己破産の申請準備に入った。負債は約2億3000万円
ほかの局の報道でも、「創業52年」「ピーク時から売上4割減」「固定費が経営を圧迫」と伝えられています。ここで書いていることは、すべて報道で確認できる範囲にとどめます。従業員数や取引先の数は、報道では明らかにされていません。
しょくばログの台帳で見ると
台帳ではまだ「活動中」のまま
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号の公表データがもと)で魚津市を引くと、本店が魚津市石垣にある「株式会社石崎製作所」が1社見つかります(台帳では「﨑」が「崎」で登録されています)。業種の分類は製造業で、閉鎖の登記はありません。
これは珍しいことではありません。事業を止めて自己破産を申し立てても、台帳に閉鎖の記録がつくのは、破産の手続きが終わって登記が閉じられてからです。それまで数か月から1年以上かかることもあります。つまり、台帳に「活動中」と出ていることは、いま事業が動いている証明にはなりません。 倒産したかどうかの確かめ方は会社の実在・倒産の確認方法に、破産・民事再生などの違いは倒産の種類の違いにまとめています。
社名に「金型」を持つ法人1,968社
社名に「金型」を含む法人は、台帳で累計1,968社。活動中は1,487社で、閉鎖の登記がある割合は24.4%でした。全法人の閉鎖率(13.3%)のおよそ1.8倍です。
活動中の1,487社を種類で分けると、有限会社が1,020社(68.6%)、株式会社が442社(29.7%)です。有限会社は2006年の会社法の施行で新しく作れなくなったので、有限会社が多いということは、それより前からある会社が多いということです。本店の都道府県は東京都203社、大阪府190社、埼玉県184社、愛知県180社の順で、富山県は13社でした。
社名だけで拾った数なので、金型と関係のない会社が混じったり、金型をつくっていても社名に「金型」がない会社がもれたりします。おおよその姿として見てください。石﨑製作所のように、社名が「製作所」の会社も多くあります。社名に「製作所」を含む法人は累計42,235社、活動中は34,411社で、閉鎖の登記がある割合は18.5%、活動中のうち有限会社は57.5%でした。
魚津市と富山県
魚津市に本店を置く法人は、台帳で累計1,398、活動中が1,173です。閉鎖の登記がある割合は16.1%で、富山県全体(13.5%)よりやや高めです。しょくばログの業種分類で製造業に入る魚津市の法人は75あります。都市部の町工場の事情は、大田区の町工場の破産を扱った記事でも取り上げました。
取引先・働く人が確かめたいこと
1. 売上の落ち方と、固定費の重さ
今回の報道で目を引くのは、売上がピークから約4割減ったことと、固定費が経営を圧迫したという点です。金型づくりは、機械や工場、熟練の人手といった、売上が減っても簡単には減らせない費用が大きい仕事です。原材料や電気代が上がっても、取引先との力関係で値上げしにくいことがあります。この構図は価格転嫁できない業種で書いた条件と重なります。
取引先として気をつけたいのは、「注文が減っているのに、納期や品質は変わらない」状態が長く続いている会社です。外からは元気に見えても、中では赤字を積み上げていることがあります。
2. 型を預けている会社は、型の扱いを決めておく
金型ならではの注意点があります。発注元が費用を払ってつくった型が、金型メーカーや加工先の工場に置かれたままになっていることがよくあります。相手が事業を止めると、型の引き取りに手間がかかることがあります。どの型がどこにあり、だれのものなのかを、ふだんから書面で残しておくと、いざというときに慌てずにすみます。取引先の見方は取引先の信用の調べ方にまとめています。
3. 名前ではなく法人番号で控える
「石﨑」と「石崎」のように、同じ会社でも表記が揺れることがあります。社名に「製作所」の会社は全国に3万社以上あり、似た名前も多くあります。契約書や請求書の相手は、法人番号まで控えておくと取り違えずにすみます。調べ方は法人番号の調べ方にあります。
4. 働く人は、給料と離職の書類を先に確保する
勤め先が事業を止めたとき、まだ払われていない給料は、国の未払賃金立替払制度で一部を受け取れる場合があります。離職票や給与明細、雇用契約書は、早めに手元にそろえておきましょう。手続きの流れは給料が遅れる会社と立替払制度で説明しています。
よくある質問
自己破産の準備に入った会社は、しょくばログでどう表示されますか?
破産の手続きが終わり、登記が閉じられるまでは「活動中」のまま表示されます。国税庁の公表データに閉鎖の記録が反映されるのは、そのあとです。最新の状況は、報道や官報、取引先からの通知もあわせて確かめてください。
社名に「金型」がある会社は倒産しやすいのですか?
台帳では、閉鎖の登記がある割合が24.4%と全法人より高くなっています。ただし、これは長い年月のあいだに閉じた会社の割合で、いまの倒産のしやすさを示すものではありません。古い有限会社が多いことも影響していると考えられます。個々の会社の良し悪しは、この数字からは判断できません。
金型を預けている取引先が事業を停止したら、どうすればよいですか?
まず型の所有を示す書類(発注書、検収書、預かり証など)をそろえ、破産管財人や代理人の弁護士に連絡するのが一般的な流れです。手続きの細かな判断は、弁護士など専門家に相談してください。
町工場の取引先の様子を、ふだんから確かめる方法はありますか?
法人番号で会社を特定し、本店の住所や商号の変更、閉鎖の登記がないかを定期的に見ておくのが基本です。あわせて、支払いの遅れや納期の乱れなど、ふだんの取引の変化に気を配ることが、いちばん早いサインになります。
まとめ
石﨑製作所は、1974年から魚津市で自動車部品やOA機器向けの金型をつくってきた会社です。売上がピークから約4割減り、コストの上昇と競争の中で、事業を止める判断に至りました。
しょくばログの台帳では、社名に「金型」を持つ法人の7割近くが有限会社で、閉鎖の登記がある割合は全法人の約1.8倍です。小さな製造業と付き合う側は、台帳の「活動中」だけで安心せず、法人番号での特定、型など預け物の整理、ふだんの取引の変化に目を配っておくことが、いちばんの備えになります。