✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新

会社の定年を調べる方法 — 会社サイト3万社で「定年」を書いているのは8%だけだった

先に結論です。応募先の定年は、会社サイトを見てもほとんど分かりません。しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の公式サイトを保存して中身を数える機会がよくあります。今回、読める状態で保存できている会社サイト31,159社のうち「定年」という言葉が出てくる会社を数えたところ、2,507社・8.0%でした。12社に1社しか書いていない計算です。

いっぽうで、法律のほうははっきりしています。定年を決めるなら60歳以上(高年齢者雇用安定法8条)、そして65歳までは何らかの形で雇い続ける仕組みが義務(同法9条)です。つまり「定年が何歳か」だけを見ても、実際に何歳まで働けるかは分かりません。見るべきは「定年の年齢」と「定年後にどうなるか(継続雇用の有無と上限)」の2点セットです。

この記事では、定年を確認する4つの経路、厚生労働省の最新の数字、そして会社サイトの実データで分かったことを順に書きます。

まず前提 — 定年は「60歳以上」、65歳までは雇用が義務

定年まわりのルールは3段になっています。

2つ目の「継続雇用制度」は、定年でいったん退職し、希望すれば嘱託や契約社員などとして引き続き雇われる仕組みです。厚生労働省の説明では、平成25年度以降は原則として希望者全員が対象で、対象者を絞れた経過措置も令和7年3月31日で終わりました。いまは「定年60歳・再雇用65歳まで」の会社でも、本人が希望すれば65歳まで働けるのが原則です。

ただし、再雇用後の雇用形態・給与・仕事内容は会社が決めます。「65歳まで働ける」と「65歳まで今と同じ条件で働ける」は別の話です。

調べ先は4つ — 手軽な順に

1. 求人票の「定年制」欄

ハローワークの求人票には「定年制」「再雇用制度」「勤務延長」の欄があり、ここがいちばん確実で手軽です。「定年制 あり(一律60歳)」「再雇用 あり(上限65歳まで)」のように、年齢と上限が並んで書かれます。転職サイトの求人は項目が統一されていないので、定年に触れていないことも珍しくありません。求人票全体の読み方は求人票の見方にまとめています。

2. 会社サイトの採用ページ(募集要項)

自社サイトの募集要項に「定年60歳(再雇用制度あり)」と書く会社もあります。ただし後で見るとおり、書いている会社は少数派です。福利厚生の欄にまとめて書かれていることが多いので、会社の福利厚生を調べる方法とあわせて見てください。

3. 面接・内定時に聞く

サイトにも求人にもなければ、聞くのがいちばん早いです。定年は労働条件の一部で、聞いて失礼な質問ではありません。聞き方は後半にまとめます。

4. 就業規則

定年は就業規則に書くことになっている事項です(労働基準法89条の「退職に関する事項」)。入社すれば閲覧できますが、入社前に見せてもらえるかは会社しだいです。内定後に「就業規則の定年と再雇用の部分を確認したい」と頼むのは現実的な手です。

厚労省の数字 — 定年60歳は62.2%、65歳は27.2%

厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日時点、常時雇用21人以上の企業237,739社)によると、定年の状況は次のとおりです。

いまも6割以上の会社は定年60歳です。ただし前年から2.2ポイント減り、65歳定年は2.0ポイント増えています。定年制の廃止を含めた「65歳以上定年」の会社は34.9%でした。

65歳までの雇用確保措置は99.9%の会社が実施済みで、その内訳は「継続雇用制度の導入」が65.1%、「定年の引上げ」が31.0%、「定年制の廃止」が3.9%。多数派は「定年は60歳のまま、再雇用で65歳まで」という形です。

70歳までの就業確保措置(努力義務)を実施している会社は34.8%。中小企業(21〜300人)は35.2%、大企業(301人以上)は29.5%で、中小企業のほうが高いのは意外に思うかもしれません。人手の確保が切実な会社ほど、長く働いてもらう仕組みを先に整えている、と読めます。

うちのデータで見る — 会社サイトに「定年」を書いているのは8.0%

ここからが、しょくばログの保存データで数えた結果です。対象は、会社の公式サイトを保存している32,838社のうち、文字化けが少なく読める状態の31,159社です。

92%の会社は、サイトのどこにも「定年」と書いていません。定年がないのではなく、書いていないだけです。サイトに記載がないことを「定年なし」と読まないでください。

書かれている年齢は65歳以上が半数

年齢まで書いている788社のうち、60歳未満の数字が出てきた8社は法律上ありえない定年のため、応募年齢の上限など別の数字を拾ったものとして除きました。残り780社の分布です。

