✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

隠れ優良企業の探し方 — 知名度ではなく数字で絞る3つの条件(しょくばらぼ掲載の非上場14万3,550社のうち、働き方の4項目を全部出していたのは2,075社。条件をかけると1,224社が残った)

先に結論です。「隠れ優良企業」には決まった定義がありません。 誰かが認定した一覧があるわけではないので、探すときは「自分にとっての優良」を外から確かめられる数字で先に決め、その条件で絞り込むのがいちばん確実です。

うちの台帳で試してみました。厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に載っている、活動中で非上場の会社は14万3,550社。このうち、設立年・平均勤続年数・残業時間・有給休暇の取得日数の4項目をすべて公開していたのは2,075社(1.4%)でした。そこへ「設立20年以上」「平均勤続10年以上」「残業は月20時間以下」「有給は年10日以上」をかけると、1,224社が残りました。

数字を見て分かるのは、「条件に合わない会社が多い」ことより、「そもそも数字を出している会社が少ない」ことです。ここを押さえておくと、探し方の組み立てが変わります。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「名前は知られていないけれど、いい会社を探したい。どうやって見つければいいですか」という相談をよく受けます。就活でも転職でも、知名度のある会社に応募が集中するのは毎年同じです。その外側で働きやすい会社を探したい、という気持ちはよく分かります。ただ、「隠れ優良企業ランキング」のような記事を眺めても、自分に合うかどうかは分かりません。この記事では、条件を自分で決めて、自分で絞る方法を手順にしてみます。

「隠れ優良企業」に決まった定義はない

まず前提です。「隠れ優良企業」は法律や制度で決まった言葉ではありません。就活サイトや書籍によって、だいたい次のような意味で使われています。

後半の「良い面」が人によって違うのがポイントです。給料の高さを重視する人もいれば、残業の少なさ、転勤のなさ、地元で働けることを重視する人もいます。誰かの言う「優良」が、あなたにとっての「優良」とは限りません。

もうひとつ大事なのは、外から確かめられることと、確かめられないことがあるという点です。非上場の会社の売上や利益、給与水準は、多くの場合、外からは分かりません。上場企業のような開示義務がないからです。一方で、設立年、従業員数、平均勤続年数、残業時間、有給休暇の取得状況などは、会社が公開していれば無料で見られます。

そこでこの記事では、「優良かどうか」を判定するのではなく、外から確かめられる数字で条件を決めて、候補を絞るという考え方をとります。

条件を決める:外から確かめられる3つの軸

条件は、あれこれ足すより、3つ程度に絞ったほうが使いやすくなります。うちで試したのは次の3つです。

1. 続いている — 設立から20年以上

会社が長く続いていることは、少なくとも何度かの景気の波を越えてきたことを意味します。もちろん、古ければ良いわけではありませんし、新しい会社にも良い会社はたくさんあります。ただ「すぐになくなる心配は小さいか」を外から見る手がかりとしては使えます。設立年の目安は会社の設立年から見る「老舗」「中堅」「新興」の目安にまとめています。

今回は区切りとして「2006年以前の設立(20年以上)」を使いました。業種によって年数の感覚は違うので、自分の志望業界に合わせて変えてかまいません。

2. 辞めにくい — 平均勤続年数10年以上

平均勤続年数は、社員がどれくらい長く勤めているかの目安です。長いほど「辞める人が少ない」傾向があると読めます。ただし、新卒採用を増やしたばかりの会社では若手が多く、平均が短くなることもあります。数字だけで決めつけず、業種ごとの水準と比べるのがおすすめです。業種別の水準は業種別の平均勤続年数で確認できます。

3. 働き方に無理がない — 残業は月20時間以下、有給は年10日以上

残業時間と有給休暇の取得日数は、日々の働き方に直結します。今回は「月平均の所定外労働時間が20時間以下」「有給休暇の平均取得日数が年10日以上」を区切りにしました。どちらも、会社が自分で公開している平均値です。数字の読み方は会社の残業時間・有給取得率の調べ方で詳しく書いています。

この3つは、どれも会社が公開していれば、誰でも無料で確かめられる数字です。ここが「知名度」や「評判」と違うところです。

うちのデータで実際に絞ってみた

ここからは、しょくばログの台帳で実際に数えた結果です。厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に会社が登録している情報を、国税庁の法人番号と突き合わせて使っています。

段階ごとに残った会社の数

いちばん大きく減っているのは、最初の「4項目をすべて公開しているか」の段階です。14万社から2,000社へ、99%近くがここで落ちています。条件そのものでの減り方は、それに比べるとゆるやかです。数字を出している2,075社の中で見ると、半分を超える59.0%が3つの条件をすべて満たしていました。

ちなみに、数字を公開している2,075社の中央値は、平均勤続年数が11.9年、残業が月7.5時間、有給の取得が年12.9日でした。公開している会社は、もともと働き方の数字が比較的整っている傾向が見えます。

