✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新
愛知・飛島村の運送会社「コトブキ運輸」が事業停止、自己破産申請へ。負債約2億円、年商は3億円を下回る水準──しょくばログDBで見る愛知県の運送系法人2,549社と「運送の村」飛島村
先に結論です。愛知県飛島村の運送会社・有限会社コトブキ運輸が、2026年9月30日までに事業を停止し、自己破産申請の準備に入りました。 帝国データバンクの情報を伝えたCBCテレビの報道によると、負債は約2億円の見込みです。
報道で挙げられている経緯は、同業者との競争が激しく、運営コストが上がる一方で運賃への価格転嫁が進まなかった、というものです。タイヤ販売を始めるなど事業の幅を広げていましたが、大きな改善には至らなかったと伝えられています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、運送会社の倒産記事で「燃料費が上がったが、運賃に乗せられなかった」という説明を何度も見かけます。この記事はコトブキ運輸の経営を評価するものではありません。同じような規模の運送会社に荷物を任せている荷主や、そこで働く人が何を見ておけばよいかを、台帳の数字とあわせて書きます。
出典:【倒産】運送業者が自己破産申請へ 個人宅配便や冷蔵食品などを扱う 同業との競争激しく…「コトブキ運輸」(CBCテレビ・2026年10月2日)
出典:飛島村のコトブキ運輸、自己破産申請へ 負債約2億円(中日BIZナビ)
報道で確認できる事実
- 会社:有限会社コトブキ運輸(愛知県海部郡飛島村)
- 創業:1982年に創業し、1986年に法人化
- 事業:一般貨物自動車運送業。コンテナ、郵便貨物、個人宅配便、冷蔵食品類などを運ぶ
- 主な配送エリア:愛知・岐阜・三重の東海3県
- 拠点と車両:飛島の本社と豊橋の営業所。車両は約30台
- 年商:3億円を下回る水準で推移
- 多角化:2023年からトラック・バス用タイヤの販売を開始
- 事業停止:2026年9月30日まで
- 手続き:弁護士に事後処理を一任し、自己破産申請の準備中
- 負債:約2億円の見込み
本業の運送だけでは利益が残りにくくなり、整備まわりの商品へ手を広げて補おうとした、という流れが読み取れます。ただ、新しい事業は軌道に乗るまで時間がかかります。本業の採算が先に苦しくなると、立て直しが間に合わないことがあります。
しょくばログの台帳で見ると
本人の会社は、まだ「活動中」と表示される
しょくばログの台帳では、飛島村の有限会社コトブキ運輸(法人番号5180002090521)は、この記事を書いた時点で「活動中」の表示です。台帳の元になっている国税庁の法人番号公表サイトは、登記が閉鎖されたときに更新されます。事業を止めて破産の準備に入っても、手続きが終わって登記が閉じるまでは閉鎖の表示になりません。この見え方は会社の実在と倒産の確かめ方にまとめています。
社名に「コトブキ運」を含む法人は、台帳全体で8社ありました(活動中7社)。愛知県内では今回の会社だけですが、似た社名の運送会社は他県にもあります。取引先を確かめるときは、社名ではなく法人番号で照合してください。
愛知県の運送系法人は2,549社、閉鎖率は14.2%
台帳で、愛知県に本店があり社名に「運送」「運輸」「物流」「ロジ」のいずれかを含む法人を数えると、累計2,549社でした。活動中が2,188社、閉鎖が361社で、閉鎖率は14.2%です。全国の同じ条件(56,013社)も14.2%で、愛知県全体の法人の閉鎖率15.0%とも大きな差はありません。
活動中2,188社の法人の種類は次のとおりでした。
- 株式会社:1,406社(64.3%)
- 有限会社:557社(25.5%)
- 合同会社:59社(2.7%)
全国の運送系法人では、活動中の有限会社が32.5%あります。愛知県はそれより7ポイントほど低い数字です。有限会社は2006年以降は新しく作れないので、コトブキ運輸のように法人化から40年近く続く会社が多い形といえます。
