✍ 古家あきら | 2026-09-22 更新
CS-C(東証グロース)が特別損失と業績予想の下方修正を発表。売上は13.3%上振れの41億円、最終赤字は△69百万円から△303百万円へ — 2月に1.2億円で買った「資本金100万円・売上4.2億円・純資産マイナス」のラーメン店会社は、登記だけ見ても何も分からなかった
先に結論です。株式会社CS-C(東京都港区芝浦4-13-23、法人番号6011501017170、証券コード9258、東証グロース市場)は2026年9月18日、2026年9月期(2025年10月〜2026年9月)の連結業績予想を修正しました。売上高は前回予想3,626百万円から4,109百万円へ483百万円(13.3%)の上振れ、営業利益は△70百万円から△215百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は△69百万円から△303百万円へ、赤字が広がる見込みです。あわせて、2024年4月に始めたインバウンド向け飲食店・食体験予約サービス「JAPAN FOOD GUIDE」の新規店舗獲得を停止して事業を縮小し、減損損失78百万円を計上します。うちの会社データベース(国税庁法人番号公表サイト由来・約579万法人)で同社と、今年2月に孫会社化した株式会社ごっつ(東京都江東区亀戸)を引くと、登記から読めるのは「株式会社であること」「本店の住所」「法人番号」だけで、開示に出てくる「資本金100万円・売上高4億1,993万円・純資産△1,724万円・取得価額1億2,000万円」のどれひとつも、登記データには載っていません。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、上場企業の「業績予想の修正」は、非上場の中小企業を見るときのちょうどいい教材だと思うことがあります。上場していれば、赤字が広がる前に開示が出ます。買収した会社の売上や純資産まで数字で出ます。非上場なら、そのどれも出ません。今回はCS-Cの開示を題材に、「売上が増えているのに赤字が広がる」とはどういうことか、買収された小さな会社は登記だとどう見えるのか、新規事業の撤退はどのくらいの時間で決まるのかを、一次資料と登記データで整理します。
一次資料で確認できること — 2026年9月18日の開示
まず、事実は会社自身の適時開示で押さえます。
出典:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260918538568.pdf (株式会社CS-C・2026年9月18日・「特別損失の計上(連結・個別)及び2026年9月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」)
| 項目 | 内容 | |---|---| | 商号 | 株式会社CS-C(代表取締役社長 椙原健) | | 市場 | 東証グロース市場(証券コード9258) | | 対象期 | 2026年9月期(2025年10月1日〜2026年9月30日) | | 特別損失①(連結・個別) | 「JAPAN FOOD GUIDE」に係る減損損失 78百万円 | | 特別損失②(個別のみ) | 連結子会社 株式会社CS-Rへの貸付金に係る貸倒引当金繰入額 80百万円 | | 特別損失③(個別のみ) | 株式会社CS-Rの株式に係る関係会社株式評価損 60百万円 | | ②③の連結への影響 | 連結決算上は消去されるため、連結業績への影響なし(合計140百万円は個別決算のみ) |
「JAPAN FOOD GUIDE」については、開示にこう書かれています。2024年4月15日に提供を開始したインバウンド向け飲食店・食体験予約サービスで、「現時点において収益化に至っていないことから、今後の収益性を踏まえ、新規店舗の積極的な獲得活動を停止し、既存店舗の運営を継続する形へ事業規模を縮小する」。その結果、この事業の無形固定資産の回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、第4四半期に減損損失78百万円を計上する、という流れです。
売上は13.3%上振れ、赤字は4倍超 — 何が起きたのか
業績予想の修正表を、開示の数字そのままで並べます(連結・百万円)。
| | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1株当たり当期純利益 | |---|---|---|---|---|---| | 前回発表予想(2025年11月14日) | 3,626 | △70 | △68 | △69 | △10.40円 | | 今回修正予想 | 4,109 | △215 | △205 | △303 | △45.53円 | | 増減額 | +483 | △145 | △137 | △234 | △35.13円 | | 増減率 | +13.3% | - | - | - | - | | (参考)前期実績 2025年9月期 | 3,178 | △76 | △72 | △102 | △15.39円 |
売上が増えた理由と、利益が減った理由は、開示で分けて書かれています。
- 売上が増えた理由:M&Aで株式会社ごっつとperzik株式会社を連結子会社化したことによる売上の増加と、マーケティング支援サービスが堅調に拡大したこと。
- 利益が減った理由:リアル店舗事業(飲食店運営)の新規出店に係る初期投資とM&Aに伴う一過性費用で70百万円、マーケティング支援事業で原価率の高いサービスの売上が増えたことによる売上原価の増加で30百万円。これに減損損失78百万円と法人税等の影響が乗って、最終損益は△303百万円。
