✍ 古家あきら | 2026-10-07 更新
軽貨物(黒ナンバー)の届出を調べる方法 — 一般貨物の「許可」との違いと、会社のサイト69社のうち届出に触れていたのは2社(DB実測)
先に結論です。軽貨物(黒ナンバー)の運送は、国の「許可」ではなく、運輸支局への「届出」で始められる事業です。 トラックを使う一般貨物自動車運送事業が許可制なのとは、入口の重さがまったく違います。
- 根拠の条文:貨物自動車運送事業法36条1項。営業所の名称・位置、使う車の概要などを国土交通大臣に届け出ます(窓口は各地の運輸支局)
- 届出をせずに営業すると罰則:同法75条で100万円以下の罰金。一般貨物を許可なく営むと70条で3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(または併科)です
- 2025年4月から安全対策が義務に:四輪の軽貨物の事業者は、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選び、届け出なければなりません(36条の2)。それより前に届出をした事業者は2027年3月まで猶予があります
- 外から一覧で確かめる方法は見当たらない:国の届出事業者を一括で検索できる公開の仕組みは、確認した範囲では見つかりませんでした。確かめるには、相手に届出の控えや安全管理者のことを聞くのが現実的です
- 会社のサイトにはほとんど書かれていない:しょくばログが保存している会社サイト31,159社のうち、軽貨物を事業として掲げる会社は69社。そのうち自社の届出に触れていたのは2社(2.9%)でした
しょくばログという会社データベースを運営していると、配送の求人や「軽貨物で独立開業」という募集の会社を調べに来る人を多く見かけます。トラックの運送会社なら「関自貨第◯号」のような許可番号をサイトに載せていることが多いのですが、軽貨物の会社は番号らしきものがほとんど見当たりません。それは隠しているからではなく、もともと許可番号が無い制度だからです。この記事では、その仕組みと、届出を確かめる方法を整理します。
軽貨物の届出とは:許可ではなく届出で始められる
条文に書かれていること
貨物自動車運送事業法は、トラックなどで他人の荷物を有償で運ぶ事業を、いくつかに分けています。軽自動車(と二輪車)で運ぶ事業が「貨物軽自動車運送事業」で、36条1項はこう定めています。
「貨物軽自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、営業所の名称及び位置、事業用自動車の概要その他の事項を国土交通大臣に届け出なければならない。」 (出典:貨物自動車運送事業法36条1項、e-Gov法令検索で2026年10月7日に確認)
届け出た人のことを、法律は「貨物軽自動車運送事業者」と呼びます。届け出た内容を変えるとき、事業をやめたときも届出が要ります(36条1項後段・3項)。法人が合併で消えたときは、30日以内に役員だった人が届け出ることになっています(36条4項)。
一般貨物(トラック)の「許可」との違い
- 一般貨物自動車運送事業:普通トラックなどで運ぶ。始めるには国土交通大臣の許可(3条)。許可なく営むと3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(70条)。「◯自貨第◯号」などの許可番号がある
- 貨物軽自動車運送事業:軽自動車・二輪車で運ぶ。始めるには国土交通大臣への届出(36条)。届出なく営むと100万円以下の罰金(75条)。許可番号はない
許可は「国が審査して認める」もの、届出は「決められた事項を知らせる」ものです。許可・認可・届出の違いそのものは 会社の許認可を調べる方法 で整理しています。
届出制だからといって、ルールが無いわけではありません。36条2項で、輸送の安全に関する規定など、一般貨物向けの規定の一部が軽貨物の事業者にも準用されています。事業の停止を命じる処分(33条の準用)もあります。ただし、許可が無い以上、「許可の取消し」はありません。
黒ナンバーは何を示すか
事業用の軽自動車には、黒地に黄色い文字のナンバー(いわゆる黒ナンバー)が付きます。自家用の軽自動車(黄色地に黒文字)とは見た目で区別できます。届出をしたうえで事業用として登録するので、黒ナンバーの車で運んでいることは、少なくともその車について届出の手続きを経ている目安になります。
