✍ 古家あきら | 2026-10-03 更新

周南の内装工事業・なめらが破産、負債約2億円。外注費の膨張と資材高で採算が悪化──しょくばログDBで見る社名に「内装」を持つ法人3,288社、有限会社が5割超

先に結論です。山口県周南市で内装工事を手がけてきたなめら株式会社が、2026年9月17日に山口地裁周南支部から破産手続きの開始決定を受けました。 帝国データバンクの発表(2026年9月30日)を伝えたtysテレビ山口の報道によると、負債は約2億円の見込みです。2022年12月期には年間売上高約4億100万円を計上していましたが、外注費が膨らみ、資材価格の高騰で採算が落ち、借入金の返済が重荷になって2025年9月末に事業を止めていました。

しょくばログの台帳で社名に「内装」を含む法人を数えると、全国で累計3,288社。そのうち433社(13.2%)に閉鎖の登記があり、全法人の閉鎖率13.2%とほぼ同じです。ただ、3,288社のうち1,766社(53.7%)が有限会社で、株式会社の1,277社より多い。小さな工事会社が多い業種の姿がそのまま出ています。山口県に絞ると32社のうち9社(28.1%)が閉鎖済みで、母数は小さいものの全国の約2倍でした。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「大手ゼネコンの仕事をしている会社なら安心ではないか」という声を聞くことがあります。この記事はなめらの経営を評価するものではありません。元請けから仕事を受け、職人を外注して工事を回す会社と付き合う取引先、そこで働く人が、何を見ておくとよいかを台帳の数字と合わせて書きます。

出典:【倒産情報】大手ゼネコンの受注が中心…内装工事業者「なめら」負債約2億円 資材高騰で採算性が低迷(tysテレビ山口・2026年10月2日)

出典:【周南】内装工事のなめら破産へ 負債総額は約2億円(日刊新周南・2026年10月2日)

報道で確認できる事実

2つの報道から、確かめられる内容だけを並べます。

従業員数や取引先の数は報道に出ていないため、この記事では触れません。

しょくばログの台帳で見ると

事業停止から1年、台帳はまだ「活動中」

しょくばログの台帳(国税庁の法人番号の公表データがもと)で周南市を引くと、「なめら株式会社」は大字徳山637番地の1に登記されていて、閉鎖の登記はまだありません。報道では事業停止が2025年9月末なので、仕事が止まってから1年たっても、台帳の上では「活動中」のままということになります。

これは珍しいことではありません。台帳に閉鎖の記録がつくのは、破産の手続きが進んで登記が閉じられてからです。破産手続きの開始決定が出たのは事業停止の約1年後で、そこからさらに時間がかかります。台帳に「活動中」と出ていることは、いま工事を請けられる状態であることの証明にはなりません。 倒産したかどうかの確かめ方は会社の実在・倒産の確認方法に、破産や民事再生などの違いは倒産の種類の違いにまとめています。

もう1つ注意があります。台帳には防府市に「株式会社なめら」という、ひらがなの社名がまったく同じ会社もあり、こちらは2020年8月に清算を終えて閉鎖されています。社名だけで探すと取り違えやすい例です。

社名に「内装」を持つ法人3,288社

社名に「内装」を含む法人は、台帳で累計3,288社です。多い順に東京都544社、埼玉県329社、神奈川県259社、北海道243社、千葉県186社と、人と建物の多い地域に集まっています。

2006年以降は新しく作れない有限会社が半分を超えるのは、昔から続く小さな工事会社が多い業種だということです。閉鎖の割合が有限会社のほうが高いのも、古い会社ほど閉じる機会が多かったと読めます。

ただし、この数え方には抜けがあります。内装工事をしていても社名に「内装」を入れていない会社は拾えません。なめら自身もそうです。社名で数えた数字は業界全体ではなく、「内装を名乗る会社」の姿として見てください。

周南市と山口県

周南市に本店を置く法人は、台帳で累計4,677社。閉鎖の登記があるのは716社(15.3%)で、全国平均の13.2%より少し高めです。山口県全体では累計43,094社、閉鎖は6,120社(14.2%)でした。台帳で建設業に分類されている法人に絞ると、山口県は2,695社のうち424社(15.7%)、全国では260,687社のうち38,817社(14.9%)に閉鎖の登記がありました。