条件を少し厳しくして「平均勤続15年以上・残業月10時間以下」にすると、349社まで絞れました(2,075社の16.8%)。条件の強さを変えると、候補の数がどれくらい動くかが分かります。

残った1,224社はどんな会社か

規模(しょくばらぼに登録された従業員数)で見ると、次のとおりです。

ほとんどが300人未満の中小企業でした。規模の調べ方は会社の規模の調べ方に書いています。

うちの台帳の業種分類で見ると、建設業が43.8%、製造業が23.9%と、この2つで7割近くを占めました。数字を公開している2,075社の段階でも、建設業36.1%・製造業19.9%と多く、条件をかけるとさらに比率が上がっています。

都道府県では、北海道107社、新潟県87社、山形県61社、東京都55社、佐賀県49社の順でした。2,075社の段階では東京都が204社でいちばん多かったので、条件をかけると地方の会社の比率が上がる形です。地元で探す人にとっては、選択肢が意外とあるという見方もできます。

また、しょくばらぼに採用ページのURLを登録している会社は、1,224社のうち523社(42.7%)でした。数字が良くても、いま募集しているとは限らない点は覚えておいてください。

数字を出していない会社をどう扱うか

ここで注意したいのは、4項目を公開していない14万社の中にも、働きやすい会社はたくさんあるはずだということです。公開していないのは、単に登録の手間をかけていない、項目の入力を一部しかしていない、という理由のことも多いでしょう。公開していない=悪い会社、ではありません。

数字が見つからない会社は、次の順で確かめるのが現実的です。

1. 会社の公式サイトの採用ページ:平均勤続年数や残業時間を自分で書いている会社もあります 2. 求人票:残業時間の目安や休日数は求人票にも書かれます。読み方は求人票の見方にまとめています 3. 面接・面談で聞く:「平均の勤続年数」「月の残業時間」「有給の取得日数」は、聞いて失礼な質問ではありません。数字で答えてくれるかどうか自体が判断材料になります 4. 認定マーク:くるみん・えるぼし・ユースエールなどの認定は、一定の基準を満たした会社に出ます。意味は企業の認定マークの意味で整理しています

逆に、数字を公開している会社は、それだけで「外から見られることを前提にしている」会社だと言えます。今回の1,224社は、隠れ優良企業の一覧ではありません。「外から確かめやすい会社の候補」として見るのが正確です。

自分で絞るときの手順

うちで試した流れを、自分で再現できる形にまとめます。

1. 条件を3つ決める:続いている(設立年)・辞めにくい(勤続年数)・働き方(残業・有給)など、自分が重視する軸を数字にします。区切りの数字は自分で決めてかまいません 2. しょくばらぼで検索する:厚生労働省の職場情報総合サイトでは、業種・地域などで会社を探し、公開されている数字を見られます 3. 会社を特定する:社名が似た会社は多いので、法人番号で本人確認をします。法人番号の調べ方は法人番号の調べ方にあります 4. 公式サイトと求人票で裏を取る:数字の時点(何年度の値か)と、いま募集しているかを確認します 5. 気になる点は面接で聞く:数字の背景(勤続年数が長い理由、残業が少ない時期かどうか)を聞きます

企業研究全体の進め方は転職の企業研究のやり方に、避けたい会社のサインはブラック企業の見分け方にまとめています。条件で絞る作業と、サインを見る作業は、両方やると精度が上がります。

気をつけたいこと

よくある質問

隠れ優良企業の一覧はどこかにありますか?

公的に認定された「隠れ優良企業の一覧」はありません。就活サイトや書籍で紹介されている一覧は、それぞれの基準で選んだものです。参考にはなりますが、自分の重視する条件で選んだものではない点に注意してください。

平均勤続年数が短い会社はやめたほうがいいですか?

短いだけで判断しないほうがよいです。創業が新しい会社や、新卒採用を増やしている会社では、若い社員が多く平均が短くなります。業種ごとの水準と比べて、極端に短いかどうかを見るのが目安です。

しょくばらぼに載っていない会社は調べられませんか?

調べられます。公式サイトの採用ページ、求人票、面接での質問で、同じ数字を確かめられることがあります。うちのデータでも、4項目を全部公開している会社は掲載社のわずか1.4%でした。載っていない、あるいは一部しか出していない会社のほうが普通です。

上場していない会社に就職して大丈夫ですか?

上場しているかどうかは、会社の良し悪しとは別の話です。日本の会社の大半は非上場です。不安なら、設立年・従業員数・事業内容・採用が続いているかなど、外から確かめられることを一つずつ確認するのがおすすめです。

条件はどれくらい厳しくすればいいですか?

最初はゆるめをおすすめします。今回の例では「平均勤続10年以上・残業20時間以下」で1,224社、「15年以上・10時間以下」にすると349社でした。候補を見ながら、自分にとって譲れない条件だけを締めていくと、選択肢を減らしすぎずに済みます。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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