ただし、ナンバーから分かるのは「その車が事業用として登録されている」ことまでです。運んでいる人が、その車の届出をした事業者本人なのか、名義を借りているだけなのかは、ナンバーだけでは分かりません。
2025年4月から増えた義務:貨物軽自動車安全管理者
なぜ義務が増えたか
国土交通省が2023年12月の「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」で示した資料によると、事業用貨物自動車のうち軽貨物の死亡・重傷事故は、2016年(平成28年)の199件から2022年(令和4年)の403件へ、102.5%増えていました。軽貨物以外は同じ期間に1,318件から959件へ27.2%減っています。保有台数1万台あたりで見ても、軽貨物は9.1件から13.4件に増えていました。 (出典:国土交通省「第3回 貨物軽自動車運送事業適正化協議会」配布資料、元データは交通事故総合分析センター「事業用自動車の交通事故統計」)
同じ資料には、首都圏・近畿圏の貨物軽自動車運送事業者の中から個人事業主を無作為に選んで行ったWebアンケートの結果も載っています。案内を送った先の2割弱は、住所不明などで届かなかったとされています。届出の住所に連絡がつかない事業者が一定数いる、ということです。
何が義務になったか
2024年の法改正(令和6年法律第23号)で、2025年4月から次のことが義務になりました。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任と届出:四輪以上の軽自動車で運ぶ事業者は、届出のあと速やかに、営業所ごとに1人選びます。選ぶ人は登録講習機関の講習を2年以内に修了している必要があり、選んだら運輸支局に届け出ます(36条の2第1項・2項)。選んだあとも2年以内ごとに定期講習を受けさせます(同3項)
- 事故の記録と報告:事故が起きたら内容を記録して3年間保存し、重大な事故は国土交通大臣に報告します
- 初めて運転する人への指導と適性診断
二輪(バイク便)は安全管理者の対象外です。2025年3月末までに届出をしていた事業者は、安全管理者の選任が2027年3月まで、初任運転者への指導と適性診断が2028年3月まで猶予されています。 (出典:国土交通省 物流・自動車局 安全政策課「貨物軽自動車運送事業に関する安全対策について」、貨物自動車運送事業法36条の2)
つまり、2025年4月以降に始めた四輪の軽貨物の事業者には、もう安全管理者がいるはずです。猶予のある古い事業者も、2027年3月までには選ぶことになります。
事業者はどのくらいいるか:九州だけで2万1,157者
全国の最新の事業者数は、国土交通省の公開資料からは確かめられませんでした。地方ごとの数字として、九州運輸局の資料では、2024年度末(2025年3月末)の九州管内の事業者数が次のとおりです。
- 軽:21,157事業者・34,536両(前年度末は19,208事業者・31,750両。1年で1,949事業者、10.1%増)
- 一般・特定:7,873事業者・155,058両
九州だけで、軽貨物の事業者はトラックの事業者の約2.7倍います。1事業者あたりの車は平均1.6両ほどで、1台で営む個人事業主が多い業態だと分かります。 (出典:九州運輸局「トラック事業の現況」。管外に主たる事務所があり、管内に営業所を持つ事業者も含む)
事業者が多く、1台から始められ、毎年増えている。そのぶん、外から一社ずつ様子をつかむのは難しい業態です。
会社のサイトは何を書いているか:69社のデータ
しょくばログは、法人番号に結びつけて会社の公式サイトを保存しています。そのうち文字化けなく読めた31,159社を対象に、軽貨物について何を書いているかを数えました。
- 「軽貨物」「黒ナンバー」「貨物軽自動車運送」「軽運送」のどれかの語がある会社:100社
- そのうち軽貨物を事業として掲げている会社(「軽貨物運送」「軽貨物配送」「軽運送」など):69社
届出に触れていたのは2社
69社のサイトで、届出や安全対策について書いている割合は次のとおりです。
- 軽貨物の届出か、その番号に触れている:5社(7.2%)