つまり「買収で売上は乗ったが、買収の費用・出店の費用・原価率の悪化・新規事業の減損が、それ以上に乗った」という構図です。前期実績3,178百万円から今期4,109百万円へ、売上は29%増える見込みなのに、最終赤字は△102百万円から△303百万円へ広がります。
うちの視点で言うと、これは「増収」の見出しだけで会社を判断してはいけない、という典型です。応募者も取引先も、非上場の会社については「売上が伸びている」という言葉しか聞けないことが多い。伸びている売上の中身が、買収で乗った分なのか、原価率の高い売上なのかは、上場企業ですら開示を読まないと分かりません。
2月に1.2億円で買った「ごっつ」は、登記だとどう見えるか
今回の売上増の一因になった株式会社ごっつは、2026年2月2日の開示で孫会社化が発表されています。開示に載っている対象会社の概要と、うちのデータベースの登記データを並べます。
出典:https://ir.s-cs-c.com/wp-content/uploads/2026/02/1772160453.pdf (株式会社CS-C・2026年2月2日・「株式会社ごっつの株式取得(孫会社化)に関するお知らせ」)
| 項目 | 開示(2026年2月2日) | 登記データ(しょくばログ) | |---|---|---| | 名称 | 株式会社ごっつ | 株式会社ごっつ(法人番号5010601040521) | | 所在地 | 東京都江東区亀戸六丁目59番12号酒部ビル | 東京都江東区亀戸6丁目59番12号酒部ビル | | 事業内容 | 飲食店の運営など(背脂系ラーメン店) | 載っていない(gBizINFOの業種は「宿泊業、飲食サービス業」、従業員数10人) | | 資本金 | 1,000千円 | 載っていない | | 設立 | 2010年12月24日 | 載っていない | | 売上高(2024年12月期) | 419,938千円 | 載っていない | | 営業利益(同) | △17,555千円 | 載っていない | | 純資産(同) | △17,244千円 | 載っていない | | 総資産(同) | 170,789千円 | 載っていない | | 取得価格 | 株式120百万円+取得関連費用33百万円=概算153百万円 | 載っていない |
開示によると、ごっつの売上は2022年12月期340,903千円、2023年12月期397,653千円、2024年12月期419,938千円と3期連続で伸びていますが、営業利益は3期とも赤字、純資産は2024年12月期にマイナス(債務超過)です。それでもCS-Cは「好立地な店舗展開と背脂系ラーメンという明確なポジション」「自社製造やデリバリー等による販売チャネルの多様化」を評価し、類似会社比較法等で120百万円の取得価格を決めた、と開示に書いています。
ここで言いたいのは、ごっつの評価ではありません。資本金100万円の株式会社が、年商4億円で、債務超過で、1.2億円で買われる。この4つの数字は全部同じ会社のものなのに、登記データから読めるのはゼロです。うちのデータベースで資本金が公的データ(gBizINFO)に載っている法人は全国で4,861社、579万法人の0.08%にすぎません。「資本金が少ない会社は危ないのか」で書いたとおり、資本金は会社の規模とも安全性とも別の数字で、ごっつはその実例です。「資本金が大きいのに倒産する会社」の逆パターンとも言えます。
芝浦4-13-23に登記された28法人 — 親・子・孫が同じ住所
CS-Cの本店は東京都港区芝浦4-13-23(MS芝浦ビル)です。うちのデータベースでこの住所に登記された法人を数えると、32法人。うち閉鎖登記済みが4法人(株式会社丸誠環境システムズ・2017年4月、NECディスプレイソリューションズ労働組合・2016年6月、クロスブリッジ株式会社・2016年8月、ひとたび株式会社・2025年9月)で、現存は28法人です。
その28法人の中に、CS-Cの子会社が2つ入っています。
| 法人 | 法人番号 | 開示上の位置づけ | |---|---|---| | 株式会社CS-C | 6011501017170 | 親会社(東証グロース) | | 株式会社CS‐R | 2010401184579 | 連結子会社。2024年8月14日設立、資本金30百万円、飲食店の運営など。ごっつの株式を取得した会社 | | perzik株式会社 | 6010401175624 | 2026年4月20日付で全株式を取得し子会社化。採用支援・動画制作・教育事業、2023年7月設立、資本金5,000,000円 |
出典:https://s-cs-c.com/news/20260420/ (株式会社CS-C・2026年4月20日・「perzik株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」。perzikの所在地は福岡県久留米市花畑3-2-1と記載。登記上の本店は、うちのデータベース時点では芝浦4-13-23)
個別決算で計上される特別損失②③(合計140百万円)は、この株式会社CS‐Rに対するものです。設立から2年ほどの子会社に対して、親会社が貸付金の貸倒引当金80百万円と株式評価損60百万円を積む。連結では消えるので、連結の数字だけ見ている人には見えません。「ホールディングスとは何をする会社か」でも書きましたが、親会社の連結が黒字でも赤字でも、応募者が実際に入るのは子会社です。同じ住所に登記された親・子・孫のどこに入るのかで、見るべき数字は変わります。
