✍ 古家あきら | 2026-10-02 更新
障害者の就労支援の絆ホールディングス、会社更生の申し立てが棄却され保全管理へ。グループ負債約289億円。しょくばログDBで見る社名に「就労」を持つ法人396社、活動中の8割がNPO・社会福祉法人など
先に結論です。障害のある人の一般企業への就職を支援していた大阪市の絆ホールディングスとグループ会社が、2026年10月1日、大阪地裁から会社更生手続きの開始の申し立てを棄却され、破産手続きの前段階にあたる保全管理命令を受けました。 帝国データバンクによると、負債はグループ5法人で約289億5,361万円です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、福祉の事業所は「どの法人が運営しているのか」が外から見えにくいと感じます。看板は事業所の名前で、運営する会社やNPO法人の名前は奥に隠れがちだからです。この記事では、報道で確かめられる事実を押さえたうえで、台帳から見える就労支援の法人の姿と、利用する人や働く人が確かめたいことを書きます。個別の会社を責める記事ではありません。
出典:株式会社絆ホールディングスなど5社 更生手続き開始申し立て棄却、保全管理命令(帝国データバンク・倒産速報、2026年10月1日)
出典:絆HD「会社更生法」適用申請は棄却 破産へ向け保全管理命令(関西テレビ・2026年10月1日)
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
帝国データバンクの倒産速報と報道から、確かめられる内容を並べます。
- 絆ホールディングスは2012年1月設立、資本金2,000万円。本店は大阪市中央区
- 当初は結婚相談所として営業し、その後に放課後等デイサービスへ転じ、さらに障害のある人の一般企業への就職を支援する事業に広げた
- 2023年3月期には年収入高約23億9,900万円を計上していた
- 2026年3月27日、大阪市から就労移行支援体制加算の不正受給として、ペナルティを含め合計約110億円の返還を求められた
- 2026年5月1日付で、障害者総合支援法にもとづく事業者の指定を取り消された
- 2026年6月に会社更生法の適用を申請。10月1日に申し立てが棄却され、保全管理命令を受けた
- 関西テレビの報道では、事業を続ける内容の更生計画を立てることが不可能だと明らかになったことが棄却の理由とされている
- 同じ措置を受けたのは、株式会社JOB connect、株式会社レーヴ、株式会社リベラーラの3社。NPO法人リアンは自己破産を申請した
- 関西テレビは、社会福祉事業者グループの倒産として過去最大の負債額と報じている
なお、不正受給とされた金額は、報道によって約79億円、約150億円などと示され方が異なります。対象の期間や自治体の範囲、ペナルティを含むかどうかで数字が変わるためです。この記事では帝国データバンクの記載に沿って書いています。
しょくばログの台帳で見えること
ここからは、国税庁の法人番号データをもとにしたしょくばログの台帳で見た数字です(2026年10月2日時点)。
グループ5法人は、台帳ではまだ全部「活動中」
5法人の法人番号を台帳で引くと、5つとも閉鎖の登記はなく「活動中」の表示でした。本店はいずれも大阪市中央区です。保全管理命令は、破産手続きを始める前に財産が散らないよう管理人を置くものです。会社の登記が閉じるのは、手続きが進んで整理が終わってからです。事業ができなくなった日と、台帳で閉鎖と出る日は別です。この時差は破産決定でも閉鎖と出ない理由で詳しく見ました。
台帳の住所を見ると、絆ホールディングスとNPO法人リアンは同じビルの別の階、レーヴは同じ町内の別のビルに本店がありました。株式会社とNPO法人が並んでいても、外から見ると一つのグループだとは分かりにくい形です。同じ住所に複数の法人がある場合の見方は、同じ住所に関連会社が並ぶ例でも書いています。
社名に「就労」を持つ法人は全国396社、活動中の8割強が株式会社以外
就労支援の事業所を運営する法人は、社名に事業の中身が出ないことも多いので、ここでは目安として社名に「就労」を含む法人を数えました。名前からの推定なので、今回のグループのように社名に「就労」が入らない法人は含まれていません。概数として見てください。
