✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新

企業が従業員に期待する「活躍年齢」は67.9歳、最高齢は91歳 — 平均年齢を公表している2,575社のうち55歳以上は83社、その61社が建設業で、78社が従業員100人以下だった

帝国データバンクが2026年9月11日に、企業が自社の従業員に「何歳ごろまで活躍してほしいか」を尋ねたアンケートの結果を公表しました。全国1,289社の回答で、平均は67.9歳、中央値は70歳。規模別では小規模企業68.3歳、中小企業68.1歳、大企業66.8歳と、会社が小さいほど高くなりました。業界別では『農・林・水産』が70.1歳で唯一70歳を超え、『運輸・倉庫』68.6歳、『サービス』68.5歳と続き、いちばん低かったのは『建設』の67.4歳です。

同じ調査で「現在の従業員の最高齢」も聞いていて、平均は68.3歳、個別企業の最高齢は91歳。分布は「65〜69歳」が26.0%で最も多く、「70〜74歳」24.9%、「60〜64歳」15.6%。70歳以上の区分を足し上げると46.3%、ほぼ2社に1社で、いちばん年上の従業員が70歳を超えています。調査期間は2026年9月4日〜8日、インターネット調査です。

出典:帝国データバンク「企業が期待する『活躍年齢』に関する動向アンケート」(2026年9月11日)

先に結論を書きます。「活躍してほしい年齢67.9歳」は会社の希望であって、制度でも実態でもありません。 制度の数字は厚生労働省の集計にあって、定年を60歳とする会社がいまも62.2%、70歳までの就業確保措置を実施している会社は34.8%です。実態の数字はうちのデータベースで数えると、平均年齢を公表している2,575社のうち55歳以上の会社は83社(3.2%)しかなく、しかもその61社(73%)が建設業、78社(94%)が従業員100人以下でした。希望・制度・実態の3つがそれぞれ別の方向を向いている、というのがこのニュースの読みどころです。順に書きます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「平均年齢が高い会社は避けたほうがいいか」「60歳を過ぎてから応募できる会社はどう探すか」という、方向の違う2種類の相談を受けます。この記事では、ニュースの数字、厚生労働省の統計、うちのデータの3つを並べて、それぞれが何を数えていて何を数えていないかを分けます。

「期待する年齢」「最高齢」「定年」は3つの別の数字

今回の調査には3つの年齢が出てきますが、意味がまったく違います。

応募者が知りたいのはたいてい3つ目の「定年」と、その先の再雇用の条件です。ところが求人票に定年が書かれることはほとんどなく、面接で聞くしかない。ここで「うちは長く働いてほしいと思っている」という1つ目の答えが返ってきても、それは3つ目の答えにはなっていない。この区別を、まず頭に置いておいてください。

制度の数字 — 定年60歳の会社が62.2%、70歳までの措置は34.8%

会社の「定年」の全国分布は、厚生労働省が毎年6月1日時点で集計する「高年齢者雇用状況等報告」で分かります。最新の令和7年(2025年)分は、常時雇用する労働者が21人以上の企業237,739社(中小企業220,466社、大企業17,273社)の報告に基づいています。

出典:厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」(2025年12月19日)

つまり、「65歳まで働ける」のはほぼ全社で保証されていますが、その中身の3分の2は「60歳で定年、その後は継続雇用(再雇用)」です。継続雇用は多くの場合、いったん退職して嘱託やパートとして契約し直す形で、給与体系が変わります。「70歳近くまで活躍してほしい」と会社が言う場合、それが同じ待遇での話なのか、再雇用後の話なのかは、聞かないと分かりません。

もうひとつ注意があります。この統計は従業員21人以上の会社しか数えていません。今回のアンケートで「活躍してほしい年齢」がいちばん高かったのは「従業員20人以下」の小規模企業ですが、その層の定年制度の実態は、国の統計には出てこないのです。うちのデータベースで、gBizINFO経由で従業員数が分かる146,954社を数えると、20人以下が62,696社(42.7%)でした。gBizINFOに載る会社は全法人の一部なので全国の比率そのものではありませんが、「定年60歳が62.2%」という数字の外側に、それと同じくらいの数の小さな会社がある、という感覚は持っておいたほうがいいと思います。従業員数の調べ方は会社の従業員数を無料で調べる4つの方法に書いています。

実態の数字 — 平均年齢55歳以上の会社は83社、うち61社が建設業

ここからがうちのデータです。しょくばログには、gBizINFOを通じて職場情報総合サイト(しょくばらぼ)由来の「従業員平均年齢」が入っている会社が2,575社あります(明らかな入力誤りの1件を除外)。全体の中央値は43.4歳で、この分布そのものは会社の平均年齢の目安は43.4歳で書きました。今回は「活躍年齢67.9歳」に近い側、平均年齢が高い会社だけを切り出します。