- うち、自社が届出をしていると読める:2社(2.9%)
- 貨物軽自動車安全管理者:0社(0%)
- 一般貨物(トラック)にも触れている:44社(63.8%)
- 一般貨物などの許可番号らしき記載:13社(18.8%)
- Gマーク・安全性優良事業所:17社(24.6%)
- 業務委託:8社(11.6%)
- 届出・番号・一般貨物・許可・安全管理者のどれも無い:23社(33.3%)
機械で拾った5社を目で確かめると、自社の届出を書いていたのは2社でした。1社は会社概要の許認可の欄に「貨物軽自動車運送事業」と運輸支局の番号を並べ、もう1社は沿革に「貨物軽自動車運送事業届出」と年月を書いていました。残りの3社は、開業の手順として「軽貨物運送業の届け出」を説明していたり、よくある質問で届出書の提出を案内していたり、届出の手続きを代わりに行う業務として紹介していたりで、自社の届出の記載ではありませんでした。
「貨物軽自動車安全管理者」に触れているサイトは0社でした。義務になってからまだ1年半ほどで、猶予期間中の事業者もいるので、書いていないこと自体を問題とは言えません。ただ、サイトを見ても安全管理者の有無は分からない、ということは押さえておいてください。
軽貨物を掲げているのはトラックの会社が中心
69社のうち44社(63.8%)は一般貨物にも触れていました。業種(日本標準産業分類)で見ると、運輸業(H)が42社(60.9%)、分類不能(T)が19社です。法人の種類は株式会社が67社(97.1%)。所在地は東京都17社、大阪府10社、埼玉県6社、千葉県5社の順でした。
つまり、サイトを持って軽貨物を掲げている会社の多くは、トラックの運送もする会社です。軽貨物だけで営む小さな事業者は、そもそも自社サイトを持たないことが多いと考えられます。会社のサイトでの確認には限界がある、ということでもあります。なお、Gマークは一般貨物の事業所が受ける認定で、軽貨物の事業には関係しません。詳しくは 運送会社のGマークとは で書いています。
社名に「軽貨物」が入る会社は有限会社が多い
社名から見るとどうでしょうか。しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表サイトのデータ)で、社名に「軽貨物」「軽運送」「軽急便」のどれかを含む法人を数えると231社でした。
- 登記上の閉鎖:31社(13.4%。台帳全体の13.2%とほぼ同じ)
- 現存200社の内訳:有限会社123社(61.5%)、株式会社45社(22.5%)、その他の設立登記法人19社、合同会社12社
- 業種:分類不能(T)106社、運輸業(H)92社
- 所在地:東京都22社、大阪府17社、福岡県16社、北海道16社、神奈川県12社、愛知県11社
台帳全体の現存法人で有限会社が占める割合は28.4%なので、その2倍以上です。有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなった形なので、社名に「軽貨物」と付く会社には、それより前からある会社が多いと読めます。一方、近年の軽貨物の事業者の多くは個人事業主で、法人番号を持たないため、この台帳には出てきません。
社名に「軽貨物」が入る会社の倒産の例と、2025年からの安全対策は 四国軽貨物の破産と、社名に「軽貨物」が入る法人の実態 でも取り上げています(集計の語の範囲が違うので、社数は一致しません)。
軽貨物の届出を確かめる手順
届出の一覧を外から一括で引く方法が見当たらない以上、確かめ方は「相手に聞く」「書類で見る」が中心になります。
1. 法人か個人かを確かめる:法人なら、国税庁の法人番号公表サイトで社名と所在地を照合します。個人事業主は法人番号を持たないので、屋号と本人の氏名、住所を確認します。見分け方は 個人事業主と法人の見分け方 にまとめています 2. 届出の控えを見せてもらう:運輸支局に出した「貨物軽自動車運送事業経営届出書」の控えや、受理の記載があるものです。仕事を頼む側・委託を受ける側なら、聞いて失礼な話ではありません 3. 使っている車が黒ナンバーか:事業用の軽自動車には黒ナンバーが付きます。自家用(黄色ナンバー)の車で有償の運送をしていれば、届出の範囲から外れている可能性があります 4. 貨物軽自動車安全管理者を聞く:四輪の軽貨物で、2025年4月以降に始めた事業者なら選任と届出が要ります。それより前からの事業者も2027年3月までに選びます。誰が安全管理者か、講習を受けているかを聞けば、制度を理解しているかが見えます 5. 一般貨物の許可と混同していないか:トラックも使う会社なら、一般貨物の許可番号は別にあります。「軽貨物の許可を取った」という言い方は、制度の上では正確ではありません
