✍ 古家あきら | 2026-10-03 更新

求人の年齢制限はなぜあるのか — 原則禁止と6つの例外。会社サイト3.1万社で上限年齢を書いていたのは907社、理由の最多は「キャリア形成」

先に結論です。求人で年齢に上限をつけることは、法律で原則として禁じられています。それでも「35歳以下」「59歳以下」と書かれた求人があるのは、省令が定めた例外にあたる場合だけ上限をつけてよいことになっているからです。例外は大きく分けて6つで、実際によく使われているのは「長期勤続によるキャリア形成のため」と「定年が○歳のため」の2つです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の公式サイトに載っている募集要項を毎日のように読みます。そこで、保存している会社サイトのテキスト31,159社分から、応募資格の近くに「○歳以下」「○歳未満」「○歳まで」と上限年齢を書いている会社を数えました。該当したのは907社(2.91%)です。そのうち、上限年齢のすぐ近くに理由の手がかりが書かれていたのは463社(51.0%)。理由として一番多かったのは「キャリア形成」で284社、次が「定年」で177社でした。

この記事の数字は、すべてこの31,159社の会社サイトを集計したものです。ハローワークや大手求人サイトの統計ではありません。「自社サイトで募集している会社が、年齢制限をどう書いているか」の実態として読んでください。

求人の年齢制限は、原則として禁止されている

根拠になっているのは、労働施策総合推進法(正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)の9条です。事業主は、厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集と採用について「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と書かれています。

ここで言う「省令で定めるとき」は、同法施行規則の1条の3第1項が決めています。書き方が少し変わっていて、「次の各号に掲げるとき以外のとき」となっています。つまり、例外に当たらない限りは、年齢に関係なく機会を与える義務があるという作りです。

さらに、上限を設ける場合には理由を示す決まりもあります。高年齢者雇用安定法の20条は、やむを得ない理由で一定の年齢(65歳以下のものに限る)を下回ることを条件にするときは、求職者にその理由を示さなければならないと定めています。求人票に「年齢制限の理由」「例外事由3号イ」といった書き込みがあるのは、このためです。

求人票全体の読み方は求人票の見方にまとめています。

年齢制限が認められる6つの例外

施行規則1条の3第1項に並んでいる例外は、次のとおりです。条文の言い回しはかなり長いので、要点だけ書きます。

求人を見る側として覚えておきたいのは、上限年齢が書かれていても、それ自体はただちに違法ではないことと、例外ごとに「無期雇用に限る」「経験不問に限る」といった条件がついていることの2つです。

会社サイトに上限年齢を書いていた会社:907社(2.91%)

ここからは、しょくばログが保存している会社サイト31,159社の集計です。

上限年齢を書く会社のほうが、「年齢不問」と明記する会社より多い、という結果でした。なお、両方を書いていた会社も73社あります。職種ごとに「Aは年齢不問、Bは35歳以下」と分けている会社が多いようです。

よく見る上限年齢は「35歳」と「59歳」

上限年齢が読み取れた907社について、1社1つ(一番若い上限)で数えると、中央値は40歳でした。多かった年齢は次のとおりです。

山が2つあることがわかります。35歳・40歳・30歳の山は、主に3号イ(キャリア形成)による若手の募集です。59歳・64歳の山は、定年60歳・65歳の会社が1号(定年)を使っているケースです。「59歳以下」とあれば定年60歳、「64歳以下」とあれば定年65歳の会社だと、かなりの確度で読めます。定年そのものの調べ方は会社の定年を調べる方法で扱っています。

書かれている理由:最多は「キャリア形成」、次が「定年」

上限年齢を書いていた907社について、その年齢のすぐ前後(前20字・後60字)に理由の手がかりが出てくるかを調べました。

実際の書き方は、たとえば次のような形です(個社が特定されないよう要旨にしています)。

一方で、残りの約半分(444社)は、上限年齢の近くに理由らしい語が見当たりませんでした。別の場所に理由を書いている会社もあるはずなので、これを「理由を示していない会社」と言い切ることはできません。ただ、応募する側から見ると、年齢だけが書いてあって理由がすぐ見つからない求人は、珍しくないということです。