この83社の中身を見ると、偏りがはっきり出ました。

規模別に「平均年齢55歳以上の会社の割合」を出すと、次のようになりました。

帝国データバンクの調査で「小規模企業ほど長く活躍してほしい」という結果が出た理由として、企業からは「中小企業には新しい人材が入りにくく、昔からの人材を活用していくしかない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売、長野県)という声が挙がっていました。うちのデータで見ると、20人以下の会社は、平均年齢が55歳を超える確率が301人以上の会社の6倍以上あります。「長く活躍してほしい」は理念というより、小さい会社ではすでにそうなっている現実を追認した数字だと読むのが自然です。

建設業の逆説 — 期待する年齢はいちばん低く、実際の平均年齢はいちばん高い

今回のアンケートで『建設』は67.4歳と、全業種でいちばん低い数字でした。企業の声は「昨今の気候等で夏の作業は過酷だが、担い手不足もあり65歳までは現場で頑張ってほしい」「大手ゼネコンでは、高齢者の場合、現場に入ることを制約されるので60歳以上は難しい」(いずれも建設、兵庫県)。体力と安全基準の壁があり、帝国データバンクは2026年4月からの労働安全衛生法改正で高年齢労働者の労災防止対策が努力義務化されたことにも触れています。

ところが、うちのデータで実際の平均年齢がいちばん高い業種は建設業です。

「60歳以上は現場に入れない」と言っている業界で、4社に1社は平均年齢が50歳を超えている。矛盾しているようですが、両方とも本当だと思います。新しく入ってくる人が少ないので平均年齢が上がる一方、年齢が上がると現場に出られなくなる——経営者が「67.4歳」と答えたのは、希望が低いというより、体が持つ限界の年齢を現実的に答えたのでしょう。平均年齢55歳以上の建設会社61社の従業員数の中央値は17.5人(建設業全体の中央値は30人)で、小さい会社に集中していました。

このデータは、建設業への応募を考えている人にはむしろ有利に読めます。平均年齢50歳超の会社が4社に1社ある業界は、若い応募者が構造的に不足している業界です。求人票の年齢構成の読み方は求人票の見方、業種ごとの勤続年数の相場は平均勤続年数は業種でどれだけ違うかにまとめています。

「平均年齢が高い会社」を、応募者・取引先はどう読むか

ここまでの数字を、実際に会社を見るときの判断に落とします。

1. 平均年齢が高い=悪い、ではない。 平均年齢55歳以上の83社について平均勤続年数を見ると、中央値は12.3年。55歳未満の会社(2,450社)の中央値11.9年と、ほぼ同じでした。「年齢が高い会社は定着していない」という関係は、このデータでは出ていません。むしろ年齢が高くて勤続も長い会社は、同じメンバーで長く続いてきた会社です。問題になるのは、その次の世代がいるかどうかだけです。

2. 「何歳まで働けるか」は、定年と再雇用の条件を分けて聞く。 「長く働いてほしい」という答えは希望であって制度ではありません。聞くべきは「定年は何歳か」「定年後の継続雇用で、雇用形態・給与・勤務日数はどう変わるか」「実際に65歳を超えて働いている人が何人いるか」の3つです。3つ目は今回の調査でいう「最高齢」に近い数字で、会社は必ず答えられます。

3. 求人票の「嘱託」は、定年後の枠とは限らない。 うちが会社の採用ページから収集した求人6,735件(2,628社)のうち、雇用形態欄や給与欄に「嘱託」「再雇用」が入っていた求人は24件(11社)でした。中身を1件ずつ見ると、定年後の人を対象にしていると明記していたのは1件だけ(高知県の建設会社の「土木技術者(施工管理・60歳以上・嘱託職員)」、基本給160,000〜215,000円)。残りは「正社員(または嘱託社員)」「常勤嘱託(契約社員)」「産休育休代替」のように、契約社員の言い換えとして「嘱託」を使っている求人でした。60歳を過ぎてから応募する側は、「嘱託」の文字だけで定年後の受け皿があると判断せず、対象年齢と契約期間を確認したほうがいいです。

4. 取引先として見るなら、平均年齢より「代表者の年齢と後継者」を見る。 従業員の平均年齢が60歳を超える小さな建設会社は、多くの場合、代表者もその世代です。今回のアンケートにも「社長の年齢と同じ年齢までは働いてほしい」(その他の卸売、72歳)という回答がありました。会社の継続性を測るなら、平均年齢より代表者の年齢と交代履歴のほうが直接的です。調べ方は会社の代表者を調べる3つの方法、少人数の会社そのものの見方は社員数が少ない会社は危ないのかに書きました。

よくある質問

「活躍してほしい年齢67.9歳」は、67歳まで雇ってもらえるという意味ですか?

