✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新
福岡市東区の住宅会社「福遼建設」が破産申請へ。売上は7年で約7割減、売れ残りの在庫が資金を縛った。しょくばログDBで見る福岡県の建設業1万社
先に結論です。土地を仕入れて家を建て、それを売る住宅会社は、家が売れるまでの間ずっと仕入れのお金を寝かせています。売れる速さが落ちると、利益より先に手元のお金が足りなくなります。 福岡市東区の株式会社福遼建設は、2026年6月5日までに事業を止め、自己破産の申請準備に入りました。負債は2025年11月期末で約3億9,000万円です。売上高はピークの2018年11月期から7年で約7割減っていました。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、倒産の報道が出たあとに、その会社を検索する人が増えます。家の建築を頼んでいた人、下請けで入っていた職人さん、土地の購入を考えていた人。ここでは、報道で確認できる事実と、国の統計、しょくばログの台帳から数えられる数字だけを並べます。個別の会社の良し悪しを言う記事ではありません。
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
従業員数や取引先の名前は報道に書かれていないため、ここでも書きません。
- 会社:株式会社福遼建設(福岡市東区)
- 設立:2006年12月
- 事業:戸建住宅の建築、リフォーム工事、土地の売買
- 売上高:2018年11月期 約10億5,000万円 → 2025年11月期 約3億1,000万円
- 負債:約3億9,000万円(2025年11月期末)
- 2026年6月5日までに事業を停止し、自己破産の申請準備へ
苦しくなった理由として、報道は次の点を挙げています。
- 住宅市場での競争が激しくなった
- 資材価格や労務費の上昇で建築の原価が上がった
- 上がった分を販売価格に乗せきれなかった
- 用地を仕入れる競争も強まった
- 販売用の不動産の在庫が増え、仕入れに使ったお金が寝たままになった
「建てて売る」会社が在庫で苦しくなる理由
注文住宅だけを請け負う工務店なら、施主から工事代金を段階的に受け取りながら家を建てます。一方、土地を先に買って、家を建ててから売る形では、土地代と建築費を会社が先に払い、売れた時に初めて回収します。多くの場合、その先払いは銀行からの借り入れです。
この形は、売れ行きが良い間は回転が速く、売上も伸びやすい仕組みです。ところが売れる速さが落ちると、次のことが同時に起きます。
- 売れ残った物件の分だけ、借入金の利息がかかり続ける
- 値引きして売れば、原価の上昇とあわせて利益が削られる
- 在庫にお金を取られて、次の土地を仕入れにくくなる
福遼建設の報道にある「在庫の増加で資金が固定化」は、この状態を指していると読めます。売上が大きく減った後も借入金は残るため、手元のお金が先に尽きます。
家を建てる数そのものが減っている
背景として、国の統計で見ると、家を建てる数そのものが減っています。国土交通省の建築着工統計によると、2025年度に新しく着工した住宅は711,171戸で、前年度から12.9%減りました。
- 持家(自分で住むために建てる家):195,111戸(前年度比12.6%減)
- 分譲住宅:200,563戸(同12.6%減、3年連続の減少)
- うち分譲の一戸建て:115,200戸(同5.9%減、3年連続の減少)
- 首都圏・中部圏・近畿圏以外の「その他地域」の総戸数:前年度比17.6%減
出典:建築着工統計調査報告(令和7年度計)(国土交通省、2026年4月30日)
福岡県は統計上「その他地域」に入ります。市場全体が縮むなかで、同じ地域の住宅会社どうしが限られた買い手と土地を取り合う形になります。報道にある「競争激化」と「用地の仕入れ競争」は、この流れと重なります。原価の上昇分をどこまで価格に乗せられているかは、価格転嫁率と「値上げできない会社」を整理した記事で書いています。
しょくばログの台帳で見えること
会社は台帳上まだ「閉鎖」になっていない
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データが元)で「福遼」を含む法人を探すと、福岡市東区松島に本店がある株式会社福遼建設の1社だけでした。2026年9月28日時点で、登記は閉鎖になっていません。
事業を止めて破産の準備に入っても、登記が閉じるのは手続きが終わってからです。破産決定が出た4社を国税庁のサイトで引いた記事でも、4社とも「閉鎖」の表示にはなっていませんでした。取引先や施工を頼む会社が今どうなっているかは、台帳の表示だけで判断しないでください。確かめ方は会社が実在するか・倒産していないか確認する方法の記事にまとめています。