CS-C自身の数字も足しておきます。gBizINFOでは従業員数231人、資本金773,092,000円、業種は「分類不能の産業」、事業概要は「WEBマーケティング」。港区に登記された現存137,187法人のうち、従業員数がgBizINFOで分かるのは4,318社(3.1%)、江東区は30,926法人のうち772社(2.5%)です。ごっつの「10人」も、その2.5%に入っていた側の数字です。
新規事業「JAPAN FOOD GUIDE」は2年5カ月で縮小
もうひとつ、時間の話をします。JAPAN FOOD GUIDEの提供開始は2024年4月15日、縮小の開示は2026年9月18日。2年5カ月です。減損額は78百万円。
これを長いと見るか短いと見るかは立場によりますが、うちの視点では「上場企業だから、この時間と金額が外から分かる」ことのほうが大きい。非上場の中小企業が新規事業を始めて2年で畳んだとき、外からそれを知る手段はほぼありません。求人票に「新規事業立ち上げメンバー募集」と書いてあったサービスが、入社後1年で縮小になる、ということは普通に起きます。
「設立したばかりの会社に転職して大丈夫か」で書いたのと同じで、新しい事業ほど「いつ始まって、いつ判断されるか」の時間軸を聞いておく価値があります。上場企業なら、決算説明資料と適時開示でその時間軸が追えます。
会社を見る側が、この開示から持ち帰れること
個社の評価ではなく、一般化した学びとして3つにまとめます。
1. 「増収」は中身を分けて聞く。 買収で乗った売上か、既存事業の伸びか、原価率の高い売上か。CS-Cは売上13.3%上振れと同時に営業赤字が3倍になりました。非上場の会社に「売上は伸びていますか」と聞くなら、「何で伸びましたか」まで聞かないと意味がありません。 2. 登記データは「存在」を確かめるもので、「中身」は別の資料で確かめる。 ごっつの資本金100万円・売上4.2億円・債務超過・取得価格1.2億円は、どれも登記には載りません。登記で確かめられるのは、法人番号・本店・法人種別・閉鎖の有無まで。負債の外からの調べ方は「会社の借金・負債を外から調べる方法」にまとめています。 3. 同じ住所の親・子・孫は、別の会社として見る。 芝浦4-13-23の28法人のうち3法人がCS-Cグループです。連結では消える140百万円の特別損失が、個別では子会社1社に対して計上されています。入社する会社・取引する会社がグループのどの階層かで、読むべき数字が変わります。
CS-Cの2026年9月期の決算は、10月〜11月に本決算として確定します。今回の開示はあくまで予想の修正で、実際の数字は変わりえます。
FAQ
CS-C(9258)が2026年9月18日に発表した内容は何ですか?
2026年9月期の連結業績予想の修正と、特別損失の計上です。売上高は前回予想3,626百万円から4,109百万円へ13.3%の上振れ、親会社株主に帰属する当期純利益は△69百万円から△303百万円へ修正されました。特別損失は「JAPAN FOOD GUIDE」の減損損失78百万円(連結・個別)、子会社CS‐Rへの貸倒引当金繰入額80百万円と関係会社株式評価損60百万円(個別のみ)です。開示は https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260918538568.pdf で確認できます。
売上が増えているのに赤字が広がるのはなぜですか?
開示によると、売上増はM&A(株式会社ごっつ・perzik株式会社の子会社化)とマーケティング支援サービスの拡大によるもので、費用増は飲食店の新規出店の初期投資とM&Aの一過性費用で70百万円、原価率の高いサービスの売上増で30百万円、さらに減損損失78百万円が乗ったためです。売上の増え方と費用の増え方が別の要因で動いた結果です。
株式会社ごっつはどんな会社で、登記からどこまで分かりますか?
2026年2月2日の開示では、東京都江東区亀戸で背脂系ラーメン店を運営する会社で、2010年12月設立、資本金1,000千円、2024年12月期の売上高419,938千円、純資産△17,244千円、取得価格は120百万円(取得関連費用込みで概算153百万円)とされています。うちのデータベースの登記データで分かるのは、法人番号5010601040521・株式会社・本店住所・閉鎖登記なし、までです。gBizINFOには従業員数10人と業種が載っています。
特別損失が「個別のみ」で連結に影響しないとはどういう意味ですか?
親会社が子会社に貸したお金の貸倒引当金や、子会社株式の評価損は、親会社単体の決算では損失になりますが、連結決算では親子間の取引として相殺されるため、連結の損益には出てきません。今回のCS‐Rに対する合計140百万円がそれにあたります。連結の数字だけを見ていると、特定の子会社の状態は分かりにくい、ということです。
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数字はすべて、株式会社CS-Cの適時開示(2026年9月18日・2026年2月2日)と同社ニュースリリース(2026年4月20日)、gBizINFO、および国税庁法人番号公表サイト由来のしょくばログ会社データベース(2026年9月22日時点、約579万法人)から取りました。本記事は個社の経営を評価するものではなく、開示された事実と登記データの差を整理したものです。業績予想は今後の決算で変わりえますので、最新の値は同社のIRサイトで確認してください。