閉鎖した361社の閉じ方は、清算の結了などが229社(63.4%)、合併が66社(18.3%)、長く登記の動きがない会社を登記官が整理したものが65社(18.0%)でした。合併の割合は、全国の運送系法人(12.3%)より高くなっています。運送会社どうしの統合が、愛知県では比較的多く起きてきたと読めます。運送会社の閉じ方の全国的な傾向は、燃料高で破産した運送会社の記事でも集計しました。
飛島村は「法人の15社に1社が運送系」
コトブキ運輸の本社がある飛島村は、名古屋港の西側に物流倉庫や工場が並ぶ地域です。台帳で飛島村に本店を置く法人を数えると433社、そのうち活動中は394社でした。
そのうち社名に運送系の言葉を含む活動中の法人は26社で、6.6%にあたります。愛知県全体では活動中の法人のうち運送系は0.9%なので、飛島村は運送系の会社がおよそ7倍の密度で集まっている計算です。
一方で、飛島村の法人の閉鎖率は9.0%と、愛知県全体の15.0%より低い水準でした。港に近く荷物の多い場所にあっても、1社ごとの採算が守られるとは限りません。今回のニュースは、そのことを示す例だと思います。
荷主・働く人が確かめておきたいこと
1. 許可が今も有効か
トラックで他人の荷物を運ぶには、国土交通省の一般貨物自動車運送事業の許可が要ります。許可の調べ方は会社の許認可の調べ方、引越し会社を例にした見方は引越し業者の許可の記事に書きました。
2. 運賃の見直しを相談されているか
燃料費や人件費が上がっているのに、何年も運賃の相談がない取引先は注意が要ります。2024年4月からはトラック運転手の時間外労働に年960時間の上限がかかり、運べる量を増やして吸収するやり方も取りにくくなりました。値上げの相談は、取引先が健全に続けようとしている合図でもあります。
3. 1社に頼りすぎていないか
小さな運送会社が止まると、その日から荷物が動かなくなります。北海道の八潮運輸の会社更生の記事でも書いたとおり、代わりに運べる会社を平時から1社持っておくことが、荷主にできるいちばん現実的な備えです。
よくある質問
Q. 破産申請の準備中なのに、なぜ台帳は「活動中」なのですか。
台帳の元データは登記の情報です。事業を止めても、破産手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは「閉鎖」になりません。報道と台帳の表示にずれがあるのは、この時間差のためです。
Q. 愛知県の運送系法人2,549社は、運送会社の全数ですか。
違います。社名に「運送」「運輸」「物流」「ロジ」のいずれかを含む法人だけを数えたものです。社名にその言葉がない運送会社は入っていません。逆に「ロジ」を含む社名には、運送をしていない会社も少し混ざります。
Q. 飛島村の法人の閉鎖率9.0%は、景気が良いという意味ですか。
そこまでは言えません。閉鎖率は登記の数から出したもので、売上や利益はわかりません。工場や倉庫の拠点として作られた会社が多く、長く続いている会社の割合が高い、ということまでです。
Q. この会社で働いていた人の未払い給与はどうなりますか。
会社が破産した場合、国の未払賃金立替払制度で、未払い賃金の一部が立て替えられることがあります。対象や金額には条件があるので、最寄りの労働基準監督署に確かめてください。
まとめ
- 愛知県飛島村の有限会社コトブキ運輸が、2026年9月30日までに事業を停止し、自己破産申請の準備に入った(負債約2億円)
- 1982年創業、東海3県で郵便貨物や冷蔵食品などを運んでいた。コスト高を運賃に転嫁しきれず、タイヤ販売でも補えなかったと報じられている
- 台帳ではまだ「活動中」。照合は社名でなく法人番号で
- 愛知県の運送系法人は2,549社、閉鎖率は14.2%。閉じ方に占める合併の割合は18.3%で全国より高い
- 飛島村は活動中の法人の6.6%が運送系で、県平均の約7倍
運送会社の苦しさは、荷主から見えにくいところで進みます。許可が有効か、運賃の相談があるか、1社に頼りすぎていないか。この3つを確かめておくことが、今回のニュースからいちばん実用的に引き出せる教訓だと思います。
※この記事の台帳の数字は、国税庁の法人番号公表サイトのデータをもとにしょくばログが集計したものです(2026年10月5日時点)。