取引先・働く人が確かめたいこと

1. 「元請けが大手」は、利益の厚さを意味しない

大手ゼネコンからの受注が中心、と聞くと安定した会社に見えます。仕事が途切れにくいのは確かです。ただ、下請けの価格は元請けとの交渉で決まり、資材が上がったからといって後から上乗せしにくいことがあります。報道でも、資材価格の高騰で採算が落ちたことが挙げられています。この構図は価格転嫁できない業種で書いた条件と重なります。

取引先として見るなら、元請けの名前より、どれだけ利益が残る仕事を取れているかが大事です。売上が数億円あっても、材料と外注に払う分が増えれば手元のお金は減っていきます。

2. 外注の比率が高い会社は、コストの上昇がそのまま響く

なめらは施工の多くを外注に頼っていたと報じられています。自社で職人を抱えない形は、仕事の量に合わせて人を増減できる利点があります。その一方で、職人の手間賃が上がれば、その分がそのまま原価に乗ります。人手不足で外注費が上がる局面では、利益が削られやすい形です。

似た事情は、福岡で事業を止めた住宅会社の例でも見られました(福遼建設の破産)。工事の会社と取引するときは、職人を自社で抱えているのか、ほぼ外注なのかを聞いておくと、相手の強みと弱みが見えやすくなります。

3. 事業停止と破産決定のあいだに、時間差がある

今回は、事業停止(2025年9月末)から破産手続きの開始決定(2026年9月17日)まで約1年あいています。その間、台帳の上でも外から見ても、会社は「ある」ように見えます。工事を発注する側、あるいは代金を受け取る側は、相手の会社に最近連絡がつくか、現場が動いているかを、台帳とは別に確かめる必要があります。取引先の見方の全体は取引先の信用の調べ方にまとめています。

4. 働く人は、給与と手続きの記録を手元に

事業が止まると、働いていた人にとって先に気になるのは、未払いの給与や今後の手続きです。雇用契約や給与明細、勤務の記録を手元に残しておくと、あとの相談がしやすくなります。個別の権利の判断は、最寄りの労働基準監督署や弁護士などの専門家に確認してください。

5. 名前ではなく法人番号で控える

上で書いたとおり、山口県内に「なめら」というひらがなの同名の会社が2社あります。取引先として記録するときは、社名ではなく13桁の法人番号で控えるのが確実です。調べ方は法人番号の調べ方に書いています。

よくある質問

Q. 大手ゼネコンと取引している会社なら、倒産しにくいのではありませんか。

仕事の量が安定しやすいのは確かですが、利益の厚さとは別の話です。下請けの価格は元請けとの交渉で決まり、資材や外注費が上がっても後から上乗せしにくいことがあります。取引先の名前だけで安心せず、利益が残る仕事を取れているかを見てください。

Q. 社名に「内装」がつく会社の閉鎖率13.2%は高いのですか。

全法人の閉鎖率13.2%とほぼ同じで、特別に高いわけではありません。ただ、有限会社が半数を超え、有限会社の閉鎖率は16.8%と株式会社の8.6%の約2倍です。業界全体の比較ではなく、「小さな工事会社が多い業種」という姿をつかむための数字として見てください。

Q. 事業を止めた会社が、台帳では1年たっても「活動中」なのはなぜですか。

台帳の「閉鎖」は、登記が閉じられたあとにつく記録だからです。事業を止めてから破産の申し立て、手続きの開始、終結を経て登記が閉じられるまでには時間がかかります。今回は事業停止から破産手続きの開始決定までだけで約1年たっています。

Q. 取引先の工事会社の変化に、早く気づく方法はありますか。

支払条件の変更の相談、現場の遅れ、担当者と連絡がつきにくくなるといった変化は目安になります。ただし、これだけで倒産を見抜けるわけではありません。取引額が大きい場合は、信用調査会社の情報や本人への直接の確認を重ねてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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