福岡県の建設業10,002社、閉鎖率は12.0%
しょくばログでは、社名から業種が読み取れる法人を業種ごとに振り分けています。そのうち「建設業」に入る福岡県の法人を数えました。閉鎖率は、台帳に載っている法人のうち、すでに登記が閉じている法人の割合です(いつ閉じたかは問いません)。
- 全国の建設業:260,687社のうち閉鎖38,817社(14.9%)
- 福岡県の建設業:10,002社のうち閉鎖1,204社(12.0%)
- 福岡市内の建設業:2,734社のうち閉鎖346社(12.7%)
- 福岡市東区の建設業:400社のうち閉鎖36社(9.0%)
福岡県の閉鎖率は全国より低めです。ただしこれは「登記が閉じた会社」の割合で、登記を残したまま休んでいる会社は含まれません。低いから安心、高いから危ない、とは読めません。
社名に「建設」を含む福岡県の法人4,458社
社名に「建設」を含む法人に絞ると、福岡県には4,458社あり、閉鎖は603社(13.5%)でした。会社の種類で分けると差が出ます。
- 株式会社:2,253社のうち閉鎖361社(16.0%)
- 有限会社:2,043社のうち閉鎖213社(10.4%)
有限会社は2006年5月の会社法施行以降は新しく作れないため、残っているのは古くから続いている会社です。株式会社のほうが閉鎖率が高いのは、比較的新しく作られて早く閉じた会社が含まれるためと考えられます。福遼建設は会社法施行後の2006年12月設立の株式会社です。工務店の決算や許可の調べ方は、工務店の経営状態を調べる方法の記事で詳しく書いています。
住宅会社と取引する人が確かめておきたいこと
一般論として、建てて売る形の住宅会社と取引するときに見ておきたい点を挙げます。
- 完成してから長く売れ残っている物件が増えていないか:同じ会社の販売物件が長期間掲載されたままになっていないか
- 支払いのタイミング:着工前に大きな金額を払う契約になっていないか。完成保証や住宅瑕疵担保責任保険の加入を確かめる
- 建設業許可と宅建業免許:国土交通省や都道府県の名簿で、許可が切れていないか
- 本店所在地の変更:短い間に何度も本店を移していないか。変更履歴は国税庁の法人番号公表サイトで確かめられる
よくある質問
福遼建設という名前の会社と取引があります。今回の会社ですか?
報道の会社は福岡市東区に本店がある株式会社福遼建設です。しょくばログの台帳では、社名に「福遼」を含む法人はこの1社だけでした。それでも、請求書や契約書に書かれた所在地か、13桁の法人番号で照合するのが確実です。調べ方は法人番号の調べ方の記事にあります。
家の建築を頼んでいた会社が破産しそうです。どうすればいいですか?
まず契約書を手元に置き、支払った金額と工事の進み具合を整理してください。完成保証制度に入っているかどうかで、選べる手段が変わります。破産手続きが始まると、会社への請求は裁判所が選ぶ破産管財人を通じて行うことになります。個別の判断は弁護士や自治体の消費生活センターに相談してください。
閉鎖率が低い地域の建設会社なら安全ですか?
そうとは言えません。閉鎖率は登記が閉じた会社の割合で、個々の会社の経営状態を示すものではありません。今回の会社も、事業停止から3か月以上たった時点で登記は閉じていません。個別の会社は、決算の開示や許可の状況をあわせて確かめてください。
しょくばログで「閉鎖」と表示されるのはいつですか?
国税庁の法人番号公表データに登記の閉鎖が反映されたあとです。破産の場合、手続きが終わって登記が閉じるまでには、事業停止から数か月から1年以上かかることがあります。
まとめ
- 福岡市東区の株式会社福遼建設が2026年6月5日までに事業を止め、自己破産の申請準備に入った(負債約3億9,000万円)
- 売上高は2018年11月期の約10億5,000万円から2025年11月期の約3億1,000万円へ、約7割減
- 報道が挙げた理由は、競争激化、原価の上昇、価格転嫁の不足、用地仕入れ競争、在庫の増加による資金の固定化
- 2025年度の新設住宅着工は711,171戸で前年度比12.9%減。分譲の一戸建ては3年連続で減っている
- しょくばログの台帳では、福岡県の建設業10,002社のうち閉鎖は12.0%。福遼建設は2026年9月28日時点でまだ閉鎖になっていない
家を建てて売る会社にとって、在庫は売上になる前のお金です。取引先や施工会社を選ぶときは、評判や価格だけでなく、支払いのタイミングと保証の有無をあわせて確かめてください。