業種の分類から会社の本業を確かめる方法は 会社の業種を調べる方法、従業員の少ない会社を見るときの考え方は 社員数が少ない会社は危ないのか で書いています。
「軽貨物で独立開業」の募集を見るとき
軽貨物の求人には、雇用ではなく業務委託で、自分が個人事業主として届出をする前提のものがあります。その場合、届出をするのは募集している会社ではなく、あなた自身です。黒ナンバーの車をどう用意するか(購入・リース・会社からの貸与)、届出の手続きを誰がするか、2025年4月からの安全管理者の講習を誰が受けるのかを、契約の前に確かめてください。
今回の69社でも、業務委託に触れていた8社のうち6社は、自社の届出や安全管理者のことは書いていませんでした。募集の説明だけでは、運ぶ側の義務がどこまで説明されているかは分かりません。
よくある質問
軽貨物の運送を始めるのに許可は要りますか?
要りません。貨物自動車運送事業法36条1項により、運輸支局を通じて国土交通大臣に届け出れば始められます。トラックを使う一般貨物自動車運送事業は3条の許可が要るので、そこが大きな違いです。
届出をせずに軽貨物で運送するとどうなりますか?
貨物自動車運送事業法75条で、100万円以下の罰金の対象です。一般貨物を許可なく営んだ場合(70条:3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、または併科)より軽いものの、罰則はあります。
軽貨物の事業者を一覧で調べられるサイトはありますか?
国の届出事業者を一括で検索できる公開の仕組みは、確認した範囲では見つかりませんでした。運輸局が公表しているのは事業者数などの統計です。個別の事業者については、届出の控えや黒ナンバーの車、安全管理者のことを本人に確かめるのが現実的です。
貨物軽自動車安全管理者は、いつまでに選べばよいですか?
2025年4月以降に届出をした四輪の軽貨物の事業者は、届出のあと速やかに選び、届け出ます。2025年3月末までに届出をしていた事業者は、2027年3月までに選べばよいとされています。二輪(バイク便)は対象外です。
会社のサイトに届出のことが書かれていないのは問題ですか?
問題とは言えません。サイトに届出を載せる義務は確認できませんでした。しょくばログの集計でも、軽貨物を掲げる69社のうち自社の届出に触れていたのは2社だけです。書いていないことより、聞いたときに説明できるかどうかで判断してください。
データについて
- 会社サイトの集計:しょくばログが法人番号に結びつけて保存している会社の公式サイトのうち、文字化けなく読めた31,159社が対象(2026年10月7日集計)。「軽貨物運送」「軽貨物配送」「軽運送」「貨物軽自動車運送事業」などの語で事業として掲げる69社を抽出し、届出・番号・安全管理者などの語を数えました。届出か番号に触れた5社は目で確かめています。保存しているのはトップページなど一部のページで、サイト全体ではありません
- 社名の集計:国税庁の法人番号公表サイトのデータ(約579万法人)から、社名に「軽貨物」「軽運送」「軽急便」を含む法人を数えました。閉鎖は登記記録の閉鎖の有無で判定しています
- 条文:貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)を e-Gov 法令検索(法令API)で2026年10月7日に確認しました(3条・33条・36条・36条の2・70条・75条)
- 国の資料:国土交通省「第3回 貨物軽自動車運送事業適正化協議会」配布資料(2023年12月26日)、国土交通省 物流・自動車局 安全政策課「貨物軽自動車運送事業に関する安全対策について」、九州運輸局「トラック事業の現況」(2024年度末)
- 個別の会社名は出していません。この記事は制度の仕組みとデータの紹介で、特定の事業者の届出の有無を判断するものではありません