✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新

「まぼろしの豆腐」のひので家(日の出屋)が破産申請。売上13億円から5億円台へ──しょくばログDBで見る社名に「豆腐」を持つ法人459社

先に結論です。熊本県宇城市で豆腐や湯葉、油揚げを製造していた株式会社日の出屋(屋号「ひので家」)が、2026年10月2日に熊本地裁へ自己破産を申請しました。 帝国データバンクの情報を伝えた報道によると、負債は約4億7000万円、債権者は約130人です。

報道で挙げられている経緯は、原材料費などのコスト上昇分を価格に十分転嫁できずに赤字が続き、そこへ7月の熊本地震で本社工場が大きな被害を受けた、というものです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、食品の製造会社の倒産に「値上げが追いつかなかった」という説明がよく出てくることに気づきます。豆腐のような毎日の食卓に並ぶ商品は、値段を上げると売り場で選ばれにくくなります。この記事は日の出屋の経営を評価するものではありません。同じ構造を持つ会社と取引する人・働く人が、何を見ておけばよいかを台帳の数字とあわせて書きます。

出典:【倒産】高級志向の寄せ豆腐「まぼろしの豆腐」などで売上13億円超 原材料費の高騰などを価格転嫁できず債務超過 帝国データバンク(RKK熊本放送・2026年10月2日)

出典:熊本・宇城の豆腐製造「ひので家」が破産申請、負債4.7億円(不景気.com・2026年10月5日)

報道で確認できる事実

10年で売上は4割ほどの水準まで下がっています。そのうえで、震度7の地震で中核の工場が被害を受け、事業の再開は難しいと判断したと報じられています。

しょくばログの台帳で見ると

本人の会社は、まだ「活動中」と表示される

しょくばログの台帳では、宇城市豊野町の株式会社日の出屋(法人番号3330002023913)は、この記事を書いた時点で「活動中」の表示です。台帳の元になっている国税庁の法人番号公表サイトは、登記が閉鎖されたときに更新されます。破産を申請しても、手続きが終わって登記が閉じるまでは閉鎖の表示になりません。この見え方は会社の実在と倒産の確かめ方にまとめています。

「日の出屋」という社名の会社は全国に複数あります。屋号の「ひので家」と登記上の社名も違います。取引先を確かめるときは、社名ではなく法人番号で照合してください。

社名に「豆腐」を持つ法人459社、閉鎖率は26.4%

台帳で、社名に「豆腐」を含む法人を数えると、累計459社でした。そのうち活動中が338社、閉鎖が121社で、閉鎖率は26.4%です。台帳全体の閉鎖率13.3%の約2倍にあたります。

閉鎖121社の内訳は次のとおりです。

合併による閉鎖はほとんどなく、閉鎖の大半は会社をたたんだもの、または長く登記の動きがなく整理されたものです。再編で名前が消えたのではない、という点が他の業界と違います。

活動中の7割が有限会社

活動中338社の法人の種類は次のとおりでした。

有限会社は2006年以降は新しくつくれないため、有限会社が多い業界は、それより前から続く会社が多いことを示します。豆腐は家族で営む小さな製造所が多い業界だと、数字からも読み取れます。日の出屋は株式会社で、売上が10億円を超えた時期もある、この中では規模の大きい会社でした。

都道府県では熊本県が5番目

活動中338社の所在地を都道府県別に見ると、上位は東京都48社、神奈川県35社、千葉県31社、埼玉県18社、熊本県15社でした。熊本県は人口の多い首都圏の4都県に次ぐ5番目です。日の出屋が地元で大きな存在だったことと合わせると、熊本では豆腐づくりの会社が地域の食を支えてきたことがうかがえます。

取引先・働く人が確かめたいこと

1. 値上げを通せているかを見る

豆腐の原料の大豆、包装資材、電気代やガス代が上がっても、スーパーの特売の目玉になりやすい商品は値上げが難しいと言われます。取引先がメーカーなら、ここ数年で価格を改定したかどうかは大事な手がかりです。値上げしにくい業種の特徴は「値上げできない会社」は外からどこまで見えるかにまとめています。同じく日配品のもやしを製造していた会社の例はサイキ食品の破産で取り上げています。

2. 売上を「いちばん良かった年」と比べる

日の出屋の売上は、10年で約13億円から約5億円台に下がっていました。1年ごとの減り方は小さくても、長い期間で見ると大きく変わっていることがあります。取引先の数字は、直近の1年だけでなく、5年、10年の幅で見ておくと判断しやすくなります。

3. 拠点が1つに集中していないか

今回、とどめになったのは地震による本社工場の被害でした。生産拠点が1か所しかない会社は、災害や事故で一度に止まりやすくなります。同じ地震で熊本の工場閉鎖を決めた会社の例はフジデリカの熊本工場閉鎖にあります。仕入れ先が1社・1工場に頼っているなら、代わりの仕入れ先を考えておくと安心です。

4. 破産と民事再生の違いを押さえる

破産は会社をたたむ手続きで、事業は原則として止まります。民事再生は事業を続けながら立て直す手続きです。どちらかで、商品の供給や代金の支払いの見通しが変わります。違いは倒産の種類の違いで説明しています。

5. 働いていた人は、未払いの給与を確かめる

勤め先が破産した場合、未払いの給与や退職金は破産の手続きの中で扱われます。国の未払賃金立替払制度が使える場合もあり、窓口は最寄りの労働基準監督署です。詳しくは破産管財人や労働基準監督署に確かめてください。有限会社が多い業界で働く人は、有限会社に就職するのは不利なのかも参考になります。

よくある質問

Q. しょくばログで見ると、この会社はまだ「活動中」です。間違いですか。

間違いではありません。台帳の元データは登記の閉鎖で更新されるため、破産を申請しただけでは表示は変わりません。手続きが終わり登記が閉じた時点で、閉鎖と表示されます。

Q. 社名に「豆腐」がつく法人の閉鎖率26.4%は、豆腐屋が危ないということですか。

そうとは言い切れません。閉鎖の約3割は、長く登記の動きがない会社を登記官が整理したもので、いつ事業をやめたかまではわかりません。言えるのは、合併がほとんどなく、閉鎖の多くが会社をたたむ形で起きている、ということまでです。

Q. 社名に「豆腐」がない豆腐メーカーは数えていないのですか。

数えていません。今回の数字は、社名に「豆腐」という文字が入っている法人だけを集計したものです。日の出屋自身も社名に「豆腐」を含まないため、この459社には入っていません。業界全体の数ではない点に注意してください。

Q. 取引先の豆腐メーカーが破産したら、仕入れはどうなりますか。

一般的には、破産の手続きが始まると事業は止まり、商品の供給も止まります。日配品は在庫を持ちにくいため、代わりの仕入れ先を早めに探すことが大切です。代金の精算などは破産管財人が判断します。具体的な対応は、取引のある専門家に相談してください。

まとめ

値上げしにくい商品をつくる会社は、コストが上がった分を自分で抱え込みがちです。取引先を見るときは、値上げを通せているか、売上を長い幅で見てどうか、拠点が1か所に偏っていないか。この3つを確かめておくことが、今回のニュースからいちばん実用的に引き出せる教訓だと思います。

※この記事の台帳の数字は、国税庁の法人番号公表サイトのデータをもとにしょくばログが集計したものです(2026年10月5日時点)。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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