- 全国の累計:396社
- 活動中:359社
- 閉鎖:37社(閉鎖率9.3%)
- 台帳全体の閉鎖率は13.2%
活動中359社のうち、NPO法人や社会福祉法人などを含む「その他の法人」が295社(82.2%)、株式会社が37社、合同会社が21社でした。台帳全体の活動中の法人では株式会社がおよそ半分を占めるので、就労支援は株式会社以外の法人が中心の世界だと分かります。
閉鎖した37社の内訳は、清算の結了などが29社、登記官による閉鎖(長く登記の動きがない法人の整理)が5社、合併が2社、その他が1社でした。
東京都53社、大阪府33社
活動中の359社を本店の都道府県で見ると、東京都53社、大阪府33社、福岡県20社、北海道18社、愛知県17社、静岡県16社と続きます。大阪府は35社のうち33社が活動中で、閉鎖は2社でした。
あわせて、社名に「障害」「障がい」などを含む法人も数えると全国で1,740社、閉鎖率は16.4%で、台帳全体よりやや高めでした。NPO法人と一般社団法人の違いはNPO法人と一般社団法人の違いにまとめています。
利用する人・働く人・取引先が確かめたいこと
1. 事業所の名前ではなく、運営する法人を確かめる
福祉の事業所は、事業所の名前と運営する法人の名前が違うことがよくあります。通う先や勤め先を選ぶときは、パンフレットや重要事項説明書で運営法人の名前を確かめ、その法人番号と本店の住所まで見ておくと確実です。調べ方は法人番号の調べ方にあります。
2. 行政の指定と処分の情報を見る
障害福祉の事業所は、自治体から指定を受けて運営しています。指定の取り消しなどの処分は、自治体のホームページで公表されることが多いので、気になるときは事業所がある自治体の情報を確かめてください。社会福祉法人なら財務の書類も公開されています。見方は社会福祉法人の財務諸表の見方で整理しました。
3. 「再生」と「破産」で、残る・残らないが違う
会社更生は、事業を続けながら立て直すための手続きです。今回はその申し立てが棄却され、破産に向けた保全管理に入りました。続ける前提の手続きと、たたむ前提の手続きでは、利用者や取引先への影響がまったく違います。違いは倒産の種類の違いで整理しています。
4. 取引先は、登記だけで「動いている」と判断しない
今回の5法人も、台帳の上ではまだ「活動中」です。取引先が今も事業を続けているかは、登記だけでなく、事業所が開いているか、電話がつながるか、求人や案内が更新されているかでも確かめるのが確実です。手順は会社の実在と倒産の確かめ方と取引先の信用の調べ方にあります。
よくある質問
保全管理命令とは何ですか?
破産手続きを始めるかどうかが決まるまでの間、裁判所が選んだ保全管理人が会社の財産を管理する仕組みです。財産が勝手に処分されないようにするためのもので、会社自身は財産を自由に動かせなくなります。
保全管理が出たのに、台帳で「活動中」と出るのはなぜですか?
会社の登記が閉じるのは、破産などの手続きで整理が終わってからです。それまでは閉鎖の登記がないので「活動中」のままです。
就労支援の事業所は危ないということですか?
そうは言えません。社名に「就労」を含む法人の閉鎖率は9.3%で、台帳全体の13.2%より低めでした。今回は一つのグループの話で、個々の事業所の状態はその運営法人の情報で確かめる必要があります。
就労支援の事業所に勤めようと考えるとき、何を見ればよいですか?
運営法人の名前と法人番号、自治体の指定を受けているか、処分の公表がないかを見るのがおすすめです。面接で「運営している法人はどこですか」「ほかにどんな事業所がありますか」と聞くのも自然な確かめ方です。
まとめ
障害のある人の就職を支援していた大阪市の絆ホールディングスとグループ会社が、2026年10月1日に会社更生の申し立てを棄却され、保全管理命令を受けました。負債はグループ5法人で約289億円です。大阪市から加算金の返還を求められ、事業者の指定を取り消されたことが背景にあります。しょくばログの台帳では、5法人はまだ「活動中」の表示で、社名に「就労」を持つ法人396社のうち活動中の8割強は株式会社以外の法人でした。福祉の事業所を選ぶときや取引するときは、事業所の名前ではなく運営する法人まで確かめ、登記の「活動中」だけで判断しないことが大切です。