技能継承(3号ロ)や芸能(3号ハ)を理由にする会社は、今回の集計ではごく少数でした。会社サイトの募集で実際に使われているのは、ほぼキャリア形成(3号イ)と定年(1号)の2つと考えてよさそうです。

業種別:建設業と運輸業で多い

「年齢制限」の語か上限年齢を書いていた会社(1,176社)の割合を、業種別に見ました(業種は日本標準産業分類の大分類、会社サイトが300社以上ある業種だけ)。

建設業は、全体(3.77%)の2倍近くです。建設業の上限年齢の書き方を目で追うと、「35歳以下(キャリア形成のため)」のような3号イの募集がよく出てきます。逆に宿泊・飲食は低めで、「年齢不問」と書く割合(2.35%)のほうが高い業種でした。高卒採用の書き方は高卒採用をする会社の割合と会社サイトの書き方にまとめています。

年齢制限のある求人を見たときに確かめる4つのこと

1. 理由が書かれているか

上限年齢を設けるなら、理由を示すことが法律で求められています。「35歳以下」とだけあって理由が見当たらないときは、募集要項の別の欄や応募フォームの注記を探してみてください。それでも見つからなければ、問い合わせて理由を聞いてかまいません。

2. 3号イなのに「経験者のみ」になっていないか

キャリア形成(3号イ)を理由にできるのは、職業経験を応募条件にしない場合だけです。「35歳以下(キャリア形成のため)・同職種の実務経験3年以上必須」という書き方は、例外の条件とかみ合っていません。会社側の書き間違いのこともありますが、応募前に気にしておきたい点です。

3. 雇用形態が無期雇用か

1号(定年)・3号イ・3号ロは、どれも期間の定めのない労働契約の募集に限られます。契約社員やパートの募集で「定年のため59歳以下」と書かれていたら、条件と合っているか確認する価値があります。

4. 上限年齢から会社の様子を読む

「59歳以下」「64歳以下」は定年年齢の手がかりになります。「35歳以下」の募集が続いている会社は、社員の年齢構成を若くしたいと考えている可能性があります。会社の年齢構成の調べ方は会社の平均年齢の目安で書いています。

集計の方法

よくある質問

求人の年齢制限は違法ではないのですか?

原則として禁止ですが、施行規則1条の3第1項の例外(定年・法令による制限・長期キャリア形成・技能継承・芸術芸能・高年齢者等の雇用促進)に当たる場合は認められています。例外に当たらない年齢制限や、理由を示さない上限は、法律の決まりに沿っていない可能性があります。

「35歳以下(長期キャリア形成のため)」とはどういう意味ですか?

例外事由の3号イのことです。若手を無期雇用で採用し、長く勤めてもらいながら育てる目的の募集なら、上限年齢をつけてよいとされています。ただし、職業経験を応募条件にしないこと、新卒者と同等の処遇で募集することなどが条件です。今回の集計では、上限年齢を書いていた907社のうち284社が、このキャリア形成を理由に挙げていました。

上限年齢を1歳でも超えていたら応募できませんか?

会社の判断になりますが、上限は「この年齢までの人を対象に募集している」という意味なので、超えている場合は採用の対象外とされることが多いと考えておくのが無難です。どうしても応募したいときは、問い合わせで対象になるかを確かめてから送るほうが、お互いに手間がかかりません。

「年齢不問」と書いてある求人は本当に年齢を見ないのですか?

募集の段階で年齢による制限をつけていない、という意味です。実際の選考では経験やスキルが見られます。今回の集計では「年齢不問」などと書いていた会社は542社(1.74%)で、上限年齢を書いていた907社より少数でした。

ハローワークなどの求人票にある「例外事由3号のイ」とは何ですか?

施行規則1条の3第1項3号イ、つまり「長期勤続によるキャリア形成」を理由にした年齢制限のことです。「1号」なら定年、「2号」なら法令による制限、「3号ロ」なら技能・ノウハウの継承を表します。会社の公式サイトでも同じ表記を使うところがあり、今回の集計では「1号」が27社、「3号イ」が16社に出てきました。

会社の定年や平均年齢など、年齢まわりの情報はしょくばログの会社ページでも順次まとめていきます。気になる会社があれば、ブラック企業の見分け方とあわせて応募前のチェックに使ってください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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