✍ 古家あきら | 2026-10-08 更新
広島県の奨学金返済支援が243社に、9か月で19%増──求人で「奨学金返済支援あり」はどれだけ珍しいのか。しょくばログの会社サイト31,159社では2.37%、建設は6.08%
先に結論です。広島県で、従業員の奨学金返済を支援する制度を入れた企業・団体が243社になったと報じられました。2025年12月末の204社から9か月で39社、19.1%の増加です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、求人ページの「福利厚生」の欄はかなり似通って見えます。社会保険完備、交通費支給、退職金。その中で「奨学金返済支援」はまだ珍しい項目です。しょくばログが保存している会社サイト31,159社の本文を数えると、奨学金の返済支援に触れていたのは737社、2.37%でした。
この記事では、報道と公的機関の発表で確認できる数字を並べたうえで、しょくばログの数字から「どんな会社が書いているか」を見ていきます。最後に、求人でこの項目を見つけた応募者が確かめたいことを4つにまとめました。
出典:【広島】奨学金返済支援243社、9カ月で19%増 製造・建設108社、若手獲得競争が導入を後押し(JC-NET・2026年10月7日)
報道と公的機関の発表で確認できる数字
広島県の数字
報道に書かれている内容を、そのまま並べます。
- 登録数:243社・団体(2026年9月28日時点)。広島県の「奨学金返済支援制度導入企業データバンク」の登録数
- 前回:204社(2025年12月末時点)。9か月で39社、19.1%増
- 業種の内訳:製造業60社(24.7%)、建設業48社(19.8%)、卸売・小売25社(10.3%)。製造と建設で108社、全体の4割強
- 少ない業種:宿泊・飲食サービス3社(1.2%)、不動産・物品賃貸3社(1.2%)
- 導入の理由(企業調査・97社回答):若手従業員の獲得競争の激化が68.0%、賃金以外の待遇改善が必要が53.6%
- 従業員調査(利用者182人):企業選びに影響があったと答えた人が94.1%
県の補助金「Go!ひろしま奨学金返済支援制度導入企業応援補助金」は、2025年度に補助率の引き上げと補助上限額の撤廃が行われたと県のページに書かれています。制度の案内は広島県のデータバンクのページにあります。
全国の数字
日本学生支援機構(JASSO)の「代理返還」は、会社が社員に代わって機構へ直接返還する仕組みです。中小企業基盤整備機構のJ-Net21によると、2026年1月末時点で4,614社が導入し、24,086人が支援を受けています。会社は法人税と社会保険料、社員は所得税と社会保険料で優遇を受けられる可能性があると説明されています。
出典:支援情報「奨学金の代理返還支援」(J-Net21・中小企業基盤整備機構)
しょくばログの会社サイト31,159社で数えると
しょくばログが保存している会社サイト(主に採用ページ)31,159社の本文を、言葉の出現で数えました。文字化けの多いページは除いています。
- 奨学金の返済・返還を支援する記載:737社(2.37%)
- うち「代理返還」という言葉まで書いている会社:75社(0.24%)
- 参考:資格取得支援:4,727社(15.17%)
- 参考:住宅手当・家賃補助・借上社宅:3,836社(12.31%)
- 参考:退職金:6,314社(20.26%)
「福利厚生」という言葉があるページ13,363社に絞っても、奨学金の返済支援に触れているのは4.59%です。資格取得支援や住宅手当と比べると、まだ5〜6分の1ほどの出現率にとどまります。
注意したいのは、これは「サイトに書いている会社」の割合だということです。制度があってもサイトに書いていない会社はありますし、逆に過去に書いた記載が残っているだけの会社もあるはずです。導入している会社の割合そのものではありません。
業種では建設が6.08%で目立つ
しょくばログの業種推定で分けると、差がはっきり出ました。
- 建設業:3,489社中212社(6.08%)
- 学術研究・専門・技術サービス:1,406社中42社(2.99%)
- 製造業:6,600社中151社(2.29%)
- 医療・福祉:3,296社中66社(2.00%)
- 宿泊・飲食サービス:807社中4社(0.50%)
広島県の登録で製造と建設が多く、宿泊・飲食が3社にとどまっていたのと、向きは同じです。業種の推定は社名などからの機械的な分類なので、細かな誤差はあります。