違います。 経営者の希望を平均した数字で、法律上の義務は「65歳までの雇用確保」、70歳までは努力義務です。厚生労働省の集計では、定年を60歳とする会社がいまも62.2%を占め、65歳以上定年(廃止含む)は34.9%です。「何歳まで」を確かめるなら、定年と定年後の継続雇用の条件を就業規則で確認してください。就業規則は常時10人以上の事業場で作成・届出義務があり、従業員には周知義務があります。

平均年齢が55歳を超える会社は、避けたほうがいいですか?

それだけでは判断できません。 うちのデータでは、平均年齢55歳以上の会社83社の平均勤続年数の中央値は12.3年で、それ以外の会社(11.9年)と差がありませんでした。83社の94%は従業員100人以下、73%は建設業で、「同じメンバーで長く続いてきた小さな会社」がほとんどです。見るべきは年齢そのものより、直近数年に若手の採用が続いているか(求人の出方で分かります)と、代表者の年齢と後継者です。

60歳を過ぎてから応募できる会社は、どう探せばいいですか?

求人票に「60歳以上」「シニア」など対象年齢が書かれているか、会社の最高齢を面接で聞くのが確実です。「嘱託」は契約社員の意味で使われることが多く、それだけでは定年後の枠か分かりません。帝国データバンクの調査では、回答企業の平均で最高齢の従業員は68.3歳、最高齢の従業員が70歳以上の会社は区分を足し上げると46.3%でした。つまりほぼ2社に1社は、すでに70代以上が働いている会社です。業種では『農・林・水産』『運輸・倉庫』『サービス』が、活躍を期待する年齢が高い業界でした。

会社の平均年齢はどこで調べられますか?

公表している会社がごく一部です。厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に載せている会社の情報が、gBizINFO経由でしょくばログにも入っていますが、うちの14万社規模の会社ページのうち平均年齢があるのは約2,575社です。載っていない会社は、設立年(登記由来でほぼ全社分かります)と従業員数(gBizINFOに載っている会社なら分かります)から「創業50年で従業員15人」のように推定するのが現実的です。詳しい手順は会社の平均年齢の目安は43.4歳を見てください。

この記事の数字について

企業が従業員に活躍してほしい年齢(平均67.9歳、中央値70歳、小規模企業68.3歳・中小企業68.1歳・大企業66.8歳、農・林・水産70.1歳・運輸・倉庫68.6歳・サービス68.5歳・建設67.4歳)、従業員の最高齢(平均68.3歳、最高91歳、65〜69歳26.0%・70〜74歳24.9%・60〜64歳15.6%)、企業からの声、調査期間(2026年9月4日〜8日)、有効回答1,289社は、帝国データバンク「企業が期待する『活躍年齢』に関する動向アンケート」(2026年9月11日公表)から引用しました。

65歳までの雇用確保措置実施率99.9%とその内訳、70歳までの就業確保措置実施率34.8%(中小35.2%・大企業29.5%)、定年年齢の分布(廃止3.9%・60歳62.2%・61〜64歳2.9%・65歳27.2%・66〜69歳1.2%・70歳以上2.5%)、65歳以上定年企業34.9%、集計対象237,739社は、厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」(2025年12月19日公表、2025年6月1日時点)から引用しました。

平均年齢を公表している2,575社の集計(50歳以上358社・55歳以上83社・60歳以上11社、83社の業種・従業員数の内訳、規模別・業種別の中央値と割合、平均勤続年数の中央値、建設会社の従業員数中央値)、従業員数が分かる146,954社のうち20人以下62,696社(42.7%)、採用ページ由来の求人6,735件のうち「嘱託」「再雇用」24件(11社)とその内訳は、しょくばログのデータベース(国税庁法人番号公表サイト、gBizINFO、職場情報総合サイト由来の職場情報、会社の採用ページから2026年6月に収集した求人)を2026年9月13日に集計したものです。平均年齢は会社が自己申告した値で、算出基準日は会社ごとに異なります。従業員数はgBizINFOの値で、登記上の全法人を網羅していません。業種は日本標準産業分類の大分類で、分類できなかった会社は「未分類」として数えています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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