厚労省の全体像(60歳が62.2%、65歳以上の定年が30.9%)と比べると、サイトに年齢まで書いている会社は65歳以上に寄っています(65歳以上が計50.1%)。定年を65歳や70歳に引き上げた会社は、それを採用の売りとして書きたくなる。60歳定年の会社はわざわざ書かない。そう考えると自然な偏りです。サイトに定年が書いてあれば、その会社は定年を「見せたい条件」と考えている可能性が高いと言えます。

求人の年齢制限に「定年」が使われているケース

もう一つ気づいたのが、応募年齢の上限の理由として定年を挙げているページです。「年齢制限:64歳以下(定年が65歳のため)」のような書き方で、「年齢制限」「例外事由」「○歳以下」のすぐ後に「定年」が出てくるページ、または「定年を上限」「定年…のため」の近くに年齢の上限が書かれているページを数えると172社ありました(「定年退職のため欠員募集」のような書き方は除いています)。

募集で年齢を制限することは原則として禁止されていますが、定年年齢を上限にして、期間の定めのない雇用(正社員など)で募集する場合は例外として認められています。「64歳以下」と書かれていたら、その会社の定年は65歳だと読めます。求人票の年齢欄から定年を逆算できる、というのは覚えておくと便利です。

業種別 — 金融・運輸・建設で高く、宿泊・飲食で低い

会社サイトを300社以上保存している業種について、「定年」への言及率を比べました(業種を判定できた会社のみ)。

運輸・建設・医療福祉は、ドライバーや職人、介護職などで年齢の高い働き手に頼っている業種です。定年や再雇用の条件をはっきり書くことが、そのまま人集めにつながるのでしょう。宿泊・飲食は若い働き手やパート・アルバイトが多く、定年がそもそも話題になりにくい業種です。働き手の年齢層については会社の平均年齢の目安や、55歳以上が活躍している会社を扱った活躍年齢のデータ記事も参考になります。

面接・内定時に確認すべき3点

サイトで分からない会社がほとんどなので、最終的には聞くことになります。聞くのは次の3点です。

1. 定年は何歳か(「一律」か、職種や役職で違うか) 2. 定年後の継続雇用はあるか、上限は何歳か(65歳まで、70歳まで、など) 3. 継続雇用後の雇用形態と給与の決め方(嘱託・契約社員になるのか、給与は定年前の何割くらいが目安か、実例はあるか)

3つ目は答えにくい会社もありますが、「実際に再雇用で働いている方はいますか」と聞けば、制度が書類だけのものか、運用されているかがだいたい分かります。退職金の扱いも定年とセットで決まることが多いので、退職金制度の調べ方もあわせて確認しておくと安心です。

よくある質問

定年が60歳の会社に入ると、60歳で辞めなければならないのですか?

いいえ。65歳までの雇用確保は法律上の義務なので、定年60歳の会社にも継続雇用制度などがあり、希望すれば原則65歳まで働けます(令和7年3月31日で対象者を限定できる経過措置も終了)。ただし雇用形態や給与は定年前と変わることが多いので、条件は確認が必要です。

会社サイトや求人に定年が書いていなければ「定年なし」ですか?

いいえ。しょくばログで数えた会社サイト31,159社のうち、「定年」という言葉があったのは8.0%だけでした。厚労省の調査では定年制を廃止している会社は3.9%です。書いていない会社のほとんどは、定年があるのに書いていないだけと考えるのが自然です。

求人の「64歳以下」という年齢制限は違法ではないのですか?

募集での年齢制限は原則禁止ですが、定年年齢を上限として、期間の定めのない雇用で募集する場合は例外として認められています。「64歳以下」とあれば定年65歳、「59歳以下」とあれば定年60歳の会社だと読めます。

70歳まで働ける会社はどれくらいありますか?

厚労省の令和7年調査で、70歳までの就業確保措置を実施している会社は34.8%です。定年70歳以上の会社は2.5%、定年制を廃止している会社は3.9%で、残りは主に70歳までの継続雇用制度によるものです。中小企業(35.2%)のほうが大企業(29.5%)より実施率が高くなっています。

定年の年齢は途中で変わることがありますか?

あります。就業規則の変更で定年を引き上げる会社は増えていて、厚労省の調査でも定年65歳の会社は前年から2.0ポイント増えました。入社時点の就業規則を確認するとともに、引き上げの予定があるかを聞いてみるのもよいでしょう。

この記事の数字について

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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