都道府県では北海道が7.17%
サイトに書いている会社の割合を都道府県で見ると、件数の多い順で東京都108社(1.32%)、大阪府85社(2.82%)、北海道79社(7.17%)、兵庫県41社(3.25%)、愛知県39社(1.69%)、広島県34社(3.39%)でした。
北海道の割合が高い理由は、この数字だけでは分かりません。サイトを保存している会社の業種の偏りも影響していると考えられるので、ここでは「差がある」ことだけを書いておきます。
なぜ「書く会社」が増えているのか
広島県の企業調査で最も多かった理由は、若手の獲得競争でした。賃上げだけで大手と張り合うのが難しい中小企業にとって、奨学金の返済支援は「月々の手取りに近い形で効く待遇」として打ち出しやすい項目です。
人手が足りない業種ほど求人の書き方を工夫している、という傾向は、ほかの項目でも見てきました。有効求人倍率の動きは2026年8月の有効求人倍率の記事で、業種ごとの離職のしやすさは業種別の離職率の記事で書いています。
応募者が確かめたい4つのこと
1. 支援の形が「代理返還」か「手当」かを確かめる
会社が機構に直接払う代理返還と、給与に上乗せする手当とでは、税金や社会保険料の扱いが変わることがあります。求人票で分からなければ、面接で聞いてかまわない項目です。福利厚生全般の確かめ方は会社の福利厚生の調べ方にまとめました。
2. 上限額・期間・対象者を確かめる
「月◯円まで」「最長◯年」「入社◯年目から」「正社員のみ」といった条件が付いていることがあります。広島県の補助金も補助期間は最長3年度です。会社の負担がいつまで続くのかは、制度が続くかどうかにも関わります。
3. 途中で辞めたときの扱いを確かめる
支援を受けている途中で退職した場合に、支援がどうなるかは会社の規程によります。入社前に書面で条件を確認しておくと安心です。退職金など長く勤めることが前提の制度の見方は退職金制度の調べ方でも触れています。
4. 制度だけでなく、求人票全体と合わせて見る
奨学金の返済支援は良い待遇ですが、それだけで会社を選ぶのは早計です。給与・休日・試用期間など、求人票のほかの欄と合わせて読むことが大切です。見るべき欄の順番は求人票の見方で整理しています。
運営者として思うこと
会社サイトを毎日のように読んでいると、福利厚生の欄は「書かれていること」より「書かれていないこと」のほうが多いと感じます。奨学金の返済支援が2.37%というのは、制度が少ないというより、まだ書く会社が少ないという面もあるのかもしれません。
採用に悩む中小企業の側から見れば、243社という広島県の数字は「まだ書いている会社が少ないうちに書けば目に留まる」という意味にもなります。応募者の側から見れば、書いてある会社は採用に本気で取り組んでいる一つのサインとして受け取ってよいと思います。ただし、条件の細部まで確かめるのが前提です。
よくある質問
広島県で奨学金返済支援を導入している会社は何社ですか?
報道によると、広島県の「奨学金返済支援制度導入企業データバンク」の登録は、2026年9月28日時点で243社・団体です。2025年12月末の204社から19.1%増えています。
全国では何社が代理返還を導入していますか?
J-Net21によると、日本学生支援機構の代理返還は2026年1月末時点で4,614社が導入し、24,086人が支援を受けています。
求人で「奨学金返済支援あり」はどれくらい珍しいですか?
しょくばログが保存している会社サイト31,159社のうち、奨学金の返済支援に触れていたのは737社(2.37%)でした。資格取得支援(15.17%)や住宅手当・家賃補助(12.31%)と比べると少ない項目です。
どの業種で多いですか?
しょくばログの数字では建設業が6.08%と目立ち、宿泊・飲食サービスは0.50%でした。広島県の登録でも製造業と建設業が多く、宿泊・飲食は3社でした。
この記事の数字について
- 広島県の数字は、JC-NETの2026年10月7日の報道によります(2026年9月28日時点)
- 全国の代理返還の数字は、J-Net21の掲載内容によります(2026年1月末時点)
- 会社サイトの数字は、しょくばログが保存している会社サイト31,159社の本文を、2026年10月8日に言葉の出現で数えたものです(scripts/analyze_shogakukin_shien_hp_cache.py)。制度の有無ではなく、サイトに書いているかどうかの割合です